作品タイトル不明
1385.二体目の腹心を追え
「こ、これでまずは一体ですね」
「良い連携でした」
ドールと共に、腹心獅子の早い打倒にも成功。
五人は勝利を喜び合う。
「カナ、ずいぶん上手く合わせるわね」
「カッコ良かったよーっ!」
「ありがとうございますっ! 五月晴れの活躍は、いつも追いかけてたから!」
「なるほどねぇ」
メイが好きで戦闘を繰り返しで見ているし、姉の監視でまた動画を見る。
そのためカナは近接戦の感覚に優れ、パーティの連携も把握しているようだ。
「それじゃあ他のドール、腹心打倒の手伝いに行きましょうか」
「りょうかいですっ!」
腹心三体のうち二体の打倒もしくは召喚を防ぐことができれば、魔神の復活は防げる。
協力も可能な、このクエスト。
ならば次のドールを、いち早く倒すことがとにかく大事だ。
さっそく動き出す五月晴れ。
「カナちゃんも一緒に行こうよ!」
「いいんですかっ?」
「もちろんだよーっ!」
「メイさんたちと一緒なんて夢見たいですよーっ!」
うれしそうにするメイと、もっとうれしそうにするカナ。
もちろんメイたちを追うことにする。
「お姉ちゃんの監視も、もう少し続けさせてもらおっかな」
「はいはい、好きにしなさいよ」
これには、レンも苦笑いを見せるのだった。
◆
「どうだ? 見つかったか?」
「いや、気配すら見つからない」
一方その頃、闇の使徒たちはパーティを分ける形でドールの行方を追っていた。
『闇』に属するギルドなどに出されていたクエストは、そもそもドールの発見が難しい。
三体の腹心を集結させるのに、暗躍少女側はとにかく不利。
そのため一体は、発見自体が困難なドールが用意されているようだ。
「制限時間が迫っている。とにかく急いで見つけるんだ!」
闇の使徒たちは、時間の経過に対し思うような成果が出ていない。
「「っ!!」」
そんな中、飛び込んできたのは視界に映るアナウンス。
それは腹心の一体が、打倒されたという報だった。
「これは使徒長殿たちか! さすがだ……!」
「あと一体、何としても我ら闇の使徒の手で続くぞ!」
気合を入れる闇の使徒たち。
続く森の中に見つけたのは、同じく辺りを見回すプレイヤーの一団だった。
「あそこにいるのは、光の者か?」
「……ドールの情報を共有し、発見を急ぐ方がいいのではないだろうか」
一人の闇の使徒がつぶやく。
「ダメだ。光の者に頼るような真似はできない」
「そうだな」
闇の使徒たちは光の使徒たちの後方を素通りし、そのまま探索を続ける。
そしてそんなパーティから離れる事、数キロほど先。
「【ウィンドストライク】!」
放つ風の魔法を、刀を持つ三体目のドールが斬り裂いた。
「「「うっ!」」」
刀から飛来した斬撃は速く、回避に回った光の使徒パーティは体勢を崩した。
「【セイントアロー】!」
即座に後列の弓術師が、聖なる輝きを刃にした矢を放って援護に入る。
しかしこれもドールは、刀の振り払い一つで斬り払う。
そして弓術師に向けて疾走を始めると、今度は魔導士たちが即座に魔法を射出。
「「「【ツインエッジ】!」」」
光の刃を同時に二本ずつ、三人同時に放つことでドールに防御を取らせて止める。
八人対一体でもやや押されている戦いは、前衛の人数不足が原因だ。
「っ!?」
厳しい戦い。
突然、その端に現れたのは――。
「闇の者たち……!」
六人組の闇の使徒パーティ。
どうやら先ほど狼煙代わりに打ち上げた『仲間にドールの発見を知らせるため』の魔法を見て、やってきたようだ。
一瞬頭をかすめたのは共闘。だが。
「ここは私たちのフィールドです! 戦いの邪魔になる前に立ち去りなさい!」
闇の使徒に助力を求めることなど、ありえない。
早いけん制の言葉を投げかけた。
「引くぞ、我らは我らの目標を探すのみ」
対して闇の使徒たちもすぐさま踵を返し、いまだ見つからない二体目のドール発見に急ぐ。
「きます!」
叫ぶ光の使徒。
直後。居合いを思わせる大きな払いの斬撃が、光の使徒たちをまとめて斬りつけた。
凄まじい攻撃範囲に、驚きながらの転倒。
