軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第323話 魔王城の宴

母さん父さんはとにかく喜んでいた。

ガルドジンが完全復活したのだ。魔人達も凄く嬉しそうにしていたし俺だって嬉しい。

それはいい。

問題は強制的にカトリーヌを”もらう”とかいう話になった事だ。今はとりあえず俺の部屋にカトリーヌを連れて来たものの、俺もカトリーヌもただ黙って座っていた。

ルゼミアは現魔王だしそういう考えをするのは自然な事かもしれない。人間の恋愛観とか取るに足らない些細な事だろうし、魔人達を俺の助けの為に大陸によこしたのだって、ガルドジンとの素敵な生活の邪魔にならないように、全魔人を俺に押し付けたと思う。

《魔王は魔王らしくわがままだな。》

純粋にそう思う。地位とかしがらみとか何も考えてはいない、自分がしたいからそうするだけだ。

「カトリーヌなんかすまないな。」

「いえ。ルゼミア王は純粋な方ですね。」

「そうなんだよ。したいからする、それがまかり通る人なんだ。」

「ふふっ。自由ですばらしいです。」

「魔王だしね。」

「大陸の魔王が出る物語では、魔王は恐ろしく人間の敵として描かれている事が多かったです。」

「それがさ、大陸北部だけらしいんだよそれ。」

「といいますと?」

「ファートリア神聖国やユークリット公国とその属国ではそうらしいんだが、シン国ではそうじゃないらしい。」

「そうなんですね。」

「どちらかというとシン国の方が素直に伝わっているみたいな気がする。」

「どういうことなのでしょう?」

「それは俺にもよくわからない。」

「私はあの素直なルゼミア陛下が好きです。」

「俺もだよ。」

俺達が話していると部屋のドアがノックされる。

コンコン

「はい。」

するとサキュバスの魔人が俺達の為に飲み物を持ってきてくれた。

「悪いね。」

「いいえ。ガルドジン様の目を治された偉大なお方です。粗相のないようにと王に言われております。」

「いえ私など。」

カトリーヌが困ったように言う。

「カトリーヌ。俺だってたくさんお礼がしたいんだよ。」

「ラウル様。私は私と友を救ってくれたお礼がしたかっただけなのです。」

「とにかくカティはそれだけの事をしてくれたって事さ。」

「これからもお役に立ちたいです。」

「それなら、よろしく頼むよ。」

サキュバスが部屋を出ていきテーブルの上には、お茶が湯気を立てて置いてあった。二人はそのテーブルを囲んで話をしている。

「このお茶の香り。」

「フラスリア産ですわね。」

「グラドラムが正常化したことにより良い茶葉とかも入るようになったんだな。」

「それも全てラウル様のおかげではございませんか。」

「そんなことはない。」

《このお茶がここで湯気を立たせ良い香りを放っているのは、多くの人間たちの犠牲がある。北の王家や貴族、敵のバルギウスとファートリア兵、グラドラムの民たちの尊い命の上での正常化だ。》

