軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

38 修行再開

キンケイルへと戻ってきた。

俺達はトビーの実家に腰を落ち着けたのも束の間、その翌日には探索を開始する事にした。

正直なところ神威事件以降、かなり体がなまっているからな。

早々に叩き直さないといけない。

俺達が探索に出かけると昼間一人きりになるシータは寂しそうにしていたが、ここは我慢してもらうしかない。

ただこのまま放っておくと何となくパターン的に「私も探索者になる」とか言いだしそうな気配が無きにしもあらずである。

俺はトビーと話し合って、シータに魔術学園への入学を積極的に勧める事にした。

彼女は呪いのせいで初等学校を中退しているため学力が中途半端な状態だ。

魔術学園の入学試験の筆記はそこまでの難易度じゃないらしいが、それでも入学に向けて学力の強化が必要になるだろう。

それに取り組めば暇ではなくなるだろうし、夜は一緒に魔法の勉強をするのを約束して寂しさへのケアも対策している。

そんな感じで抜かりなく探索に挑む訳だが、その前に一度現状について整理をしておこう。

【ステータス画面】

名前:サイトウ・リョウ

年齢:25

性別:男

職業:才能の器(54)

スキル:斥候(5)、片手武器(4)、理力魔法(5)、鑑定(5)、神聖魔法(8)、魂魄魔法(7)、看破(5)、体術(4)、並列思考(5)、射撃(3)、空間把握(3)、盾使い(0)(SP残0)

【ステータス画面】

名前:ズーグ・ガルトムート

年齢:58

性別:男

職業:戦士(24)

スキル:両手武器(7)、竜魔法(2)、槍使い(8)、片手武器(5)、投擲(2)(SP残0)

【ステータス画面】

名前:トビー・ステイン

年齢:24

性別:男

職業:戦士(16)

スキル:片手武器(4)、斥候(5)、盾使い(4)、剣使い(3)(SP残0)

まず俺についてだが、残っていたSPを使って盾使いのスキルを取得した。

これは盾を持って戦う事を想定してのものではなく、俺がまだ覚えられていない理力魔法が理由である。

王都での師匠との別れ際、俺は彼女が最後に購入したという、五年以上前の理力魔法辞典を譲ってもらった。それを読んでいる時にとある有用そうな魔法を見つけたのだ。

その魔法とは「 武具作成(クリエイトウェポン) 」である。

この魔法は魔法で武具を作成するものだが、手に持つものなら大体作れるらしく、盾もその範疇に入っていた。

それを知って、俺はこの魔法による盾を「 物体操作(テレキネシス) 」を用いて操作し、いざと言う時の防御や妨害に使う事を考えたのである。

もちろんテレキネシスの効果は十キロ程度の物体を操作するに留まる。

そのため敵の攻撃を受け止める事はまず不可能だろう。

そこで次に俺が考えたのが、盾による受け流しである。

これも多少の圧力に耐える必要はあるが、直撃を受け止めるよりはるかに必要な力は少なく済むだろう。

当然少ない力で対応するには相応の技量が必要になってくるが、それならば俺には才能の器がある。

必要なスキルを取得してレベルを上げれば問題無いはずで、それゆえ俺は盾使いのスキルを取ったという訳なのだ。

まあこの盾使いスキルを上げるために、最初は実物の盾を使っての訓練が必要になるんだけどな。

ズーグからも最初は実物の盾の重さや受け止める攻撃の重さを体感しておくべきと指摘があったし、少し怖いが放置していた近接技能と並行して鍛錬を積む事にしよう。

次に俺の魔法についてだが、検証すべき魔法は多岐にわたる。

例えばヘイスト単体使用時のフィードバックダメージや、他のバフとの相互作用について。

ドレインの費用対効果、つまり近接戦闘の危険を冒すほどの効果があるかも調べたい。

オリジナルコンディションの回復性能は大怪我をしないと確認できなさそうだが機会があれば試したいし、オーバーヒールの超過魔力がどの程度のダメージを肩代わりするのかも検証が必要だ。

後は決戦用と位置付けたブレスの威力と消費魔力の確認もしないといけない。

こうして簡単に並べてみただけでも時間がかかりそうだが、それに加えて俺がこれまで使ってきた魔法との兼ね合いや、右腕が生えて槍使いにチェンジしたズーグとの連携も要検証だろう。

一朝一夕でこなせる量ではないので、これらの確認作業についてはこれから毎日テーマを決めてやっていく予定である。

続いてズーグに関しては、ひとまず店売りの頑丈な槍を購入してリハビリをするつもりらしい。

それが済めば、恐らくこの世界のトップクラスの近接技能を発揮できるようになる。

それだけでもうかなりの戦力増加だが、俺は彼に対し、右腕の習熟に加えてもう一つ課題を与えた。

それは竜魔法である。

この技能について、俺が今まで放置してきたのは彼が片腕だった事による。

魔法と名の付く技能を鍛えるより、片手の近接技能レベルを上げた方が良いと判断していたのだ。

ズーグ自身、あまり竜魔法の鍛錬に熱心じゃなかったというのもあるしな。

しかし、両腕が万全状態となって改めて詳しい話を聞いてみると、この技能は劣化ではあるがだんだんと竜に近づいていくものらしい。

技能なのに、身体状態に変化をもたらすというのは少し違和感があるが、まあ例外という事なのだろう。

そもそも俺の「才能の器」だって何故か職業扱いだし、あらゆる技能を習得できると思っていた才能の器にもこの竜魔法は含まれていなかった。種族特有の技能(?)のような感じなのかは分からないが、とにかく何事にも例外はあるという事である。

