軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第180話 大陸の魔人と出会った

俺達はAW101ヘリコプターでサナリアからユークリットの王都方面に向けて飛びたった。

しばらくするとエミルが話しかけてきた。

「あのさ・・ラウル。」

「どうした?」

「もう少し大きな機体が良かったな。」

「どうしてだ?」

「これ以上高度が上がらない・・」

「やっぱ無理があったかなあれ?」

「ああ、そしてあれ・・中に入れてやらないか?かわいそうじゃないのか?」

「そうか。やっぱ外は寒いしな・・でも機内に入れたらちょっと臭いかもよ。」

「入れてやれよ。元、お前んちの使用人だろ。」

「わかったよ。いったん着陸してくれよ。」

そして俺達はサナリアを発ってからたったの1時間で、いったん荒野に着陸し6人はヘリを降りて外に出たのだった。するとシャーミリアが俺に聞いてくる。

「どうなされたのです?ご主人様?」

「ああちょっと高度が上がらないみたいなんだ。」

「左様でございますか。」

《ちぇっ!AW101がカッコいと思って召喚したのにな。》

そんなことを考えていると・・

くおぉおぉぉん

ロープを引きちぎって後ろの方からセルマ熊がのしのし歩いてくる。

「ああ・・セルマごめんな。寒かったか?」

ぐうぐぅ

俺達はサナリアからここまでAW101ヘリコプターにセルマを吊るして飛んできたのだった。そのせいでエミルは高度をあげる事が出来ずにいたらしい。セルマはセルマで不満があるようにぐうぐう言っている。

「ごめん。じゃあセルマも中に乗れる奴を出すからさ。」

くおぉぉぉぉん

まるで最初からそうしてください!と言っているように聞こえる。

「ほっ!」

ドン!

俺が召喚したのはCH-53Eスーパースタリオンという巨大ヘリコプターだった。全長26メートルで最大積載量が13トン。ジープなどの車も搭載する事も出来るヘリだ。最大速度も315キロと性能も良い。

「よし!ファントム!今まで乗って来たAW101を丸めてくれ!」

どこか遠くを見つめて立っていたファントムがスゥっと消えた。

ガン!ガン!ガン!ガン!ガンガンガンガンガンガンガンガン

AW101がどんどん丸め込まれて小さくなっていく。あっという間に鉄球になってしまった。

「よーし!丸くなったな。じゃあこれを蹴り飛ばせ!」

ガキン

ビューン

鉄球になったAW101は遠くに飛んでいくのだった。

ズゥゥゥゥン

遠くで落ちる音がした。

「彼って・・」

「ああ俺の従者だよ。」

「そんなことはわかってるけど・・」

「すごいだろ。」

「ああ・・」

そして俺達は新たに召喚したスーパースタリオンに乗り込むことにした。この巨大ヘリならセルマも体をぎゅうぎゅうに丸めて乗り込むことができた。しかし、アンコをぎっしり詰め込んだたい焼きのように、スーパースタリオンの中はセルマでぎっしりになっている。

