軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1293.お疲れさまでした!

「お疲れさまでしたーっ!」

「今夜は、ゆっくりしていってくださいね」

「私たちはさっそくこの動画を編集して、広報誌用の画像を提供して、そこから宣伝の方法も考えて行かないと――!」

第一回モンスター・ワールドグランプリは、その全行程が終了。

運営のチームも一仕事終えた後なのに、まだまだやる気十分だ。

「ちょっといいですか?」

そんな中、運営チームに声をかけたのは可憐。

「はい! なんでしょうか!」

「私の黄龍が、邪炎龍になっていた件についてなんですけど」

「お……お疲れさまでしたああああ――っ!!」

「あー! 忙しい忙しい!」

「この後はすぐに本社で会議だ! 遅れるわけにはっ!」

運営チームは、つばめも「これは……!」と唸るような素早い足運びで逃げ出していく。

「ちょっと! やっぱり自覚あってやったのね!」

可憐は責任者を捕まえて問いただそうとするも失敗。

見事な逃走で、運営は部屋を出て行った。

「邪炎龍、とてもカッコ良かったです」

「あんなの出されたら、世界観を壊すわけにはいかないじゃない……!」

少し雰囲気を出すだけでいいはずが、求められる役割を感じ取ってしまった可憐。

それでなくてもゲームで手は抜けない性分ということもあり、ついしっかりと演じ切ってしまった。

「レンちゃんたちが、敵として立ちはだかるなんてビックリしちゃったよ!」

「実は私たちも陰で、モンスターバトルに向けて練習していたのです」

「メ、メイさんに驚いてもらえたら楽しいと、ひっそり」

「そうだったんだ! でもレンちゃんはやっぱり、闇の世界の住人だったんだね……!」

「ねえ。なんで私だけ台本じゃなくて、本当に闇を超える者なんだと思われてるの?」

「せ、説得力ではないでしょうか」

まもりの言葉に、ぐうの音も出ない。

そんな可憐につばめが笑っていると、不意にさつきが『主人が帰ってくる直前の犬』のようにハッと顔を上げた。

「何かくる……?」

そう言って、部屋の玄関口の方を見ていると――。

「失礼いたします」

やって来たのは、宿の仲居さんが数人。

「っ!」

まもりがすぐに反応する。

持ち込まれたのは、先日よりもさらに豪華になった夕食。

部屋のテーブルに、次々に並べられていく。

「……ねえ、メイも野生度上がってない?」

「っ!?」

「メイが反応してから、仲居さんが部屋にたどり着くまで約二十秒。その時点で気付くって相当の能力だと思うけど」

「こ、今回は、料理までは分からなかったからセーフじゃないかな?」

「普通の人間は、部屋に誰かが来る気配を、この速度で感じ取らないんじゃない?」

「た、たしかに……っ」

可憐とさつき、しばらく互いを見合った後に苦笑い。

「まあ、今は忘れて夕食を楽しみましょうか」

「そうしましょうっ!」

準備ができると、仲居たちはお辞儀を残して部屋を出て行った。

「それじゃあメイ、お願いしていい?」

「おまかせくださいっ! それでは、イベントの成功をお祝いして……いただきますっ!」

「「「いただきます!」」」

運営も四人の打ち上げということで依頼していたのだろう、並ぶ料理はどれも最高だ。

「なんか、すごくおいしいわね」

「はい、とても」

「きっと、みんなと一緒だからだよっ」

さつきの満面の笑顔に、うなずく可憐。

「そうね。それは間違いないと思うわ」

「美味しい料理が、より一層美味しく感じられますね」

「あ、あふぁふぃもほうおもひまうふ」

「無理しなくて大丈夫よ」

もうすでに口がいっぱいになっているまもりに、笑う可憐。

「いつも一緒。そんなお友達ができるだけで日々は、食べる物の味まで変わって感じるのですね」

つばめも、今までにない経験にうれしそうに口端を緩める。

「こうして、何かのイベントで大事な役割を務めることなんて一度もありませんでしたが、とても楽しかったです」

「は、はひっ。私も初めてでしたけど……すごく良かったです」

モンスター・ワールドグランプリが終わった瞬間の達成感を思い出して、大きくうなずくまもり。

「本当だねぇ。大変な事のはずなのに、皆と一緒なら絶対に楽しくなるってワクワクしちゃってたもん」

さつきも学校行事では必死に空き時間を作って、村を守るクエストを受けていた記憶しかない。

そして可憐も、孤高のキャラを演じながらできる仕事を上手に割り振られたことで、無事に職務を全う。

華麗に仕事こなした自分に得意げになっていたことを思い出して、恥ずかしくなる。

「四人一緒だったら、またやっても……いえ、やらせてもらいたいくらいね」

それが新たな思い出になるのならと、可憐がつぶやく。

「本当ですか!?」

するとそこに駆け込んできたのは、明日のチェックアウトについて話をしに来た運営。

「皆さんに来ていただけると、参加者の方たちも楽しそうにしてくれるので、すごくやりがいがあるんです。私たちも皆さんの出会いやそこからの旅路を見る度に、やっていて良かったなと思います!」

そんな『場』を作れたことを、うれしそうに語る運営は、勢いのままに続ける。

「そういうことでしたら、ぜひまた! 他のチームも喜んで企画を――」

「邪炎龍のことなんだけど」

「お疲れさまでした!」

恐るべき速度で、言質だけ取って引き返す運営。

その姿に、笑う四人。

この夜さつきたちの部屋からは、いつまでも楽しそうな笑い声が聞こえていた。