軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第448話 空爆被害

聖都の攻略開始までのリミットが差し迫っているなかで、俺は再び泥棒髭に意識を 共有(ログイン) した。ギレザムの隊は森を北へと進んでおり、周辺の木々がまばらになってきている。このまま直進すればラーズ隊と合流する事になるだろう。

ホウジョウマコに連れて来られた人間達も、狼化した一般兵のライカンの背の上で振り落とされないようにしがみついていた。人間の速度では敵に追いつかれてしまうため、ライカンに乗せて搬送しているらしい。

「ギル!敵は?」

「こちらが速度を上げたために、距離は開いております。」

「人間じゃあ追いつけないだろうな。」

「はい。それで、いかがなさいましょう。」

「ついて来るならそのままついてこさせる、聖都から離す事が出来たら俺達の作戦も進めやすいしな。そしてこの隊はラーズ隊と合流し更に北に進む。そうすればドランとスラガが戦っている敵の真後ろに出る事になりそうだ。」

「そこから挟撃する形ですか?」

「そうだ。日本人がいた駐屯地の西にはデモンが巣くう都市があっただろ?逆にあのまま戦えばこちらが日本人部隊とデモンとの挟み撃ちにあう。それならば北に抜けて敵を挟み撃ちしたほうが有利だ。」

「確かにあのデモンがいた都市は山岳地帯などがいりくんでおり、戦闘車両も入り込みづらい所でしたから、デモンを掃討するにしても厄介な場所ですね。」

「ああ、それにプラスして透明ドラゴンなんか来たら、全滅してしまう可能性もある。」

「ではこのまま北へ。」

「ああ。」

俺は簡単に指示を出した。

《ラーズ!》

《は!》

すぐにラーズに念話を繋げた。

《侵攻を遅らせろ、こちらに向かっているように見せかけつつ反転する用意だ。》

《かしこまりました。》

《こちらの部隊は弾薬が切れている、30名の武器弾薬は準備しておいてくれ。》

《は!》

《あとモーリス先生に聞きたい事がある。くれぐれも怪我をさせないようにしてくれ。》

《指一本触れさせません。》

《頼む。》

そして一度泥棒髭から意識を離した。

「ふう。」

「大丈夫か?」

「ああ。」

「念話はそれほど疲れるのか?」

「そういうわけでもないんだがな。」

そう言えばオージェには急造したハイグールの出どころを伝えてなかったな。まあ今はいらない情報は伝える必要はないしな。

「聖都の西にある日本人たちの部隊がいる拠点から、ギレザム隊を追って部隊が出たらしい。今は北に向かって魔人軍を追跡中だ。既にスラガとドランの隊に向けて、東にいたデモンと人間の部隊も西に出撃しているから、聖都周辺は手薄になっているとみて良い。さらに西にはデモンに占領されていた都市があるが、そこから聖都までも距離があり、すぐにはこちらに援軍を出す事は出来ないはずだ。ギレザム隊とドラン隊の挟撃で敵を撃破した時が、俺達の部隊の動く時かもしれない。」

「わかった。」

「了解です。」

カーライルもオンジも側にいたのでそのまま伝わった。二人は俺の目を見てしっかりと頷いている。恐らくこれからここで起きる戦闘は二人にとって未知の領域となる。後方でグレースやマリアを守るための支援となるが、位置を知られれば後方も安全とは言えない。

「カーライル、オンジさん。」

「はい。」

「なんでしょう。」

「いざという時は竜人化薬を飲んでください。」

「竜人になるというあの薬ですね。」

「よろこんで。」

どうやら二人は飲む気満々らしい。彼らの剣の技量はかなりの物なので竜人化薬を飲めば、デモンの配下くらいとならやれるかもしれない。しかしあれには時間制限があるし、薬が切れた後はその体の疲労や怪我がそのまま人間の体に襲い掛かってくる。死ぬ可能性もあるので俺はくぎを刺す。

