作品タイトル不明
1392.光と氷と
今でもレンが闇を継ぐ者と共に行動するのを、頬をふくらませながら見ている樹氷の魔女。
そのためスキアとクルデリスの動きに気づくと、後を追うようにやってきて光の使徒に侵入した。
「お見事ですわ」
白夜もレンとリズの手前、負けることは許されない戦い。
誰何をすることはなく、シンプルに告げる。
「続けての援護を」
一方樹氷の魔女も、光闇に捕らわれない全体を見ての参戦。
「まるで使徒長のようだ」と、気持ち良くなりながらうなずく。
「来ます!」
先手を打ったのは腹心山羊。
【流閃火花】で、最後の攻撃者であるヒカリを狙う。
迫る大量の炎弾をミヤビが盾で受けると、樹氷の魔女が反撃を開始する。
「【三連射】【アイシクルエッジ】」
迫る氷の刃を、山羊は避けずに受け止めた。
「【白氷花】」
続けて放たれたつぼみを思わせる氷砲弾は、炸裂した瞬間に白刃の花びらを展開させ花のようなエフェクトを見せる一撃。
【転移陣】によって後方上部へ転移させ、炸裂した氷花が天から舞い落ちる。
「【エンジェライズ】!」
「【シャイニングステップ】!」
この隙に接近してきた白夜とエトワールを、本人を囲む【紅蓮輪舞】の爆炎で転がし止める。
「【ホーリーレイ】!」
さらにヒカリが放った光線も、【六花の光盾】が受け止めた。
「ここだ! 咲き狂え雪花の刃【凍花白華】!」
冷気によって白みがかった空間に現れた、大量の氷花。
一定時間、そして一定ダメージまで耐える魔力の盾だが、正面に展開してしまえば左右からの判定に対応できない。
次々に砕け散り、生まれた無数の氷の花びらが山羊を切り刻む。
「【ラグナリオン】!」
それを見た白夜が従魔を飛ばし、単騎で行うシンプルな鉤爪のすれ違い攻撃でダメージを与える。
ここで駆け出す三人組。
意外にも最前に出て来たのは、魔導士のヒカリだった。
厄介なのは、【火炎杖剣】による攻撃が予想以上に速く的確な事。
長い攻撃範囲を持った燃える杖を振り払い、三人の足を止めたところで放つ強烈な振り降ろし。
魔導士に回避は難しく、直撃。
盛大な炎が、高く燃え上がった。
だがもちろんこれは、狙い通りだ。
「【スケープゴート】!」
敵の一撃を、誰かと位置を入れ替えることで身代わりにするそのスキル。
「【ルミナスシールド】!」
これを受け負ったミヤビが、盾でしっかりと受け止めていた。
「【シャイニングステップ】【シャインセイヴァー】!」
駆け込んで行くのは、光の剣を手にしたエトワール。
「【二刀流】【チェンジアームズ】!」
魔力製の武器には重さがないため、軽々振り回せるのが大きな利点だ。
「【大型化】!」
なんと片刃の長さ2メートルほどに大型化した二本の斧を、右手左手と二連発で叩き込んだ。
「駆け抜けて【ホワイトノヴァ】!」
純白の輝きが荒れ狂う上級の範囲魔法がさらに、腹心山羊を削り取る。
こうして樹氷の魔女の『崩し』から始まった連携は、見事に高いダメージを与えた。
「きますわ!」
華麗な連携も、転倒を取るタイプの攻撃はなかったため、敵の反撃は早い。
「っ!」
樹氷の魔女の左右に一秒差で生まれた魔法陣は、【転移連火砲】
慌てて前方へ飛び込むと、魔法陣から激しい火炎が噴き出した。
「まだっ!」
かわした直後、頭上に現れた新たな陣に即座の横っ飛び。
焼かれながらも、直撃は避けたと息をついたところに迫る【炸裂火弾】
「あぶないっ!」
樹氷の魔女を突き飛ばし、白夜が身代わりとなる。
受けた三連発は、さらに炸裂することでダメージを増幅させた。
ここに再び迫る【流閃火花】
無数の火炎弾は誘導だが、一定の範囲を巻き込むため、白夜と樹氷の魔女はいくつかの炎弾を喰らって体勢を崩した。
「【シャイニングステップ】!」
追撃を防ぐためエトワールは前へ。
ミヤビも防御に入れるよう白夜たちのもとへと駆ける。
だが山羊の放つ攻撃は【豪炎烈火葬】
杖を突くと、足元に長さにして20メートルに迫る長方形の魔法陣が、山羊を中心に八枚ほど円を作るようにして展開。
直後、盛大な閃熱が空へと駆け登る。
