作品タイトル不明
1404.来訪タヌキレストラン!
クエスト報酬を受け取ったメイたちが向かうのは、タヌキレストランのあるトリアスの町。
「……でも、何か忘れてる気がするのよね」
「なにかな?」
「何かありましたか?」
「フ、フグ刺しではないでしょうか」
「「「ああっ!」」」
それは次のクエストとして提示されてはいたが、トカゲ帝国の復活によってそのままになっているクエストだ。
「確か特殊な料理スキルが必要で、メイドとかを探さなくちゃいけないのよね」
「それもあって、先延ばしになっていますね」
メイドと言えば『迷子』がそうだが、下手をすればレアな魔獣よりも捕まらないプレイヤー。
その辺りも、後回しになった原因だ。
「おおーっ! やっぱり綺麗だねーっ!」
到着と同時に、さっそく駆け出して行くメイ。
ポータルを使ってたどり着いたのは、西洋の山間部を思わせる美しさを持つトリアスの街。
賑やかな街には、ログハウスやレンガ作りの建物が並んでいる。
「ほらほらまもり、そんなに急がなくてもタヌキたちは逃げないわよ」
「は、はひっ」
街中を流れる小さな川を超えた先。
その街外れにあるのは丸々ツタに覆われた、レンガ造りの四角い建物。
以前は屋根上からの侵入が必要だったが、今はもう正面の鉄扉から入ることが可能だ。
「可愛いです……」
中では今日も二足歩行のタヌキシェフたちが、忙しそうに駆け回っていた。
頭に乗せたコック帽に、エプロン。
レンガ積みのキッチンにはフライパンや鍋などが並び、まな板や包丁も見られる。
今では動物たちや一部クエストプレイヤーなどに向けて料理を出しているらしい、タヌキキッチン。
食材調達係の魔狼フレキや、案内役の小竜も片隅でくつろいでいる。
「おや、メイさんではありませんか!」
すると気づいたタヌキたちが、駆け寄って来る。
またぶつかり合ってコック帽を落としたり、転がったりしている姿にさっそく癒される。
「よう、今日はどうしたんだよ」
「うまい肉でも手に入ったのか?」
すると小竜と、魔狼フレキも続く。
魔狼の頬を撫でると、その毛並みがまた心地よい。
「何か困ってることはありますかっ?」
メイがたずねると、タヌキたちは並んで考えるように首を傾げる。
「な、ないようでしたら、せっかくですしフグ刺しのクエストでも――」
あくびをするとちょっと口から火が出る小竜に、思わず笑いながらまもりが言う。
その時だった。
「ここに料理人はいるか!」
黒い鉄扉を開いて入ってきたのは、まさかの乱入者。
「「「うわーっ!」」」
驚きに、タヌキたちがコロコロと転がりながら逃げ回る。
「なんだ、貴様は」
「名を名乗れ!」
警備も兼ねている魔狼と小竜が問うと、乱入者はその手に刃を取った。
「俺は悪魔の料理人、ニスロク様だ! お前たちに、料理勝負を申し込みに来た!」
そう言って包丁を掲げる乱入者は魔物、いや悪魔の類か。
灰色の毛皮に、黒の模様。
二本の角と尻尾、そして小さな羽を生やした姿は魔性を強く感じさせる。だが。
背丈は1メートルもない。
「可愛いですね」
「はひっ」
「可愛いねぇ」
「ほぼほぼ、ぬいぐるみの感じよね。タヌキたちと並んでも違和感がないわ」
二足歩行だが、迫力は全くなし。
メイがその毛並みに思わず手を伸ばすと、悪魔はぴょんと横に跳び退いた。
「おい! オレ様をあんまり舐めるんじゃないぞ! それより勝負を受けるのか、受けないのかどっちだ!」
「これ、私たちが勝負を受けるかどうか決めるのね」
見れば隠れているタヌキたちも、こくこくとうなずいている。
「そ、そういうことなら、受けてみたいです……っ」
「楽しそうっ!」
「はい、普段とは少し違う気配がします」
うなずき合う四人。
こうして四人は、悪魔料理人の持ち掛けてきた勝負を受けて立つことにした。
「――――話は聞かせてもらいましたにゃ」
するとさらに聞こえてた声。
鉄扉をこじ開けて、どうにかこうにか入ってきたのは、二足歩行のキジトラ猫。
「かわいいーっ!」
「本当ですね!」
思わずメイが声を上げると、ツバメも目を輝かせる。
ジャケット姿の猫を先頭に、続々と入って来る動物たち。
シルクハットのコーギー犬。
リボンで頭を飾ったキツネ。
そして、蝶ネクタイを締めたレッサーパンダ。
「私たちは三ツ星美食隊! 世界中の料理を食べて回っている者ですにゃ!」
「聞けば何やら料理勝負とのこと! そのワンダフルな勝負の審査をさせていただきたいのです!」
「魔族の作る料理だなんて! こーんな経験は早々ありませんわ!」
レッサーパンダは、三人の言う事に賛同するようにバンザイをしている。
「へっ、いいじゃねえか! これなら正々堂々と料理勝負ができるってもんだな!」
邪な笑みを浮かべるも、どうしても可愛くなってしまう料理悪魔に思わずもれる笑み。
「さあ、尋常に勝負しやがれ!」
「よ、よろしくおねがいしますっ」
「勝ったら、審査員と悪魔料理人まとめてモフモフし放題かしら?」
「すばらしいです!」
「負けないよーっ!」
こうして悪魔の料理人との、対決クエストが始まる。
「……我らは?」
「できた料理でも、食わしてもらおうぜー」
すっかり蚊帳の外になってしまったフレキと小竜は、のんびりと床にころがったまま勝負の行方を見守るのだった。