作品タイトル不明
1414.捕まえてアテナノクトゥ
「待て待てーっ!」
分身で三体に増えたアテナノクトゥは、森の中を飛ぶ。
輝くルーンが生み出したのは、厚い草木の檻だ。
「【フリーズボルト】」
メイとツバメは飛び越えて進み、レンは魔法で先んじてそれが幻覚だとまもりたちに見せておく。
これによって自分はもちろん、続く二人も速度を下げずにすり抜けることができる。
すると途端にアテナノクトゥが驚き、軌道を変えた。
「「っ!」」
その理由は、魔物の到来。
待ち伏せでもしていたのかという形で、前衛組を狙って大型の狼が飛び掛かる。
「やあっ!」
「【投擲】!」
二人は早い攻撃で魔物を片づけに動いたが、二体ともに幻覚。
「演技だったの!?」
アテナノクトゥは、魔物に気づいて軌道を変えたようにしか見えなかった。
見事にひっかかった二人に向けて、放つ炎弾。
「「っ!」」
今度は本物で、ダメージこそ僅少だが二人とも遅れが出る。
「本物と偽物を混ぜる攻勢に、演技まで加えられたら、厄介が過ぎるわね……!」
思わずため息をつくレン。
「【裸足の女神】! 【モンキークライム】【ラビットジャンプ】【ターザンロープ】!」
しかしメイは木々の隙間を見つけて一気に距離を詰め、二度目のロープを投擲する。
見事にアテナノクトゥを捉えるが、それは偽物。
分身は解けたが、即座に次の仕掛けが作動する。
「うわっ!」
大量の木の葉が飛び散り、その視界を妨害。
吹き荒れる風と共にぶつかる木の葉は、フクロウを隠してしまい、天然の【ギリーフェザー】状態だ。
だがメイの目は、視界の中にある移動方向のおかしなものをしっかり意識。
少ない遅れでしっかりと後に続き、ツバメと共に木の葉の中を駆け抜けた。
「あっ、湖だよ!」
どうにか駆け抜けた先には、広がる大きな湖。
その上をアテナノクトゥは、悠々と飛んでいく。
こうなってしまうと、通常のプレイヤーなら諦めるしかないのが通常だ。
しかし、ツバメは念を入れる。
「メイさん! 念のためそのまま【アメンボステップ】をお願いします!」
「りょうかいですっ! 【アメンボステップ】!」
スキルを発動したメイの足は、湖面に着かない。
これによってこの大きな湖でさえ、幻覚なのだと発覚。
すぐさま消えて、再び続く森に戻った。
「やはり。隠し池の時のメルーナさんの助言。そして以前広域マップを見た時に、森の中に湖などなかったのでおかしいと思いました」
「ツバメちゃんないすーっ!」
二人は近寄り、片手でハイタッチしながら駆けていく。
マップに無い湖の存在を疑問に思ったツバメの機転は、この罠を見事に打ち破ってみせた。
「「っ!?」」
メイたちに続き、全員が顔をあげる。
「ここで暗くなった? これは勝負所に入ったってことでいいのかしら?」
夜のように暗く見せるのも、もちろん幻覚の効果だ。
暗くなれば当然索敵は難しくなり、視認範囲も狭くなる。
だがメイの【夜目】は、本物のフクロウにだって負けてない。
木々を避けつつ問題なく先頭を行き、しっかりとアテナノクトゥの位置を把握。
「今、チャンスかも! 【裸足の女神】【ターザンロープ】!」
枝の並びとアテナノクトゥの位置から隙を発見し、もう一度高速で接近してロープを投げる。
これを慌てて軌道変更してかわしたところに、迫るのはツバメ。
「【加速】【紫電】!」
これを【高速飛行】による急加速で、かわしたアテナノクトゥ。
いよいよその場での滞空となり、そこに迫るのはメイ。
フクロウはその翼を広げて、近くの木に刻まれている【再演のルーン】を発動。
迫るメイに、先ほどツバメが使用した【紫電】が放たれる。
「うわっと! 【ラビットジャンプ】!」
これをメイは、垂直の高いジャンプで回避。
「高速【フレアアロー】!」
するとその背後からレンの放った火炎矢が、木の幹に炸裂。
巻き起こる風に、アテナノクトゥは体勢を崩した。
さらにレンは進み、生み出された三対一の状況。
「また羽毛の色を変えています!」
【ギリーフェザー】によって夜色になったフクロウは舞い、程よい距離を取る。
そして、新たなルーンを発動。
「「「っ!?」」」
幻覚によって、大量の分身を生み出していた。
そしてそのまま一斉に、こちらへ迫り来る。
すれ違う形になってしまえば、その後イチかバチかでパーティを分散してフクロウを追いかけても、それが本物である確率はあまりに低い。
とはいえこの中から、本物を見つけるのは相当難しいだろう。
それだけ、使い魔として迎え入れるには難易度の高い個体という事だ。しかし。
「【コンセントレイト】【ファイアウォール】!」
レンが即座に放った炎の壁が突き立つと、必然的にそこにそのまま飛び込む個体が幻覚と判断できるようになる。
そんな中で、明らかに速度を落とした個体あり。
「【投擲】!」
ツバメがアテナノクトゥの上部に【風ブレード】を投じれば、生まれた風にあおられ高度が下がる。
「レンちゃん!」
「お願いっ!」
【低空高速飛行】で迫るレンに、手を伸ばすメイ。
レンがその手をつかむと、すぐさまスキルを発動する。
「……【ゴリラアーム】」
大きく上げた腕力で、そのまま一回転してレンを放り投げる。
「せーのっ! それええええええ――――っ!」
アテナノクトゥのもとに飛び込んでいくレンは、両手を広げて特攻。
そのまま小柄なフクロウを、抱き留めてみせた。
「【浮遊】!」
後は落下を軽減し、空中で姿勢を取り直して悠々と着地。
「アテナノクトゥ……捕まえた!」
「やったー!」
「やりましたね!」
森の中に響き渡る拍手。
メイとツバメはさっそく駆け寄って、歓喜の笑みを見せる。
「ど、どうにか追いつきました……無事、捕まえたようですね」
「おおー、すごいー」
後を追ってきたまもりとメルーナも、感嘆を見せたのだった。