軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第181話 二カルス大森林の魔獣

「あーあ。せっかく大陸の魔人とのファーストコンタクトだったのになあ。」

俺は大陸在住ゴブリンとの初の接触に失敗した。

《いや・・失敗はしていない。ただ気持ちよくさせただけだ。とにかく大陸のゴブリンとは言葉が通じなかった。やはり環境が違うと魔人の育ちが全然違うみたいだ。次はもっと違う方法でやるしかないな・・》

「今後の課題か。」

「さっきから何言ってんだラウル。」

「いいんだよ・・こっちの話だ。」

知能が低いゴブリン。大陸に潜伏している他の魔人も皆そうなのかもしれない。それでは人間に狩られてしまうのは当然の事だった。

その後、俺達は3時間と少しスーパースタリオンで南下した。

山際を南に1000キロほど飛んだところで、バルギウス帝国の南に広がる広大な森林地帯が見えてきた。今までは岩肌と木がまばらに生えた土地の上を飛び続けていたが、いきなり鬱蒼とした森が眼下に広がってきたのだった。

「エミルの故郷はすっごいな。どこまでも森が続いているぞ。」

「俺も上空からこの森を見たのは初めてだよ。」

「鳥とかも飛んでるし、いや・・大きいから魔獣か?」

「かもしれないな。」

「逃げてった。」

「そりゃそうだろ、こんな得体のしれないのが飛んで来たら逃げるよ。」

《鳥型の魔獣がヘリの音を聞いて逃げていくのか?いったいあいつらはヘリコプターを何だと思っているんだろう・・。いや、ヘリとか関係なく、そろそろ陽が山の向こうに落ちそうだから巣に帰っただけじゃないのか?》