セルマ熊を詰め込んだヘリに乗って、再び俺達は空に舞い上がる。

「ラウル!今度は高度があげられるよ。」

「そいつは良かった。」

「3500メートルくらいでも大丈夫そうだ。」

俺達はユークリット王都北側の数十キロ付近を通過して飛び、さらに4時間ほどして西の山脈にいた。ここまでの飛行で敵兵に気づかれる事はなかったと思う。

《もしこの世界の住人がはるか上空を飛ぶヘリコプターを見たとしても、なんだか分からないだろうしな。》

そして山脈に到達した俺達は驚愕の光景を目の当たりにした。

「うわ!なんだあの山・・」

「本当だ・・・」

ヘリは高度3500メートルを飛んでいるのに、山がそれ以上に高くそびえていたのだ。

「10000メートル級の山が連なっている・・」

「南北にどこまでも続いているぞ」

「これは凄いな。東にこんなに高い山はなかった。」

「これが西カルブ山脈か・・」

「エミルすげぇ。物知り!西カルブ山脈っていうのか。」

「見るのは初めてだよ。」

「そうか。しっかし規格外だなこの風景は・・」

「そうだな・・・ん?」

「ん?どうした?」

「そろそろコイツの燃料が切れる。」

そろそろ日が真上より西へ傾きつつある。そろそろ俺達が乗って来たスーパースタリオンも燃料が尽きる頃だった。

ヘリの燃料が尽きてしまいそうとの事ではあるが・・・

「えっとエミル。このあたりに平地が無いんだけど・・また上空でこれ捨てる?」

「いやまてまて!ラウルとりあえず大丈夫だ。セルマも乗っているじゃないか。」

エミルは以前の、海の上空で突き落とし事件がいまだにトラウマになっているらしい。上空で飛び降りるのは嫌だったみたいだ。

「そうか。」

「着陸だけはきちんとさせるよ。」

「分かった。」

乗っているのはファントム、シャーミリア、カララ、アナミス、なので墜落しても心配ないと思うが、俺とエミルとセルマ熊の万が一のために配下に脱出を頼んでおく。

《みんな、もしものときは・・》

《ええご主人様もちろんでございます。》

《ご友人は私が。》

念話でシャーミリアとカララと話す。

しかしその心配は杞憂に終わった。エミルが断崖の上に無事に大型ヘリを着陸させたからだ。

「神業だな。」

「いや・・救助もしたことあるからこのくらいは問題ない。」

「尊敬するよ・・」

「そうか。じゃあいっぱい尊敬しとけ。」

「うーん。まあ尊敬しとく。」

そして俺達は一旦ヘリから外に出てみる。

するとヘリは見事に切り立った断崖絶壁の上に着陸していた。直径50メートルある円柱状の岩の上にうまく降り立っていたのだ。

「やっぱうまいわ。」

そして俺は乗って来たスーパースタリオンの処分をファントムに依頼する。

「よし!ファントム!これを丸めろ!」

どこか遠くを見つめて立っていたファントムが・・パッっと消えた。

ガン!ガン!ガン!ガン!ガンガンガンガンガンガンガンガン

「また・・なに・・・彼は・・?」

「ああ俺の従者だよ。」

「そんなことは分かってる!またヘリが鉄球になっていくんだけど。」

「今さ俺の指示聞いてなかった?あいつに丸めろって言ったじゃん。」

「丸めろ・・て、さっきも言ってたけど解体工場かよ。」

「そうだな。俺も今日初めてヘリ丸めるの見たけどすげえわ。」

あっというまに大型ヘリが鉄球になって転がった。

「ファントム!そいじゃそれを山の方にむかって蹴っ飛ばせ!」

ガイン!

