軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第324話 魔人国への来訪者

ルゼミアが話を続ける。魔人や龍たちが大陸を去った理由とやらをだ。

母さんは「わしらも龍も人間も獣人もエルフも殺したくはない」と言った。

額面通りに取れば平和主義のように聞こえるが、もし俺になにかあれば報復するとも言っている。

「母さん。魔人や龍は人間達が大陸の外に追いやったのではないですか?」

「おおむねそうじゃが、少し意味合いが違うかの。」

「というのは?」

「先ほども言ったであろう。もしアルが殺されでもしたら我は許さんと。」

「はい。」

「我も龍族もな、タガが外れてしまえば破壊の限りを尽くすまで、制御できなくなってしまうのじゃ。気がつけば焦土と化してしまうじゃろうの。」

「破壊の限りを…」

「うむ。何というか我を忘れてしまう事があるのじゃな。」

《そりゃ危ない。絶対に怒らせるのをやめておこう。》

この時ラウルは忘れていた。自分もシャーミリア戦で一度我を忘れている事を。

「エルフや獣人にはそのような破壊力はないが我らにはある。」

「よくわかります。母さんの強さは魔人達にも知れ渡っておりますから。」

「うむ。じゃから我らと龍たちが話し合って大陸を出ることにしたのじゃな。」

「人間を避けたという事ですか?」

「うっかり皆殺しにしてしまわないようにな。」

「うっかり…。」

「うむ。人間もすべてが敵対するものではないが、アトム神の力が弱まり統率は取れておらぬようでな。人間どもが我の愛する者に手をかけない保証はない。」

「なるほどそう言うわけですか。」

「大陸から出てしまえば我らが他の種族を殺す事もあるまい。」

「逆に人間や獣人を殺す可能性を未然に防ぐためと?」

「まあそんなところじゃな。」

《そういえば魔王や俺に逆らう魔人は一人もおらず、統率という意味では魔人は申し分のない集団だ。俺の系譜に連なる物は俺に逆らう事など出来ないのかもしれないが、むしろ好意を持って接してくれることが多い。おそらく思考が共有されているため異分子にはすぐ気が付く。だが人間はそうはいかないという事だ。さらにルゼミアほどの力があれば滅ぼす可能性もある。》

「えっとすみません。」

オージェが言う。

「なんじゃ?」

「龍も一緒に大陸を出るように話し合ったと。」

「そうじゃ。」

「龍もみさかいが無くなるんですか?」

「おそらくもっとひどい、文字通り都市も森も焼け野原になるぞ。」

「そうなんですね。」

「おぬしは龍の子じゃったか。」

「はい。」

「火は吐かんのだな。」

「吐けません。」

「なら焼け野原になる事はないじゃろうな。」

「そう思います。」

みんなで料理を食べながら物凄い歴史の真相を聞いている。思わずみんなの食事の手が止まっていた。

「面白くない話じゃったかのう?」

「いえ、大変興味深い話です。」

まさかそう言ういきさつがあったなんて。

「ならいいのじゃが。」

「魔人や獣人などは、人間から迫害を受けていたと聞いていたものですから。」

「魔人が手を出さなかっただけよ。人間から討伐対象とされた魔人がたくさん殺された、じゃが人間たちは幸運にも我の大事なものに手を出さなかった。それだけじゃ。」

「では私を大陸に出してくださったのは?」

「アルガルドは魔人も獣人もエルフも、人間も同じ場所で暮らす世界を作り出したいのじゃろ?」

「はい。」

「我や龍どもが出来なかったことをやろうというのじゃ、面白いではないか。」

「面白いですか?」

「面白いぞ。我ではそのような器用な真似は出来んじゃろう、だから我らは大陸を出たのじゃからのう。」

「そうでした。」

「まあよいよい。とにかく食え!今日はアルガルドのめでたい日じゃ。」

《はぁううぅ》

「そうでしたね。はは。」

そしてそれからルゼミアは、虹蛇には何もついていないのになぜ卵が産まれるのか?とか、エルフの耳が長い理由とか、龍が火を吐く原理がなにか?とかそんな話を教えてくれた。

本当なのか嘘なのかもわからないが、俺達は物凄く興味津々にルゼミアの話を聞く。

「これは!」

急にグレースが声を上げた。それはなぜか?