そんなことを考えながら遠くに飛んでいく鳥影を見ていた。

「この密林の奥にエミルの生まれた場所があるってことか。」

「ああ。」

「獣人の里もあるって話だが・・」

「あるはずだよ。」

「たださ、森に入ったら着陸するところ無いんじゃない?」

「まあ確かにな。」

「うーん。燃料空になるまで飛んで不時着しちゃおうか。」

「そしてまた彼に丸めてもらうと?」

「まあそうだ。」

「わかったそうしよう。」

俺達はそのまま森林地帯の3000メートルほど上空を飛び続けている。

「ただこの森はとてつもなく広いから、まだまだエルフの里にはたどり着かないぞ。あとは上空からは侵入できないかもしれない・・」

「じゃあ陸路で行くしかないか。でもそんな広いのならもう1機召喚して近くまでは飛びたいな。まあそれも朝になってからの方がいいだろうけど。」

「ああ。こう暗くなってしまっては方向が分からない。そして一応言っておくけどこの広大な森林地帯は、深部に行けば行くほど凄く危険だ。」

「まあ・・これだけ広大な森林なら強い魔獣もいるんだろうな。」

「もちろんそれもある。だけど森自体が生きているようなものなんだよ。エルフでもテリトリー以外の森にはそうそう出歩かないんだ。」

「森自体が生きている?」

「そうだ。森には意志があるとエルフの里では言われている。」

「ふーん・・森に意志ね・・」

《俺はふと・・ラシュタルからサナリアに向かう途中にいたトレントを思い出す。》

「えーっとエミル。あと20分ほどで燃料がきれるけど・・夜のとばりが降りる頃にヘリが森に落ちるよな。」

「そうなる。」

「森の魔獣を倒しても森は怒らないものかな?」

「まあ自分の身を守る為なら仕方がないんじゃないかな?」

「じゃ問題ないや。」

エミルが俺の配下達を見て答える。

「ああ。問題ないかも・・」

「そうならさーエミル。この森には美味い魔獣とかいないかね?」

「まあ・・いると思うけど。」

「食いたいな。俺のリュックに調味料が入ってるんだよ。」

「用意周到だな。」

「セルマの食事も用意せにゃいかんからな。」

「確かにそうだな。この森の魔獣なら十分彼女の食事として足りるかもしれない。」

夕日が機内に差し込んで来た。西の山脈の向こうに日が落ちていく。

「感動だな。絶景じゃないか・・」

「本当だ。」

「みんなも見て見ろよ!」

シャーミリアとカララ、アナミスが窓際から外を見る。

「ご主人様。お美しゅうございます。」

「なんという素敵な風景なんでしょう。」

「うっとりしてしまいますね。」

3人は外を見つめて、夕日で目をキラキラとさせていた。

くぉぉぉぉん

「ああ・・セルマは身動きが取れないから見れないよ。」

くぅぅぅぅ・・

セルマ熊はがっかりしたような表情を見せる。

「吊り下げてれば見れたけどな。」

俺が言うとセルマはフルフルと頭を振った。それは嫌だったようだ。

太陽が沈み当たりが薄暗くなってきた。スーパースタリオンは高度を落とし森のすれすれを飛ぶ。

「そろそろ燃料が切れる」

「よし、みんな衝撃に備えろ」

まあ・・衝撃に備えなくても全員問題ないだろうけど。

スーパースタリオンはどんどん高度を落とし森へと落ちていく。

ザザザザザ

ズサーン

主翼などを折りながら森に落ちる。エミルが地面と平行に機体を維持したため、木と木の間に機体がひっかかってしまった。

「あれ?ずいぶん地面が遠いぞ。」

「すまん。機体が大きくてひっかかった。」

「いやエミルは悪くない。ただ結局飛び降りる事になるけどいいか?」

「うう・・・」

この森の木は驚くほど大きく背が高い。機体がひっかかった場所から地面までは200メートルもありそうだった。

「ではラウル様、私が3人を安全に降ろします。」

「すまないカララ。よろしく頼む・・ただセルマ熊がこの状態だが、どうやって外に出そうか?」

そう・・セルマはぎっちぎちに詰まっているため身動きが取れない。

「問題ございません。では。」

次の瞬間。

シャキィィィィン

パカ!

スーパースタリオンが四散した。卵の殻が砕けるように。

「うわわわわあ!」

エミルがまた絶叫しているが空中で止まっていた。俺とセルマも同じ空間で止まっている。

ガラガラガラ

スーパースタリオンの粉々になった機体と・・ファントムだけがそのまま落下していった。

シャーミリアとアナミスは羽を広げて俺達の側に飛んでいた。

「大丈夫だよエミル。カララの糸だ。」

「糸?」

「ああ、上を見て見ろよ。」

カララの体が木の幹にへばりついている。そこから糸で俺とエミルとセルマ熊をぶら下げているのだった。

「なんか・・魔人達と居ると、いろいろ心配するのが馬鹿みたいだな。」

「だろ?」

そのままスルスルとレンジャー部隊の様に落ちていく3人。

地面に降りるとファントムがスーパースタリオンの残骸の中に立ってどこか遠くを見つめていた。いつもながらリアクションゼロの安定した佇まいだ。

全員が地面に降りると地面がフワフワだった。

「エミル。なんか地面が柔らかいな。」

「ああ・・木の葉や細かい木の枝が幾層にも重なっているんだよ。」

「そのまま落ちても大丈夫だったんじゃないか?」

「バカ言え!お前たちならいざ知らず、200メートルも落下したら死ぬわ!」

「すまん。」

エミルも見た目がエルフだし結構大丈夫なのかなと思ってしまった。エルフの身体能力がどれくらいなのかよくわからない。しかしダークエルフとは違うという事は間違いなさそうだ。