巨大鉄球が山脈の方に飛んで行ってしまった。

エミルが・・ほげーッという顔で一部始終を眺めていた。

「すげえ・・絶対キーパーは止められないぞあんなシュート。」

「間違いなくぺしゃんこだ。」

ズゥゥゥゥン

山の方からヘリコプター鉄球が落下した音が鳴り響いだ。

「ずいぶん飛んだな。」

「ああ。」

それにしても、とても空気がいい場所だった・・だが・・寒い。ここから見える山の中腹から上は白く雪が積もっていた。

ブルッ

エミルが体を震わせている。息も白くどうやらだいぶ気温が低いようだった。

「これを着ろ。」

俺はロシア軍製の防寒着上下を2着召喚した。

「おお・・ありがてぇ。」

俺とエミルは二人で迷彩中綿防寒服の上下を着こんだ。

「どうだ?」

「ああ。あったかいな」

「よかった。じゃあ飯にしようぜ。セルマはすまない・・外で待っていてくれ。」

くおおおん。

大型テントを全員で設置し中に入る。

「ふう。」

エミルが息を吐いて落ち着いた。

戦闘糧食Ⅱ型を呼び出して俺とエミル、カララ、アナミスに渡す。

「カララとアナミスにはもっと違う食料がいいんだろうが・・今はこれで我慢してくれ。」

「いえラウル様!十分でございます。」

「ありがとうございます!」

シャーミリアとファントムには食料はいらないので出していない。

「まず食おうぜ」

「ああ。」

全員で食事を始めた。

「西の山脈は魔獣が大量に住んでるって話だが、ヘリからの視界では何も見つける事は出来なかったな。」

「ああ、ワイバーンもいなかった。もしかするともっと奥に行けばいるかもしれないぞ。」

「ワイバーンか、まだ見た事は無いな。」

「ワイバーンなんか出たら、ヘリとか・・ひとたまりもなさそうだけど。」

「たしかに。」

《それはあまり考えていなかったな。そうかヘリに乗ってる時に、巨大な翼竜とかの群れに遭遇したりしたらリスクがあるかもしれないな。》

「いえご主人様。もしワイバーンなどが出ましたら私奴にお任せください。」

「ああシャーミリア。よろしく頼むよ・・じゃあM134ミニガンを渡しておくか。」

「はい。それならだいぶ楽に倒せそうです。」

「すまないな。」

「とんでもございません。」

いや・・このメンツでリスクとかないわ。

俺達は一通り飯を済ませた。

「エミル。少し横になっていいぞ。その前にこれ飲んでおけ。」

「これは?」

「ミーシャ特製のポーションだ。もらったんだ。」

「いいのか?」

「遠慮するなよ。」

ゴクゴクゴクゴク

「かーーー!これは酒のような・・しみる。」

「あ、間違った。それはバルムスからもらったドワーフの酒だ。」

「おまえ・・わざとだろ・・」

「温まるだろ。」

「まあ確かにな。」

ドサ。

グー!

「あれ?エルフってこんなに酒に弱いの?」

「弱くねぇよ。寝ろって言ったのお前だろ。」

「あ、いきなりだったからびっくりしたよ。」

「じゃあ・・寝る。」

スースー

いきなり寝た。

すごい。エミルにこんな特技があったなんて。

エミルが寝ている間に俺はテントを出てセルマ熊にバフッと座る。そこから西の山脈方面を双眼鏡で見てみることにした。

「セルマはあったかいな。」

くぅ。

セルマが俺の頭を爪でそっとなでている。

山肌は真っ白で特に生き物がいる気配が無い。

《もしかしたら保護色とかで白いのかな?シロみたいに。》

上空を見てみるがどこにも魔獣の気配はない。

《グラム父さんは西の山脈から、魔獣たちが人里に降りてきて暴れているって言ってたけどな。》

ずーっと山肌を下るように双眼鏡で下がっていく。

雪の無い麓までずっと視線をおろしていくと・・かなり平地に近いところに・・

村?

《いや・・こんなところに村なんかあるわけがないか。》

しかし柵もどきがあり数軒のボロ家・・家と言うのもおこがましい建物らしき木の積み上げられたものがある。

《なんか生き物の住みかかね?》

すると建物らしきものの中から何かが出てきた。そして俺はそれが何かすぐにわかった。

「ゴブリン・・」

そう・・林の中にボロボロの村を作って住んでいたのはゴブリンだった。

「マジか。大陸で会う初の魔人じゃないのか?いや人間社会ではゴブリンは討伐対象の魔獣なんだっけ?」

出てきたゴブリンはすぐに隣の家にごそごそと入っていった。

「すげえ。一応知恵もあるのか。あんな建物を作ってるんだからな・・まあ建物って言うよりも巣って感じではあるがな。」

俺は興奮していつの間にか口に出して喋っていた。

「ご主人様。いかがなされました?」

俺の声を聴いてシャーミリアがテントを出て俺の側にやって来た。

「いや、ゴブリンの村を発見したんだ。」

俺が指さす方向を見るとシャーミリアも確認したようだった。

「本当でございますね。こちらの大陸にもゴブリンが住んでいるのですね。」

「ああ・・あの、シャーミリア。あそこ行きたい。」

「はい。もちろん行きたいというのであればすぐに。」

「じゃあ、ファントム!カララ!アナミス!エミルとセルマを守っていてくれ。」

「かしこまりました。」

「お任せください。」

ファントムはどこか遠くを見つめている。

俺とシャーミリアは崖の淵に立った。するとスッと俺の脇にシャーミリアが片手を突っ込んで岸壁を飛び立つ。

ドン!