竜魔法による身体状態の変化は、ズーグの話によるとかなり竜化術(竜魔法の別名、竜人社会での呼び方)を極めた者にしか現れてこないらしい。

それがいったい何レベルを指すのかは不明だが、少なくとも鍛錬してすぐに恩恵を受けられるものではないという事だ。

ちなみに得られる身体状態の変化は、例えば「 竜鱗(ドラゴンズスケイル) 」「 竜舌(ドラゴンズタング) 」などで、身体変化だけあって俺の使う魔法のようにアクティブなものでなく、パッシブなものらしい。

聞くだけでも俺のバフとの干渉が少なそうで、使えるならば非常に有効に働きそうな感じがする。

大変だろうが、ズーグには頑張ってほしいところだ。

最後にトビーについて。

彼は彼自身把握していると思うが、王都でやたら強化された俺やズーグにすぐさま追いつく、というのは不可能に近いだろう。

しかし現状のレベル的に次のSPも近く、成長速度も高レベルの技能よりはあるため伸びしろはあるのだ。急成長の可能性は大いにあると俺は考えている。

とりあえず短期目標として、全スキルのスキルの崖への到達と新たなスキルの取得。その後各スキルの崖の突破を目指してもらう。

探索中の斥候は彼にメインでやってもらう事にしたし、暇があればズーグと稽古もやってもらう。

一番しんどい思いをする事になるとは思うが、飴ももちろん与えるつもりだ。

具体的には成果に応じたボーナス(お金)である。

これからシータの魔術学園への入学を控えているので、兄馬鹿のトビーなら頑張ってくれる事だろう。

奴隷っぽい扱いじゃないが、世間の常識など知るか。

ズーグにも一番良い槍を購入する約束をしているし、これがウチのやり方なのである。

……さて、このくらいだろうか。

それでは迷宮へと潜っていく事にしよう。

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「せあっ!」

ズーグの槍が横薙ぎに振りぬかれ、対するグリーンベアーの首が刎ね飛ばされる。

俺達が今居るキンケイル迷宮八階の最もやっかいな魔物だが、俺の補助とズーグの槍術に掛かればまったく問題にならなかった。

以前はかなり苦戦したんだけどな……。

やはり前衛が強力になると違うという事だろう。

「やったなズーグ。それで、どうだった?」

「ええ、試しに受けてみましたが、一撃で全部持っていかれてましたね」

今の戦いで俺が試したのは、オーバーヒールの超過魔力による障壁の強さであった。

ズーグがほぼ攻撃を受けていない状態だったため、かなり多めの魔力が魔法障壁になったはずなのだが、あまり性能はよろしくないらしい。

「気休め程度と考える方がよろしいでしょう。その僅かな分すら重要になる強敵との戦闘では、必要になるかもしれませんが」

「うーん、普段使いでは費用対効果は悪そうだな」

そう結論付けて、俺達は移動を再開する。

先頭に立って周囲の気配を探っているのはトビーだ。

俺は今までズル……ステータス画面と魔法の併用で索敵を行っていたからな。

それを代わりにやる事になった彼は、王立資源探索隊で狩り場の 狭(せば) められたキンケイル迷宮の現状にかなり苦戦させられているようだった。

「どうだ、居たか?」

「いえ……さっぱりですね。ホントにご主人はどうやってあんな正確に敵を見つけてたのか……」

「まあ俺のは魔法と斥候術の併用だからな」

「魔法かあ……オレはそんな頭良さそうなもの使える気がしないっすからねえ」

立ち止まった通路の角で、その先を睨みつけながらぼやくようにトビーが言った。

まあ確かに彼のステータス画面に魔法関連のスキルは無い。

ただこの国の兵士が総じて魔法を使っている事から、もしかするとスキル欄に無い、つまり適性が無くとも多少の技能は得られる可能性はある。

他には勉強によってスキル欄にスキルが 生えてくる(・・・・・) という考えもあるしな。

職業とスキルの関係性も不明だし、試す価値はあるかもしれない。

「感覚的なやつならどうだ? 神聖魔法とか魂魄魔法は結構俺も感覚的に使ってるぞ?」

「うーん……」

悩むような声を上げて、トビーは再び歩き始める。

どうやら目的となる王立探索隊の取りこぼした魔物は居ないらしい。

「じゃあ夜に少し教えてもらえますか。頭ワリぃんで迷惑かけるかもしれませんが」

「最初からいきなり呪文がどうとか言わねえよ。次はどっちだ?」

「あ、こっちっすね。こっちが戦いの気配が無い方です」

分岐路でトビーが右を指し示す。

こっそり探知系の魔法を使って探ってみたが間違ってなさそうだ。

トビーの斥候スキルはスキルの崖に到達している(レベル5になっている)が、以前よりかなり感覚が鋭くなっているように思えるな。同じレベルでも違いがあるという事だろうか。

流石にそこまでの検証は面倒だからやらないが、トビーが経験値を積んでいるのは間違いなさそうなので何よりだ。

今は戦いの気配の有無くらいでしか選別できていないため、時折王立探索隊のやつらと鉢合わせする事もあるが、そうした失敗も含めて経験になっているのだろう。

彼は俺のように才能の器で補助されている訳ではないしな。

生のスキルの崖の突破がどれくらい大変なのか、それを見せてくれるはずだ。

俺達は通路を進み、その先で待ち構えていた魔物に対し武器を構える。

次は何の検証をするのだったか。

キンケイル迷宮での俺達の修行は、こうして続いていくのであった。