作品タイトル不明
1219.対決
飛行艇の数で勝る紅の翼は、いまだ19機の飛行艇を残している。
対してウィンディアは7機。
数では圧倒しているが、遠距離から一方的な高火力攻撃が可能なセフィロト丸。
このままでは、押し敗ける。
そう踏んだナギとディアナは、このままではマズいと攻勢に出る。
船を進めながら、攻撃を放つ。
「【降雷】!」
「【スピリット・イーグル】!」
中遠距離スキルで、ウィンディアの飛行艇を次々に攻撃してゲージを減らす。
「ディアナ! 操舵を交代だ!」
「オッケー!」
そしてナギは飛行艇の運転を、ディアナに託すと――。
「いくぜ! 【グレートジャンプ】!」
距離高さ共にかなりの距離を自在に飛ぶ、脅威の跳躍スキルで高く舞う。そして。
「さあ、行くぞォォォォォォ――――ッ!! 【急速落下】ァ!!」
空中から狙いの場所に急降下するスキルで一気に、ウィンディアの飛行艇に接近。
「【サザンクロス】!」
大きく振り上げた槍を、全力で飛行艇の甲板に叩きつける。
すると十字刃の中心に付けられた宝石がまばゆく輝き、光十字を生み出した直後、盛大な爆発を巻き起こした。
「うわあああああ――――っ!!」
飛行艇のクルーたちが転がり落ち、パラシュートを開く。
すでに【降雷】などでゲージを減らしていた船は、煙を吹きながら高度を下げていく。
これで一機、リタイアだ。
「まだまだあっ! 【グレートジャンプ】!」
ナギは再び空へ。
突風を巻き起こして跳び上がると、狙いをつけて【急速落下】を発動。
「【サザンクロス】!」
次の飛行艇に、槍を叩き込む。
「そうはさせませーんっ!」
そこに、慌てて飛び込んでくるのはメイ。
【ラビットジャンプ】と【ターザンロープ】による連続移動で、こちらは船から船への八艘飛びで接近。
避ければもちろん、飛行艇が高いダメージを受けることになる。
メイはそのままシンプルな防御で、【サザンクロス】の爆発を身代わりになって受ける。
「うわわわわ――っ!」
巻き起こった暴風に吹き飛ばされ、甲板を転がったメイは、急いで立ち上がる。
「異世界の王を破った大自然の王者! 行くぜっ! 【クイックステップ】!」
ナギはくわえたスティック菓子をピンと立て、距離を詰めてくる。
放つのは、『十字刃』による突きを二連発。
「よっ、はっ!」
これをメイがかわしたところで、ナギは大きく一回転しながらの払いを仕掛けた。
これも問題なく、しゃがんで避けたところで、グッと沈み込むように身体を下げる。
「【回転跳躍Ⅱ】!」
伸身の宙返りをしながら、一部スキルによる攻撃も可能になる優秀な跳躍スキルでメイの頭上へ。
「【草薙】!」
地上で使用すると大きな払いになるスキルを、空中で使うことで縦の回転攻撃になる。
しかしこの攻撃も、メイは短いバックステップでかわしてみせた。
「【避雷針】!」
ナギは手を緩めない。
着地と同時に、雷を落として武器に宿らせるスキルを使用。
「【兜割】だああああ――っ!!」
激しい雷光をたたえた十字槍が、振り下ろされる。
その派手さにはメイも、「おおっ!?」と驚嘆――――しているにも、かかわらず。
「【装備変更】っ! とっつげきーっ!」
身体は自然と反応し、【鹿角】によるパリィを発動。
ナギの一撃を、寸分の狂いもなく弾き返し――。
「うおおおおっ!?」
「うわわわわっ!?」
ナギはパリィによる硬直、メイは電撃による硬直を受けて、仲良くビリビリする。
「マジかよ……! トップでも普通に喰らう連携だぞ……ッ!」
実際にぶつかることで、あらためて知るメイの反応の良さ。
「はあっ!」
互いに硬直が切れた直後、先手を打ったのはナギ。
速い振り払いからの返しで、メイが下がったのを確認。
「そんならこれでどうだっ! 【グレートジャンプ】!」
真っ直ぐ跳び上がり、すぐさま【急速落下】でメイを狙う。
そしてその距離が、射程距離まで来たところで。
「【避雷針】【草薙】!」
【サザンクロス】ではなく、雷光を乗せた払いの一撃。
「わああああーっ!?」
飛行艇を守るため、メイはあえて防御で受け止めて転がる。
「このままいくぜぇ!」
転倒したメイを追い、ナギはすぐさま甲板を駆けていく。
そしてそのまま、十字槍を振り下ろす。
