軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

39 検証の日々

「 武具生成(クリエイトウェポン) っ!」

並列思考で準備していたクリポンの盾=障害物をひっかきウサギの進路上に生成する。

ひっかきウサギは素早い魔物だが、体重は軽くテレキネシスで支えた盾でも十分に行動を阻害できるのである。

盾にぶつかった事で、鋭い爪を持つ二足歩行のウサギが一瞬行動を止める。

俺はできた隙に素早く(ヘイストの乗った動きで)間合いを詰め、

「 吸収(ドレイン) 」

「キキィッ!」

魔物に手を触れてデバフを掛けた。

魔力吸収も同時に行われたためか、ひっかきウサギはビクリと体を震わせて更に行動を止める。

「せあっ!」

俺は腰の後ろの鞘から逆手で剣を抜き放ち、抜剣の勢いのまま回転切りのようにして、敵の首を刎ね飛ばすのであった。

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ズーグとトビーの戦闘も終わり、全員で魔石の回収作業をする。

王都から帰ってきてそろそろ一週間というところだが、鍛錬の中で俺は新たな境地へと達していた。

それは、

「近接戦闘めっちゃ楽しい」

という事である。

探索及び鍛錬は作業的にならないように一日のうちで様々な事をこなす。その中で、俺は盾使いスキル習熟のために自分も前に出て戦う機会が増えたのだが、それを非常に面白いと感じたのだ。

興味深いという意味ではない。

単純な楽しさという意味での「面白い」である。

これはこの世界に来てたった一人での探索を始めて以来、初めての事だったかもしれない。

瞬間瞬間ではもしかしたらあったかもしれないが、ここまで印象に残るのは無かったはずだ。

近接戦闘は何と言うか、ゲーム的な楽しさがあるんだよな。

自分のスキルを駆使して敵を倒す。それはこれまでと変わらないんだが、近接戦では体を動かしながら素早い思考を行う必要がある。

明滅するように浮かぶアイデア。魔法の取捨選択。そして肉弾戦の末に得られる結果(勝利)。

言うなればこれはスポーツなのだ。

体を動かし機知を巡らせ結果を得るという喜びは、他では中々味わえないものがある。

俺も元の世界に居た時は、会社のクラブ活動とかに参加して趣味でスポーツをやっていたものだが、それと同等かそれ以上の楽しさがあった。

まあ探索での戦闘は命のやり取りなんだけどな。

今は訓練で地下六階程度の敵と戦ってるからそこまで危険じゃないのである。

地下六階を「その程度」と感じられるようになったのは成長の証だろう。

魂の位階が上がったせいかあまり物事に動じなくなったのもあるが、喜ばしい事だ。

さて、それはともかく。

この一週間は久々にみっちり鍛錬できた実感がある。

成長の早い俺が新しいスキルを取った事もあって、以下のような成果があった。

【ステータス画面】

名前:サイトウ・リョウ

年齢:25

性別:男

職業:才能の器(59)

スキル:斥候(5)、片手武器(4)、理力魔法(5)、鑑定(5)、神聖魔法(8)、魂魄魔法(7)、看破(5)、体術(4)、並列思考(6)、射撃(3)、空間把握(4)、盾使い(3)(SP残0)

【ステータス画面】

名前:ズーグ・ガルトムート

年齢:58

性別:男

職業:戦士(25)

スキル:両手武器(7)、竜魔法(2)、槍使い(8)、片手武器(5)、投擲(3)(SP残0)

【ステータス画面】

名前:トビー・ステイン

年齢:24

性別:男

職業:戦士(19)

スキル:片手武器(5)、斥候(5)、盾使い(5)、剣使い(4)(SP残0)