「あくまでグレースとマリアを守るときだけの為に使ってください。決して敵と戦うためには使わないように。」

「ま、まあもちろんそのつもりです。」

「か、カーライル殿の言うとおりです…。」

あら?この人たちもしかしてやるつもり?でもこんなところで死んでもらうわけにはいかないからな。とにかく無茶をしないように周りにも言っておかなきゃ。

「約束です!グレース!俺との約束を守るように薬を渡してくれ。」

「了解です。オンジ!絶対に前線なんかに出ちゃだめだからな。」

「わかっております!グレース様!もちろんそのような真似をいたしません。」

「分かってんならいいけど。」

なんとなく俺とグレースがジト目で見ると、二人が目をそらした。

ああ、コイツらやる気だな。

「ラウル。俺が全面的にバックアップするさ。男なら足手まといは嫌なものだろ?」

オージェが言う。

「二人にはまだまだやってもらうことがあんだよ。」

「それも含めて俺に任せろ。」

オージェが豪快に言う。

「わいもお役に立つと思いますよ。」

トライトンもオージェに合わせて言う。

「わかったよお前達二人が言うなら大丈夫だろ。まあエリクサーもあるしな、くれぐれも死なせるなよ。」

「了解だ。」

「はい。」

《シャーミリア!ファントム!カララも、くれぐれも人間を死なせるな!》

《はいご主人様。私奴の存在にかけて。》

《………‥‥》

《もちろんですわ。》

《マリアとカトリーヌも守ってくれ。》

《彼女たちに何かあってはなりませんから。私奴達が最大限の能力で防ぎます。》

《頼む。とにかく俺が戻るまで待て。》

《《《《は!》》》》

シャーミリア、カララ、ルフラ、セイラが返事をした。

俺はヴァルキリーを着たまま再度、泥棒髭へと意識を移すのだった。

《ギル!人間は?》

《少しこちらの速度を押さえ、ぎりぎりついて来れるようにしております。》

《上出来だ。》

《ラーズ、まもなく俺達が見えると思う。》

《こちらも準備は整っております。》

《了解だ。》

しばらくして森が無くなり草原地帯へと出た。見渡す限り遮蔽物がなく、ここに透明ドラゴンが来たら俺達はかなりの被害をこうむるだろう。とにかく急いでラーズ隊に合流しなければならない。

俺達の部隊が脱兎のごとく草原を走っている時だった。

ズドン!

草原の俺達が走る中にいきなり炎の玉が着弾したのだった。

「ぐあ!」

「うおっ!」

「うわぁ。」

一般兵のオーガやオーク、ライカンが爆風にやられて吹き飛んでしまった。嫌な予感が的中してしまったようだ。

《くっ!透明ドラゴンだ!》

《気配はしますが!どこに!?》

ギレザムが言う。ミノスもゴーグもルピアもアナミスも空を眺めている。しかしどこにもドラゴンの姿は見えなかった。

「やっと出て来たね。」

空中からどこからともなく女のような声が聞こえて来た。あの廃墟の村で聞いた声だ。

《くそ!》

どうやら俺達が森から出るタイミングをずっと待っていたらしい。しかし俺達には弾丸が無かった、魔法使いもいないため上空の見えないドラゴンを攻撃する術はなかった。

《とにかく!散開だ!固まれば一斉にやられる!》

俺が指示を出すと、ギレザムがハンドサインを出して魔人達が一斉に草原に散らばって行った。ギレザムとゴーグとミノスが負傷した魔人を引きずって走っている。

甘かった。透明ドラゴンは日本人と戦っている時もずっと狙っていたのだった。俺達が逃げたため上空、高くから監視して追いかけてきたのだろう。

「あいつら全然森から追い出せないでいたから、ほんっと苦労したわあ。」

ズドン!

