軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第182話 殲滅は血のご褒美

牛みたいな大きさの黒い狼の群れが可憐な女性に飛びかかった。

しかも周りには100頭以上いる。

1秒もかからず惨殺され食われるだろう。

骨も残るまい。

・・普通の人間なら。

しかしそこに立っている金色の巻き髪の女性は普通じゃない。

魔人でも最高位ランクのオリジナルヴァンパイアだ。しかもだ・・M134ミニガンを小脇に抱えている。毎分4000発の7.62mmを吐き出すモンスター兵器を。

「むしろ100頭のブラックドッグとやらが何分もつんだって話ですよ。」

「ああ・・ラウル。俺にはいくら目を凝らしても何も見えない。ただ暗視スコープ越しに見えてるのは、ドサドサとブラックドックが倒れていくのが見えるだけだ・・」

「おそらく彼女は服を汚さないように返り血も浴びてないと思う。」

「・・・上品なレディ・・なんだな。」

「ああ彼女はおしゃれだから。いつもドレスだしな。」

「分かってる。何でこの人いつもおしゃれしてるんだろうって思ってた。」

キュィィィィィィィ

パパパパパパパパ

ガァァァァ!

グギャッ!

バグゥ!

ギャン!

ミニガンとブラックドッグの叫ぶ音だけが暗闇に鳴り響いていた。

飛びかかるために空中に浮いたブラックドッグの頭が消えて後ろに吹っ飛ぶ。後ろにいたブラックドッグに激突して地面に落ち、落ちたブラックドッグが起きあがろうとすると頭が吹き飛ばされる。

「ブラックドッグもしぶといな。」

「しぶといって・・全然攻撃させてもらえてないように見える。」

「いや・・やつらも意外に頭を使っているってことさ。1頭でかかってダメなら3頭、3頭でダメなら5頭で集中攻撃している。」

しかし結果は同じだった。5頭一気に飛びかかった次の瞬間・・

キュィィィィィィィ

パパパパパパパパパ

5頭の頭が吹き飛び地面に落ちる。

「なにをやっても彼女には通用しないがな。」

「みたいだな。」

「ほら、今度は回り込んで時間差で!まあそれも結果は同じだろうが。」

時間差で飛びかかっても1瞬で頭が吹き飛んでいく。

「ブラックドッグが何もさせてもらえないなんて・・」

「エミルの心配はいらなかったってことさ。と言うか本当に俺達が下にいた方が邪魔になるだけだ。」

「ようやく意味が分かったよ。」

「おっと、今度はブラックドッグが立体的に攻撃を仕掛けてるぞ。頭いいな・・」

ブラックドッグは十メートルほど木を駆けあがっては急降下して頭上から数頭が、それに合わせて地面にいるやつらも数頭が同時に飛びかかる。

「でも彼女は・・」

次の瞬間その場所にシャーミリアはおらず、頭の無いブラックドッグがまとめて落ちていく。

「飛べるんだよな。」

「ど・・どこに行ったんだ。」

「わからない。俺の目でも追えない・・ただ彼女とは意識が強く共有されているから楽しんでいるのだけは伝わってくる。」

「楽しいんだ。」

「戦い大好き系女子なんだよ。」

「そ・・そうなんだ・・」

驚異の戦闘力に舌を巻いたブラックドッグが逃げようとし始めるがもう遅い。シャーミリアが1頭も逃がすわけがなかった。俺が始末しろと指示をしたのだから彼女が中途半端をするわけがない。

