軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十二話「ドワーフフェスティバル再び:技能評定会」

ドワーフフェスティバルを明日に控えた、三月二十四日。

館ヶ丘の南の草原では、まだ午前の早い時間にも関わらず、既に会場の設営は始まっていた。草原で作業している人々はもちろん、ラスモア村全体が異様な活気に満ちている感じがする。

ドワーフフェスティバルは鍛冶師ギルドによる酒類品評会だと一般の人々に思われている節があるが、本来の目的は鍛冶の腕を競う技能評定会だ。

その“技能=腕”で鍛冶師ギルドに売られる三年物のスコッチと、長期熟成酒である“ザックコレクション”の配分を決めるのだ。

前回の第一回評定会ではウェルバーン支部しか技能を披露していないが、今回は俺が“ 特任(スペシャリティ) 師範(マスター) ”を務める“ 熟練者(エキスパート) コース”を受講した支部が多数参加する。

もちろん総本部も参加し、俺たちの武具を披露することになっていた。総本部の鍛冶師たちはこの機会に自分たちの腕を見せ付け、他の支部に酒を奪われないようにするつもりのようだ。

参加する支部だが、南は帝都プリムス支部、北はラクス王国の王都フォンス支部、東はアルスの総本部、そして西は今回初参加の商業都市アウレラ支部だ。

この他にもエザリントン、フォルティス、ペリクリトル、ドクトゥス、ウェルバーンなど主要な都市の支部はほとんど参加すると言っていいほどだ。

当初、第二回の開催は最低でも三年は掛かると思っていたが、ドワーフたちの強い意向により、僅か二年で主要な支部の親方たちは武具を作り終えた。その高い向上心、いや、酒への執着心に脱帽するしかない。

技能評定会は単に武具を並べるだけではない。使用者に合ったものを作っているということを示す必要がある。すなわち、武具を装備する戦士も同行しているということだ。

ということで、現在ラスモア村にはレベル七十を超える猛者たちが五十人以上いる。

今この瞬間だけだが、ラスモア村は世界最強の村と言ってもいいだろう。この戦力なら一昨年のアンデッドの群れでも一日あれば叩き潰せるのではないかと思ってしまうほどだ。

もっとも最強の剣術士、“ 剣聖(ソードマスター) ”のギデオン・ダイアーや、ラクス王国の英雄、“ 赤腕(レッドアームズ) ”のハミッシュ・マーカットはいないため、“最強の戦士”が集うというところまではいっていない。

赤腕ハミッシュだが、フォンス支部が武具を作りたいと提案した際に断ったそうだ。理由は今の武具でも充分なことと、依頼が多すぎて一ヶ月以上もラクス王国を離れられないためだそうだ。

マーカット傭兵団には他にも優秀な傭兵が多く、彼らにも声を掛けたそうが、団長が受けないのに自分が受けるわけにはいかないと断られた。

何とか別の傭兵に頼んで熟練者コースを受講したが、俺としては“レッドアームズ”と呼ばれる凄腕の傭兵に会いたかったので非常に残念だった。

レッドアームズの面々に会えなかったことは残念だが、バディたちを含め、凄腕の戦士たちに時間を見つけて稽古を付けてもらっており、その点は非常に満足している。

稽古の時にふと思ったのだが、このまま武闘会を開いたら凄い戦いが見られるのではないかと。実現することは難しいが、できたら凄い大会になったことだろう。

もう一人のギデオンの方だが、彼も武具を贈られていない。そのため、村を訪れなかったのだが、彼の弟子のバディ・ゴーアがメッセージを届けてくれた。

「師匠はセオたちを鍛えるので忙しいそうだ。よろしく伝えてくれと言付かった」

「戻ったら御礼と弟たちをよろしくとお伝えください。弟たちですが、ギデオンさんの修行に付いていけているのでしょうか?」

俺の問いにバディは大きく頷く。

「ああ、あいつらは楽しく修行しているよ。まあ、一番楽しんでいるのは師匠だがな……」

どうやら上手くやっているようだ。但し、あまりに激しい訓練であるため、何度も骨折や気絶をしているらしく、母親代わりのギデオンの妻フランチェスカがいつも心配しているらしい。ただ、村にいる時と変わらないので、父マサイアスや母ターニャは全く心配していない。