「はいっ!」
「なっ!?」
しかしメイは、これを『見ず』にうつ伏せ状態から横に一回転して回避。
気合が入ったことでした強い踏み込みが、鳴らした足音。
それで攻撃のタイミングを計ったメイは、倒れている相手には基本振り降ろししかないと予想。
そのまま後転して立ち上がり、反撃体勢に入る。
【世界樹の剣】の振り降ろしを斜め後方へのステップでかわすと、今度は踏み込んでの払い。
これを早めのバックステップでかわしたナギとの間に、わずかに生まれた距離。
「【バンビステップ】【装備変更】!」
メイはやや長めのステップ一つで距離を詰めて、その手に【肉球グローブ】を装備。
すぐさま速い拳打を叩き込みにいく。
「【キャットパンチ】!」
「くうっ!」
これをナギは必死の防御。
メイの連打を、そのまま受けることを決めた。しかし。
「【カンガルーキック】!」
「っ!!」
これまで『この流れ』で崩されたプレイヤーを何度も見たナギは、慌ててしゃがみ込んで回避。
すれ違う二人。
「【アクロバット】!」
着地と同時に振り返ったメイは、すぐさま回転跳躍でナギの頭上へ。
「【クイックステップ】!」
一方のナギは振り返らず、そのまま前方へ走ることで、『空中攻撃』を受ける前に距離を取る。
「動画で見て、知ってても対応しきれないってマジかよ!」
そして悲鳴じみた声を上げながら、振り返った瞬間。
「【裸足の女神】!」
「っ!?」
恐ろしい速度での接近。
目前に一瞬で詰めて来たメイに、驚きでのけ反るナギ。
「フルスイング!」
「うっ、おおおおっ!?」
無理やり、後方へ跳び退く。
すると見たことのない豪快なエフェクトの【フルスイング】が、鼻先を通り過ぎた。
転がり、大慌てでヒザを突き槍を握り直す。
狙いは【草薙】によるカウンター。
ナギが槍を繰り出そうとしたその瞬間、踏み込んできていたメイは――――突然の急停止。
「ッ!?」
意味が分からず困惑するナギのもとに、冗談のようにふんわり投げられたのは、一粒の【アイヴィーシード】
「やっべえ! 【グレートジャンプ】!」
直後、一気に伸びたツタが甲板を緑に彩る。
あのまま残っていたら、間違いなく絡めとられていただろう。
額を拭いながら、後方の飛行艇に着地。
しかし安堵の息をついた時、メイはすでに甲板の縁で剣を掲げていた。
ナギの着地した船は、紅の翼のもの。
メイが攻撃の手を緩める必要はない。
「いきますっ!」 【ソードバッシュ】!」
「ッ!!」
駆ける衝撃波は容赦なく突き進み、紅の翼の飛行艇を飲み込んだ。
「グ、【グレートジャンプ】!」
「「「うわああああああ――――っ!!」」」
隣あっていた機体も余波をもろに受け、側面の木材が剥がれ粉々に粉砕。
吹き飛んだ2機がそろって、煙を上げて落ちていく。
「一撃2機……で、済んで良かったなってか?」
大慌てで使用した【グレートジャンプ】が功を奏し、高所からその光景を見て苦笑いする。
さらに付近の飛行艇も風に大きく揺られているのを見て、集まってたら5機でも6機でも同時に消えると確信。
「さすが最強と呼ばれる野生児……人間の想像を超えてやがんなぁ」
「野生児ではございませーんっ!」
「今のつぶやきが聞こえてる時点で、想像を超えてるだろっ!」
「……ちょっと、よく聞こえません……」
「もう遅えよっ!」
がんばってもすごく白々しいメイの聞こえないフリに、思わず叫ぶナギ。
「【スピリット・イーグル】!」
「わはーっと!?」
そしてそんな状況を目の当たりにしたディアナが、船を近づけ援護に入る。
突然真上から落ちてくる大鷲の霊が、炸裂。
メイはこれを上方に何かが光った時点で察知して、横っ飛びで回避した。
「それ避ける反応の良さも、もう野生児だからとしか思えないんスけど?」
「ううっ! 実は右肩にダメージを受けていましたっ!」
「そんならもう一回!」
さらにメイを崩すため、ディアナが続けざまにシャーマンのスキルを発動しようとしたところで――。
「っ!?」
迫る炎弾が見えて、慌てて甲板を転がる。
振り返るとそこには、杖を構えた魔導士の姿。
「そうはいかないわ」
こちらも【浮遊】で飛行艇を移りつつ、少しずつ距離を詰めていたレンが援護に入った。