軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1198.魔導甲冑Ⅲ

「ルアリアの兵装を前に、これだけの反抗をみせるとはね。本当に君たちは……大したものだよ」

魔導甲冑を駆るグリンデルの、残りHPは4割強ほど。

あふれ出る魔力の輝きを強め、真面目な声色で告げる。

「冒険者。世界をめぐり戦い続ける者の力は本物だったようだ……でも、結果は変わらない。地上の民は全て、月の光の前にひざまずくんだ」

そう言って胸元で拳を握ると、魔力の粒子が一度飛沫をあげた。

「【残存粒子】」

「っ!?」

高速ホバーによる移動。

グリンデルが弧を描きながらの低空飛行を始めれば、魔導甲冑が『ブレ』出し、わずかに遅れて二つの残像がついていく。

そして放つ【エーテルライフル】に、異変。

「【天雲の盾】!」

まもりはすぐさま盾による防御を成功させるが、HPはわずかに減少。

「ざ、残像の放った攻撃にも、本体同様の火力と判定がありそうです……っ!」

恐ろしい事態に、思わず息を飲む。

グリンデルはそのまま接近し、【エーテルブレイド】による攻撃を連打する。

「【クイックガード】【天雲の盾】盾盾っ! 盾盾盾っ!」

「【月の輪】」

これを必死に防御していると、突然の高速移動。

「【天雲の盾】! きゃああああ――っ!!」

そのまま【エーテルブレイド】による突きでくるかと思いきや、放ったのは意外にも超高速の【タックル】

残りHPが5割を切っているまもりが転がったところで、メイとツバメが慌てて接近するが――。

「【エーテル・ロングブレイド】【満月斬り】」

「「っ!?」」

ここで大きく一回転しての攻撃は、もちろん遅れる残像の魔力剣にも判定あり。

三本の長いムチのような斬撃で、二人に防御を強いた後、横移動から放つのは【ハーモニカ】だ。

「動けません……っ!」

二本の『鞘』を使った三体同時攻撃で、入り乱れる魔力光線に隙間なし。

メイとツバメは無理をせず、防御の継続を選択。

これでツバメの残りHPは、4割ほどまで減少。

するとグリンデルは再び、【エーテルライフル】による移動連射攻撃を開始。

移動する度に生まれる残像が放つ魔力光線は、反撃の隙を与えない。

グリンデルはそのまま、渦を巻くような軌道で飛行して接近。

「【ハイ・エーテルカノン】」

「「っ!?」」

三体分の魔力砲が、混ざり合い炸裂する。

「わああああ――っ!」

「ああっ!」

防御には成功したものの、メイとツバメは吹き飛ばされる形となった。

メイもHPが5割台となり、さらに転がった方向は不運にも、レンやまもりの前。

グリンデルは、ここで追撃を狙う。

「【月光の翼】」

【残存粒子】状態のまま、メイたちを打倒する勢いで迫りくる。

「お、おい、これ大丈夫か!?」

強烈な戦闘能力を見せ始めた魔導甲冑を前に、思わず心配の声が出る中、一歩を踏み出したのはメイ。

先頭を高速で飛来するグリンデルの広げた魔力の翼に、わずかに遅れて残像の生み出す翼。

計六枚の翼が、四人をまとめて片付けようと接近する。

おとずれる危機。

「おまかせくださいっ!」

しかしメイにとっては、二度目のスキルだ。

【月光の翼】は直進、停止、回転放出の二段階攻撃。

このままでは最悪計六回の防御が必要になり、その火力に転倒を奪われるだろう。だが。

「……【ゴリラアーム】」

直進時には、【残存粒子】による残像は後方に生まれる。

飛んでくる時点で先頭を捕まえてしまえば、恐れる必要はない。

「【ターザンロープ】!」

土壇場で投じたロープは、見事にグリンデルの首へ。

敵を捕らえたメイは、そのまま全力で回転を開始する。

「せえええのっ! それええええええ――っ!」

敵の飛行の勢いを利用して、横回転から縦回転へ。

グリンデルを、勢いのまま地面に叩きつけた。

「ぐああああああ――――っ!!」

「さすがメイさん、お見事ですっ! 【加速】【リブースト】【跳躍】!」