「おいしいですわ。」

「ああ。」

微妙な空気が流れる。

だが俺にはこれ以上どうする事もできなかった。ただ二人でお茶を飲んでいる時間が過ぎた。お茶も無くなってきたころでまた部屋がノックされた。

「はい。」

「宴の準備が出来ました。」

「わかった。すぐ行く。」

そして俺達は部屋を出て勝手知ったる通路をたどり、食事が行われる部屋へと向かった。

部屋の中には俺の配下の魔人達が待っていた。

「ご主人様、良い素材が取れました。」

シャーミリアが俺に告げる。美魔人たちがカトリーヌを見てニッコリ笑う。

《なんだろう?いつもの感じと違う。》

「すまないな。」

テーブルにはまだ誰もついていなかった。俺とカトリーヌが先に来たらしい。二人きりで気まずいところに魔人からの声がけがあったので、居たたまれずに急いできたためだ。

「こちらへ。」

俺達はルゼミアの従者のハルピュイアから席に案内される。

すると後から俺の友達連中がぞろぞろとやって来た。

「ラウル。もういいのか?」

オージェが言う。

「もういいって?そりゃそうだ呼ばれたからな。」

「そうか…。」

「もう少しゆっくりするのかと思ったよ。」

エミルが言う。

「そうですね。てっきりもっと夜になるのかと思いました。」

グレースも言う。

「いや、だってみんな腹減ったろ?」

「そりゃまあ。」

「だけどこういうのってもっと時間がかかるのかなって。」

「僕なんか居眠りしちゃってました。」

「虹蛇は眠らなくてもいいんじゃないの?」

「それが眠れば眠れるんです。」

「そうか。」

するとルゼミアがガルドジンに寄り添って部屋に入って来た。

「アルガルドよ!どうじゃった?」

《えっ?お茶の事?》

「おいしかったですよ。」

「そうかそうか!それなら良かった。」

ルゼミアがやたらと嬉しそうだ。そして気のせいか肌の色艶が良いように感じる。

皆がそろったので次々と料理が運び込まれて来た。

「皆、熱いうちに食え。」

ルゼミアが言う。貴族などの食事のようにそろった段階で祈りなどを捧げて食う事はない。料理が来た者からすぐに食えという意味だった。

「えっと、料理が前に置かれたら食っていいって意味だよ。」

俺が補足する。

「あ、はい。いただきます!」

一番最初に置かれたグレースから食う。次々目の前に置かれる料理をオージェやエミルも食べ始めた。俺とカトリーヌの前にも料理が置かれたのですぐに食べる。

そう、人間の社会なら王であるルゼミアが最初っぽいが、ルゼミアはいつも一番最後に食うのだった。それがこの魔王城のルール。

「美味いか?」

ルゼミアがオージェに質問している。

「はい。美味しいです!凄くコクのある味で好きですね。」

「そうかそうか!いっぱいあるからどんどん食え。」

ルゼミアがニッコリと目を細めてオージェやエミル達を見ている。俺は友達たちがルゼミアに大事にされているのを見るのが何か嬉しかった。

一番最後にようやく王の元に料理が届く。

そうしないとルゼミアに怒られてしまうからだ。客人が先で自分が一番最後、このルールを破る魔人は一人もいない。

「菓子もあるでな。遠慮せずに食べろ食べろ。」

本当に上機嫌のルゼミアを見れて俺も幸せだ。

「しかし魔人の料理も久しぶりです。この濃厚な味わいは何の肉なんでしょう。」

俺が聞くとシャーミリアが言う。

「幻獣の肉にございます。」

「えっ!」

「もちろん殺したりはしておりません。一部を剥ぎ取って持ち帰りました。」

「そ、そうなんだ。」

幻獣と言えば俺がラーズと一緒に北の山脈へ修行に行った時に出くわした、あの巨大ななにかだ。彼女らはあの恐ろしい攻撃を潜り抜けて、この肉を剥ぎ取って来たらしい。そう言えばあの時シロと巡り合ったんだっけ。

「アルがこんなに友達を連れて来るとはのう。」

「まあ、いろいろありまして。」

「しかも虹蛇と精霊神がおるとはな、龍の子まで。」

「偶然じゃないですよね?」

「もちろんそうじゃろうな。」

美味い料理の時間なのでそれ以上は突っこんだ話をしないようにする。楽しむときは楽しむがルゼミアのモットーだ。

「皆には伴侶は居るのか?」

「いえ私たちはおりません。」

「なんじゃ?そうなのか?」

「友達の中ではラウル君が第一号となりますね。」

「そうじゃったか。」

《ああ、俺に伴侶が出来たことになってるのね。》

「もし困るような事があれば、魔人から適当に見繕っても良いのだぞ。」

「か、母さん!彼らにもきっと思っている人くらいいるでしょう!大丈夫ですよ。」

「そうか?ならいいのじゃが、まあアルガルドよりは女に対して免疫がありそうじゃからな。」

「いやー。」

「ははは。」

「僕なんか心では女が恋愛対象なのですが、相手が僕を選んでくれるかどうか。」

「虹蛇は普通伴侶を持たんからな。」

「そうなのですか?」

グレースが食いつく。

「ああ、あ奴らはいままで時期が来るといきなり卵を産むのじゃ。それが成長すると次世代の虹蛇になるんじゃな。伴侶を持ったのを見た事はない。」

「そうなんですね‥‥。」

グレースが残念そうだ。

「なにも伴侶を持たなくていいという事ではない。しかしそなたは虹蛇なのに伴侶を持ちたいという気持ちがあるのかえ?」

「まあ、気持ち的には。」

「おもしろい。」

《ルゼミアにはきっと分からない。それは俺達が前世ではおっさんだったから女性が好きなのだ。グレースに性別が無いとはいえ気持ち上はおっさんだ、伴侶の一人も持ちたいと思うのは普通だ。》

