軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

伝説のマイマイ

マジックバッグで食料を口にし、水を補給して休憩することしばらく。

俺とロスカは上の階へと上がるために行動を開始した。

このフロアは鉱道に比べて明るい上に道幅も広いので、視界良好で移動もしやすい。

しかし、それは敵である魔物にとっても同じことで、向こうもこちらを視認しやすくなるので油断はできない。

魔石調査で魔物を感知、構造を把握していきながらだだっ広い洞窟の中を進んでいく。

すると、前方の方で意外と近くにカタツムリのようなシルエットをした魔物が二体表示された。

確かあれはラビスが言っていたマイマイという魔物ではないだろうか。鉱山の中には鉱石を殻にするような個体がいると聞いた。

「前方にマイマイ系の魔物が二体います」

「回り道するっすか?」

「構造的に通らないといけないルートにいるみたいです」

調査で周辺の道を確かめてみたが、ここ以外は行き止まりか、結局は前方に合流する道になっている。

坑道であれば、入り組んでいるお陰でいくらでも迂回することができたのだが、道幅が広くて一本道が多いここではそうはいかないようだ。

「じゃあ、戦闘っすね」

「まずは気付かれないように接近して様子をみましょう」

ロスカがハンマーを構え、俺も魔法をいつでも発動できるように準備しながら、壁際に沿って近付いていく。

【シルバーマイマイ】

マイマイの亜種。銀を体内に取り込み、排せつしたものを殻として背負っている。排泄した際に銀以外の不純物は取り除かれているので純度はかなり高い。

個体数が少なく、出会えるのは稀少。

【ゴールデンマイマイ】

マイマイの亜種。金を体内に取り込み、排せつしたものを殻として背負っている。排泄した際に金以外の不純物は取り除かれているので純度はかなり高い。

個体数がかなり少なく、出会えるのはかなり稀少。目にすると商売運が上がると言われている。

岩陰から鑑定してみると、予想通りマイマイであったが、ちょっと違う。

銀色に光る殻と金色に輝く殻を背負っている。発光石の光を反射してとても綺麗だ。

「うわっ! すごいっすよ! ゴールデンマイマイとシルバーマイマイっす! 金塊と銀塊を背負う伝説のマイマイがいるって噂には聞いていたっすけど、本当に実在したんすね!」

