軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第449話 追いつめられる部隊

ギレザムとミノスが上空にいるであろう透明ドラゴンを手榴弾で攻撃しつつ、その間に魔人一般兵や人間達を逃がす事を考えた。

弾丸が底をついたための苦し紛れの作戦だった。

そしてそれは…

見事に失敗した。

走って逃走する魔人達に向けて火の玉が飛んだのだ。敵の気配は分かっていても手榴弾を投擲した時にはその場所にはおらず、ドラゴンは直撃を避けながら攻撃しているようだ。

《全員走るな!すぐに草むらに隠れるんだ!》

ゴーグとアナミスとルピアに伝え、魔人達に草むらに身を隠してもらう。狼化したライカンはその身のこなしで火の玉を避けているようだが、オークやオーガには被弾して倒れている者もいる。人間達はライカンのおかげで負傷している者はいないようだった。

《やはり敵が目視出来ないのは辛いか…》

《申し訳ございません。》

ギレザムが謝ってくるがどう考えても俺のせいだった。俺の強行的な指示で負傷者を増やしてしまった。とにかく次の指示を出さなければならない。

《みんな!良く上空を見て火の玉を避けるしかない!》

すでに作戦などとは言えないものだ。

火の玉が着弾した草原はゴウゴウと燃えて地面がむき出しになっている。そこには負傷したオークやオーガ達が倒れていた。俺はなすすべもない中でどうにか打開できないかと考える。

