作品タイトル不明
1391.山羊と光の使徒
始まった、強化腹心との戦い。
闇の使徒たちが激しい火花を散らす中、光の使徒たちも腹心山羊の前に並ぶ。
こちらも同じくマントまで灰色のため、目の青と金色の杖が妙に際立っている。
先頭は白夜。
その後ろに星野エトワール、花森ミヤビ、雪崎ヒカリ。
そして最後方に、この場に来られた10人強ほどの光の使徒が陣を組む。
「……負けられませんわ」
一度は捉えながら、逃した腹心。
ここで負ければ、おそらく腹心は闇の使徒を攻撃しに行く。
そんな恥ずかしい真似は、あってはならないことだ。
「必ずや、この場所で打倒させていただきましょう」
「今度こそだなっ」
「勝負だね」
燃えるエトワールに、ミヤビとヒカリが続く。
強まる緊迫感。
腹心山羊が、手にした金の杖を悠然と持ち上げた。
【流閃火花】は、無数の小さな火炎弾が誘導で迫るスキル。
目の前で大玉の花火が花開いたかのような光景に、思わず皆目を奪われる。
「【ルミナスシールド】!」
攻撃直前に踏み出したミヤビが、物理にも魔法にも対応できる盾スキルで対応。
次々に迫る火花を受け止め、その間に白夜とエトワールが接近を計る。
すると腹心山羊が杖を持ち上げたのを見て、エトワールが一歩前に出た。
放たれた【炸裂火弾】は連射が可能だ。
「【シャイニングステップ】!」
速度を上げて、腹心山羊の狙いを自分に引き付ける。
ぶつかると炸裂してもう一撃判定を生み出す炎弾が、次々に爆発を起こす中を突っ切っていく。
「【エンジェライズ】!」
小さな翼を羽ばたかせ、この隙に一気に距離を詰める白夜。
「【ライトニング・スラスト】!」
そのまま敵の胸元目がけて飛来する。
「っ!?」
しかし腹心山羊が金の杖を向けると、空間に生まれた切れ目に飲み込まれて、あさっての方向に着地。
【転移陣】で見事に、白夜の攻撃をかわしてみせた。
「ここ! 【ホーリーレイ】だね!」
まばゆい十字光が閃いた直後、駆け抜ける白の光線。
ヒカリの放った魔法は、発生が早く威力も高い上級魔法だ。
腹心山羊が杖で地面を突くと、現れた六枚花の魔力盾とぶつかりまばゆい光を上げる。
【六花の光盾】は、ヒビこそ入ったものの健在。
役目を終えるのと同時に消えていった。
「高い火力と、厚い防御。なかなか堅実ですわね」
「まったくですね」
つぶやく白夜に、エトワールが応える。
いきなりの激しいぶつかり合いは、互いにダメージも薄く堅い入りとなった。
「【エンジェライズ】!」
「【シャイニングステップ】!」
今度は先行を奪うように動き出す、白夜とエトワール。
左右から挟み込む形で接近する。
【炸裂火弾】による連続攻撃を、エトワールが見事にかわす。
「【エーテルジャベリン】!」
白夜は六連発の光の槍を左右に三本ずつの展開し、放出しながらの接近。
ダメージを与えつつ距離を縮め、見事に近接戦の様相に持ち込む。しかし。
「っ!」
山羊が杖を突くと、本人を囲む形で巻き起こる爆炎。
【紅蓮輪舞】の起こした火炎に、二人があおられる形で足を止めた。
「いくしか、ないよなっ!」
ここに駆け込んできたのはミヤビ。
手にしたランスを突き出し、消えかかる炎に踏み込み攻撃。
「【ディバインスラスト】!」
範囲も広く長い突きの一撃は、風を起こしながら。
「【雷槍】!」
見事に刺さったところで、続けて放つ雷撃。
腹心山羊の態勢を崩したところに、エトワールと白夜が距離を詰めていく。
しかしわずかな出遅れが、山羊に時間を与えた。
ならば防御でも関係なく刺さる光の槍で攻め、エトワールに続かせようと視線を送る白夜。
「っ!?」
山羊は手にした杖に炎を巻き起こし、剣のように振る。
いざという時の近接武器【火炎杖剣】が、虚を突かれた白夜とエトワールを斬り飛ばした。