待つこと5分。

シャーミリアが俺達の網の下に現れた。

「ご主人様!」

「あいよ。」

スッ

足元の網が消えた。

「わっわわ!!」

エミルがビックリしているが、カララがするりと俺達を吊り下げて降ろしているので問題ない。

「シャーミリアお疲れ様。」

「ご主人様申し訳ございませんでした。思いのほか時間をかけすぎてしまいました・・私奴を罰していただければと・・」

「罰なんてないけど。」

「しかし・・」

どうやら彼女の中での時間の許容範囲を超えてしまっていたらしい。しかし俺の許容範囲の10分の1だ。

「だって俺が頭だけを潰せって言ったからだろ。制限が無ければ1分も持たないのは分かってるしさ、むしろ凄いと思っている。」

「ああ・・・ご主人様。何という寛大なお言葉・・」

「それよりご褒美上げないとな。皆ここで待ってて。」

「はい。」

「シャーミリア。おいで。」

「え、え。そんな・・ご褒美ですか?」

俺はシャーミリアを連れて木の陰にやってくる。

アーミーナイフを召喚して俺は手首に傷をつけた。

ポタポタポタポタ

血が滴ってくる。

「はアあぁぁ」

目に見えるような吐息を深く吐いてシャーミリアの目が赤く光る。するすると犬歯が伸びてきた。

「飲め。」

「よ・・よろしいのですか?」

「ポーションもある。大丈夫だ。」

ゴク

シャーミリアが喉をならした。

ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ

「はぁぁぁぁぁぁ」

更に濃厚な吐息を吐き出して俺の血を堪能していた。

「ああ・・」

ガクガクガクガク

ペタリ

シャーミリアはその場にへたり込んでしまった。俺はポシェットからポーションを軽く腕に振りかけて傷を治す。半分はそのまま飲んだ。

「ふう。」

「・・・ご主人様・・どうして私奴はいただけたんですか?」

「いつもは大勢で動いてるだろ。お前には何だかんだと気を使わせているからな、こんな時くらいいいじゃないか。」

「ありがとうございます。私はなんと幸せなのでしょう。」

「大袈裟だろ。」

ドグン

「!ご主人様どうされました。」

ドグン

「い、いや。なんかシャーミリアの鼓動が俺の中で鳴り響いているようだ。」

「確かに・・私奴の中でもご主人様の脈動がより強く感じられます。」

ん?

「う・・うう!」

「シャーミリア!大丈夫か?」

「は・はい。」

シャーミリアの額や腕に血管が浮き出ている。

「は、はあはあ。」

「だ‥大丈夫か?」

「大丈夫です。」

スッっと彼女の額に浮き出ていた血管が収まっていく。

「はぁぁぁぁぁ」

シャーミリアが大きく息を吐いた。

「ありがとうございます。ご主人様のお力をかなりいただいたようです。」

「俺も・・なんだ?分からないけど何か力がついた気がする・・」

《どういう事だろう?今まで彼女に血をやったからといって力を得た事などなかった。もしかしたらこの森の魔獣を大量に殺したから?人間を殺した時のような魔力の増加ではないが・・》

