軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1311.変動重力下の戦い

長い長い地下トンネル。

その終点前に現れたのは、時間をかけて酸化させた銀みたいな色をした魔導鎧。

最終区間の無重力下を、魔力のスラスターで接近してくる。

「やっぱりモナココのやつに似てるわね……!

フワフワと、不安定な状態。

レンは接近戦になる前に優位を取れないかと、魔法で先制を仕掛ける。

「【連続魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】!」

しかし魔導鎧は、スラスターの上手な使用でこれを回避し加速。

さらに距離を縮めてくる。

「宇宙でのロボット戦みたいな戦い方ね……!」

魔導鎧は手に持ったランスで、突きによる特攻を仕掛けてきた。

「【かばう】【不動】【地壁の盾】!」

まもりはこの攻撃を許さない。

レンの前に立ち塞がり、盾を構えるとそのまま衝突。

見事な防御を見せたが――。

「きゃああああああ――――っ!」

「まもり!」

「まもりちゃんっ!」

ダメージはなし。

しかしまもりはピンボールのような形で床に跳ね、続けて天井にぶつかり、また落ちる。

やはり【不動】でも、無重力下では止まらないようだ。

一方魔導鎧は弧を描く飛行で姿勢を直しながら、左手を伸ばす。

「炎弾っ!」

その手に埋め込まれた魔宝石で放つ、炎弾での攻撃。

連射を前に、フワフワしているメイたち。

ここは防御で対応するが、やはり押されて下がる。さらに。

「ツバメ! 【低空高速飛行】!」

炎弾の防御で足が浮いてしまったツバメに向けて放たれる、大型の炎弾。

レンはツバメに接近し、つかむとそのまま回転して放り投げる。

すると二人の間を、炎砲弾が通り過ぎて行った。

「【フリーズストライク】!」

レンも即座に、氷砲弾で反撃。

これを魔導鎧が、スラスターの噴射一つでかわしたところで――。

「あっ、もしかしてっ!」

メイが声をあげた。

終着点には、押し込まれるように置かれた数台の車両。

かつてはこのトンネル内を行き来していたのだろう交通機関に、接近するメイ。

すると予想通り、無重力化なら普通に車両を持ち上げられる。

「それええええ――っ!」

メイはそのまま、リニアを思わせる形状をした車両の一つを投擲。

レンの氷砲弾をかわしたところに飛んできた、まさかの大型オブジェクト。

単純に大きさがあるためかわすことは難しく、魔導鎧はその質量に押し出され、天井にぶつかり地面に弾かれ遠ざかる。

「まだまだいきますっ!」

まさかの形で生まれた、大きな隙。

メイはふわっとした状態のままで、右手を突き上げた。

「――――それではどうぞ、お越しくださーい!」

空中に描かれる魔法陣から落ちて来たのは、大きな白い象。

その重さはしかし、今回に限り揺れを起こさない。

象は無重力の中で若干足をワタワタさせた後、その長い鼻から大量の水を噴射。

体勢を立て直しつつあった魔導鎧に直撃し、その周り一帯を水塊が大量に浮かんだ空間に変えた。

「す、すごいですっ!」

無重力だからこその状況に、思わず息を飲むまもり。

もちろんメイの狙いに、レンは気づいていた。

伸ばした【ヘクセンナハト】を魔導鎧に向けて、魔法を発動する。

「【フリーズブラスト】!」

その効果範囲を大きく広げる氷嵐が、浮かぶ大量の水を一斉に氷に換える。

「わあーっ! すごいっ!」

トンネルの一角にできた『氷の巣』に、ぷかぷか状態のメイが歓喜の声を上げた。

「【低空高速飛行】!」

レンはこの隙を突いて、魔導鎧に接近。

だが敵までの距離は長く、凍結が解ける前の追撃とはいかなかった。

魔導鎧はすぐさまランスを構え、接近してくるレンを討とうと動き出すが――。

走る雷光。

無重力ゆえに、投げれば割とどこまでも飛ぶ【雷ブレード】が通常よりも長い距離を飛び的中。

「ツバメ、助かるわ!」

期待通りの展開に感謝しながらレンは、再び動きを止めた魔導鎧のもとへ。

「はあっ!」

そのまま【魔剣の御柄】で二連撃。

「開放!」

続けざまに【フリーズストライク】を開放して、敵を吹き飛ばした。

「意外と戦えるわね! 無重力下でも! ……ん?」

これまでにない戦いの楽しさに、思わず笑みがこぼれるレンの横を、高速で飛んでいった何か。

それは、メイに投じられたツバメだった。

ツバメはそのまま一気に魔導鎧のもとまで飛び、空中でもがいて体勢を整える。そして。

「【空襲】!」

そのまま短剣による刺突を叩き込んだ。

すると両足で魔導鎧を蹴り、その反動で戻ってくるツバメ。

つかまえて四人集まると、思わずハイタッチして――。

「「「あははははっ」」」

ちょっとずつ離れる無重力下に、こぼれる笑い。

さらにNPC少女がこちらに近づこうと、平泳ぎを始めてレンが噴き出す。

「さて、ここからどうくるのかしら?」

大きくHPを減らした魔導鎧だが、ルアリアへのトンネルの最後を飾る敵はまだ倒れない。

緩い飛行で程よい距離まで戻ってきたところで、レンはすぐさま杖を向けた。

「【フリーズストライク】!」

氷砲弾で先手を取る。

すると魔導鎧は、額部についた鉱石を強く輝かせた。

「「「「っ!?」」」」

足元に広がる、円形の魔力光。

飛んでいった氷砲弾は、まるで地面に引っ張られるかのように軌道を変え、足元に着弾して散った。

「も、もしかしてあの範囲の中は……」

「今度はすごく、重たくなってるんでしょうね」

レンが敵の持つ能力に気づくと、同時に低空飛行を開始する魔導鎧。

「スラスターの出力を上げるだけで、重力下でも動きがほとんど変わらないの反則じゃない? でも、【悪魔の腕】!」

レンはしっかり相手を引き付けたところで、魔法を発動。

足元に現れた小型の魔法陣を、突き破らん勢いで出て来た悪魔の腕は、そのまま――。

「ちょっとー! 根性見せなさいよーっ!」

思わぬ重さがきつかったのか、ビタンとその場に伏した。

「きゃああああ――っ!」

突然きつくなった重力に、思わずフラつくメイたち。

そんな中レンは、魔導鎧のタックルに弾き飛ばされたのだった。