《ゴーグ!生存者を助けられるか?》

ゴーグのスピードなら、被弾することなく負傷者を救出する事が出来ると俺は考えた。

《全員は無理だと思います。一人助けてもその間に他の奴が攻撃を受けたら無理かと。》

《一人でもいい、生存できる可能性の高い奴をつれて草むらに隠してくれ。》

《わかりました!》

そしてゴーグは一番広く燃えて土がむき出しになった場所に踊り出る。オーガの首根っこを咥えてそのまま走り去ろうとしたその時だった。

「マコ!?」

天空から女の声が聞こえた。

《ゴーグ!止まれ!》

ゴーグが俺の指示に止まる。

どうやら敵が狼形態ゴーグの背に背負われている、ホウジョウマコの存在を確認したようだ。

「そうだ!お前たちの仲間の女だ!」

俺がゴーグの側に走り寄って上空を見据え叫んだ。

「‥‥‥。」

どうやら空の敵は沈黙したようだった。

《あれ?人質作戦…成功?》

《もしかすると…》

ギレザムも同意する。

しばらくは沈黙が続いた、俺が次の言葉を吐こうとした時だった。

「はーはっはっはっはっはっ!!!」

天空より高笑いが聞こえた。

「なにを笑う!」

俺が活舌の悪い言葉で言う。

「バッカじゃないのマコ!間抜けにも魔獣に捉えられちゃってんじゃん!」

俺の問いは無視されて意外な答えが返って来た。

えっ‥‥

「おまえの仲間だろ!」

「ウザいのよね!キリヤをたぶらかして良い気になって、魔獣との戦いで死んだのなら仕方がないわね!」

「い、いや!死んで無いぞ!」

《アナミス!》

俺はアナミスに指示を出してホウジョウマコを起こすように依頼する。アナミスは直ぐにゴーグの元にいって何かをささやき、ホウジョウマコを起こしたのだった。

「あれ?生きてんじゃーん!」

すうっ

ホウジョウマコは精彩を欠いた眼差しで天空を見るのだった。

「なーにボーっとしてんのよ。ていうか勝手に捕まって迷惑かけんじゃねーって感じ。」

しかしホウジョウマコはもちろん話をすることはなかった。アナミスの管理下にあるので特に感情があるわけでもない。

「キリヤの手前黙ってたけど、あんたは正直なところ足手まといなのよね。」

こいつの話し方…どう考えてもドラゴンじゃないぞ。恐らくは人間でホウジョウマコに所縁の深いものだ。

と言う事は…

《人間が空中から攻撃を仕掛けてるのか?》

《…ラウル様、空には気配が一つではございません。そのうち一つの気がどうやらニホンジンに似ているようです。》

《マジか。また厄介なスキルを持ってるやつが出て来たな。》

《そのようですが、耐久力は低い可能性もあります。》

《透明だからどうなってっかわかんないけど、その日本人を撃墜する事が出来れば何とか打開できるか?》

《そのようですが…》

《ああ、今は打つ手がないな。》

俺達が念話で打開策を探っていると、天空の声がしびれを切らしたように言う。

「マコ、なんとかいいなさいよ!」

「‥‥‥。」

もちろんホウジョウマコは話す事ができない。

「てかさ…今はまだキリヤがここに来てないし、ここで戦いに巻き込まれて死んでも問題なくね?」

《ゴーグ!アナミス!逃げろ!》

俺は瞬間的に指示をだした。

すると今しがたゴーグとアナミスがいた地点に火の玉が落ちて来た。

ズドン!

ゴオオオオ

そのあたりの草むらが燃え始める。

「あ!まて!」

謎の女が慌てたように言う。するとそのままゴーグを追うように火の玉が着弾し始めた。もちろんゴーグに当たるような事は無い。魔人軍で1,2位を争う陸上のスピードを誇り、更に今はスピードの乗る狼形態だ。

「こら!」

ズドン!

ボグン!

ゴーグは自分が狙われている事が分かったため、魔人一般兵や人間達から離れて走って行くのだった。

《ゴーグ!グッジョブ!》

天空の敵がゴーグに気を取られている間に、俺は魔人に指示を出した。

《ギレザム!ミノス!負傷している者達をかつげ!戦線を離脱する!》

《は!》

《御意!》

《アナミスとルピアはゴーグを攻撃している敵の位置を確認していてくれ!こちらに向かったらすぐに念話で通達しろ!》

《かしこまりました!》

《はい!》

どうやら正体不明の透明な敵は、ホウジョウマコが嫌い?とにかく邪魔なようだった。男女のもつれ的な何かがそこにあるらしい。

《結局、日本人たちは自分の欲求のままに戦っているようだな。》

《彼らに使命などは無いのでしょうか?》

《ああ、ギル。日本という国の人間に、そこまで使命感があるやつなんかいないよ。》

《そういうものなのですか?》

《おそらく昨日今日こっちに来た奴なんてそうさ。俺やオージェとは違うよ。》

《何というか…》

《まあそれだけむこうが平和な世界だったってことかな。》

《そうですか…。》

どうやらギレザムは敵の内輪揉めのような物が理解できないようだ。

日本人がいきなりこっちの世界に連れて来られて、お前達は勇者で悪魔を滅ぼせなんて言われたところで、はいそうですかと従えるような奴はいないだろう。少なくともさっきまで戦っていた剣士や拳闘士はそんな感じだった。ただ自分たちの力に酔って暴力をふるっているような感覚だ。

まあ…

まさかゾンビ相手に、手榴弾サンドで殺されるとは思わなかったろうけどな。

俺も2体の負傷したオークの首根っこを掴んで引きずりながら走っていた。ハイグールは相当なパワーがあるとはいえ、ファントムとは性能が違いすぎるためオークは十分重い。

「息切れしないし持久力があるだけましか。」

怪我をした者達は、ミノスとギレザムとライカン部隊、そして俺が手分けして運んでいた。既に人間を運んでいたライカンや、無事だった一般兵魔人達はだいぶ先行している。

ズドン!

ボグン!

はるか後方ではまだホウジョウマコを背負ったゴーグを狙って、見えない敵の攻撃が続いているようだ。

よっぽどホウジョウマコは嫌われていたと見える。

「とにかくあの雑木林まで!」

目の前にまばらな雑木林が見えて来たのでそこに突入するように言う。しかし森と言うほど木々が生えているわけではないので気休め程度かもしれない。

とにかく俺達は一目散にそこを目指して走る。

しかし…

《ラウル様!敵はゴーグを狙うのをあきらめたようです!》

アナミスから念話が繋がる。

どうやら当たらない攻撃を続けているうちに、俺達が逃げたことにようやく気が付いたようだった。

《気配が‥おそらくそちらに向かいました!》

ルピアが叫ぶ。

「急げ!」

とにかく走った。先頭を走っていた人間達を乗せたライカンが雑木林に飛び込んだ。そして一般兵の魔人達が飛び込もうとしたとき、

ズドン!

