軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七十六話「撤退戦」

トリア暦三〇一七年十月十二日、午後三時頃。

ティセク村を出発してから、およそ五時間。アルス街道沿いの宿場町であるソーンブローを目指している。

ティセク村唯一の生存者、そして、俺の運命に係る者、ルナは激しい運命の変転に精神が耐えられなかったのか、眠るように俺の背に身を預けている。

ここまでの間に魔物の襲撃を何度も受けたが、幸いなことに 巨大クモ(ジャイアントスパイダー) やゴブリン程度の弱い魔物だったため、手傷を負うことなく撃退している。ただ、普段ならすぐに逃げ出す魔物たちが死を恐れず襲いかかってくるため、当初思っていたほど距離が稼げていない。

更に俺たちの後ろからオークらしき魔物の咆哮が常に聞こえている。そして、それは徐々に近づいている。

昼食をとった他は、ほとんど休憩をとっていないため、疲労が激しい。だが、誰もそのことは口にせず、警戒を強めながら、先を急いでいた。

突然、ベアトリスの小さいが、鋭い警告が耳朶を打った。

「オークだ! 二百mくらい後ろ!」

ティセク村を出てから感覚的には十五、六kmは歩いているが、それでもソーンブローまではまだ十km近く残っている。ここで時間を浪費すると逃げ切るのは難しい。

「ベアトリス! ルナを頼む。メルを先頭にこのまま進む! ダンとリディは弓で、シャロンは魔法で攻撃してくれ。敵を近づけるな!」

もし、俺たちが追っていたオークの群れなら、数は二百以上、下手をすると三百を超える可能性もある。オーク自体は六級相当の魔物であり、一匹や二匹なら大した相手ではない。だが、これだけの数がいるとなると話は全く変わってくる。オークは耐久力があり、一撃で仕留めることは難しい。

俺たちの中で、一撃で倒せると言い切れるのはベアトリスだけだ。隘路のような場所なら撃退しつつ撤退も可能だが、森の中では足を止めた瞬間、取り囲まれてしまうだろう。

後ろから迫ってくるオークが敵の本隊なら、魔法と弓で牽制しながら移動し、敵の歩みを遅らせる方が生き残れる確率は高い。

敵も俺たちに気付いたのか、オーク特有の野太い咆哮が静かな森に木霊していく。

樹齢数百年の大木の太い幹と生い茂った潅木が視界を遮ってくれていたが、遂に敵が姿を現した。

追い掛けてきたオークは今まで戦っていたものと大きく異なっていた。そのすべてが武器を装備していたのだ。

野生のオークも手頃な木の棒を棍棒代わりにすることはあるし、極稀にだが偶然手に入れた剣や斧などを使うこともある。だが、追ってくるオークたちは、人の手によるきちんとした武器を持ち、中には粗末ながら皮製の防具をつけているものすらいた。

そのオークたちが草や潅木を薙ぎ倒しながら、全力で走ってくる。こちらにはルナがいるため、精々駆け足程度の速度しか出せない。

幸い、見える範囲にいるオークは二十匹ほどで、対処が難しい数ではなく、敵の後続がいる気配はない。

「ダン、リディ、後続はいそうか?」

二人からすぐに返答が来る。

「近くに気配はないわ」

「僕もそう思います。少なくともすぐに現れることはないと思います」

斥候(スカウト) として優秀な二人が俺と同じ感触を得ている。

(この数なら何とかなる……)

当初の移動しながら敵の数を減らすという作戦は放棄し、目の前の敵を掃討する策に舵を切る。だが、少しでも距離を稼ぐため、体力的に余裕があるベアトリスにルナを任せ、先行させておく。