「稀少なマイマイなんだな……」

背中に背負っている銀の殻と金の殻は橙色で表示されており、価値がかなり高いようだ。

二体ともかなり稀少で出会えることはあまりないのだとか。

ゴールデンマイマイに至っては、目にするだけで商売運が上がると言われるほどだ。

「シュウさん、あの素材を装飾に使いたいっす!」

「確かにあの色合いはドロガンさんの剣に似合いそうですね」

硬魔石を使用した黒っぽい色合いの大剣なので、マイマイの背負っている金や銀は装飾としてとても映えそうだ。

「では、素材を回収することにしますか」

「やったっす!」

戦闘を避けることはできないだろうし、装飾として使えるというのなら頂いてしまおう。

だが、マイマイを討伐して殻を奪うというのは結構気が引けるな。狩猟とかしたことがある人ならば慣れているのかもしれないが、ただの一般人からすれば少しキツイ。

【殻を運べない緊急事態になれば殻だけを置いていく。マイマイが怪我を負う、急いで逃げざるを得ない状況など】

なんとか殻だけ貰えないかと思いながら鑑定してみると、鑑定先生がアドバイスをくれた。

どうやらトカゲが尻尾を切るように、ピンチになったら殻を置いて逃げる習性があるようだ。

であれば、それに則って置いていってもらうことにしよう。

「では、俺が氷魔法で殻だけを凍り付かせるので、ロスカさんはハンマーを持って接近してください。倒そうとしなくても、それだけで殻を置いて逃げてくれるはずですから」

「本当っすか? とりあえず、殻だけは攻撃しないつもりで頑張るっす!」

肝心の素材を破壊されては堪らないので、可能であればマイマイにはあっさりと逃げてもらいところだ。

「それじゃあ、行きます」

「了解っす!」

俺とロスカは岩陰から飛び出す。

背中を向けているゴールデンマイマイとシルバーマイマイはこちらに気付いたようであるが、殻が重いのかその動きは鈍重だ。

「フリーズ!」

未だにこちらを向いているマイマイたちの殻に向かって、俺は氷魔法を発動。

地を這う氷がマイマイたちの殻と地面を接着させる。

「てやあああああああっ!」

そこにハンマーを持ったロスカが、気迫のこもった声を上げて接近。

ハンマーを振り上げており、今にも殻ごと叩き割りそうだ。

そんなロスカの気迫に危機を感じたのか、マイマイたちは即座に殻を下ろして逃げ出した。

よし、鑑定先生の言っていた通りだ。

殻を下ろしたマイマイは大きなナメクジみたいな見た目で、這って移動するのが少し早い程度。追いかければ容易に追いつくことができるが、戦意も危険も低い魔物を無理に相手にしなくてもいいだろう。

「シュウさんの言った通り、本当に殻だけを置いていってくれたっすね!」

「ロスカさんの気迫のお陰ですよ」

氷魔法で動きを止めることができても、危機感まで抱かせることは難しい。

あの殻に籠ってしまって手を出せなくなってしまうパターンもあり得たことだ。

こんなにも簡単にいったのはロスカの力があってこそだ。

「うわー、デカい上に重いっすね! 純度が高い証っす!」

早速ゴールデンマイマイを触って、持ち上げようとしてはしゃぐロスカ。

試しに俺も持ち上げてみようとしたが、かなり重くて無理だった。

金はかなり重いからな。自分の身長より遥かに大きな物だと当然だろうな。

「でも、これってよく考えるとマイマイのフンなんだよな」

こんなにも綺麗であるが、そう考えるとちょっと複雑だ。

念のために匂いを嗅いでみると無臭だった。

よかった。ちょっと近寄ったり、触るだけで臭かったりしたら悲しくなるからな。

とはいえ、だからといってロスカのように頬ずりをしたいとは思わないな。

「とりあえず、マジックバッグに収納しちゃいますね」

ロスカに離れるように言って、マイマイの金の殻と銀の殻を収納してしまう。

「おお、マジックバッグに入るところを初めて見たっす。あんなに大きくて重い物でも一瞬で収納できるなんて便利っすね!」

「マジックバッグがなければ、これを地上まで持ち帰るのは至難の業でしたね」

「シュウさんに感謝っす!」

もし、マジックバッグがなければロスカは諦めてくれたのだろうか。そんな仮定を想像して少しゾッとした。

ゴールデンマイマイとシルバーマイマイの殻を回収した俺たちは、上の階層に向かえる階段を探しながら、露出している鉱石や水晶を採取していく。

十二階は道が広いだけでなく、全体も広いみたいなので階段を見つけることはできていないが着実に構造を把握することができている。

俺の魔石調査とロスカの聴覚、嗅覚で魔物との戦闘も回避できているし、このままの調子で進めば階段を見つけることができそうだ。

そんな前向きな想いを抱いていると、広間のようなだだっ広い場所にたどり着いた。

その中央には透き通るような水晶や蒼水晶生えている岩があり、俺たちの目を一番に惹いた。

それは遠目に見ながらも透き通っていることがわかり、後ろの風景すら透過しているほどだ。前世で研磨し、加工されたガラス細工を見ているようだ。

「見てくださいシュウさん! あそこにある水晶が滅茶苦茶綺麗っすよ! あれも装飾に使いたいっす!」

ロスカが興奮しながら水晶めがけて走り出す。

鉱山にきて一番の反応具合だ。装飾の素材を集めるために、結果として十二階に落ちてきたのはよかったのかもしれないな。

にしても、あの水晶は本当に綺麗だな。なんという水晶なんだろう?

【ドボルザークの水晶】

ドボルザークの背中に生えた水晶。とても純度の高い水晶である。

試しに水晶を鑑定してみると、妙な表示が出てきた。

ドボルザークの背中に生えた水晶? ということは今露出している岩や水晶は何かの背中……?

「ロスカさん、離れてください!」

「えっ? うわっ!?」

嫌な予感がして制止の声を上げると水晶の生えた岩が揺らぎ、地面から魔物が出てきた。