「しっかし・・この森の木。馬鹿みたいにデカいな」

「ああ。しかも真っ暗だろ?」

「月の光が届かないんだな。」

「最深部は日中でも薄暗いぞ。」

俺は二つのENVG-B暗視スコープを召喚した。配下の魔人達やセルマ熊には必要ないだろうが、俺でもこの暗さは見渡す事が出来ない。

「おお!ENVG-Bじゃねーかよ!こんなんも出せんのか?」

「俺とエミルの分だ。つけてくれ。」

「いやぁ・・カッコいいなあ。お!見える見える!ラウルとアナミスちゃん!カララちゃんも!セルマ熊もバッチリだ・・・あれ?」

「どうしたんだ?」

「シャーミリアさんと・・ファントムさんがよく見えない。」

「ああ、それは仕方ないんだ。気にしないでくれ。」

「そ・・そうか。」

俺とエミルだけが暗視スコープ越しにあたりを見回していた。

「あれ?なんかいるな。」

暗視スコープで見ると木の間に四つ足の動物が立っているようだった。

「牛か?」

「もう集まってきたのか・・ラウルは見るのが初めてかもしれないが、あれはブラックドッグという魔獣だ。」

「犬?」

「真っ黒い狼みたいなもんだ。群れをなすからかなり危険だぞ。」

「なるほど。ENVG-Bが無いと俺達にはきつかったかもな。」

「やるのか?」

「そうだな・・しかしあの犬でかいな!牛くらいの大きさはある。」

ポツリ、ポツリと・・赤い目が増えていく。

「なんか増えてきたぞ。」

「ラウル!どうやらかなりの数だぞ。本当にやるのか?・・逃げなくても大丈夫なんだよな?」

「うーん。たぶん。」

「たぶんってなんだよ!」

「シャーミリア!犬はどのくらいいるかな?」

「はいご主人様。おそらく100くらいかと。」

「100頭!!」

エミルが卒倒し掛けている。どうやらこの状況エミルの感覚ではヤバいらしい。

「墜落の音を聞きつけて寄って来たんだろうな。」

「逃げよう!」

エミルが逃げた方がいいと言うがこの暗闇の中をどこに?

「えーっと。シャーミリア一人でいけるか?」

するとエミルが驚いたように言う

「は?そんな・・彼女一人でなんて・・」

「はい。」

シャーミリアが戦闘態勢になる。

「ではカララよ!皆を安全な上空へ。」

「わかったわ。」

スッー

カララの糸で俺とエミル、セルマ熊の体が50メートルほど上空に浮き上がった。

「わ、わ!」

エミルが驚いている。

《慣れろ!》

アナミスは飛んでファントムは何もなかったように元の場所に立っている。

浮いていた体がフッと自由になった。

カララが木と木の間に糸を張り巡らせて網をかけていたらしく、俺とエミルとセルマ熊は空中に浮かぶよう足場ができた。カララとアナミス、ファントムが遅れて網に降りて俺達の周りに立つ。

ファントムや巨大なセルマ熊が降りても網はびくともしない。

「よし。それじゃあここで見守ろうか。」

「え?って言うかラウル!戦いを見物するのかよ!いくらM134ミニガンを持ってるからって、彼女一人で大丈夫か?」

「いや・・むしろ周りに人がいた方がやりづらいだろう。あとエミル・・見物って言うけど彼女の動きが目で追えたら大したもんだ。」

「そんなにか?」

「まあ見てもらうしかない」

「M134ミニガンとバックパックで100㎏くらいの装備だぞ!てか・・なんで彼女はあんなに軽々ともってるんだ?華奢でかわいいのに・・」

「魔人だからじゃね。」

「・・・わかった。」

そして俺はシャーミリアに言う。

「シャーミリア―!セルマが食うから弾は頭にだけ当ててくれ!」

「御意。」

「制限させるのか?」

「だってセルマが食べる時、弾がガリッっていうじゃん。」

「ま・・まあそうだけど。100頭いるんだよ?」

「そんなにあの犬っておっかないの?」

「ブラックドックが1頭いれば、人間の村なんて壊滅すると思う。」

ガァァァァ

グルルルルル

ゴオァァァァ

どうやらブラックドックがシャーミリアに飛びかかってきたようだった。