謎の女の声の後に、また大きな火の玉が地面に着弾して大きな爆風をあげる。

《今、火球が出た場所を確認しました!》

ギレザムが言う。

《既にそこにはいないだろう。》

《引きずり降ろせれば。》

《今は術がない。》

《このままでは後方からの追撃部隊にも追いつかれます。》

分かってはいるが、ここで無防備に走り出せば透明ドラゴンの火の玉の餌食になってしまう。完全に俺の失策だった、やはりあの拠点から上がった狼煙で透明ドラゴンを呼び戻していたのだった。

「穴の中に隠れたのをドラに追わせて失敗したし。ホントムカつく。」

ズドン!

「ぐあ!」

なぜか悪態をつきながら俺達を攻撃してくる。皆が空を見ながら警戒はしているが、避けきれなかったらしく近くに落ちてしまったらしい。

俺達はその草原に完全にくぎ付けになってしまった。下手に動けば火の玉にやられてしまう。走れば必ず狙って来るだろう。

落ち着け…

《ゴーグ!ここまで来れるか。》

《はい。》

ゴーグが草むらを体を低くして動く。大型の狼形態では被弾してしまうため、既に人間にもどっていた。

《すまんな裸のままで。》

《問題ありません。》

ショタの裸体で腐女子が喜びそうだが…

ゴーグは裸に鎧を着ており隙間から素肌が見える。それでも肝心なところは鎧のおかげで隠れているようだった。狼化しても鎧が取れないようにしてくれたバルムスやミーシャに感謝だな。

《この袋をもってギレザムとミノスに手榴弾を配ってくれ。》

《は!》

俺は腰にぶら下げた頭陀袋を外してゴーグに渡す。

《お前の速度なら火の玉を当てる事も難しいだろう。》

《任せてください。》

《ホウジョウマコは?》

《アナミスとオーガ達が見ています。》

《了解だ。行け!》

草むらの中を縫うようにゴーグが走り出す。

ドゴン!

ズドン!

ズドン!

火の玉の攻撃は激しさを増しており、あちこちで魔人達が被弾しているようだ。このままでは全滅してしまう可能性がある。

《ギレザム!ミノス!いまゴーグに手榴弾を渡した。お前たちの投擲なら敵に届く可能性がある。受け取り次第、火の玉の出どころを確認しつつ手榴弾を投げろ!》

《は!》

《かしこまりました!》

《今はそれしか火器が無い。しかもそれほど残ってはいない、恐らくその手榴弾で敵を落とす事は厳しいだろう。アナミスとルピアはギレザムとミノスが手榴弾で攻撃している間に、一般兵と人間を出来るだけ北に逃がすんだ。》

《はい!》

《わかりました!》

《負傷兵は?》

《エリクサーで直すしかないが、間に合わないやつは置いて行くしかない。》

《かしこまりました。》

《致し方ありません。》

アナミスもルピアも切羽詰まったように答えて来る。

日光が燦燦と輝いており辺りは見通しが良かった。恐らく動けば草むらから体が出てしまい狙い撃ちされるだろう。ギレザムとミノスなら恐らく躱す事も出来るし、軽く被弾しても大きな被害を被る事はない。問題は一般兵と人間達だった。もしかしたら先ほどからの攻撃で人間は死んでしまったかもしれない。

《ゴーグはホウジョウマコを背に乗せて走れ。》

《はい!》

《せっかく捕まえた情報源だ。何としてもラーズの隊と合流するまで死なすわけにはいかない。》

《わかりました!》

ミノスとギレザムに手榴弾が渡ったようで、すぐに上空に向けて手榴弾が投擲される。泥棒髭や河童と違ってかなりの高高度まで投げる事が出来るようだ。さすがに彼らの肩は恐ろしい。

バン!

バン!

火の玉を出した辺りで炸裂する手榴弾。

「うわ!また!」

手ごたえはないが、相手は最初に手榴弾を食らった時の痛みを覚えていたらしい。上空で動揺するような声が聞こえた。

《走れ!》

俺の合図とともにミノスとギレザムを除いた全員が北へと向かって走り出すのだった。