その回避は全員が諦めて、足元からの攻撃に防御を選択。
HPをしっかりと削られた。
両者の間に再びできた、距離と空白。
「【ラグナリオン】【エアブースト】!」
ここで白夜は、黒竜の従魔と共に空へ。
山羊の放つ【流閃火花】をかわして接近する。
「【紅蓮砲弾】!」
放つ三連続の火炎弾に対して、山羊は【転移陣】で対応。
それでも止まらず白夜は進む。
「【エーテルジャベリン】!」
六連の光槍を全て放つと、今度は【六花の光盾】で受け止める。
「【ツインストライク】!」
それでも白夜は止まらない。
ラグナリオンの鉤爪攻撃が、光盾に直撃。
「【ライトニングスラスト】【極光乱舞】!」
さらにレイピアが激突し、激しい爆発を巻き起こす。
光の盾に、大きく走るヒビ。
それを見た樹氷の魔女は、即座に続く。
「【白氷花】!」
つぼみを思わせる氷砲弾が直撃し、雪の花が舞う。
そしてついに【六花の光盾】が、粉々に粉砕した。
「今ですわ!」
「【ホーリーレイ】!」
「「「【セイントエッジ】!」」」
ヒカリの攻撃に、使徒たちが続く。
とっさの連携で、いよいよ残りHPがなくなってきた腹心山羊。
まさに勝負所。
山羊はその杖を静かに、そしてゆっくりと地面に突いた。
その杖に集まる光が、炸裂。
【閃熱式符葬】は身体の左右に四枚ずつ、縦に二枚ずつの八枚。
さらに正面頭上に一枚ずつ、合計十枚の長方形の魔法陣を展開。
輝きは一気に増し、お札のような魔法陣が全て同時に長方形の魔力光の閃熱を放つという、盛大な一撃だ。
「ミヤビさん! あともう一人盾役を!」
「【聖天の加護】【ルミナスシールド】!」
使徒の盾役に指示を出し、白夜はラグナリオンと共に空へ。
エトワールとヒカリは、ミヤビの背後に隠れる。
「こっちです!」
さらに光の使徒の前衛が、樹氷の魔女の前に立って盾を構える。
そして、十枚の大型魔法陣が巨大な閃光を放った。
通常防御でも大きくHPを削られてしまう一撃だが、盾役は防御補助スキル持ち。
残りHPがすでに大きく減っている中、どうにか最低限のダメージに抑えてみせた。
落ち着いていく閃光に、思わず皆息をつく。
「……これは?」
腹心山羊はなぜか、両手で杖を掲げたまま静止していた。
「終わったのでしょうか?」
エトワールがつぶやく。
「違います! すでにスキルが発動していますわ!」
異変に気付いたのは白夜。
【転移流星】は、天の魔法陣から大きな流星を呼び寄せぶつける奥義だ。
「【四連射】【ホーリーバレット】」
ヒカリが十字きらめく光弾を即座に陣へぶつけるが、止まらない。
一度発動したら、時を経て必ず発生するスキルのようだ。
だが、その事実をいち早く確定させたことが全員に覚悟を決めさせた。
「目覚めし白き吹雪の王。その息吹は、絶対零度の祝福なり……」
すぐさま始めた詠唱は、もちろん樹氷の魔女のもの。
「凍てよ世界、来たれよ悪夢。我が根源の本流は、移る時すら流れを止める――――【無明雪月花】!」
飛来した氷球は、一瞬小さく白い輝きを見せた後に爆発。
猛烈な氷刃の嵐が、山羊の前面を白一色に塗り替えた。
「【フラッシュジャンプ】! 【二刀流】【シャインセイヴァー】【大型化】!」
続いてエトワールが、跳躍から二本の大型光剣を叩きつける。
「【ディバインスラスト】からの【雷槍】だあっ!」
「【白光槍】!」
「【聖切断】!」
さらにミヤビがランスで続けば、前衛使徒が攻撃を叩き込む。
「【ホワイトノヴァ】!」
「「「【ホーリーストライク】!」」」
そしてヒカリの攻撃に、後衛使徒が続いたところで残りHPはもうわずか。
「【ライトニングスラスト】【極光乱舞】!」
最後は白夜が、得意の飛行刺突で締める。
爆破と共に舞う燐光。
だが【流星】は、止まらない。
そのまま着弾し、猛烈な光と衝撃波を巻き起こして砂煙をあげた。
その中に見えたのは、その角を粉砕されて倒れ伏す山羊。
「ギリギリ……でしたわね」
エフェクトは発生したが、打倒が先行したためダメージはなし。
恐ろしい緊張感の中、光の使徒たちも見事に勝利を飾った。