軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1390.コンビネーション

現れた二人の黒づくめ。

リズはその正体が、闇を継ぐ者のメンバーであることに気づいた。

厳密には、闇の使徒ではない。

だが遅れてやって来ていた二人は、闇の使徒に潜入して『押される戦況』を見守っていた。

流れをうかがっていたようだ。

「……いい攻撃だ。ここからは貴様たちの火力にも期待する」

リズはそのことに触れず、使徒の一人と勘違いしたフリをすることを選択。

これで後方組を守れる可能性が出るのなら、それが一番だ。

ここで問答をする余裕などない。

「承った」

「了解ィ」

短く言葉を交わして、闇の使徒たちは再び陣を組み直す。

「ウォオオオオオオ――――ッ!!」

するとすぐさま咆哮一閃、大猿が猛烈な勢いで駆け出した。

「くっ! またか!」

その狙いは後列。

嫌らしい戦い方は、健在のままだ。

「喰らいつけ【万魔の眼光】」

しかしその出足は、いきなり散弾銃のごとき閃光弾に阻まれる。

如何に足が速くとも、人の数倍となる体躯を持っていては回避が難しい。

「さァーて、そんじゃいきますかァ【殺到】【フリップジャンプ】!」

そうなればすぐさま、接近刺突スキルを移動使用したクルデリスが跳び上がる。

「【残光連華】」

二本の剣が、空中に幾重もの大きな白弧を描き、大猿を斬りつける。

すると大猿はすぐさま、掲げた手を叩きつけにいく。

「「っ!」」

【爆弾烈掌】で生まれる盛大な爆発を、二人は無理せず防御。

弾かれはしたものの、後方組が崩れるほどではない。何より。

「目覚めろ【暗夜剣】っ!!」

迫り来る、三日月形の闇波動が大猿に直撃。

「――【早駆け】【水遁・天嵐砲】」

続く水流の一撃が、大きく敵の体勢を崩した。

スキアとクルデリスという壁が一度大猿を止めたところに、リズと雨涙が追いつく形になるのが大きい。

「【裂空剣】!」

「「「【フレイムストライク】!」」」

そして生まれた隙に、生き残り使徒たちも攻撃で参加。

良い形で、陣が活き始める。

優勢を取られた大猿はしかし、ここで新たなスキルを発動。

大きく引いた手に、付近の砂が渦を巻きながら集まり巨岩化する。

【投岩】は魔法で生み出した大岩を投げる、シンプルだが高火力の一撃だ。

「狙いは、やはり我ら後方組か」

だが徹底した攻撃姿勢は今回、意味を持つ。

ど真ん中に転がってきた巨岩は見事に後方組を、何よりスキアとクルデリスを分断した。

スキアと多くの後方組が、身を投げての回避をとる。

すると通り過ぎた岩の左に位置していたクルデリス目がけて、大猿はすぐさま進攻を仕掛ける。

「キヒヒヒヒ! 面白くなってきたなァ! 【降霊】ィィィィ!」

クルデリスは鎧をまとった大きな剣士の霊を身にまとい、何と真っ向から挑みかかる。

「【光刃】【闇刃】! 喰らえよォォォォ!」

大猿による拳の叩きつけをかわし、二刀流による攻撃を叩き込むと、剣士の霊が手にした大剣を叩き込む。

背負った上半身だけの霊の一撃は、重い。

「【殺到】!」

突撃スキルの移動使用で再び接近し、さらに二連撃。

「【悪鬼羅刹斬】!」

そこから放つ垂直の大型斬撃を、大猿は横へのステップで回避。

続く水平斬撃は低めの跳躍でかわす。

しかしその後に、同様の攻撃を剣士の霊が放つ。

合計四連続の斬撃。

これはさすがにかわせず、三発目が大猿の左腕に、四発目が右腹部から手にかけて深い傷を刻み込んだ。

「たまんないよねェ……こういう殴り合いさァァァァ!!」

それでもすぐに、反撃に迫る大猿。

右拳の叩きつけをかわし、左手の【払いのけ】をしゃがんで回避する。

「【フリップジャンプ】!」

そして続く【爆弾烈掌】を、後方への跳躍ですり抜けた。

見事な回避を見せたクルデリスだが、それもここまで。

踏み出しての【つかみ上げ】によって、その手に握られてしまった。

それでも、時間は十分に用意できた。