酒類品評会の方も気合が入っている。特に一昨年優勝を逃した総本部とプリムス支部はリベンジを果たすために多くの商人を引き連れていた。また、他の支部も自分たちの自慢の酒を大量に持ち込んでおり、俺が作った地下貯蔵庫に入りきらないのではないかと思ったほどだ。

帝国からはシーウェル侯爵の家臣であり、帝国一の美食家であるイグネイシャス・ラドフォード子爵が来ている。

彼が一昨年の第一回品評会に参加できず、血の涙を流したことは有名で、今回は必ず参加すると宣言していた。そのため、事前に開催日を伝え、それに合わせてシーウェル侯から贈られるワインと共にやってきた。

そのラドフォード子爵だが、氷室になっている地下貯蔵庫を見て驚いていた。

「これほど厳重に温度管理を行っているのか! シーウェルでも取り入れた方がいいのだろうか……」

「ここは実験的な意味もありますから、シーウェル城の地下室で充分だと思います。もちろん、私が指摘した点は改善していただくというのが前提ですが」

「あれは既に改善済みだ。しかし、実験的というのはどういう意味なのだ?」

「ワインではないのですが、低温でのビールの長期熟成を考えております。今のところ上手くいっているようなので後で試飲していただくつもりですが」

その後、低温での熟成に向くラガータイプのビールを試飲していく。今回は子爵に言った通り実験的な意味が強く、ホップを強めに利かせたものや濃色系のボックのようなものなどがある。

「なるほど。これでドワーフたちを驚かすつもりなのだな」と子爵は笑うが、すぐに真剣な表情になる。

「ワインでも同じことが可能なのだろうか」

「樽熟成の段階なら美味くなる可能性はありますが、ここでは難しいですね。シーウェルほどのよいワインがありませんので」

「なるほど。今はそこまで手は出せぬが、将来的には考えておいた方がよいということか……」

そう呟くと顎に手を当てて考え込む。

「そう言えばボトルの方は足りるのだろうか? 今年のワインは例のムーラン村のワインもあるのだが?」

今年持ってきてくれたワインはベアトリスが見つけた長期熟成に向くムーラン村のワインが一樽と、昨年俺が指導した方法で作ったワインが四樽だ。子爵は俺の魔法で熟成させ、どのような結果になるかを早く確かめたいらしい。

「旅の間からずっと作っておきましたので充分に足りるはずです。既にボトル詰め作業準備は進めていますからご安心を」

といっても、今は俺の手が全く空いていないから、ボトル詰めは祭が終わってからになる。

祭を終えたら村の主婦たちの手を借りて一気にボトル詰めを行う予定だ。さすがに五百リットル入るバット樽が五つもあると、俺たちだけでは厳しすぎる。昨年も主婦たちに手伝ってもらっているので手配は万全だ。

その夜は前夜祭という名目で研修所に拉致されたが、無事に当日の朝を迎えた。

館ヶ丘の南の草原には朝から多くの人が詰め掛けていた。

昨夜から泊まり込んでいる者も多いが、それでも村には泊まり切れず、近隣のキルナレックやボグウッドに宿泊した人の方が多い。

彼らは夜明け前に出発したのか朝早くから集まり始め、午前九時には二千人近い数に膨れ上がっていた。

戦勝記念祭に引き続き、カウム王国のカトリーナ王妃は来ないと思っていたが、一昨日、王国の使者が訪れ、王妃本人も既に到着している。

王妃が他国の村に遊びに来ていいのかと思ったら、きちんとした理由があった。

「……妃殿下はペリクリトルの冒険者ギルドとの交渉を行う外交団を率いておられます。目的はトーア街道の宿場町への支部の設立依頼となります……」

トーア街道はアルス街道の宿場町バルベジーから東の要衝トーア砦を結ぶ街道だ。西側はカウム王国の穀倉地帯であり、それなりに発展しているが、東側は危険なアクィラ山脈に近いことから、開拓村が少数あるだけだ。