「追ってくる奴らを殲滅する! ベアトリスはそのまま先行してくれ! メルは護衛を頼む!」

ベアトリスは「無理するんじゃないよ」と言って、ルナを背負ったまま、道を走っていく。メルは不満気な表情を見せた後、「分かりました」と言ってベアトリスを追い抜いていった。メルを護衛にした理由は狼のような群れで襲い掛かってくる敵に対して、遠距離攻撃より接近戦の出来る者がいた方がいいとの判断だ。彼女もそのことに気付いたが、一緒に戦いたいという気持ちが強く、一瞬、不満気な表情を見せたのだろう。

「リディとダンは弓で攻撃してくれ。シャロンも出来るだけ魔力は温存しておいてくれ。残りは俺が一気に殲滅する」

まず、遠距離攻撃で数を減らしていき、その間に俺が準備を行い、一気に殲滅する作戦だ。だが、オークの本隊が迫ってくることを考え、出来る限り 魔力(MP) を温存する。リディもそれが分かっているので、何も言わず小さく頷き、合成弓を構える。

その隣ではダンも弓を構え、連射するつもりなのか、二本目の矢を口に咥えている。

シャロンには「殺す必要はない。足を止められれば十分だからな」と言い、彼女も「はい!」と力強く返事をし、珍しく卒業記念の杖――ティリア魔術学院では首席と次席には杖が与えられる――を構えて、呪文を詠唱し始める。

「数多の風を司りし 風の神(ウェントゥス) よ。疾き風、不可視の矢を我に与えたまえ。我、我が命の力を御身に捧げん……」

敵との距離が五十mを切ったところで、リディたちが矢を射始める。

次の瞬間、二匹のオークが同時に転倒した。

リディとダンの矢が先頭を走る二匹のオークの脚に突き刺さったようだ。距離が離れているため、放物線を描くことを想定し、足元を狙ったようだ。

それに合わせて、シャロンも魔法を発動する。

「我が敵を貫け! 疾強風の矢(ゲールアロー) !」

シャロンが選んだ魔法は風属性の魔術師が良く使う 疾風の矢(ウィンドアロー) ではなく、 彼女(・・) のオリジナル魔法だった。放たれた魔法の矢は近くで凝視しなければ判らないほど透明な矢で、見慣れている俺でも目で追い切れない。

魔法が発動した直後、シャロンに狙われたオークは喉を押さえて転倒する。

彼女がこの魔法を選んだのは透明であるため初見では回避が困難なことが理由だが、他にも理由がある。

この 疾強風の矢(ゲールアロー) という魔法だが、見え辛いという特性の他に非常に高速で飛ぶという特徴がある。これは矢の空気抵抗を通常の 疾風の矢(ウィンドアロー) より小さくしているためだが、ここでシャロンの天才性が発揮された。

俺の場合、抵抗を小さくするため、矢羽などの不要な物を取り去り、針のように細い形状をイメージした。このため、通常の疾風の矢より高速となり貫通力が高くなった。

シャロンに俺がそうした理由を説明し、同じようにやってみるように言ってみたが、針のような形状では彼女の持つ矢のイメージが崩れてしまうため、うまく発動できなかった。

そこで彼女は「“風”だから“空気”が抵抗になるんですよね」と言い、真空の矢を作ってしまったのだ。まさに発想の転換、俺では到底思いつかない方法だった。

“真空”、すなわち、“無”の状態なら抵抗はゼロだが、それでは硬度がなく敵にダメージが与えられない。だが、柔軟な思考を持つ彼女は“無の状態”である真空を“固める”ことに成功した。

そして、試射した時に更に驚いた。

発動から命中までの時間が恐ろしく短かったのだ。通常の矢の正確な速度を知らないが、初速で秒速六十m程度だろう。だが、シャロンの魔法の矢は体感的にはその五倍、距離による減速が全くない分、それ以上の速度を持っているように見えたのだ。もしかしたら、音速を超えていた可能性すらある。

気体や非物質である光を固形化するだけでも俺の常識を覆すものだが、今度は“無”を固形化したのだ。俺の頭の固さに原因があるのだろうが、同じ“無”の状態である“闇”は形にできても、“真空”で矢を作るイメージが出来ず、 疾強風の矢(ゲールアロー) は成功していない。

