軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1292.解放です!

キャインが倒れると、モンスターたちの洗脳も解ける。

するとスターダスト団が使っていたモンスターたちも、今までのように命令を聞かなくなってしまった。

「今だ! やれ【エーテルレイン】!」

「やるぽよっ! 【硬化砲弾】!」

「くっ!」

押し気味だった上位十六組のモンスターたちが、ここで一気に加勢に出ると、スターダスト団は後退。

戦いの優劣は、決定的なものとなった。

「……こうなったら、仕方ありませんね」

リザードの【テールバッシュ】を喰らったキャインがよろよろと立ち上がると、スターダスト団の面々も戦いを切り上げ集結。

「今回は我々の敗けです。まさかこれほどまでに強力なリザードが存在するとは、想定外でした……しかし!」

キャインは、その目に野望の炎を燃やして告げる。

「この世界にモンスターたちがいる限り、我々は諦めません! 必ず復活し、我らが大望をかなえてみせましょう!」

スターダスト団の足元に現れる魔法陣。

「その時、再びお会いしましょう」

魔力の輝きが弾けると、次の瞬間にはその姿を消していた。

どうやら、逃げ去っていったようだ。

「……勝った」

「勝ったぞォォォォ――――ッ!!」

勝利を喜ぶトレーナーたち。

すると観客席のモンスターたちも正気を取り戻し、拘束が解けていく。

「最後あれ絶対『動物値』次第では、洗脳されたモンスターがプレイヤーを攻撃する流れだっただろ!」

「リザードの判断は、間違いなく信頼の差が出た形だったな!」

「りーちゃん! 偉ーい!」

メイはリザードを抱えて、クルクル回る。

「それにしても、アサシンちゃんや盾子ちゃんまで洗脳してくるとは……!」

「そして大きな力の暴走には、必ず目をつけて視察に来る使徒長ちゃん……!」

「……あれだけ完璧にお膳立てされたら、もう断れないじゃない。旅館が豪華だったのも絶対『出演時、よろしくお願いしますね』ってことだし」

ため息交じりに、つぶやくレン。

「あと邪炎龍は、私が選んだんじゃないからね?」

そこはしっかりと付け足しておく。

リハーサルの時は、ほぼ同じ見た目のスキルを使う『黄龍』だった。

それを最後の最後に「見た目と名前だけちょっと変更入れます」と言われて、気がつけば完全な闇の使徒仕様にされていた。

運営、見事にやりとげる。

「邪炎龍に、選ばれたということですね」

「そういうことじゃない!」

大きくうなずくツバメに、即座に訂正を入れるレンはすっかり元通りだ。

「フェンリル、あれは今回イベントで負ける予定ではなかったんだろうね」

そこにやって来たのは、クローナ。

「こんなに楽しいイベントになるとは思わなかったよ。見事な戦いだった。弱いと決めつけられていたリザードでトーナメントを制したうえに、おそらくもっと引っ張るつもりだったはずの神話の狼にまで勝利してしまうなんて」

「まったく、見事でありますな」

さらに大熊猫が、片足ずつピョンピョン飛び跳ねながらやって来た。

「メイちゃんはとにかく指示が早くて、的確でありますから、運営でも止められなかったのでありましょう」

「メイちゃん以外のトレーナーが戦っていたら、運営の考えていたシナリオ通りになっていたんだろうね。リザードの育成がとにかく見事だった。最後のジャンプ【テールバッシュ】は、私の育成からは出てこない駆け引きだよ」

クローナと大熊猫はさっそく、メイたちのトレーナーとしての能力の話で熱くなる。

「三人も、モンスターへの指示は今回のイベントが初めてなんだよね?」

「そうなるわね」

「そうですっ」

「はひっ」

「大したものであります」

大型のヒヨコとハムスターという、ある種のレアモンスターでの面白い戦いぶり。

そして強者の風格を感じさせたレンの戦いを思い出し、楽しそうにする大熊猫。

一方のメイは、気になっていたレギアーラの翼に触れたりパンダの背中に抱き着いてみたりと、楽しそうだ。

「私としては、メイちゃんが持つ色んな召喚獣も見られるようなイベントだと、もっと良かったんだけどね」

クローナがそう言うと、メイは即座に反応。

「いいですよっ! 【装備変更】っ!」

【狼耳】装備で、右手を突き上げる。

「それでは皆さん、ご一緒にどうぞーっ!」

メイは【群れ狩りⅢ】で、召喚獣たちを呼び出す。

現れたのはクマ、白狼、ケツァール。

さらに【友達バングル】で白クマ、使い魔のいーちゃんも一緒に召喚。

「お、おお……」

するとクローナの目つきが、あからさまに変わった。

「ああああああああ――――っ! 可愛いいいいいい――――っ!!」

駆け出して、まずはクマに抱き着き堪能。

さらにメイに『狼』への騎乗を頼み、その姿を見て悶える。

「クローナが、壊れた……」

本性を見せるクローナに、観客たちが唖然とする。

一方の大熊猫は、クマと白クマの間にパンダを並べてご満悦。

「……あれ、イベントはどうなったんだ?」

「「「っ!?」」」

するとそこに、一人の青年がやって来た。

自由になり、賑わう会場。

驚きの声も当然、やってきたのはスターダスト団の衣装を着た青年だ。

「実は今日から新人で入る予定が、遅刻しちゃって……」

「いや、帰って行ったぞ。スターダスト団が集まったモンスターを洗脳拘束しようとして失敗。秘密兵器だったフェンリルを倒されて今回は諦めたらしい」

「えっ、そんな恐ろしいことが……!?」

青年は驚きの顔を見せた後、一つ息をついた。

「それなら今後は、僕がモンスターのイベントを仕切っていこうかな」

スターダスト団の制服を脱ぎ、集まっているプレイヤーたちに宣言する。

「モンスター・ワールドグランプリを始めとしたイベントは、これからも続けていきますので、何卒宜しくお願い致しますっ!」

「そんなことある?」

「こんな偶然の乗っ取りみたいな流れで、モンスターイベントは継続していくのか」

まさかの乗っ取り発言に、笑うトレーナーたち。

「でもモンスターバトルはもっと加熱していくだろうし、続いてくれるのは助かる!」

「将来的にはAR、拡張現実を使って、街中で出会った星屑仲間と対戦できるようにしたいんすよ」

「うおっ! それいいじゃん! 『海パン社会人が勝負を仕掛けてきた』みたいなことができるようになるんだろ?」

「それなら、もっとモンスター鍛えておかないとな!」

やはり育成後の、モンスターへの愛着はなかなかのもの。

イベントの継続が決まり、よろこぶトレーナーたち。

「とりあえずメイさんのリザードは、殿堂第一号として記録に残させてもらいますねー」

「はいっ!」

そんな中、遅れてやって来てイベントをジャックした青年は、リザードの殿堂入りを示唆。

こうしてメイたちのパーティを巻き込んで行われた、育成バトルイベント『第一回モンスター・ワールドグランプリ』は、終了を迎えたのだった。