更にその開拓村も二年半前のオークの襲撃で全滅したところがあり、アクィラを越えてくる魔物の監視がなければ、再び開拓村に悲劇が起きることは容易に想像できる。

そのため、王国は冒険者ギルドに陳情に行くのだが、王妃自らがいく必要はないように思える。

「妃殿下がわざわざ赴かれる必要はないのでは?」と聞くと、王妃本人が平然と答えた。

「トーア街道とその周辺の安全は王国のみならず、アクィラ山脈に近い町や村にとって生死を分けるほど重要なことではありませんこと? ザカライアス卿も以前、アクィラのどこかに抜け道があるのではと懸念されていらっしゃったのでは? それならば、 私(わたくし) が冒険者ギルドに直談判することはおかしなことではないと思うのですけど」

言っていることに間違いはない。俺自身、アクィラ山脈のどこか、特にトーア砦に近い場所に抜け道があるのではないかと思っている。もし、トーア街道の宿場町にギルドの支部ができ、冒険者たちが森に入ってくれれば、魔族の侵入を早期に発見できる可能性は高い。

前回、前々回のオーク騒動の時はラスモア村の近郊を数多くの魔物の群れが通過している。現状ではダンたち村の斥候が定期的に偵察をしているし、俺が作った狼煙台で村への連絡手段は確保しているが、トーア街道付近に魔族の痕跡があると分かれば、より早期に警戒を強めることができる。

「おっしゃるとおりですが、この時期でなくともよかったのでは?」と聞いてみた。

それにもシレッとした感じで、すらすらと答えていく。

「真冬のアルス街道は危険ですから。それにあまり寒いうちにお願いすると、標高が高いトーア街道に冒険者は来てくれませんわ。今くらいにお願いすれば、夏くらいには何人か来てくださるかもしれませんし……」

流れるように説明するが、俺にはドワーフフェスティバルに参加したいための口実にしか聞こえなかった。

「それでは妃殿下には館ヶ丘でゆっくりとお寛ぎいただくよう手配いたします。何かあっては外交問題に発展しかねませんので」

そういうと初めて王妃は動揺を見せる。

「そ、そのようなお気遣いはご無用ですわ。ザックさん、あまりいじめないでください」

そういって涙目になる。

「冗談です。護衛は王国の騎士の方と当家で行います。ですので、あまり動き回らないでくださいね」

結局、カティは第二回ドワーフフェスティバルも参加することになった。

(やはり侮れないな、この王妃様は……)

