作品タイトル不明
1427.不審者がいます!
「こっちだよ……!」
バザールブンガ火山への道を、うれしそうに先導する少女。
その先は、道が二手に分かれていた。
「左の道からの方が近いように見えるんだけど、火山の背後にある入り口を通り過ぎて、そのもっと奥にある狩場に行っちゃうんだよ。火山のクエストに行くなら、少し迂回するような道に見える右側が正解なの」
「勘違いしやすい上に、結構時間をムダにしてしまいそうですね」
少女はちょっと、小走りになってしまっている。
それはメイたちが、北部の片隅アイアスラントに来るとは思いもしなかったからだ。
まして自作したものの誰にも知られていない、オーロラの見られる温泉を披露できるとなれば、もう楽しみで仕方がない。
だがまずは、火山のクエストを楽しんでから。
そんなわけで少女は、待ちきれないとばかりに道を急ぐ。
自然と足取りが弾んでしまう少女と共に、進む雪の道。
「誰かいる」
不意にメイが足を止めた。
道の先に、一人の戦士らしき鎧装備の人物が立っている。
そして少し、挙動がおかしい。
ただ何となく、一人で幽鬼のように突っ立っているというのは、まるで不審者のようだ。
少女は警戒しながら近づいていく。すると。
「――――ううううぁぁぁぁっ! 【ソードブラスト】!」
「「「「っ!?」」」」
突然襲い掛かって来た。
速い踏み出しから、鋭い剣の振り降ろし。
しかし少女はあらかじめ警戒していたため、この攻撃を斜め後方へのジャンプで回避。
深く地面に突き刺さる剣。
直後に巻き起こった衝撃波に、少女はダメージこそほとんど受けなかったが転がった。
すると剣士は、一気にメイたちを狙って接近。
「ああああああ――っ! 【ブレイド・エクスプロード】!」
かなり大雑把な剣の振り。
しかしそこから生まれる爆発に、メイたちは大きく後ずさる。
「【ウィンドバスター】!」
続けざまの振り払いは、暴風が吹き荒れる形。
大きく体勢を崩すその攻撃は、反撃を遅らせる。
「【ソードブラスト】!」
その隙に距離を詰め、レンに向けて放つのは、またも衝撃波を生む振り降ろし。
「きゃあっ!」
これもしっかりと回避するが、やはり衝撃波による転倒は免れない。
「範囲の広い攻撃を、とにかく振り回してぶつけるというのは、意外にやっかいな戦い方ですね……! 【電光石火】!」
範囲攻撃ゆえに完全回避とはいかず、しかし防御をすると弾かれるというタイプの戦闘法。
恐ろしくシンプルだが、この勢いは意外と侮れない。
ツバメは斬り抜けを放って隙を作ろうとするが、敵の防御が間に合ってしまった。
「【ウィンドバスター】!」
「わあっ!」
そして再び、広範囲の風攻撃。
もはや剣自体が当たらなくても、風や衝撃でこちらを止められれば良し。
駆け出そうとしていたメイもあおられて、ブンブン手を振って転倒しないようキープ。
そんな中で剣士は再び、少女を狙って動き出す。
「【かばう】!」
その前に、まもりが飛び込んで来た。
「【ブレイド・エクスプロード】!」
振り下ろされる剣は、盛大な爆発を巻き起こす一撃。
「【不動】【地壁の盾】!」
剣を受け、巻き起こる爆発にもビクともしない。
範囲攻撃を振り回す相手に、【不動】は最高の相性を見せる。
即座に下がり、再度大きく剣を掲げる剣士。
「いきます!」
せっかくなのでまもりも、盾を変えてみることにする。
「【ウィンドバスター】!」
吹き荒れる風に、再び誰もが重心を落とす中。
「【チャリオット】!」
まもりは関係なく突進。
土を蹴り、まるで風の影響など感じさせない戦車のごとき突進で、剣士のもとへ。
そしてそのまま、新たな盾を突き出す。
「【光竜爪の盾】!」
起動するのと同時に、ドラゴンのものを思わせる荒々しい光の爪が付き出す。
その威力は十分に剣士を打倒できるものだったが、残り1ドットで生き残る。
それは広範囲振り回し型の敵に『一度だけHP1で生き残る』スキルを付けておくという、嫌がらせのような設定のため。
この状況から「もう一撃当てられるか?」という挑発だ。しかし。
一度隙さえ作ってしまえば、問題などない。
「【加速】【リブースト】!」
「【裸足の女神】!」
「【超高速魔法】【ファイアボルト】!」
超高速の前衛二人がクロスする形で斬撃を決め、目にも止まらぬ炎弾が貫く。
防御も間に合わないその速さに、剣士はゴロゴロと転がり、倒れ伏した。
「まもりちゃん、カッコいいー!」
「攻撃的な盾、迫力も十分ですね」
「でも本当に何なのかしら。急に理由もわからず暴れ出す人間の敵って、まあまあ怖いわね」
「これが【ブレニヴィン】というお酒の、悪酔い効果なのでしょうか」
「よ、酔っ払いに絡まれるクエストは、意外と目にしませんね」
そんなことを話していると、少女も駆け寄って来た。
「ありがとうございました……! 最近ちょくちょく見かけるのですが……結構怖い敵かも」
やはり本職はハウジングの方にあるのか、戦いが終わって安堵の息をつく少女。
「とにかく、先に進みましょうか」
こうしてメイたちは、再び少女の案内でバザールブンガ火山へ。
一度は迂回するように曲がった道は、火山の背面部へと続く。
「この先に見えているログハウスが、火山クエストの発注先なの」
「助かったわ。左の道に行ってたら迷ってしまっていたわね」
火山の麓にある木製の建物まで来たところで、少女の役目は終了だ。
「あ、あの……」
「火山のクエストが終わり次第、遊びに行かせてもらいます」
「待っててね!」
約束を、あらためて確認するツバメ。
「はいっ、いってらっしゃい!」
うれしそうに大きくうなずいた少女は、四人を笑顔で送り出したのだった。