聞こえた悲鳴、ツバメは一気に距離を詰めて跳躍。

「【空襲】!」

空中から迫るツバメ。

これに対してグリンデルは、ギリギリで防御を間に合わせた。

「詰め切れないか……っ!」

すっかりのめり込んでいる観戦者が、悔しそうに叫ぶ。

「【隠し腕】!」

しかしそんなツバメの横から伸びた腕が、グリンデルのわき腹を刺突。

攻勢は継続する。

「ぐっ」

グリンデルはうめき声と共に、わずかに後退。

ツバメはここで、武器を【村雨】に変更。

振り降ろし、振り上げ、払いへと続けて、生まれた距離をスキル攻撃で追いかける。

「【三日月】!」

大きな踏み出しと共に放つ、半月を描く振り降ろし。

これを喰らったグリンデルは、さらに二歩ほど後退。

「踏み込み過ぎじゃない……?」

思わずこぼすレン。

「【旋空】!」

ツバメはここで攻め切るつもりなのかというほどに、攻撃を連続。

「【稲妻】!」

だが最後の斬り抜けを発動した時、すでに敵の体勢は戻っていた。

「【半月斬り】!」

「ツバメっ!!」

ついにカウンターを喰らって、ツバメが大きく吹き飛ぶ。

そしてグリンデルは、判断を間違えたプレイヤーを許さない。

「【月光の翼】」

再度の飛行攻撃で、一気にツバメを落としにかかる。

「【超高速魔法】【ファイアボルト】!」

残りが2割を切るところまできた、ツバメのHP。

レンはすぐさま援護の一撃を放つが、大きな魔力の翼に弾かれ霧散。

もはや、追撃を受けることは確定的だ。

誰もが、そう思ったその瞬間だった。

「【受け身】」

ツバメは綺麗なローリングで、転倒を阻止して着地。

「【反転】」

最速で振り返りつつ、現状を確認。

魔力の翼を広げて迫るグリンデルに、刀を抜き放つ。

「――――【斬鉄剣】」

次の瞬間。

【月光の翼】が斬られて、光の羽が大量に舞い散った。

翼ごと斬られたグリンデルは斬り飛ばされて、そのまま地面を転がっていく。

「お、おお……っ」

「すげえ……」

敵の反撃を受け入れる代わりに、それ以上のダメージを叩き込むという戦法に、「これぞアサシンちゃん」と痺れる掲示板組。

一方どうかしているカウンターの入れ方に、観戦者たちは身震いする。

「本当にツバメは、肉を切らせてみたいなのを本番で入れてくるんだから」

「ツバメちゃん、カッコいいーッ!」

「お、お見事ですっ!」

一方メイたちは、笑い合う。

「……本当に、見事だよ」

やがて、聞こえてきた声。

ゆっくりと立ち上がったグリンデルは、すでに残りHP3割ほど。

「この僕にこれだけのダメージを与えるなんて。だから君たちは特別だ。ルアリア最高の技術を、特別に見せてあげようじゃないか!」

これまでとは違う、力の入った声。

グリンデルがその手を払うと、足元の魔法陣が煌々と白い光を灯す。

額の魔力宝石が点滅を始め、夜空にかかった雲が晴れていく。

「嫌な予感がしますね」

「は、はひっ」

予想のつかない変化に、注意深く状況を見守るメイたち。

「月が、出てきた」

つぶやくメイ。

雲が消え、見えたのは煌々と輝く満月。

「古の偉大なる民よ。僕に……力を」

すると夜空に、キラリと見えた白の輝き。

「【月光砲】」

それは月から放たれた輝きが、天高く浮かぶ浮島を経由することで完成する、純白の魔力砲。

「雲が退いたのは、このためっ!?」

「皆さん、私の後ろにッ!!」

迫る魔力光の範囲は恐ろしいほどに広く、まもりは盾を掲げて叫ぶ。

「【不動】【コンティニューガード】【天雲の盾】っ!」

慌てて全員が、まもりの盾の下に駆け込む。

直後、視界を全て焼き尽くすほどの白光が当たりを包み込んだ。

吹き荒れる風に、港側で見ていた観客たちがあおられ転ぶ。

「スキル付きの盾防御でも、まもりが15%持っていかれるダメージ。マズいわね」

「これがルアリアの、月の民の力だ! ――――さあ、君たちはあと何回耐えられるかな!?」