一応この 疾強風の矢(ゲールアロー) の原理というか、理屈は考えてある。この先、それをヒントに新たな魔法を編み出そうと思っている。

このオリジナル魔法である 疾強風の矢(ゲールアロー) は誘導こそ出来ないものの、非常に精度がいい。

元々、恩師であるリオネル・ラスペード教授に“魔力制御の天才”と言わしめたシャロンだ。固定目標ならほとんど外すことはなかった。そして、この魔法は非常に高速であるため、五十mくらいの距離なら現在位置と未来位置の差がほとんどなく、ほぼ固定目標と同じように撃つことができたのだ。

更にこの魔法は魔力の消費が非常に少ないそうだ。理由を聞いてみると、「風を軽くしていったので、その分魔力を使わないんだと思います」ということらしい。質量がない分、魔力の消費が少ないらしいが、俺なら普通の 疾風の矢(ウィンドアロー) より、消費魔力が大きくなるような気がする。この辺りは俺とシャロンの魔法に対する考え方の違いだろう。

三人の攻撃を受けたが、オークたちは仲間たちの死に無頓着で、先頭を走っていた仲間が倒れても動揺するどころか一顧だにすることなく、全速力で向かってくる。リディとダンが矢を射り、シャロンが魔法を放つが、このままではあと五、六匹無力化したところで、接近を許してしまうだろう。

十匹程度まで減らせることが出来れば、俺一人でも一気に殲滅できる。と言っても、今回は魔法を使うつもりはない。剣で一気に斬り伏せるつもりだ。

リディたち三人にオークたちの注意が向いている間に、潅木の茂みに身を隠す。

オークたちが俺の目の前を通過しようとした瞬間、敵の側面に一気に躍り出る。

手にはオレンジ色の光を放つ魔法剣。

オークたちが俺に驚き、パニックになってくれれば楽なのだが、操られているためか、全く動揺がない。但し、これは織り込み済みであり、落胆はない。

動揺はないが、足は止まった。

その僅かな隙を突いて、先頭を走っていた一匹を裂帛の気合と共に袈裟懸けにする。

肩から胸に掛けて骨ごと断ち切り、血飛沫があがる。

「まずは一匹!」

返す刀で、左側に現れたオークの脚を斬り上げる。

「二匹目!」

高強度の鋼の鎧すら両断できる剣は、オークの丈夫な皮膚と大腿骨を何の抵抗もなく斬り裂き、左脚を断ち切った。

二匹が立て続けに斬り倒されても、オークたちは先行するベアトリスたちに視線を向けていた。だが、すぐに目の前の敵を排除しなければ前に進めないと苛立ち、怒りの咆哮を上げる。

その勢いのまま剣を振り上げて向かってくるが、既に俺の隣には剣を構えたダンがいた。

「僕も戦います!」

その間にリディとシャロンは俺たちの後方に下がって、更に近づくオークがいないか警戒する。

二本目の魔法剣が眩い光を放つ。

俺の光の魔法剣、そして、ダンの炎の魔法剣。共にオレンジ色に輝き、見る者を圧倒する光景だが、操られているオークたちは苛立ちの咆哮を上げるだけで恐れは見えなかった。そして、俺たちを取り囲もうと左右に広がっていく。

「お先に失礼します!」

ダンはやや陽気にそう叫ぶと、一気に敵に突っ込み、剣を振るっていく。

いつも以上にやる気のあるダンに少し呆れながら、「三匹は任せる!」と叫んで、俺も敵に斬り掛かっていった。

光輝く二本の魔法剣が揺らめくたびに、確実に敵が倒れていく。

ダンも俺と同じスピードを重視した軽戦士スタイルだが、名工ヨハン・ヴィルトのミスリルの魔法剣はオークが相手なら十分過ぎる攻撃力を持っていた。やや技量に劣るダンでも、その圧倒的な攻撃力で敵の首か足を断ち切り、確実に敵を無力化していく。