「【降魔連砲】」

肩に留まる使い魔のカラスは、その全身に青緑に輝く紋様が描かれた太古の個体。

【 古代烏(エンシェントクロウ) 】のひと鳴きが、スキアの魔力を増幅する。

直撃した五連の魔力砲が炸裂し、大猿はクルデリスを取り落とした。

「――うまい」

「これが闇を継ぐ者か。やはりナイトメアたちと組んだ経験は、個人の能力を大きく上げるようだな」

その連携に、思わず感嘆する。

こうして二人が大猿の突破力を抑えてくれれば、リズたちが振り回されずに攻撃に入れる。

前後から挟み込む形で、大猿を討ちに行く。しかし。

「「なっ!?」」

そんなリズと雨涙の足を【土塊】を飛ばして止めると、すぐさま振り返る。

「「っ!?」」

今度は反対の手で地面を引っかき、土や石を飛ばす。

まさかの左右二連で、両チームの足を強制停止。

そして、大猿がその拳を高く突き上げた。

バチバチと弾ける魔力と共に、地面に全力で叩きつける。

「――ここで大技!」

【暴拳崩落】は地面から突き立った岩刃が四人を突き刺し、続けて崩落に巻き込み転倒させる。

HPが一気に減少し、さらに大きな隙を晒す形になった。

大猿の身体が、後方に傾く。

これは初手で闇の使徒の多くを消し飛ばした【大閃光砲】の前触れだ。

狙いはスキアとクルデリス。

「マッズいねェ……っ!」

大猿の口から閃光砲が放たれた、その瞬間。

その背中に【封魔手裏剣】が突き刺さり、炸裂。

閃光はスキアとクルデリスのわずか頭上をかすめて爆発し、突風を巻き起こした。

それは【土塊】の際、とっさにリズが前に立ったことで、雨涙が直後の【暴拳崩落】にしっかり防御で入れたことが生んだ流れだ。

「ここだ! 【凶弾】!」

これを見逃さないのがスキア。

ボスには軽い魔力弾だが、連射によって大猿の『喰らい時間』を引き延ばす。

「「続け!」」

スキアの指示がリズと重なった。

「「「【フレイムストライク】!」」」

残り少ない闇の使徒が、即座に魔法で攻撃を引き継いだ。

この隙に駆け出したのは、一人の前衛剣士。

決死の覚悟で接近するも、わずかに硬直時間が足りず迫る大猿の拳。

「当たるかッ!」

これをどうにか斜め前へのステップでかわして、剣を突き刺した。

そして使い捨ての【封雷剣】には、短い拘束効果あり。

「【開眼】」

それを見たスキアは、ここを勝負所と判断。

閉じ続けていた両の目を開けば、神々しい七色の輝きと共に魔力が噴き荒れる。

すると使い魔である烏が大猿に突撃し炸裂、付近に大量の魔力粒子をバラまいた。

それは魔法攻撃を『エコー』のような形で増幅する、空間を生み出すもの。

「砕け散れ――――【イビル・ゴスペル】」

空中に止まる黒の光球が大量生成されると、次々に炸裂。

逃げ場などなし。

さらにエコー効果でヒット数が増加し、大猿が大きく体勢を崩す。

「【早駆け】【遅れ咲き】!」

雨涙が脚部に斬り抜けを決め、遅れて八連続の斬撃を生み出す。

「【斬首の刃】(デスサイズ)」

クルデリスが降霊の剣士と共に放つ、二連続の『超大型』魔力刃で、大猿の腹部を抉る。

「任せちゃって、いいんだよねェ?」

挑発するような、クルデリスの言葉。

「当然だ」

リズは短く応えて走り出す。

「【暗衝】!」

砂煙をあげながら、一直線に大猿のもとへ。

手にした黒の大剣を、引きずるように接近。

「これが貴様へ送る、葬送のレクイエムだ――――【飛天闇祓い】!」

豪快に振り上げる。

毛筆で荒く描いたような黒のエフェクトを描く一撃が、敵を容赦なく斬り飛ばした。

地面を派手に転がった大猿は、そのまま倒れ伏す。

「思ったより消耗しちゃったねェ……それにしても、さすが闇の使徒のアタマだね」

「あの危機をひっくり返すきっかけを、あの危機の中で作り出すとは……集中力が卓越していたな」

とっさに雨涙の前に出て【土塊】を受け、生み出した流れ。

逆転の糸口を作ったその機転に、スキアとクルデリスは感嘆したのだった。