軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

地下十二階

「無事だったのはいいんすけど、ここはどこなんすかね?」

「結構、落ちちゃいましたからね」

落ち着いてくると現状が気になってしまう。地下六階から落ちてしまった俺たちは現在、どこにいるのだろうか。

【デミオ鉱山地下十二階】

階層を知りたいと思いつつ鑑定を発動すると、視界に表示することができた。

「ち、地下十二階!?」

予想以上の数字が表示されて、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。

「ええ!? 嘘っすよね?」

「いえ、鑑定した結果なので真実かと……」

「……あたしたちそんな所まで来ちゃったっすか」

まさか地下六階と十二階が繋がっているとはな。あれほど落下していたんだ。冷静に考えれば、それくらいの階層まで落ちていても不思議じゃないか。

「にしても、かなり広い洞窟になったっすね」

ロスカが周囲を見渡しながら言う。

俺たちが今いるフロアは今までの階層と比べようもないくらいに広い。

前方にある道の天井は軽く五十メートルくらいの高さがある。横幅も同様だ。

六階同様に光石や光水晶などの光のお陰でフロアは明るめではあるが、天井まではライトボールで照らしてあげないと見えない感じだ。

「デミオ鉱山は地下に行くにつれて広くなっていくみたいですね」

「これまでの地形を見る限り、そうっぽいっす」

もはや完全に洞窟で人の手が入っているような場所は一切ない。

まずは周囲を確かめるべく魔石調査を行う。

自らの魔力をフロアに広げていくが、感知圏内に魔物はいないようだ。

というか、フロアが広いせいで壁の反射が少ないな。

「周囲に魔物はいないようですね」

「そう、みたいっすね。特に気配も匂いもしないっす」

ロスカも耳を澄まし、スンスンと周りの匂いを嗅いで安心したように呟いた。

「強いて言うならば、ガントルの死骸だけでしょうか」

「……あたしたちをここまで落としてくれた元凶っすね」

崩れた岩みたいな姿になったガントルを忌々し気に見つめるロスカ。

こいつがいなかったらあんな怖い思いをせずに済んだし、十二階とかいう未知の領域にくることもなかったからな。

【ガントル鉱石】

ガントルの食べた鉱石類が混ざり合ってできた鉱石。その地形にある鉱石や食べてきたものによって鉱石が変化する。

時に、思いもよらない新種の鉱石ができることも。

鑑定してみると赤色でガントル鉱石と表示された。

これにどのような鉱石が混ざり合ってできたかはわからないが、赤色になっているところを見るとそれなりの価値があるらしい。

見た目は黒と金が入り混じっているので、バカライトと黒鉱石でも食べていたんだろうか?

「ロスカさん、装飾に使います?」

「絶対に使わないっす! しかも、これだけ落ちる原因になった素材なんて縁起が悪くて使いたくないっす!」

確かに品評会に出すというのに、大落下の原因となった魔物の素材を使うのは縁起が悪いな。

俺は思わず苦笑いしながらマジックバッグに収納した。

「ひとまず、地上に戻れる道を探しましょうか」

「え? あっ、そ、そうっすね!」

「ひょっとして来たこともない階層に来たから、装飾に使えるいい素材があるとか思ってましたね?」

「ぎくっ! ちょ、ちょっと思っただけっすよ?」

ロスカの反応が怪しくて、問い詰めてみるとやはりそんなことを考えていたようだ。

「まあ、俺も思いましたけどね。ここなら見た事のない素材があるんじゃないかって」

これだけガラリと地形が変わっているのだ。そこに住んでいる魔物や植生、鉱石なんかもガラリと変わっているだろう。きっと、俺も見たことのない素材もたくさんあるに違いない。

