作品タイトル不明
1403.報酬確認タイムです!
「……とにかく、無事に終わって良かったわ」
ラフテリアの青い海を眺めながら、レンは安堵の息をつく。
光の使徒と闇の使徒の、激しいぶつかり合い。
そのきっかけは、たった一人の少女が受けたクエストによるものだった。
最後には大陸すら闇に沈めてしまう、恐ろしい物語。
それでもどうにか使徒たちをまとめ、魔神の打倒にも成功。
宵闇ネム・ラグナロクとの古い約束も無事、かわすことができた。
「あとは次の戦いを持ちかけられる前に、あの子が目を覚ましてくれることを祈るのみ」
一緒に冒険するくらいは構わないが、移籍しろというのはさすがに困る。
「こうして四人で集まれないのは、寂しいものね」
今日も五月晴れの面々は、いつもの堤防で輝く海を眺めていた。
「今回の広報誌は、素晴らしかったです……!」
「カッコ良かったよーっ! 闇と光の戦い。その中を駆ける使徒たち!」
「闇を継ぐ者も、しっかりポーズを決めた瞬間を使われていますね!」
ツバメとメイは楽しそうに、宵闇のアルティシアに立つ闇の者たちの写真を見つめる。
「と、特にレンさんの演説は話題ですねっ」
「やめて! 言わないで!」
使徒たちを一つにした『挑発』は、運営が繰り返し動画広告に使用。
その映像が誰かの作ったCM用の『ネタ』ではなく、本当に起きていると知った者たちが、さらに星屑にやって来ている。
そんな中。
「皆レンさんには、特別な目を向けていますね」
「なんで私だけこうなのよ」
メイは明確に、その可愛さに見合わぬ野生ぶりが大人気だ。
見る者に「おおっ!」と言わせる華麗な動きと、豪快な一撃が見る者を虜にする。
これはツバメの予想を裏切る一撃や、まもりの驚異的な堅牢さも同様。
だがレンに感銘を受けた者たちは、「ククク……」と言いながら妖しい視線を向けてくる。
「このポスター、部屋に張っちゃおうかな」
「やめておきなさいっ」
今回は付属に、【エンジェルハイロゥ】使用時のレンのポスターがついている。
これがまた非常に良い出来で、メイはワクワクしながら眺める。
「それで今日は、何をするの?」
「これだけの活躍をしたレンさんは何か、したいことはないのですか?」
「そうねぇ……光とか闇とかが続いたから、ちょっと楽しくて癒されるようなことがしたいわねぇ……」
そう言って、遠く海を眺めるレン。
姉妹バトルも一部で話題になっているし、カナの疑念も残っている。
その上ネムはまだ諦めたわけではないとくれば、現実逃避もしたくなるというものだ。
「まずはクエスト報酬を受け取りに向かって、そのついでに考えるというのはいかがでしょうか」
「そ、それがいいと思います」
こうして四人はまず、闇を継ぐ者の隠し基地のあるブリテンのエディンベアへ。
パブの床から、マネージャーの待つ地下基地へと降りた。
「待っていたよ」
そこには革張りのチェアに腰かけた、マネージャーの姿。
「中央大陸の防衛任務、見事だった。これは報酬だ、受け取り給え」
続けてやって来たのは、アタッシュケースを思わせる形状の黒い箱を持った構成員。
いつもとは違う容れ物に、ワクワクしながら開く。
まずはまもりから。
【光竜爪の盾】:起動すると光の爪が付き出す盾。攻撃を受け止めた瞬間に使用すると敵にダメージを与えられる。
「一度見せられたら、不用意な接近はできなくなるわね」
「引き付けてからの反撃、こちらからの虚を突く攻撃にうってつけですね」
続いてレン。
【隠匿のルーン】:オブジェクトや使い魔などを透明化する。
「変わったスキルですね……」
「建物や壁などを透明化したり、手放した装備品を透明化するといった使い方でしょうか」
「いーちゃんも透明になるのかな!?」
次はメイの番。
尻尾をブンブンさせながら、スキル書を取り出す。
【ワイルドバスター】:正面でつかんだ敵をブレーンバスターのように、そのまま後方に投げて地面に叩きつける豪快な技。持ち上げられる大きさは【腕力】に依存。敵の巻き込みも可能。
「…………」
「まさか投げスキルが来るとは思わなかったね……さすがに豪快過ぎない?」
「メイさんが大物悪魔の角をつかんで投げるとなると、また大きな歓声がわきそうです」
武器や道具という名の文明の利器を使わないというのは、思った以上の野性味を醸し出す。
メイはさらに【野生回帰】で防具を吹き飛ばした状態で、暴れ牛をつかんで投げるような展開になった事を想像して震える。
そして最後は、ツバメの番。
【影分身】:実体を持った三体の分身を生み出すことができる。攻撃力は三等分される。
「分身が全員攻撃を当てて、ツバメも直撃させれば合計でダメージ二倍ってことかしらね」
「きょ、強力ですね」
報酬の確認は、これで完了。
闇を継ぐ者のマネージャーが、口を開く。
「恐ろしき魔神の脅威をよくぞ退けてくれた。これからも我らは、影から悪を討つ刃として動くことなるだろう。頼むぞ闇を継ぐ者たちよ」
「はいっ!」
「承知しました」
マネージャーの言葉にメイが元気に、ツバメがクールに応えると、一連のクエストも一段落。
「これで報酬は、全部確認できたわね」
「この後は、どうしましょうか」
秘密基地の出口である屋根に出てくると、メイが思い出したように手をあげた。
「楽しくて癒される場所だよね……タヌキキッチンを見に行くのはどうかなっ」
「いいじゃない。確かに楽しいし癒しにもなるわね」
「と、とても良いと思いますっ!」
食べ物の気配を感じて、拳を握って賛同するまもり。
「可愛いタヌキシェフたちの姿は、確かに癒されますね」
ツバメもこれには、大きくうなずく。
「あの子たちがコロコロと動き回る姿を見て、さらに何か食べれたら楽しそうだわ」
「狼ちゃんと、子竜ちゃんにも会えるね!」
こうして四人はまず、タヌキレストランがあるトリアス目指して動き出すことにした。