先頭の魔人達の目と鼻の先に火の玉が着弾して、数人が吹き飛んでしまった。

「くっ!散開!」

雑木林にたどり着くことができず、再び草原にまばらに散って身を隠す。

「あたしをハメたね!」

天空から女の声が聞こえる。

いやあ…ハメたわけじゃなくて、お前が勝手にホウジョウマコを狙って攻撃し始めただけだろ。

とにかく俺は負傷したオーク二人を草むらに隠す。

敵も俺達を見失ったのか一旦攻撃が止んだ。

‥‥‥‥

なんだ?

どうやら上空の敵は動きを止めて何かを考えているようだった。

「あーもう面倒!」

ボグン!

ズドン!

バガン!

バグン!

無差別に火の玉が降って来た。恐らく数撃ちゃ当たると思っているのだろうが…

正解だ。

このままこのあたり一帯が焼き尽くされれば、負傷者は殺され一般兵も次々と餌食になってしまうだろう。

「みんな!とにかく避けろ!」

すでに指示などというものではない。皆の能力を頼ったお願いだった。

バン

バン

ミノスとギレザムが手榴弾を投擲して応戦しているようだったが、もちろんそれで敵の攻撃が止むことはなかった。

ズドン!

バグン!

ドガン!

ボゴン!

辺り一面が火の海になり、あちこちに魔人一般兵のオーガやオークが倒れ始めた。どうやら直撃を受けた者がいるらしかった。

《くそ!》

そんな攻撃を受けている時だった。

《ラウル様!後方から日本人の部隊が来ました!》

一番後方にいたゴーグから念話が繋がる。

《なに!》

どうやら空の攻撃者との戦いをしているうちに、後方から追いかけていた日本人部隊が追い付いてしまったようだ。

《ラウル様!どうしますか!》

《逃げろ!》

《でも…》

ゴーグがためらうように言う。

《命令だ!逃げろ!》

《うん。》

ゴーグも既に敬語を使うのが出来ないほど切羽詰まっているようだった。

《では私達が。》

《ダメだアナミス!ルピアも命令だ。敵がいない方向へ全力で逃げろ!》

《しかし…》

《それは…》

《命令だ!》

俺はきつく彼女らを諭す。

《かしこまりました。》

《わかりました。》

《ラウル様!我が引きつけましょう!》

ミノスが言う。

《ダメだ!》

《それでは我が!》

《ギレザム!それは俺の役目だ。この体なら欠損しても問題はない!俺が敵をひきつけるからお前たちは、負傷者を一人でも多く雑木林に!》

《は!》

《御意!》

そう指示を出してから、俺は草むらからぴょんと踊り出る。

「おい!やりマン!お前の敵はこっちだ!」

「や、やり…それはマコ!私は…」

「うっせえ、俺を仕留められるもんならやってみやがれ、やりマン!」

「この!」

ボグウ

俺は間一髪火の玉を避けて走り出す。

「ははははははは。やっぱ狼と違ってゾンビはノロいじゃん!」

ボン!

バグウ!

ズドン!

俺は辛うじて火の玉を避けていたが…

ダメだこれ、時間の問題だ。

俺が火球を避けまくっているが、その攻撃速度に追いつかなくなってきた。

バグン!

「うわ!」

俺のそばに落ちた火の玉が爆発し吹き飛ばされる。

ヒューン

ドサ

「クソ!」

泥棒髭の俺が立ち上がろうとするが…

バタ

立ち上がる事が出来なかった。どうやら足が一本吹き飛んでしまったようだった。

「ぶざま!ゾンビはやっぱ火に弱いんだ!」

そして俺が体を仰向けにして空を見た時だった。空中の一か所にぼんやりと火球が浮かび上がるのだった。