王妃の参加は予定外というか予想通りというか、そんな状況だが、大事なことが残っていた。

前回司会進行を務めたジョニー・ウォーターがウェルバーンに帰り、今回はデーゲンハルトたちに同行していないのだ。

俺が司会進行をしてもいいのだが、このイベントは鍛冶師ギルドのものなので、俺も一応部外者だ。

困っていた時、ふと目に入った人物がいた。

ウェルバーン近郊の蒸留所建設予定地を案内してくれたギルド職員ジョージ・ヴァレンタインだ。

ちょうどいいところにいたので、彼に司会を頼んである。

依頼は昨日にしており、その際、彼は目を丸くして驚いていた。

「わ、私がですか! 二千人もの人の前で!」と驚くものの、物怖じしない彼は俺の依頼を快く引き受けてくれた。

メイン会場は今回も土属性魔法で作ったもので、天幕と組み合わせて舞台らしくしている。

ジョージの進行で技能評定会は始まった。

「それでは皆さん。第二回鍛冶技能評定会を開催いたします。ウルリッヒ・ドレクスラー匠合長より開会のあいさつを……」

ウルリッヒの簡単な挨拶が終わると、すぐに各支部が魂を込めて作った武具を披露していく。

順番はくじ引きで決められており、熟練者コースで作成した武具を装備した戦士たちが壇上に上がっていく。

今回は俺たちも対象だ。

総本部が改造した武具を披露することが目的で、ウルリッヒからは「派手にやってくれ」と頼まれている。中立であるはずの匠合長がそれでいいのかと聞くと、

「儂らの酒が、何と言ってもザックコレクションが掛かっておる。他の支部はすべて敵ということじゃ」

何のためらいもなく、きっぱりと言い切った。

武具の披露は順調に進み、戦士たちが出て来るたびにラスモア村の村人や近隣の住民が拍手と歓声を上げている。

俺はすべての支部の武具を見ているから優劣は何となく分かっていた。

特に魔法陣については俺だけがすべてを見ており、その緻密さや独創性など、その特徴はすべて理解している。

しかし、鍛冶師が代々引き継ぐ秘伝であることから、詳細についてはリディを含め、誰にも漏らしていない。

ただ、理論だけはレポートにまとめ、記録しておいた。これは鍛冶師たちが経験に基づいて魔法陣を描いているだけで確固たる理論がなかったためだ。

まとめた理論については鍛冶師ギルドに渡すつもりでいる。ギルド員に公開するか、それともここラスモア村の研修所限定で使用するかを決めてもらうためだ。

もちろん、ギルドの許可が出れば非公開を条件に、ドクトゥスのラスペード教授に送ることも考えている。

ウェルバーン支部の順番になり、祖父と父、兄が登場すると、会場は今までにないほど大きな歓声が上がる。

前回と同じように試し斬りをし、三人は一礼してから舞台の袖に下がっていった。

その後、フォルティスから来ているバディらの番になった。フォルティス支部の鍛冶師は比較的若く、支部長のルディガーだけが二属性を付与できるだけだった。これは優秀な傭兵は総本部のあるアルスで武具を調達するためで、フォルティスではレベル五十程度のベテランクラスが主な相手だったためだ。

彼らは熟練者コースで魔法陣の基本から学び直し、口伝で伝わる魔法陣を見事に改良した。また、ミスリルですらほとんど扱ったことがないにも関わらず、アダマンタイトの加工にも挑戦している。

その姿は鬼気迫るものがあり、スコッチの配分を少しでも増やそうという意気込みを強く感じた。

バディが持つ大型の両手剣はそのアダマンタイト製で、バイロン・シードルフの持つアルスの名工フゼイフの剣に匹敵するほどの巨大さだ。

「なかなかのもんじゃが、フゼイフのものの方がよい出来じゃな」とウルリッヒが呟いている。

鋼鉄製の鎧を標的に試し斬りをすると、バディの膂力と相まって真っ二つに斬り裂かれる。その状況を見に鍛冶師たちが壇上に上がっていくが、一瞥するだけで詳細にみることはなかった。その様子にルディガーは悔しげな表情を浮かべている。

俺はよくやったと思うが、本人がウルリッヒやオイゲンといった伝説級の名工の剣に敵わないことが分かっているのだ。

フォンス支部、ペリクリトル支部、エザリントンと続き、総本部の番になった。ザックセクステットの六人に加え、ニコラスとバイロンが壇上に上がる。

ここでもロックハート家の関係者ということで大きな歓声が上がった。試し斬りの前にウルリッヒから言われたとおり、剣を持たないシャロンと風属性の剣を持つリディ以外が一斉に魔法をまとわせて素振りをする。色とりどりの光の帯が残像として残り、観客が更に沸いた。

最後にアウレラ支部が壇上に上がる。一昨年のドワーフフェスティバルに参加できず慟哭したと伝わった者たちだ。

更に不幸なことに昨年十月の戦勝記念祭に参加する予定だったが、それにも参加できなかった。当時、アウレラ街道が封鎖されていたため、海路を選んだにも関わらず、荒天のため引き返していたためだ。

今回のドワーフフェスティバルに合わせて熟練者コースを受講し、そのまま参加している。

三度目の正直ということで他の支部以上に気合が入っており、非常に出来がいい。特に支部長のザムエル・オビッツとテオドリヒ・ラメルは二属性に加え、魔法金属の扱いも上手かった。