「いきましょう! 複数回撃ってくるのなら、それは制限時間と同義だわ!」

グリンデルの頭部に、再び始まる点滅。

レンの言葉に、全員がうなずく。

「さあ行くよォォォォ! 【残存粒子】【月の輪】!」

「「っ!?」」

駆け出したメイとツバメの前に、超高速で接近してくるグリンデル。

「【エーテルライフル】」

魔力光線を連続で射出しながら、メイたちのもとへ。

先んじたメイに、【エーテルブレイド】による斬り下ろしを仕掛ける。

すると遅れてついてきた残像が一歩前に出て振り下ろし、さらに二体目の残像が前に出てきて振り降ろす。

これをメイは、バックステップでかわしていく。

「【加速】【跳躍】【連続投擲】!」

ここで弧を描く形で駆けつけたツバメが、投じる【雷ブレード】

グリンデルはホバー移動でかわしながら、反撃に入る。

「【エーテル・ロングブレイド】【満月斬り】」

長い距離を払う三本のムチのような一撃は、援護に入ろうとしたレンまでをも牽制。

「【ラビットジャンプ】!」

「【スライディング】!」

メイが高いジャンプでかわす中。

低い位置を滑ることでかわしたツバメは、そのまま反撃へ。

「【電光石火】!」

スキル選びが功を奏し、攻撃を当てることに成功。

「【裸足の女神】!」

メイは着地と同時に超加速し、のけ反り体勢にあるグリンデルの目前へ。

「【フルスイング】!」

そのまま全力で、剣を振り下ろした。

「防御ですかっ!?」

見事な流れで放つメイの一撃を、グリンデルはあえて防御で受けて地を転がる。

その勢いはすさまじく、離れる距離。

ヒザを突いたグリンデルは、笑いを含んだ声で問いかける。

「さあ、ひれ伏す準備はいいか? 【月光砲】」

「クールタイムが、短い……っ!」

慌てて下がる三人。

「もう一度いきますっ! 【不動】【コンティニューガード】【天雲の盾】っ!」

付近を容赦なく包む、巨大な白光。

再び一人、魔力砲を受け止めたまもりのHPは2割を大きく切った。

次は、危険だ。

「【ハーモニカ】」

頭部の魔法石を、今度は強烈に点滅させるグリンデル。

先行して放たれた、乱れ飛ぶ魔力光に出足が遅れる。

「【RAビット】」

「マジかよ……」

この戦況を見守っていた観戦者たちが、天を仰ぐ。

ここにきて、やっかいが過ぎるスキルの使用。

鞘からパージした16個の結晶体が、一斉にこちらに飛んでくる。

「【四足歩行】っ」

メイは迷わず、四足モードで先行。

【RAビット】がメイの動きを抑えるように魔力光線を連射するが、そうなればどうしてもツバメへの対応がおろそかになる。

「【加速】【リブースト】!」

ツバメは最高速で、結晶体を置き去りにして接近。

【RAビット】対策の一つはこの、超加速。

ツバメは一対一の状況を作り出し、【エーテルライフル】による連射を【跳躍】で飛び越える。

「【回天】!」

そのまま空中回転斬りで兜を叩いて着地、【反転】と同時に通常攻撃を二発。

「【稲妻】!」

「高速【誘導弾】【フレアアロー】!」

一連の流れを決めたところで、レンの放った炎の矢が光線のように迫る。

「【エーテルシールド】」

「こいつは……っ!」

これまで使わなかった魔力の盾を突然展開し、炎の矢による連携を停止。

ホバーで下がると、額部の点滅が完了。

「君たちは良い実験台だったよ。だが終わりだ、名も無き冒険者たち――――【月光双砲】!」

「「「「っ!?」」」」

最終奥義は、夜空に見える二本の光線。

「……ここは、わたしがいきますっ!」

「頼むわ! まもりにもお願いしていい?」

「は、はひっ」

「ここで、必ず決めましょう!」

四人は、うなずき合う。

そしてグリンデルの呼んだ二つの魔力の輝きは統合し、一つの圧倒的な輝きになる。

前に出たのはメイ。

「…………【蓄食】【ドラミング】」

【耐久】上げのキウイを一気にかじった後、胸元を豪快に六度ほど叩いて走り出す。

その効果は防御力を高め、範囲魔法などの中を進むことが可能になるというもの。

