軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間話:『休日返上の理由』

しばらくの後。

ドックの喧騒は嘘のように静まり返っていた。

ハヤトさんはしょんぼりと肩を落とし、巨大な蒸気エンジンの影で体育座りをしている。その背中からは「反省中」というオーラが立ち上り、先程までの勢いは微塵も感じられない。

彼の正面には、優雅に腕を組んだマリア様が仁王立ちしていた。

どうやら、グレイグ中将が私たちを呼び出したのと同時に、マリア様にも救援要請を出していたらしい。駆けつけた彼女は状況を一瞥するなり、ハヤトさんの耳元で何かを囁いた。その一言で、あれほど意気揚々としていたヒーローは、あっという間に借りてきた猫のように大人しくなってしまったのだ。

「ごめんなさいね、リナ。うちのあんぽんたんが、また迷惑をかけたようで」

マリア様は完璧な淑女の微笑みを私に向ける。

「ええ、もう。……この通り、きつく、きつーく、言い聞かせておきますから」

その言葉に、ハヤトさんが「あんぽんたんじゃねえ……」とむっとしたように呟いたが、マリア様が氷の視線を一瞥くれると、「……なんでもありません」と再び膝を抱えて体育座りに戻っていった。

私は苦笑しながら、マキナさんの元へと歩み寄る。彼女はまだ、落書きされた設計図を見て深いため息をついていた。

「マキナさん、すみません。大切な設計図をこんなにしてしまって……」

「いやいや!」

私の謝罪に、マキナさんは慌てて手を振った。

「リナが謝ることじゃねえよ! 全部あの脳筋のせいなんだから!」

彼女はそう言うと、ぐしゃぐしゃになった設計図を丁寧に伸ばし始めた。その横顔は、もう怒りではなく、どこか呆れたような、それでいて少しだけ楽しげな色を浮かべていた。

私はその設計図を覗き込み、一つの提案をする。

「この船も素晴らしいですけど……ある程度、皆さんに引き継いだら、急ぎ、海よりも空を目指しましょうね!」

その一言が、マキナさんの瞳に再び火を点けた。

「おうっ! そうだな!」

彼女は勢いよく立ち上がると、近くで作業していた船大工たちに向かって吼えた。

「おめーら! この『水中翼船』の構造について、もう質問はねえな!? あとは任せたぞ! もし変なもん作ったら、海に叩き込むからな!」

「「「へい、局長!」」」

職人たちの威勢の良い返事が、ドックに響き渡った。

私の休日は、こうしてあっけなく終わってしまった。

だが、活気に満ちた工房の熱気と、それぞれの場所で自分の役割を果たそうとする仲間たちの姿を見ていると、それも悪くないと思えてくる。

(……まあ、たまには、こういうのもいいか)

私は小さく息をつき、空を見上げた。