「ガルドジンの若い頃はもっと活発だったがなあ。」

「ぶっ!」

ガルドジンお父さんがスープを噴き出した。よっぽど意表を突かれたらしい。

「なんじゃ!汚い。」

「お、お前なんでいきなりそんな大昔の事を。」

「何を言う。グレイスに落ち着くまでは適当じゃったろ?」

《ちなみにグレイスとは俺の実の母親で人間だ。虹蛇のグレースとは無関係である。》

「そういえば、母さんと知り合う前はガルドジン父さんが魔王だったんでしたっけ?」

「まあそうだな。」

ガルドジンがなんか気まずそうに答える。

「ふむ。アルガルドは知らんだろうが、ガルが弱くなったのはグレイスと知り合ったからよ。」

「そうなんですか?」

「うむ。どうしてもグレイスとの子供が欲しかったガルはな、魔王をやめて更に魔力を減らすために何も食わんし眠らんようになってしまった。」

「そうだったんですね。」

「我はやめよと反対したのじゃ。死んでしまう可能性もあったからのう。」

するとカトリーヌが何かを察したように言う。

「それだけにラウル様の実のお母様を愛していらっしゃったと。」

「まあそうだ。」

ガルドジンが苦い思い出のため口が重くなった。

「じゃからアルガルドよ。おぬしはガルドジンとグレイスが命がけで作った子なんじゃぞ。」

「そうだったんですね…。」

「我はガルドジンもグレイスも大切じゃった。しかしグレイスが死んでしまったのじゃから、我の元へ来てもよかろう?」

「まあそう思います。」

「それがガルは、我が子を魔人の国では育てとうないと我から逃げよった。」

「はい。それは聞いています。私が人間として生まれてしまった為に魔人国ではうまく生きれないのではと。」

「そうじゃ。この男が何かを勘違いしとったようじゃ。それで我が考えたのがアルガルドの奪還計画よ。それでみなが我の元へ戻ってくると思ったのじゃ。」

「ルゼ。それは多少強引というものだ。」

「ああすまなんだ。我は反対に人間の大陸に行けば、その方がアルには辛い事があると思うた。」

「その結局ルゼは全ての魔人をアルガルドに預けてしまったがな。」

「まあ本人が人間の大陸に行く事を選んだのじゃから、母親はそれを応援するのは当然じゃろ。人間の大陸でアルガルドに何かあったらどうするのじゃ?」

「ルゼ…魔人全員の事を考えたら…。」

「我にとっては魔人全員よりアルガルドじゃ!」

「はははアルよ、お前が大陸に言ってからルゼミアはずっとこんな調子なんだよ。」

《なんだ…俺はてっきりガルドジンとのラブラブ生活の邪魔になるから仕向けたんだと思った。とんだ失礼な事を考えていたらしい。》

「母さん。そのお心遣いは痛いほど感じております。」

「なーに。それでも我の元に友達を連れてきてくれたではないか!我はそれだけでも本当にうれしくて仕方がない。」

屈託のない笑みを浮かべてルゼミアが喜んでいるのを見て、なぜか俺は凄く感動していた。

「いい話です。」

エミルが言う。

「すばらしい。」

グレースも言った。

「ラウルさ。こんないい両親に人間のイオナお母さんまで居て、お前は本当に幸せだよ。」

オージェが言う。

どうやら3人も凄く感動していたようだ。

「ご主人様。今の王のお言葉でお分かりかと思います。私奴魔人は魔人全員の命よりご主人様の命なのでございます。」

「シャーミリアの言うとおりです。それがすべての魔人の気持ちなのですよ。」

「そしてラウル様が大切な人は、ラウル様同様に大切なのです。」

シャーミリア、カララ、ルフラが言う。

「わかった。だが俺の願いも絶対に聞いて欲しいんだがな。自分の命を犠牲にして俺の願いを遂行しようとしたり、無理に助けてもらわなくてもいい。」

「もちろんご主人様の願いも皆が承知しております。」

「うむ。それで良いじゃろう。」

ルゼミアも納得してくれてるらしい。

「だから母さん。もし俺に万が一の事があっても魔人を責めたりしないでほしい。」

「わかっておる。それでアルガルドが喜ばぬ事もな。しかしな、もしおぬしの命を奪おうなどという馬鹿なやつがおったら、我が全力で叩き潰してやるわ。」

「ルゼよ。お前が全力で暴れたら世界が取り返しのつかぬ事になりそうなんだが。」

「我もそれだけは曲げんよ。ガルもアルも我の命より大事じゃ。」

「とにかく、そんな大変な事にならないように私が頑張りますので落ち着いてください。」

「ふはは。もちろんアルを信じておるよ。」

ルゼミアが言う。

「アル頼むぞ。ルゼミアが大陸で暴れること無いように命を大事にな。お前の部下達ではルゼミアは止められんからな!」

「わ、わかっております。十分気を付けて事に当たらせていただきます。」

「ああ頼む。」

「我ら魔人と龍が大陸から去った理由も無くなってしまうでな。」

「大陸から去った理由?」

「アルは知らんかもしれんがの、我らも龍も人間も獣人もエルフも殺したくはないからな。」

「それはどういうことです?」

俺達が知っている魔人や龍が大陸から去った理由とは違うような気がする。

ルゼミアは何事も無いように飯を食っているが、俺達は興味津々だった。

俺達はただルゼミアの次の言葉を待つのだった。