軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第140話 トウイとの出会い

【10月25日】

今日は学校が休みだ。そして今、馬車の中に僕はいる。

隣にはミカが座っている。そして正面にはシズカが座っている。

向かっているのは屠殺場ダンジョン。

僕とミカは【鳳凰の剣】の感触を掴むためにオークで試し切り。

シズカはファイアーランスがオークに効くのか試しにきた。シズカとダンジョンに来るのはボムズで焦土の渦ダンジョンに連れて行った以来である。

テンションの高いシズカを軽くいなして屠殺場ダンジョンに着く。

シズカがどうしても蒼炎の魔法を見たいというので一回だけと条件を付けて了承した。

3人で屠殺場ダンジョンに入る。早速、オークが2匹現れた。

僕は蒼炎の魔法の呪文を詠唱始めた。

【焔の真理、全てを燃やし尽くす業火、蒼炎!】

まさにオーバーキルだ。オークは無慈悲にも消え去った。

口をポカンと開けているシズカ。

「どうしたの? ダンジョン内では気を抜かないでね」

「あ、ご、ごめんなさい。蒼炎の魔法があまりにも綺麗だったから」

綺麗か、確かに蒼炎って美しいよね。自分が褒められたようで嬉しくなる。

その時、オークが3匹現れた。シズカが即座に呪文の詠唱を開始する。

【火の変化、千変万化たる身を槍にして貫け、ファイアーランス!】

槍状に変化した火が真っ直ぐオークの肩を貫く。オークは苦しんでいるようだが倒せてはいない。

危ないので僕とミカが【鳳凰の剣】で倒す。3匹のオークはE級魔石に変わった。

【鳳凰の剣】の特殊効果は斬撃強化、火属性の武器である。オークを切った手応えはほとんど感じなかった。まるで素振りをしているようだった。

これなら金属性のダンジョンが多いコンゴ周辺でも活躍してくれそうだ。

オークと初めて戦闘したシズカはとても興奮していた。

シズカはファイアーランスを15発撃ったところでMP切れになる。今日はそれで終了だ。

早くダンジョン活動が終わったため、お店でお茶を飲む事にする。

興奮冷めやらないシズカがずっと話していた。

次の日、朝からシズカが屠殺場ダンジョンでオークと戦闘した事をクラスメイトに自慢していた。

自慢しているシズカを見ながら苦笑する僕。

昨日、シズカのファイアーランスではオークを倒す事ができなかった。やっぱりE級ダンジョンを安定して倒すには、それなりの冒険者じゃないと厳しいのだろう。

お昼ご飯を学生食堂で食べてクラスに戻る。

自分の席に座ると男性のクラスメイトが近づいてきて話しかけてきた。

「アキくん、俺はトウイ。半年経っているから名前は覚えてもらっているかな? ちょっと心配でね」

話しかけてきたのは赤のAクラス唯一の平民の生徒だ。意志の強そうな目が特徴である。

しかし髪は真紅である。魔法は貴族しか使えない。

それが平民なのに髪が真紅である。先祖帰りなのか? いや貴族の隠し子ではないかと言われている生徒だ。

ここの授業料をどうしているのか? それすら分からない生徒である。

僕はチャンス到来!と心の中で叫んだ。

ここはフレンドリーで行く場面だ。どれだけ学園が設定の小説を読んできたと思っている。そう、今この瞬間のためだ!

「いやだなトウイ、名前は覚えているよ。男性同士、それにクラスメイトなんだから僕の事はアキと呼び捨てにしてくれ」

決まった! 僕は心の中で喝采を上げていた。

「俺は平民だから、貴族の君に呼び捨ては厳しめかな。でも努力はしてみるよ」

ファーストコンタクトは78点ってとこかな。まだこちらの針にしっかり食いついていない。ここは我慢だ!

「それよりトウイ。何か用かな? まぁ用が無くとも話しかけてくれて良いけどね」

満面の笑みでフィニッシュ! 完璧だ!