まず俺は取ったばかりの盾使いがレベル3になった。

後はクリポンを空中に生成してテレキネシスで操作するという事をやっていたからか、空間把握もひとつレベルが上がった。

そして近接戦でこれまでと違う使い方をしたためか、並列思考がスキルの崖を突破した。

ついこの間盾使いスキルを取得したばかりだが、才能の器がレベル59ですぐに次のSPを得られそうだ。頭打ちが始まっているとは言え、相変わらずの横伸ばしっぷりである。

次にズーグは地道に行っていた斧の投擲により、投擲レベルが上昇していた。

他は据え置きだが、夜には瞑想して竜魔法の鍛錬を始めているのでレベルの上昇には注目しておこう。

竜化術は極めないと効果が現れず、成長が分からない(というか分かりづらい)ので修行をやめてしまう者が多いらしいしな。余程竜への信仰心の強い者しか続かないとの事だ。

その点俺はステータス画面で成長を定量化できるので問題は無い。

レベルアップを伝えてやればズーグのやる気も維持できるだろう。

最後にトビーだが、ズーグに日夜しごかれまくっているからか、片手武器と盾使いのスキルが崖まで到達している。

剣使いも上がれば次のSPだが、適性無しの者が修行(と勉強)で魂魄魔法を取れるか検証中なので、もしSPを得られたとしてすぐに次のスキルを取るかは悩みどころだな。

それまでに成果が出ればいいがこの一週間の感じからすると難しそうだ。

魂の存在を感知してもらおうと彼にも瞑想をやってもらったが、気付いたら寝てやがったからなアイツ。

その後ズーグとシータにガチめの説教を食らっていたので、あんまりそういうのが得意じゃない俺は大助かりである。

俺は安心して“飴”役をやればいい訳だからな。

……成長に関してはこんなところか。

他の検証事項(新取得の魔法や、ズーグとの連携の再確認など)については、色々並行して行っているので目立った進捗はあまり無い。

ただ確認が終わったとしても、そこまで凄い成果が得られるものは無さそうな感じだ。

ズーグの腕の再生と新バフの取得による全体的な底上げ。

回復魔法の充実による安全性の向上。

その辺りが王都で得た成長の結果なので、強くはなったが地味な印象なのである。

ただもちろん、上述の通り戦力の充実は間違いなく成されてきている。

先に進む目途は立ち始めていると言って良いだろう。

先というのはすなわち広大化する迷宮七階(マイトリスでは)への挑戦と、その先に居る白竜への挑戦だ。

区切りも無く鍛錬を続けるのもアレなので、どこか切りの良いタイミングがあったら、マイトリスに戻る事にしよう。

奴隷商のクロウさんにも欠損治癒魔法を成功させた報告をしないといけないしな。

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本日も探索日和である。

まあ迷宮に天気など無いが、要するに何の問題も無くいつも通りの探索ができる日な訳だな。

今日は目標を地下九階とし、そこに生息する強力な魔物との戦いで 神息(ブレス) の威力を試してみるつもりだ。

ブレスという魔法はとにかく消費が重い。

習得した瞬間に予備知識が教えてくれた情報ではあるが、実際に発動してみたので身をもって知っている。

俺の全快時の魔力のおよそ六割。

それがブレスの使用に必要な魔力の量である。

これだけの魔力を一度に消費するという事で、これまで取り組んでこなかった各魔法の消費の定量化を行う必要が出てきた。

ブレスを使用した後にどの程度の魔法が使えるかを割り出すためである。

今までは一度の戦闘で空っけつになる事は無かったので、何となくでやってきたが、そうも言ってられなくなったのだ。

そういう訳でキンケイルに戻ってからというもの、魔法を使うたびに体の中にある魔力に意識を向け、地道に何割の魔力を消費しているかを調べてきた。

そしてそれにある程度の目途がつき、ようやくブレスの実戦試験を行う段となったのである。

まあ実際には一応五階くらいの浅い階層では使ってみたんだけどな。

圧倒的過ぎてあまり参考にならなかった。

具体的に言うとブレスを掛けたズーグが素手で魔物の体を引き裂いたりする、という感じである。

もし俺が単なる稼ぎを目的とした探索者なら、十分満足できる結果だろう。

しかし、俺達の場合はこれでは良くない。

迷宮の深部を目指し、 門番(ゲートキーパー) を打倒しようとする俺達には、強大な魔物に対抗するための決戦仕様の魔法や戦術の確認は必要不可欠なのである。

「よし、野郎ども準備はいいな?」

「問題ありません」

「いけるっすよ」

今回はガチめの戦いになるので、練習は一時お休みで俺が斥候を務める。

魔法と併用した索敵でさっと周囲の状況を探ると、これまでの階層よりかなり探索者の分布がまばらである事が分かった。

「……思ってたよりも王立探索隊のやつら、少ないみたいだな」

「あー、それなんですが、オレの聞いたところでは新しく集められた王立のやつらでも、十階以上に行けるやつはあんまり居ないみたいっすね」

「ふうん。ならここより上を狩場にできるなら良さそうだ」

「俺の右腕もだいぶこなれてきました。この階でも全然いけますよ」

ズーグ達とそんな会話をしながら、魔物の居る場所へと向かう。

数が減ったとは言え、俺達よりも長い時間(交代で)迷宮に潜っているのが王立資源探索隊だ。魔物の生息密度は減り、残っている相手が厄介だというのはこれまでの階層と変わりないはずである。

「次の角だ……たぶん大物だ、ブレス行くぞ」

「了解です」

九階で強い魔物に出会ったらブレスの実戦投入を行う。

それは予定されたもので、そのための練習もこれまでにちゃんと積んでいる。

神息(ブレス) シフト、とは名付けていないが、そういう感じのものに各々立ち位置を変えて準備をする。

通常の場合、斥候で前に出ている俺が魔法を撃ち込む。

その間に向かってくる魔物を俺の後ろから出てきたズーグとトビーが相手にする、というのがセオリーだが、ブレスシフトは少し違う。

最初からバフ先であるズーグが前に出て、ブレスを使った魔力喪失で一瞬硬直が入る俺をトビーが守るという図式だ。

戦闘は最初の一合~二合程度をズーグが全て受け持つ事になるが、それでも問題無いほどの威力がブレスにはあるのだ。

「位置に着いたな? いくぞ…… 神息(ブレス) っ!」

俺が突き出した手に周囲からエネルギーが集まってくる。

超越存在から貰い受けたそれは、ただのエネルギー体の癖にそこに留まっているだけで耳鳴りが聞こえるほどだ。

そして収束したエネルギー……魔力が強化魔法に形を変えてズーグへと射出される。

「うおおおおおおっ!」

ズーグは魔力を使った身体強化を全開にした状態でブレスの魔法を背中に受ける。

ヘイストもそうだが、こうした強力な強化魔法はその受容先の肉体が強靭であるか魔法による強化を受けていないと、その反動で傷害を受ける羽目になるのだ。

果たして光が収まると、そこには淡く青い光を纏うズーグが立っていた。

真面目なシーンなのだが、「スーパーズーグ人」とかいう単語が脳裏に浮かんで、笑ってしまいそうになる。

何とかそれを噛み殺している間に、戦闘が始まった。