作品タイトル不明
1412.クインフォード魔法学校へ!
「【シールドバッシュ】!」
離れた場所にある的に攻撃を放ち、当てろというのがクインフォード魔法学校の入学試験。
まもりの放った衝撃波は見事に的を吹き飛ばし、無事一発で合格。
「まあそうよね」
あっさりとした合格に笑うレン。
風でボサボサになった髪のまま、試験官は【魔法学院制服】をまもりに差し出した。
生徒でないと受けられるクエストが減り、入れる区画も決まってしまう。
だがこれで、四人そろって問題なしだ。
「やはりこうして、制服で合わせるのは楽しいですね」
「これを着ている間は、闇と野生から解放されるものね……!」
「本当だねーっ!」
こくこくと、大きくうなずくメイ。
「おーい」
そこに聞こえてきたのは、マイペースな声。
やって来たのは、クルクルの長く淡い金髪にアホ毛。
魔導士らしいローブを羽織り、顔を半分近くまで橙のマフラーにうずめた少女だ。
「メルーナちゃん!」
「クインフォード歴代最強生徒が来てるって聞いて、来てみたー。今日は何かクエストでも探しに来たのー?」
メルーナ・ラブウェルはそう言って、首を傾げる。
どうやらメイたちの登場は、生徒たちの間で話題になっているようだ。
「実は、アテナノクトゥを探してて」
レンがそう言うと、メルーナは「おおー」と感嘆した。
「フクロウじゃなくて、アテナノクトゥって具体的に名前を出した人は初めてだよー。発見情報は、ここ魔法学校付近で何度かあるー。実は図書館の文献にも載ってるんだー」
もはやこのクインフォードを居住としているメルーナには、その言葉に覚えがあるようだ。
「でも、目撃が少なすぎる上に使い魔界隈の人たちがいくら探しても見つからなかったからー、生息域として判断されてないの。もちろん使役者もいないー」
「姿を見られたことがあるだけ、なんですね」
「も、目撃されているのに、そこから先の情報がない……すごく特別な感じがします」
「もしかすると、アテナノクトゥっていう言葉を入れて先生や生徒に話を聞くと、何か情報が出てくるかもー」
「ありがとー! さっそく聞きに行こうよ!」
「こうなると声をかけたいのは、あの二人ね」
レンは大物に当たる人物に当りを付け、メルーナに問いかける。
「青バラは、どこにいるか分かる?」
「もちろん。ついてきてー」
率先するメルーナに続いて、メイたちは魔法学校を進む。
「魔法学校のクエストが進んだことで新しい謎が次々出てきてー、毎日楽しく騒がしい。これもメイたちのおかげー」
一部のプレイヤーがその世界観に惚れて住み着いていただけで、活気のなかったクインフォード。
今ではすっかり人気区画になって、いよいよ魔法学校の賑やかさを感じられるようになった。
メルーナは笑顔で、生徒用サロンへ。
「うわああああ――――っ!!」
すると突然、魔導士プレイヤーの悲鳴が聞こえて来た。
「勝者! リリーネ・グレイシア!」
魔法名家グレイシアの息女にして、栄えあるクインフォードの首席を務める少女。
別名『青バラ』に挑むクエストで、プレイヤーが負けたところのようだ。
「悔しければいつでも挑戦してもらって構いません。ただ、いつまでも勝てない相手だからこそ、名家なのですが」
青バラが挑戦プレイヤーにそう告げると、その左右にいたお嬢様仲間たちが「まったくです」「身の程を知ってもらわないと」と笑い出す。
「腹立つなぁ! 相変わらず!」
「こいつら、今に見てろよ!」
「もっとだ、もっと罵ってくれ……!」
どうやらプレイヤーが増えたことで、挑戦者の種類も多様になってきたようだ。
「ちょっといい?」
勝負が一段落着いたところで、レンが青バラに声をかける。
「レンさん? サロンで会うのは久しぶりですね。どうかされましたか?」
大きなクエストを達成したため、青バラもレンたちのことをしっかりと認識済み。
「アテナノクトゥを探してるんだけど、どこかで見なかった?」
「これまで二度しか見たことがありませんけど……どちらも校外へと続く北西の森でした」
話し始めると、途端に魔法学院の優等生コンビ感が出て、付近から「絵になる……」と、ため息が聞こえ出す。
「ふみふむ、なるほどぉ」
メイもここぞとばかりに真面目な顔でうなずいて、知性派メイちゃんをアピール。
その姿にツバメとまもりが、笑みをこぼす。
「ただあの森は妙に迷いやすいので、向かうつもりならお気をつけて」
「助かったわ」
こうしてレンたちは情報を得て、サロンを後にする。
「さすが青バラね。この時点でどうしてアテナノクトゥがわずかな目撃情報しかないのかのヒントまで教えてくれたわ」
「今ので、何か分かったー?」
「北西の森、なぜか道に迷う。まだ捜索範囲は広いけど、十分有力な情報だと思うわ」
首を傾げるメルーナに、レンはうなずいてみせた。
「さて、次は学校長ね」
続いて向かったのは、魔法学校の中央塔。
そこには魔法石によって円盤状の足場を昇降させる作りの、エレベーターがある。
乗り込むと、やはり大きなクエストの達成者であるメイたちには、最上階行きのボタンが押せるようになっていた。
ボタンを押すと、足場が上昇を始める。
「こんにちはーっ!」
メイが元気に挨拶すると、長い白髪とひげの老人が振り返った。
濃いネイビーのローブにカラフルな肩掛けをして、手には長く荘厳な雰囲気の木杖。
彼こそが、この魔法学校の校長だ。
「アテナノクトゥを探しているんだけど、何か知っていますか?」
「北西の森で発見情報があるみたいだけど」
ツバメとレンの問いに、校長はヒゲをなぞる。
「北西の森か……あの辺りは付近の地脈を流れる魔力が合流するところでのォ。何百年単位で活きる樹木に刻んだルーンが、いつまでも効果を発揮するような場所なのじゃよ」
「なるほど、これでアテナノクトゥがこれまでつかまらなかった理由も見えたわね」
「隠れていた、もしくは隠されていたというわけですね」
「おおー、すごい!」
仮に普通に入っても、古い木に刻まれたルーンなどの効果で道に迷ってしまう。
またアテナノクトゥを偶然見つけても、そんな森に隠されてしまうということなのだろう。
「地図で言うとこの辺りじゃな。行くなら気をつけるのじゃぞ。アテナノクトゥは女神の使い。出会うのも一苦労じゃろう」
「はいっ! がんばりますっ!」
こうしてメイたちは、長きに渡ってその存在だけしか知られていなかった個体の住処へ、向かうことにするのだった。