「シズカくんとダンジョンに行った話を聞いてね。良ければ俺とも行って欲しくて」

二つ返事で了解した僕だった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

【11月1日】無の日

数日前から待ち望んだ日である。今日はトウイと屠殺場ダンジョンに行く日だ。数日前からダンジョン活動の注意点や用意する物などを話していた。

これはもう友達と言って良いんだよね。僕、騙されていないよね。

99%の期待と1%の不安の心で僕は家の前で待っていた。

落ち着かない僕を見て微笑ましく見守ってくれるミカ。

学校の方角から歩いてくるトウイ。

トウイは学校の寮で生活している。僕も寮に入れば友達がいっぱいできたかな?

トウイの装備は標準的な片手剣、左手にはバックラーだ。身体は革製の装備で身を固めている。

「おはよう、トウイ。今日は良い天気で良かったね」

「おはよう、アキ。馬車まで用意してもらってありがたいよ」

「それじゃ、早速出発しようか」

朝の挨拶は90点だ! 出発への流れも自然。トウイはここ数日のダンジョンの事前打ち合わせで僕の事を呼び捨てにするようになっている。このまま仲良くなれれば良いな。

馬車に乗り僕の隣にミカが乗る。向かいにトウイが座る。当たり障りの無い会話をしていたが、トウイがミカと話すと少し顔が赤くなっているような気がする。ミカは美人さんだからな。

トウイはファイアーランスを最近使えるようになっている。優秀な魔法使いだ。ただ魔法の精度はまだまだのようである。

今日の作戦はオークが出たらトウイがファイアーランスを撃つ。その後、僕とミカでオークを1匹残して倒す。その後、トウイが接近戦でオークと戦うというもの。

トウイのファイアーランスと接近戦の実践経験を両方積めるようにした作戦である。

街中にある屠殺場ダンジョンに着く。トウイは少し緊張しているようだ。

装備の確認をして屠殺場ダンジョンに入る。少し歩くと前方にオークが4匹現れた。

トウイが呪文の詠唱を始める。

【火の変化、千変万化たる身を槍にして貫け、ファイアーランス!】

残念ながらファイアーランスはオークの上空を越えて行った。

予定通り、僕とミカはオーク3匹を倒す。残り1匹のオークを残して、トウイとスイッチした。

オークは馬鹿力がある。一発パンチが入るとこちらのレベルが低いと危ないモンスターだ。太っているが筋肉質で耐久力がある。

はっきり言えば普通の人が接近戦をするのに適してはいない。

それでもトウイは屠殺場ダンジョンに行きたいと熱望した。僕は止めたがトウイは屠殺場ダンジョンを選んだ。

オークの横殴りの右パンチが振われる。それをバックラーで防ぐトウイ。防御はしたが少し身体が吹き飛ばされる。

体格差があるのでここは避けた方が良いと思う。

オークの激しい攻撃。それを必死に 捌(さば) くトウイ。

トウイの目は死んでいない。特徴的な意志の強そうな目がオークをしっかり観察している。

トウイはオークの大振りに、少しずつカウンターを合わせていく。

オークの首に入った一撃が良かった。

長い戦闘になったがオークはE級魔石に変わった。お膳立てはしたが、確かにトウイは一人でオークを倒しきった。

肩で息をしているトウイに声をかける。

「お疲れ、いろいろ改善点はあるけどオークを倒したのは凄いよ! 少し休もうか」

「アキから見て、俺は冒険者で成功すると思うか?」

「成功って言われると、何を成功と言えば良いか分からないな。ただ火属性の魔法が使えるし、剣術も使える。どちらもしっかり伸ばして行けば、トウイは最低それなりの冒険者ランクにはなるとおもうけど」

「そっか! Bランク冒険者のアキに言われると自信になるなぁ」

「トウイは冒険者を目指しているの? 王都魔法学校の卒業生はエリートコースなのに珍しいね。騎士団とかは?」

「官僚になっても騎士団になっても、周りは貴族ばかりだろ。それが嫌だ。今の学校生活もあんまり馴染めてないしな。それなら平民ばかりの冒険者になりたいって思ってる。憧れている人がいるんだ」

「憧れている人?」

「冒険者になって自由になりたいんだ。【白狼伝説】のウルフのようにね」

僕の心の中で、トウイと親友になる扉が開かれた音がした。