デザートが美味かったからだ。

「プ、プリンだ。」

「本当だ。」

「うまっ!」

料理の途中で出てきたのは絶品のプリンだった。プリンというのかどうかは分からないがとにかくプリンっぽい。

「ほう!気に入ったか?」

「はい!」

「プルプルでしっとりしていて濃厚ですね。」

「なんかこんな濃厚な味わいのお菓子を食べた事無いです。」

「これも魔獣の卵から?」

俺、グレース、エミル、オージェの順に感想を述べる。

「卵から作ったのだと分かるのか?」

「ええ、わかります。」

「これは氷龍の卵から作った菓子じゃな。」

「氷龍?」

「北の山脈に住むのだが、雪に潜る為なかなか見つからんのじゃ。」

「それをわざわざ?」

「たまたまじゃよ。いつもあるわけじゃないから、おぬしたちは運が良い。」

皆があっという間にその氷龍エッグのプリンを食べてしまった。

「お!うまいか?もっとあるぞ!食え。」

ルゼミアが言うと、サキュバスとハルピュイア達が次々と氷龍エッグのプリンを運んでくる。

「だれか料理の得意な魔人がいるのですか?」

「おぬしらを出迎えたオーガがいるであろう。」

「いました。」

《あのものっすごい厳つい顔をしている、おっかないオーガの事だろうな…》

「あやつは料理が得意での、グラドラムで教わって来たのじゃ。」

「え?そうなんですか?」

「そうじゃ。」

「もしかして…料理を教えたのって…?」

「ミーシャじゃな。」

《うわぁ、ミーシャの影響がこんなところまで来ているのか。》

「そうでしたか。彼女はキッチンメイドでしたからね。」

「今はなにやらおかしな研究に没頭しておると聞いておるぞ。」

「そうなんです。なんというか恐ろしい進化を遂げましてね、そうなってしまいました。」

「恐ろしい進化とな?」

「魔人達と暮らすうちにおかしなものを開発するようになりました。それとミゼッタなんかは強力な光魔法を使うようになったり、イオナ母さんなんて魔獣なら何でも使役してしまうようになったんです。」

「ほう!」

するとガルドジンとルゼミアが顔を見合わせた。

「なんです?」

「そりゃ面白いと思うてな。」

「面白い?」

「実はな、おぬしの実の母も魔人達と暮らすうちに、おかしな能力を身に着けて行ったのじゃ。」

「おかしな能力?」

するとガルドジンが話を代わる。

「そうだ。グレイスも最初は魔力の弱い普通の人間だった。」

「はい。」

「それがな、俺達と暮らすうちにどんどん魔力が大きくなり、不思議な魔法を身に着けたんだよ。」

「不思議な魔法。」

するとルゼミアが言う。

「不思議なものを呼び出すようになった。」

「不思議なものを呼び出す?」

「全部死んでしまったがな、見た事の無いネズミのような動物や小さい狼…いやそれよりも小さいキャンキャン鳴く動物とか、牙も角もない小さなファングラビットのような動物じゃった。」

「動物…召喚ですかね?」

するとガルドジンが答える。

「いつのまにかグレイスといきなり一緒にいたからな。どこから現れたのかは分からないんだ。だがその動物たちは魔石も魔力も持たずに強くはなかった。数年で死んでしまったよ。」

「そうですか。」

《どういう事だろう。キャンキャンなく動物と言えば犬、牙も角もないファングラビットといえばうさぎを連想するが、この世界に来てからそういう動物を見た事が無い。せいぜい獣人を見るくらいだ。》

「まあとにかくじゃ、アルの母親も魔人達に囲まれて暮らすうちに変わったのじゃ。それはさっきアルが言ったような進化と言うものではないかと思うてな。」

ルゼミアが言う。

「なるほどです。」

《まてよ、という事はグラドラムにもともと住んでいた百数十人の人間や、ラシュタルで魔人に訓練を受けている人たちも影響を受けるって事か?いや…マリアだって驚異の身体能力を身に着けているし、その可能性は大だな。》