「私奴にはご主人様にお変わりはなさそうにみえます。」

「そうか・・」

《なにか違う感覚が俺の体に流れている気がするが、シャーミリアが分からないんじゃあ・・きっと気のせいかもしれないな・・》

「シャーミリア。戦闘はどうだった?」

「ええ、赤子の手を捻るようなものでしたが、今まで処分した大陸の魔獣よりも強い気がいたしました。どこかグラウスの魔獣に似たような強さを感じます。」

「魔人国のか・・。やはりこの森はただの森じゃないってことだな。」

「はいご主人様。そのように思われます。」

「皆の所に戻ろう。」

俺とシャーミリアはみんなのもとに戻った。

「あれ?ラウル・・なんだか様子が変わったか?」

「エミルにはそう見えるのか?」

「なんていうかワイルド系になったみたいな。」

「ワイルドだろう?」

「なつかしいな・・」

とりあえず俺とエミル以外には分からない会話をしつつ皆に話をする。

「よし、セルマとカララ!腹が減ったろ!二人で山分けしていいぞ!」

「ありがとうございます!」

「わおぉん!」

セルマ熊はその場でバリバリとブラックドッグを食べ始めた。カララはレディの嗜みとして大食いしているところを見れらたくは無いらしく、林の奥に消えていった。

「セルマがうまそうに食ってるけど・・」

「ラウル・・ブラックドッグはまずいぞ。焼いた肉は硬くて食えたもんじゃないし、そもそも・・俺達の感覚的にドックって名前のやつを食いたくはないと思わないか?」

「まあ確かに。でもセルマのヤツとても食が進んでいるように見える。」

「レッドベアーよりブラックドッグの方が上位なんだけどな。レッドベアーなんてこの森にいないし、いたとしてもこの森じゃ食物連鎖の底辺だよ。」

「じゃあセルマ熊は危ないな。」

「いや・・でもセルマのこの大きさや佇まいは普通のレッドベアーじゃないよな・・」

「ああ俺の魔力の影響で強化されてしまったらしい。」

「そうなんだ。」

「ああ、森の木から聞いたんだよ。」

「木から?」

「そうサナリアの北の峠よりさらに北にある森の木から。」

「木ってもしかしたら、トレント?」

「ああそれだ。」

「あの・・木って言うと怒るぞ。」

「あ、そういえば怒ってた。」

「俺がこの森には意志があるって言ってたけどな、あれはトレントの総意のようなものがこの森を包んでいるからだと俺は思っているんだ。」

「・・・なるほど。なんとなくわかる。俺が元始の魔人の系譜で魔人を連ねているのと似た物かもしれないな。」

「トレントネットワークと俺はひそかに名前を付けてるがな。」

「トレントネットワークか・・なんかネットワークのプロトコルみたいな名前だな。」

「ああ、俺的にはうまい事言ったもんだって思ってるよ。」

「・・まったくだ。」

なんとなく微妙な空気が流れた。

「ん?セルマを見ろ。」

「なんだ?」

グッ・・ググググ

「なんかさ、更に逞しくなってないか?ってか頭の傷が治って毛がふさふさに生えてきた。そして・・毛が真っ黒になった気がする。」

「ホントだ。」

セルマ熊の筋肉が滅茶苦茶発達しているように見える。そして毛がさらにモコモコになった気がする・・

「もしかしたら自分より上位種の魔獣を食って変化してるんじゃないのか?」

「うん、否定は出来ないな。」

そしてカララが食事から戻って来た。

「ラウル様ありがとうございます。お気遣いのおかげでとても食べやすくなっておりました。」

「そ・・それはよかった!」

《俺はこの絶世の美女がブラックドックをどう食べたのかなんて全く想像しないぞ!》

「カララは・・変わらないんだな。」

「変わらない?」

「いや・・シャーミリアがちょっと変化したもんだから。」

「え・・、本当ですね。シャーミリア・・すこし・・」

《うーむ・・カララは変わらないか?という事は変わったのは俺?カララとシャーミリアの違う点はシャーミリアは俺の血を分けたという事だ。》

「あと・・ラウル様。私から見てラウル様の状態が見えづらくなりました。恐らくですがブラックドックをラウル様の兵器で大量に殺したのが影響しているかと。」

「今までも魔獣は殺したと思うけど。」

「ブラックドッグは今までの大陸にいた魔獣とは強さが違いますので、まるで魔人国の奥地にいるような魔獣でした。」

カララもシャーミリアと同じことを言う。この森の魔獣はかなりレベルが高いらしい。シャーミリアがこともなげに殲滅しちゃったのでその強さをはかり知る事は出来なかった。

「ラウル。二カルスの森が危険だというのが分かったかい?ブラックドックはこの森の食物連鎖で言えば中くらいに位置しているんだよ。奥地にはもっと強い魔獣が潜んでいるんだ。」

「肝に銘じておくよ。」

ブラックドックはさほど強いとは感じられなかった。だかこれから先は油断することなく進んでいくとしよう。

「セルマとカララのご飯のためにいったん降りたけど、明日はまたヘリで進むことにしよう。」

「分かった。」

「じゃあ。」

ドン!

俺はM1126 ストライカー装甲車を召喚した。

「今日はこの中で休もう。シャーミリアとカララとファントムは外で護衛を、セルマはこの車の側で寝てくれ。俺とエミルとアナミスは申し訳ないがこの中で休ませてもらう。」

「は!!!」

二カルス大森林の夜はさらに更けてゆくのだった。