作品タイトル不明
126.
聖王国の一件から、しばらくが経ったある日。
ミシェルは家臣一同を集めて、軍議を開いていた。
「今回の件、皆さんお疲れ様でした。特に、グレース。本当に良い働きでした」
Sランカーの手により、帝国軍人達は、高ランク冒険者と遜色ない実力を身につけていた。
武装した聖王国兵を瞬く間に制圧したことがその証左だった。
「あたしは与えられた仕事をしただけさ。それに感謝するのはこっちのほうだよ。今凄く幸せだからね」
グレースは、マルコーという恋人ができた。
戦いしか知らなかった彼女にとって、彼は人生にぬくもりをもたらしてくれる存在だった。
「ふっ……。わかるぞグレース」
軍議の場に参加していたギデオンが、訳知り顔でうなずく。
「ミシェルの元で、ミシェルのために働けるのは、これ以上ない幸せだものな。わかる」
「全然わかってないですぅ~……」
ティルの的確なツッコミをよそに、ミシェル達は本題へと入った。
「軍事力強化によって、今回みたいな他国からのちょっかいも減るでしょう」
「ふ……。ミシェルにケンカを売る馬鹿が減るのは喜ばしいことだ」
ティルが「いやあんたの国でしょう……?」と小声でつぶやいたが、やはり黙殺された。
ティルの師匠であり、魔法学院長であるピクシーが言う。
「ミシェルの指示通り、今回の演習の凄まじさを、スパイを通して情報をあえて流しておいたよ。よっぽどの愚者じゃない限り、無謀な侵攻は控えるだろうね」
「ふっ……。もっと俺のミシェルのすごさを、ガンガン伝えていくがよい」
ミシェルはギデオンに取り合わず、議題を進める。
「次なる方針を示します。国力、および国土拡張です」
ピクシーだけは、ミシェルの意図を理解できるようだった。
だがティルは「あのぉ……」と恐る恐る手を上げる。
「他国と戦争して領土を奪うって意味じゃあないんですよね、当然。そうなるとぉ~……まさかぁ~……」
「ええ、そのまさかです」
ティルの顔から血の気が引く。
ギデオンは自信満々に「なるほど、そういうことか」とうなずく。
「陛下はご理解いただけてるんですぅ?」
「いや、さっぱり」
「だれですぅ! こいつを軍議の場に呼んだのはぁ! お地蔵さんのほうがまだましですよぉ!」
「 馬鹿(ギデオン) にもわかるように説明します」
「馬鹿と書いてギデオンと呼んでる気がするですぅ~……ひぃ! にらまないでぇ!」
ピクシーが深くため息をつく。
「ティル。君は余計なこと言い過ぎだ。相手は一国の要人だってことを忘れないように」
「わかってますよぉ~……」
ミシェルは続ける。
「我々はこれより、帝国内にある禁足地、『 妖精郷(アルフヘイム) 』を手に入れにいきます」