刀のドールは、すぐさま追撃に動く。
光の使徒たちが、追い込まれた窮地。
「【シャイニングステップ】!」
足元から光を弾きながらの疾走で迫るのは、白のコートに白の軽鎧をまとった、白金の短髪。
白夜の片腕の一人、星野エトワールだ。
気付いたドールは連続の斬撃を飛ばして、早々に対応。
「【シャインセイヴァー】!」
しかしエトワールはこれを見事な回避で接近し、そのまま手に光の剣を生み出す。
振り下ろした一撃が決まり、大きく下がる刀のドール。
「魔法を!」
「「「【ツインエッジ】!」」」
すぐさまの指示で敵を守勢に回らせ、さらに接近。
「【フラッシュジャンプ】【チェンジアームズ】!」
光の剣を大きな光斧に変えて、空中からそのまま叩きつける。
防御するもその威力は高く、ドールはさらに大きく弾かれた。
エトワールは止まらず、さらに距離を詰めていく。
そして刀を構えたドールと、一対一の距離に持ち込んだところで――。
「【シャイニングステップ】! 【後光】!」
急加速で懐へ。
本人から半径1mほどの狭い範囲だが、強烈な閃光を放つことで確実に隙を作れる、そのスキルを叩き込んだ。
「【聖光烈拳】!」
「【十字炎槍】!」
その瞬間、即座に前衛組が連携を叩き込む。
「「「【ジャッジライト】!」」」
「【セイントアロー】!」
さらに魔法攻撃と矢が放たれ、次々に直撃。
パーティにエトワールという『核』になる存在が現れたことで、残る八人が急速に活き始めた。
転がり、大きく体勢を崩したドール。
勢いは完全に、光の使徒が奪い返した。
このままいけば、ドールによる腹心の召喚を止められる流れだ。しかし。
「なっ!?」
突然飛んできた大きな炎弾が、盛大に爆発。
「「「わああああああ――――っ!?」」」
炎と共に生まれた強烈な衝撃が、エトワールたちを吹き飛ばした。
「な、なにが起きたのですか?」
見た瞬間慄くその火力に、困惑する光の使徒たち。
すると燃え盛る炎を割るようにして、ゆっくりと姿を現したのは黒のローブ。
どうやらドールの打倒に手間取ったことで、対クエストの主である少女の到着が間に合ってしまったようだ。
「あいつは! 降臨祭を潰した……っ!」
気付いた光の使徒が叫び、すぐに全員が黒ローブの存在を確認。
「「「【フレイムスピア】!」」」
即座の魔法攻撃で、先手を打った。
「【セイントアロー】!」
さらに聖なる矢による攻撃も続く。
高速で飛来する六連の炎槍に対し、黒ローブは慌てることなく黒レースの『日傘』を取り出した。
正面に突き出し、開いてみせる。
するとその表面にぶつかった魔法が、矢が、次々に弾けて消えていく。
「【聖光烈拳】!」
だが魔法と同時に動き出していた足の速い武闘家が、すでに距離を詰めていた。
ここからでは回避など不可能。
防御するなら攻撃を継続するのみ。
優位を確信する武闘家が放つ拳が、巻き起こす輝き。
「っ!?」
しかしその場から、黒ローブの姿が突然かき消えた。
一瞬遅れて、少し距離を置いた位置に現れると――。
「【トライマギア】」
そうつぶやき、胸の高さに持ち上げた手の平を天に向ける。
「【ローズフレア】」
その手に灯る、大きな炎。
「【ローズフレア】」
「「「っ!?」」」
さらに炎が激しさを増し、光の使徒たちが驚愕に目を見開く。
「【ローズフレア】」
「…………」
言葉を失うエトワール。
魔法を放たず、手元に顕現させておくだけなら問題はない。
それは空中に『設置』しておいて放つ白夜の【エーテルジャベリン】と、そこまで変わらないからだ。
だが黒ローブは三度魔法を放ち、それを一つの煌々と輝く赤紫の炎に変えた。
「その目に焼き付けよ、煌爛たる炎華の庭園――――『スカーレットガーデン』」
手を伸ばして、放つ。
【トライマギア】は単純に、同種の上級魔法を三つ『合体させて』放つという凶悪スキル。
「「「わああああああああ――――っ!!」」」
炸裂し、広がる赤紫色の業火。
直撃を受けたわけでもないのに、光の使徒たちは五人が一撃で退場。
さらに星野エトワールも大きなダメージを負って、その場にヒザをついた。