超強力な【月光双砲】の光線の中を、メイは逆流していく。

「これが最後の防御ですっ! 【不動】【コンティニューガード】【天雲の盾】っ!」

魔力光はレンとツバメを守るまもりも飲み込み、そのHPをドンドン削っていく。

誰もが、息を飲む展開。

全力で進むメイのHPも、早い減少を見せる。

月光砲の『中』はとにかくまぶしく、方向すらあやふやだ。

「いけ! 行けメイちゃんっ!」

「メイちゃんならいけますよ!!」

思わず上がる声。

メイは光の中を突き進む。

ただ、とにかく真っ直ぐに。

すると、途端に開ける視界。

どうやら【月光双砲】の範囲を、抜け出したようだ。

「【裸足の女神】っ!」

残り少ないHPで急加速して、グリンデルの前へ。

慌ててホバーで下がろうとする前に、ギリギリのところで最速の攻撃である拳を叩き込んだ。

これによって頭部魔法石の輝きが消え、魔力光の放出が強制停止。

まもりのHPが、残り数ドットのところで減少を止めた。

「「「耐え切ったああああああ――――っ!!」」」」

あがる歓声の中、まもりはやり切ったとばかりにヒザを突く。

そんななまもりの肩を、二人が優しく叩く。

それは、合図。

「――――いきますっ」

逃がさない。

メイは、さらに前進。

「【装備変更】っ!」

【猫耳】から【狐耳】に変えて、一気にグリンデルの前へ。

慌てて払う【エーテルブレイド】を軽々かわして、懐に潜り込んだ。

その手には素手による攻撃の威力を上げる【肉球グローブ】

「【キャットパンチ】! パンチパンチパンチパンチパンチパンチ!」

さらに【狐火】で火力を上げた猫パンチを、容赦なく乱打する。

「パンチパンチパンチパンチパンチパンチからの――――【カンガルーキック】っ!」

そして距離が離れたところで、低い跳躍と共に放つ前蹴りで、とっさの防御を打ち崩す。

飛び散る青い火の粉の中、続くのはレン。

手にした【魔神の黒杖】で放つのは、怒涛の連続上級魔法だ。

「【誘導弾】【滅多打ち】! 【フレアストライク】【フレアストライク】【フレアストライク】【フレアストライク】【フレアストライク】――っ!!」

メイの頭上を越えて落ちるような軌道で、怒涛の炎砲弾がグリンデルを打ちつける。

次々に上がる豪炎に、魔力甲冑が燃え上がった。

直後、片ヒザ立ちの状態で体を起こしたグリンデルが見た物は、炎を飛び越えて来たツバメの姿。

【エーテル・ロングブレイド】で撃ち落とそうと、顔を上げるが――。

「ッ!?」

「【狐火虚像】【分身】」

炎の中から飛び出してきたツバメの数は200体。

斬り裂いた『分身体』が、燃え上がって引火。

次々に爆発が巻き起こり、グリンデルを飲み込んだ。

「最後、お願いしますっ」

そして、ツバメとレンが振り返れば――。

「了解ですっ!」

メイはすでに、右手を突き上げた状態で待っていた。

「――――それでは、よろしくお願いいたしますっ!」

狐耳が生み出す【幻影】で、大量のチップを抱えた成金クマが、魔法陣から二体同時に登場。

そのまま走り出して、豪快に跳躍。

最後まで悩みに悩んだ後、泣く泣く夜空に大量のチップをバラまきながら、【グレート・ベアクロー】を叩き込む。

そして子グマディーラーがチップを回収した直後、【幻影】のクマがさらに爪を叩き込んで炎上。

燃え上がった炎に、剣を向けるのはメイ。

「これでおしまいっ! 最後は必殺の【ソードバッシュ】だああああああああ――――っ!!」

駆け抜ける衝撃波は炎と共に、グリンデルを吹き飛ばす。

魔導甲冑は港に泊まっていた船を突き破り、それでも止まらず砂煙をあげて街を転がり、跳ね上がった後に並ぶカジノ店のネオンに突っ込んで火花を上げて、ようやく止まった。

「まもりちゃーん! やったよ――――っ!!」

「はひっ!」

「「「うおおおおおおおお――――っ!!」」」

そう言ってメイがクマの肩に飛び乗って手を振ると、盛大な歓声がモナココに響き渡った。