軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1170.モナココの海は

「さて、計算君の狙いは上手くいったかな?」

掲示板組プレイヤーの一人が、騒がしくなったマーケットの方を見てつぶやく。

「どうやら、メイちゃんたちが一枚上手だったみたいだよ」

駆けてくるメイたち。

それは包囲網作戦が、失敗に終わったということだ。

「行くぞ! ここでメイちゃんたちを止める!」

「了解っ!」

騎士と戦士のチームが狙うのは、ここでの足止め。

そして追ってきた者たちと、挟み撃ちにしようというものだ。

ポータル前にいくつか張られた蜘蛛の巣のような魔法陣は、低レベルプレイヤーでもクエスト参加で結果を出せる【罠の宝珠】

踏めばその場に数秒強制停止させ、その隙に【捕縛の宝珠】が使えるというものだ。

「行くぞ! 『どっち』で来てもいいようにしっかり準備することが大事だ!」

最前の騎士が盾を構える。

最悪は、メイの一撃範囲攻撃を受けての即死。

ただしいきなり物理防御を見せてしまっては、ツバメの【雷ブレード】でまとめて感電。

結局【ソードバッシュ】で終わりというパターンがあるため、ギリギリまで様子見が必要。

初撃の防御を成功させた後、HPの高い戦士組が上手にツバメやレンに攻撃を入れて、時間を稼げれば最高という考えだ。

「とにかくポータル移動だけは阻止だ!」

「「「了解!」」」

「大きくなーれ!」

先頭のメイは手に【蒼樹の白剣】を持ち、大きく引いた。

「【フルスイング】!」

放つは長さ5メートルになった剣の、豪快な払い斬り。

「左方ッ!」

「【超硬化】【不退転】!」

メイの攻撃に対し、左端のプレイヤーたちが同時に防御態勢に入る。

「う、おおおおお――っ!!」

すさまじい勢いのメイの払いに対し、全員で物理防御上げスキルで対応。

大きく体勢を崩されたものの、どうにか立ち止まる。

「一撃で6割とかやめてくれよ――っ!?」

完全に決まった防御でも、二発喰らえば終わりという事実に笑い泣き状態の騎士。

「【連続投擲】!」

「前方! 雷来るぞ!」

ここに続くのはツバメ。

「【避雷防御】!」

「【対属性上昇】!」

こちらも即座に、雷に対応。

前衛コンビの攻撃を、どうにか受け切ることに成功した。

歓喜に拳を握る騎士たち。しかし。

「「「ッ!?」」」

突然かかった影に、思わず視線を上げる。

「【コンセントレイト】【氷塊落とし】」

「「「しまった!」」」

掲示板組の動きがあったことで、『こちらの手の内を知った上』での対応をしてくると踏んでいた四人。

メイとツバメの攻撃が防がれた際に、『防がれた攻撃』自体が視線を奪うオトリになるよう画策。

「「「うわああああああ――――っ!!」」」

巨大な氷塊の落下に潰されて、陣形は崩壊した。

「このまま行きましょう!」

この隙を逃さず、ポータルへと走る四人。

そこにポータルの背後から出て来たのは、一人の初級者剣士。

「伏兵……っ!?」

それは狙ったものではなく、本当にこの場に偶然遅れてやってきたプレイヤー。

だが誰もその存在を知らず、狙っていなかったからこそ、最高の形で四人の虚を突いた。

「えっと、【捕縛の宝珠】!」

「なっ!?」

「うそ……っ!?」

足元の『罠』を避けての移動中だったことが、奇跡を起こす。

宝珠から伸びた『捕縛の魔力縄』が、ツバメの腕に当たった。

そして宝珠が、再び輝きを灯そうとした瞬間。

「【シールドバッシュ】!」

駆け込んできていたまもりが、衝撃波を展開。

「うっわああああ――――っ!?」

剣士を吹き飛ばしたところで、広がろうとしていた『捕獲の輝き』が消えた。

どうやら『捕獲判定』が出る直前に、助け出すことに成功したようだ。

「いきましょう!」

こうして四人は、後続に追いつかれることなく『罠』を飛び越えポータルへ。

そのまま、移動に成功。

「はあーっ! ドキドキしたーっ!」

「どうにか逃げ切ったわね!」

「はいっ! とても緊張感がありましたっ」

「か、囲まれた時は、心臓が張り裂けるかと思いました……っ」

思わず四人、抱き合って包囲網の突破を喜ぶ。

「最後は背筋が凍ったわ! まもり、やるじゃない!」

「まもりちゃん、ないす―っ!」

「本当に血の気が引きました。無事でいられたのは、まもりさんのおかげです」

「いえいえっ! いつも助けてもらってるので……っ!」

ハイタッチのまもりとツバメ。

日常ではそんなことをしない二人も、四人の中でなら自然とできる。

「さて。これで無事【真実の宝珠】は手に入れた。あとは無実の証明だけど……」

レンはたどり着いた小さな海の街の、海岸へ。

【発煙筒】を使うと、やがてメイたちの船がやってきた。

四人は乗り込み、一度海上へ出る。

「おー、みんな無事に帰ってこれたんだな。どうだった?」

「無実を証明するためのアイテムは手に入れたわ。次はモナココの現地で、これを使う形になると思うんだけど……」

そう言うと、整備士は「なるほど」とうなずき提案する。

「ちょっとモナココの近海を回ってみるかい? カジノに向かうのなら付近の状態を見ておいた方がいいだろ?」

「確かにそうですね」

目的は、カジノで【真実の宝珠】を使って無実を証明すること。

そう考えると、あのワインレッド帽子の男がそれを阻止しようとしてきてもおかしくない。

さらに、カジノがどこまでの厳戒態勢を取っているのかを、知る必要がありそうだ。

「それじゃあ行きましょうか」

こうして四人は再び、モナココに向けて出航した。

「やっぱ……厳重だな」

最初にそう言ったのは、整備士だった。

モナココの港には、大砲を積んだ大型の戦艦が大量に浮かんでいるのが見える。

メイたちの船に取り付き、乗り込むために用意されている小型船は、さらに多く用意されているだろう。

まさに厳重な警戒態勢。

少し近づいてみると、戦艦はすぐにこちらに大砲の面を向けてきた。

「ほ、捕捉も早いですね」

「どうやら他に、モナココに入り込む方法が必要になるみたい」

ここは無理をせず、モナココを後にするレン。

ちょっとだけ【魔砲術】と【アメンボステップ】で、敵船を沈めながら揚陸してみたい気持ちもあるが、無実を証明する側が火力で突き進むのは、さすがに気が引ける。

「何かいい方法はある?」

たずねると、整備士は笑顔を向けた。

「こういう時は、元海賊に聞くのが一番だよ」