次の瞬間ゴブリン村の前にいた。

《すげえ・・シャーミリアの飛行速度はどんな域になってるんだ。そして俺もそのスピードに耐えられる体になっているんだな・・つくづく人間離れしてしまった・・》

音もなく降り立ちそっと村に入っていく。

まだ誰も気が付いていないようだった。

《シャーミリア。ゴブリンたちは?》

《家の中におりますが我々には気が付いていない模様です。》

《わかった。》

俺は一軒の家・・巣に近寄っていく。

「すみませーん。」

するとゴブリンが慌てたように外に出てきた。その声に合わせて他の家からもぞろぞろと出てくる。それぞれの手には冒険者から奪ったのか、さびた剣やナイフそして木を削りだした槍などを持っていた。

「よせよせ。俺は敵じゃない。」

ゴブリンたちはヨダレをたらして俺を睨んでいたが・・そのうちに少し様子が変わる。

スンスン

スンスン

スンスン

離れたところから俺の匂いを嗅ぎだしたのだ。

「シャーミリア。あれ何してんだと思う?」

「おそらく・・ご主人様に何かを感じ取っているようです。」

「俺にか・・・」

ガシャ カラン カシャン ドサ

それぞれがその手に持った武器を地面に落として膝をついた。そしてゴブリンたちは頭を地面につけてひれ伏した。

「どうしたのか。」

「恐れております。相当強い恐怖を感じ取る事が出来ます。」

「俺が怖いのか?」

「そのようです。」

そうか・・いきなりこんなところに現れて変な服装で立っているからな、そりゃ怖くて当たり前だ。

「えっと!お前たち!俺は敵じゃない!」

ゴブリンたちはピクリとも動かない。

「どちらかと言うと味方だ!大陸の魔人を助けに来た。」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「ご主人様。おそらく彼らは言葉を理解していないようです。」

「やはりそうか・・そりゃあ教育も受けずに自然で生きてるんだもんな。当たり前だ。」

「いかがなさいましょう?」

「えっと・・食い物だろうな・・こういう時に親睦を深めるのは。」

俺はポケットから催淫の香を取り出した。雪山の中には魔獣が見えなかったがこのあたりにならいるかもしれない。催淫の香とはその昔、俺とマリアの寝込みを襲ったグレートボアを呼び寄せた実績があった。

《催淫の香でおびき出してこいつらのためにグレートボアでも獲ってやろう。》

俺は催淫の香に火をつけた。

クンクン

クンクン

クンクン

ゴブリンたちはその匂いに反応している。すると・・・

「しまった!」

時すでに遅し!男であろうゴブリンが女のゴブリンを押し倒し始めた。あちらこちらでいろいろと始まってしまったのだった。

俺は慌てて催淫の香を消してポケットにしまう。しかし一度火が付いたゴブリンたちは皆、欲情して止められなくなってしまったようだった。

「あの・・シャーミリア。」

「はい。ご主人様。」

「失敗した。」

「そのようで・・」

「帰ろうぜ。」

「かしこまりました。」

ズン!

ゴブリンの里の大地を蹴って上空に飛ぶ。

あちらこちらでおっぱじめてしまったゴブリンをしり目に、俺はシャーミリアに連れられてキャンプの場所まで戻って来たのだった。

何事もなかったようにテントに入る。

「さて・・そろそろ行こうか。」

「はい。ご主人様。」

「エミルは、そろそろ起きれるか?」

エミルがぱっと起きる。今まで熟睡してたみたいに見えるけど・・すげえな。

「おっ!ラウル行くのか?」

「ああ、酔いは?」

「一口含んだだけだ、全く酔ってなんかないよ。」

「それじゃあ出発しようかね。」

再度スーパースタリオンヘリコプターを召喚する。

ドン!

「じゃあ乗り込むとしよう。」

俺達を乗せたヘリは今度は山脈を南下して飛んでいくのだった。

しかし・・大陸の魔人との初コンタクト・・

まさかの〇〇パーティーにしてしまうとは。我ながらアホだと思ってしまうのだった。