作品タイトル不明
127.
妖精郷(アルフヘイム) 。
帝国のはしに広がる巨大樹の森である。
鬱蒼とした木々が生い茂り、その一本一本が見えゲルほどの高さを誇っていた。
森には凶悪な、魔蟲と呼ばれるモンスターが跋扈している。
それだけでなく、強烈な毒性を持つ瘴気が一帯に充満していた。
なんの対策もなく踏み入れれば、一般人はものの数分で命を落とすだろう。
「そんな危ないとこ、わざわざ開拓する必要あるんですかぁ?」
ティルの意見ももっともであるが、ミシェルはなお続ける。
「かつての探索記録によると、妖精郷には、膨大な量の魔力結晶が埋蔵されているそうです」
魔道具作成に欠かせない、魔力結晶。
高純度な結晶はより高値で売れるうえ、質の良い魔道具を生み出すことができる。
これらを大量に手に入れられれば、国の財政は大きく潤うことになる。
「しかし、探索の記録があるのに、未開のままという事実が、開拓の難しさを物語っております」
何があるかを突き止めるところまでしか、手が及ばなかったということだ。
開拓は思った以上に、困難な事業と言える。
「開拓に際し、問題となるのは2点。瘴気、そして魔蟲です。記録によれば魔蟲の外郭は通常の剣や魔法では一切ダメージが与えられないそうです。また、瘴気も治癒術師の浄化魔法が通じなかったとか」
いずれの問題も、魔法が全く通用しないという共通点を抱えている。
「じゃあどうするんですぅ?」
「少数精鋭の先遣隊を送り、サンプルを採取させましょう。それを元に対策を講じます」
知恵者であるピクシーもミシェルの案に賛成する。
ティルの額に、じわりと汗が浮かんだ。
「あのぉ、先遣隊ってだれがいくんです?」
「俺だな」
黙って聞いいてたギデオンが、待ってましたとばかりに、立ち上がる。
「俺の頑丈な体が役にたつ。ミシェルのために、最大の戦果を見せてやろう」
「バカですかあなたは。皇帝をそんなところに送れるわけないじゃないですか」
もっともすぎるミシェルの返答を聞き、さらに額から汗を流す少女がひとり。
「ま、まさかてぃるを送り込むなんてことはしないですよねえ」
「言わせるまでもないでしょう。あなたとピクシー、そして護衛に新兵。それで行ってもらいます」
ティルは半ばこうなることを予想していた。
ミシェルは最高指揮官なので論外、しかし今回の作戦はかなり重要なものだ。
ミシェルの信頼する部下が選ばれるのは当然で、そしてお役目はティルのもとへ回ってきたのだった。
「あ、あいたたた! お腹が! 猛烈にお腹がぁ!」
「下痢止めをフローラからもらっていきなさい。健常者が飲めば数週間は用を足せなくなるようなやつを」
仮病など、一秒で見抜かれてしまう。
「ひぃん鬼ぃ。悪魔ぁ」