だが光の使徒も黙ってはいない。
「「「【セイントエッジ】!」」」
「【エンジェルラダー】!」
剣の振りを見た光の使徒が光刃を撃ったところで、足元から白い光の光線が突き上がる。
こちらも敵にダメージを与えることに成功した。
続く、驚くほどに堅実な戦い。
だがここで腹心山羊は、戦い方に変化を入れ始める。
【流閃火花】が、大量の火花を白夜に集める。
「【エンジェライズ】!」
誘導の効いた無数の火花を、しっかり引き付けてから回避する。
山羊が杖を地面につくと、白夜の目前に直径一メートルほどの垂直に描かれる円形方陣。
「っ!?」
【転移火砲陣】が、爆発的な炎を吐き出した。
これを決死の転がりでかわすと、さらに山羊が【炸裂火弾】を連発。
肩を弾いた炎弾が炸裂して体勢を崩したところで、駆けつけてきたエトワールが体当たりで次弾をかわさせる。
「ミヤビさん!」
「【ルミナスシールド】!」
目前に現れた魔法陣に、ミヤビは盾を向けて対応するが――。
「上にも続きますわ!」
「っ!?」
なんと一瞬遅れて頭上1メートルのところにも魔法陣。
初撃の防御には成功したが、二発目を喰らって転がった。
【転移連火砲】は、敵の前後左右に加えて上からも連続で炎を吐き出す。
これでは、盾で防ぐことができない。
「させないんだね! 【ホーリーレイ】!」
続く腹心山羊の攻撃を止めるため、ヒカリはすぐさま光線で攻撃。
この一撃が成功すれば、立て直した前衛組まで攻勢が続くはずだ。
「っ!」
しかし進む光線の前に現れた【転移陣】が光を飲み込み、山羊の後方から空へと抜けていく。
「【フラッシュジャンプ】! 【チェンジアームズ】【大型化】!」
それでも駆け出していたエトワールは、高い跳躍から攻撃。
手にした光の斧を大型化して、叩きつける。
「くっ!」
エトワールの一撃は十分高火力だが、それでも【六花の光盾】を崩すには至らない。
「二つの防御スキルを使った直後なら! 【エンジェライズ】!」
だがスキルの使用直後というタイミングを狙い、白夜が接近。
対して腹心山羊は、強く杖を突く。
足元に生まれるのは、任意で数を選べる長方形魔法陣。
今回は八枚、円を描くように展開した陣から、【豪炎烈火葬】が盛大な爆炎を噴き上げる。
「「きゃああああ――っ!」」
空へ登る閃熱はその範囲も大きく、逃げ切れずに白夜とエトワールが焼かれて転がる。
もちろんこの隙を、腹心山羊は逃がさない。
【火炎杖剣】による追撃が、まだ起き上がれずにいる白夜を狙う。
「百夜様っ! 【ルミナスシールド】ッ!!」
ここに全速力で駆け込んで来たミヤビが、どうにか炎の剣を受けるが、体勢が悪く弾かれて転がった。
光の使徒組は、素直な攻撃を選ぶ者が多い。
そのため【転移陣】や【六花の光盾】という防御スキルを合わせて使う山羊と、かなり相性が悪いようだ。
【転移火砲陣】の使用によって、変わってしまった流れ。
腹心山羊はこの機を逃さず、加勢をかけるため動き出すが――。
光の使徒たちの中から一人の魔導士が踏み出し、杖を掲げた。
「切り裂いて――――【氷のイバラ】!」
地面を伸びる氷の枝から氷刃が生え、敵を斬るこの魔法。
山羊の持つどちらの防御スキルも、足元には対応していない。
斬り裂かれた足が、その場に止まる。
「【四連射】【ホーリーバレット】!」
光の十字きらめく弾丸で、慌ててヒカリが追撃を決める。
すると広がった氷の枝が砕けて、雪片交じりの白煙を舞い上げた。
「間違いありませんわ」
白く煙る冷気の中。
白衣装で光の使徒の中に潜り込んでいたのは、謎の魔導士。
それはモナココの動画で見た、トッププレイヤーすら止めてみせた力の持ち主だ。
侮ることのできない氷の魔導士の登場に、白夜は勝利を確信し始めた。