「そうっすよね! この辺りならあたしの琴線に触れる素材がある気がするんっすよね!」

「でも、デミオ鉱山って下に行くにつれて魔物が強くなる傾向がありますし、帰る状況すら掴めない中での捜索は危険過ぎるので引き返しますよ」

さすがにこんなアクシデントの中、未知の領域である十二階で素材を探す気にはなれない。危険過ぎる。

「……はいっす」

それはロスカもわかっていたのだろう、酷く残念そうにうなだれる。

その気持ちは俺も同じだ。順当に来て、ここにたどり着いていたなら俺は喜んで素材を探し回っていただろう。

「ですけど、帰り道の中で見つけた素材を回収するくらいならいいと思います」

「さっすがシュウさんっす! 親方と違って、頭が柔らかいっすね!」

「……まあ、自分も採取したいですから」

勿論、今までのように採掘して探すようなことは無理だが、露出しているものを採取するくらいは構わないだろう。

こんなところまで落ちてきてしまったのだ。それくらいしないと割に合わないし。

「後は水場を探したいところっすね。あまり水筒の中身もないっすし、六階にあったような綺麗な泉があるといいんすけど……」

人間が生存する上でまず必要なのは水だ。食料がなくても、水さえあればしばらく生きることができる。

六階にあった泉は多分飲める類のものであるが、帰り道を探しながら水場まで探すのは中々にハードルが高い。

もしかすると、鉱山内に水場はあそこにしかない可能性もある。

マジックバッグはあまり他人に言い触らしたくない代物であったが、現状を考えるとロスカに教えてあげて負担を減らすのが最善か。

仲良くしてくれているルミアにも教えていないので、ちょっと罪悪感があったが仕方がない。

「水や食料の心配なら必要ないですよ」

「えっ? それってどういう……」

「この鞄はマジックバッグなので、水や食料がたくさん入っているんですよ。多分、普通に過ごすだけなら二人で半年以上は保つと思います」

マジックバッグであることを証明するために、俺は鞄から水の入った樽やパン、りんごなどを取り出していく。

これらがあきらかにショルダーバッグに入りきらないことは明白だろう。

「シュ、シュウさん。そんなすごいものを持っていたんすか!? もしかして、貴族や王族っすか?」

「いや、ただの平民の冒険者ですよ」

クラウスにも似たような台詞を言われ、価値を教えて貰ったので今回は驚くことなく対処できた。

「ひとまず、水を補給しますか?」

「お願いするっす!」

こちらから提案してあげると、ロスカは水を飲んでから水筒を渡してきた。

どうやら水を節約していて喉が渇いていたらしい。受け取った水筒はすっかりと空になっていた。

樽の中から水を汲んで水筒を満タンにして渡す。

「ありがとうっす!」

「リンゴでも食べて少し休憩しましょうか」

周囲に魔物の反応はない。これからすぐに帰還できる保証もないために、今のうちに体力の回復に努めておくべきだ。

ロスカにリンゴを押し付けるように渡し、腰を下ろしてリンゴを齧る。

うん、マジックバッグのお陰で新鮮だな。瑞々しく、甘酸っぱい果汁が口の中に広がった。

しかし、隣にいるロスカは腰を下ろしているものの、リンゴを大事そうに抱えたままだ。

どうかしたのだろうかと思っていると、ロスカがポツリと呟いた。

「……シュウさん」

「どうしました?」

「あたしなんかのために大事なマジックバッグの事を教えてくれた上に、水や食料までくれて本当にありがとうっす」

この状況に陥ってまず不安になるのは水や食料だ。しかし、それは俺のマジックバッグによって解消された。

俺たちの心の負担は大きく解消されたと言っていいだろう。

明るく振る舞ってはいたが、いきなり十二階に落ちてロスカも不安だったのだろうな。

「どういたしまして。でも、大変なのはこれからですよ?」

「そうっすね! 帰り道だけじゃなくて、素材も探さないといけないっすから!」

未だに素材のことを諦める様子がないロスカに、採取好きの俺は笑ってしまうのだった。