テオドリヒだが、彼はルークス聖王国の聖都パクスルーメン支部の元支部長、つまりルークスの鍛冶師ギルドの総元締めをしていた人物だ。ロックハート家異端認定事件の際にアウレラに移っているが、その実力は総本部の親方たちに匹敵する。

しかし、彼らはアダマンタイトを使うという冒険をしなかった。正確にいうと一度試してみたが、扱ったことがない金属を使うより、何度も扱っているミスリルの方が評価されると考えた。

さすがに商人の街で鍛冶師をやっているだけのことはあり、その現実的な判断に感心した。

そして問題の時間がやってきた。どのようにスコッチを分配するかという話し合いが始まるのだ。

「デーゲンハルトとザムエルのところはともかく、他はまだまだじゃな」

ウルリッヒの言葉に総本部から来た鍛冶師たちがジョッキを掲げて賛同する。

「特に分不相応なアダマンタイトを使おうとした支部は修行をやり直さねばならんほどじゃ。一応合格点はやれるが、儂の剣と比べるまでもないことは自らが一番分かっておるじゃろう」

ルディガーたちがその言葉にうなだれる。

「そこでスコッチの配分じゃが、総本部が五割……」と言って片手を上げ、指を大きく開く。

その言葉に各支部のドワーフが「何じゃと!」と殺気立つ。

「鎮まれ!」とウルリッヒが一喝すると殺気は残ったままだが静かになった。

「ウェルバーン一割、アウレラ一割、残りを各支部で均等に割る。これは次の技能評定会まで有効とする。異議のある者はこの場で申し出よ!」

ウェルバーン支部とアウレラ支部からは納得するかのように笑みが零れるが、他の支部のドワーフたちはウルリッヒを射殺すかのように睨みつけている。しかし、自分たちの腕ではウルリッヒたちに到底敵わないため、ギリギリと音を立てながら歯を食いしばって沈黙していた。

見ていられなくなり、「ウルリッヒの裁定だが、俺も同意見だ」と口を挟んだ。

「鍛冶の腕の方は俺では判断つかないが、少なくとも魔法陣の描き方は総本部が一歩も二歩も先んじている。特にウルリッヒ、ゲールノート、オイゲンの三人の魔法陣は芸術の域と言っていい。この三人なら近い将来、四属性も夢ではないと俺は断言する」

四属性という言葉に総本部以外の鍛冶師たちに動揺が走る。自分たちは二属性も満足に付与できないためだ。

「ただ、全員に言えることだが、熟練者コースで学んだことを理解しているとは言い難い。特に紋様の意味を理解している者はほとんどいなかった。そういう意味では魔法陣を理解すれば、誰でも劇的によくなる可能性がある」

俺の言葉にドワーフたちの目の色が変わる。

「どうすれば分かるんじゃ! 研修でも聞いたが未だに理解できん」

「試行錯誤しながら一つずつ理解していくしかないだろう……」

そう言うと全員ががっくりと肩を落とす。

「……と言いたいところだが、魔法陣の基本をまとめたレポートを作っておいた。総本部に預けるつもりだから、あとはギルドでどうするか決めてくれ」

その後、鍛冶師たちは真剣な表情で話し合い、俺のレポートは各支部に写しを配布することになった。但し、一定以上の腕の持ち主にしか開示しないという条件をつけるそうだ。

理由を聞くと、

「剣や鎧を碌に作れん者に魔法陣を教えても意味はない。鍛冶師の本分は金属を叩いて加工することじゃ」

なるほどと納得したが、もしかしてライバルが増えることを恐れたのではないかという疑惑が浮かぶ。そのことを聞こうとしたら、ウルリッヒが勢いよく立ち上がった。

「それではこれで終わりじゃ! 次は酒類品評会を始めるぞ!」

ドワーフたちは「「オオ!」」と叫んでジョッキを持ち上げた。

何となく誤魔化された気はするが、言っていることに間違いはないので聞かないことにした。