作品タイトル不明
王城の宝物庫 2
* * *
王城に入ると、ルティアとハルトは表情を改めた。旦那様と私ももちろんのことだ。
レイが瞳を煌めかせた。
「会いたかったの!!」
走り出す前に捕獲。私も慣れたものだ。
「お久しぶりです」
「ええ、ベルセンヌ卿――――」
ルティアとハルトに3年間剣を教えてくださったベルセンヌ卿だが、近衛騎士団長として実戦力を高めたいと遠征に参加していたためお会いするのは一月ぶりだ。
レイは、ベルセンヌ卿に会いたかったようだ。
「ひのけんしゃん、こーりのけんしゃん!!」
レイが駆け寄った目的は、ベルセンヌ卿ではなく火と氷の双剣だったようだ。
ベルセンヌ卿の左右の腰に下がっているのは、フィアーゼ侯爵家のエントランスホールに飾られていた火と氷の双剣だ。
――保存方法が正しくないと、ハルトは怒った。
「……火と氷の双剣、すごい、本当はあんなにきれいなんだ」
ハルトの独り言が聞こえてくる。その声からは喜色がにじんでいた。
きっと、丁寧に手入れされているのだろう。
火と氷の双剣は、以前にも増して美しい炎と氷をまとっている。
やはりレイは、魔導具と会話ができるのだろうか……。いったい、どういう力なのだろう。
ベルセンヌ卿は、王国流の剣の使い手だったが、双剣のほうが本来は得意だった。
日に焼けた肌は、以前よりも精悍な印象を彼に与えている。
「「おひさしぶりです。ベルセンヌ卿」」
ルティアとハルトが前に出て挨拶した。
「ルティア、ハルト、剣の鍛錬は頑張っていたか?」
「「はい!!」」
ベルセンヌ卿の笑みは麗しく、貴公子然としている。
だが、教官としての彼は、まさしく『鬼』なのである。
「お久しぶりです。フィアーゼ卿」
「ああ、ベルセンヌ卿……黒い森の様子はどうだった?」
「――それについては、後ほどお時間をいただいてもよろしいでしょうか」
「もちろんだ」
黒い森、新人騎士の訓練場になっているが……ベルセンヌ卿はそこへ行っていたようだ。
彼はどんな武器でも使うことができるため、教官としても活躍しているらしい。
しかし、その名前を聞くたびに思い出すのは、千年前にレイブランドに封印されたという空を飛ぶ獅子の魔獣のことだ。そして、三百年前にレイブランドと一緒に戦ったという騎士のことも……。
それから私は、旦那様を見つめた。
ずっと、多くの人を守るために自分の身を顧みずに魔獣と戦い続けてきた優しい彼のことを……。
「エミラ?」
「……旦那様」
「行こう」
「はい」
旦那様はレイを抱き上げた。
ルティアは、ちゃっかりベルセンヌ卿にエスコートしてもらっている。
ハルトは、堂々と歩き出す。
――視界の端で、王城の使用人に扮したアンナがこちらに視線を向けているのが見えた。