俺達はプリンを食いながら、また新たな真相を聞いているのかもしれない。

「えっ!マジ!」

またグレースが言う。

「どうした?」

「これ美味いです!」

どうやら食い物に反応しているようだ。

俺達の目の前に並んでいる食べ物は…えっ!もしかして…

ハンバーグだった。

「うっそ?」

「本当だ。」

「まさか…。」

「ん?どうした?」

ルゼミアが言う。

「この料理も彼が?」

「そうじゃ、ヤツ独自の料理らしいぞ。」

「美味い!」

俺達の前には、デミグラスソースみたいなソースがかかっているハンバーグのようなものがあったのだ。この濃厚な肉汁とソースの味わいが俺達を虜にする。

「これはのう、グラドラムから持ってきた果実酒で作ってるらしいぞ。」

どうやら独自の進化を遂げているのは魔人もらしかった。

「とにかく私の実の母は何か動物を呼び出す事が出来たと。」

「そうなんじゃ。」

《おそらくは召喚術の一種じゃないかと思う。そしてその動物とは魔獣ではなく前世で言うところの犬やうさぎだ。しかし二人にはその出どころはわからないようだ。》

本当の母親については謎が深まるばかりだった。

「私はその力を引き継いでしまったのかもしれません。」

「ああ、そうかもしれんな。」

ガルドジンがしみじみと言う。

飯を食いながらそんな話を聞いている時だった。

「うん?」

ルゼミアが屋根を見上げる。

「何か来たな。」

「えっ?」

「アルのめでたい日に無粋な。」

「いや。」

「ちょっと行って来る。」

ルゼミアがいきなり立ち上がって部屋を出ようとする。

「ちょ、私も行きます!」

俺が言うがルゼミアは振り返ることなく廊下を歩いて行く。俺は慌ててついて行くと俺の配下達もぞろぞろとついて来た。その後ろからオージェとエミル、グレース、カトリーヌが付いてくる。

ルゼミアが玄関のドアを開くと

ビュッ

と風がドアを通って俺達を吹き付けた。

「寒っ!」

俺が言うがエミルもグレースも特に寒がってはいないようだ。オージェも特に顔色を変えた気配がない。どうやら俺だけが寒がっているようだった。

《凄いな神と龍って寒くないのかね?俺達はふかふかのローブの下には何も着ていないし寒くないのだろうか?ルゼミアだって黒のワンピース一枚だしな。》

玄関を出たと同時にルゼミアが俺達の前から消えた。

ボッ

いやおそらくは飛んだのだろうが消えたようにしか見えなかった。

すると吹雪いた暗い空の向こうから声が聞こえた。

いや…

声ではなく鳴き声と言った方が正しかったかもしれない。それは海の方の暗く遠い空から鳴り響いているようだった。

ギャオォォォ

ガァァァァァ

ギャアアアス

鳴き声の主はどうやら動物のようだがなんだか痛そうに聞こえる。

そしてその鳴き声が止まったと思った、次の瞬間。

ズゥゥゥゥゥン!

魔王城の玄関の前に巨大な何かが前触れもなく落ちて来た。

盛大に雪煙を巻き上げてそこにバタバタとしながら何かがいるらしかった。

俺達は雪煙が収まるのを待つ。

ギャアアアアオ

がが。ああああ。あ

ハギャァセェ

なんとなく鳴き声が変化して来た。

はなぜぇぇぇぇ

「はなせぇぇぇぇ!!」

はっきりと言葉となって現れる。俺達がその声がした方に一斉に走っていく。なにかがバタバタしているので雪煙が一向に収まらないからだ。

すると俺達の目の前には見た事も無いような大きな生き物がいた。

正確には居たというより、ルゼミアに首根っこを掴まれて地面に押し付けられていた。

「やめろぉぉぉ、苦しぃぃぃぃ!」

そしてその大きな生き物の恐ろしい光る眼がギラリと光ってこちらを睨む。

その時だった…

「え?オージェちゃん?」

《ちゃん?》

「ま、ママ。」

《ママ?》

「「「ええええええええええええええ!!!」」」

そこでルゼミアから首根っこを掴まれてじたばたしているのは、巨大な龍だったのだ。

そしてどうやらオージェの母ちゃんらしい。