敵も剣や斧を持っていたが、盲目的に振り回すだけで、ほとんど脅威にはならなかった。

ダンの参戦もあり、接近を許した十匹のオークを僅か二分ほどで殲滅する。

今回、俺が魔法を使わなかったのはリディたちへの指示と同じで魔力の温存のためだ。二十匹程度なら、範囲攻撃魔法で始末した方が手っ取り早いのだが、どれだけ効率よく使ってもオークのような耐久力の高い魔物を無力化しようとする場合、全MPの一割近くは持っていかれる。既に朝一番で 刃の竜巻(トルネードスラッシュ) を使い、更に 旋風の刃(ウィンドスラッシュ) も使っていたため、出来るだけMPの消費を抑えることを考えたのだ。

魔闘術を使わず、戦闘時間を五分程度に抑えれば、使用するMPは全MPの六、七パーセントで済むと考えた。結果的にはダンが参戦したため、予想以上に短い時間で倒し切ったため、MPは五パーセントも減っていない。

以前の俺ならこんな無茶は考えもしなかったが、伝説の鍛冶師ウルリッヒ・ドレクスラーの最高傑作であるアダマンタイトの魔法剣があれば、十分に可能だと判断したのだ。

「何とかなったな。ベアトリスたちを追い掛けよう」

先行していたのは二十匹だけだが、まだ北東の方からオークたちの咆哮が聞こえていた。聞こえる咆哮から十や二十という数ではなく、少なくとも三桁に達する数がかなり近くまで来ている。

走りながら、先ほどの戦いについて考えていた。

ウェルバーン城で薬物に操られた騎士たちと戦った時のことを思い出し、なぜ盲目的に追いかけてきたのか疑問に思っていた。

(あの時と同じだ。騎士たちは薬物で操られていたが、オークたちも同じような方法で操られているのだろう……しかし、なぜ狂ったように追い掛けてきたんだ? クララエ村やエイリース村の襲撃を思えば、もっと狡猾な敵だと思っていたんだが……俺たちとの移動速度の差を考えれば、無理に戦闘を仕掛けず、先回りして逃げ道を塞げばいい。魔族が指揮しているなら、十分に可能だろう……俺たちにとってはありがたいが……もしかしたら、罠でもあるんじゃないのか……)

そして、もう一つ疑問が頭に浮かんでいた。

(俺たちよりベアトリスたちを気にしていた。だとすると考えられるのは、ルナを追い掛けていることくらいだ……だが、なぜだ? どうして、ルナを追いかけられるんだ? 匂いなら判らなくもないが、これだけ離れた場所の匂いが判るのなら、巧妙に偽装されていたとはいえ、家の中に隠れている時に見つけていたはずだ……)

走りながら、その疑問をリディたちに投げかけてみた。

ダンとシャロンは首を横に振るが、リディは「何となく分かるわ」と答える。

「闇の精霊の力が ルナ(あの子) を中心に濃い気がするの。あなたがさっき言っていたみたいに、闇属性魔法で操られているのなら、闇の精霊に反応してもおかしくはないわ」

リディには精霊の力の流れが明確に見える。俺もある程度は感じることが出来るため、彼女ほど明確ではないが、何となく言うことは分かる。

「ルナが闇の精霊に 集(たか) られているってことか?」

リディは「そうね」と答えるが、

「うーん、ちょっと違うかも……私には闇の精霊そのものみたいに見えるの」

オークたちの動きに疑問を感じながらも、五百mほど先を行くベアトリスたちに追いつくため、速度を上げていく。

ベアトリスたちに追いつき、もう一度、ルナを見てみると、薄暗い森の中でも彼女だけに濃い影が掛かっているように見えないこともない。そして、何となくだが、闇の精霊の力も感じていた。

(確かに闇の精霊の力が異常に濃いな。流れ込んでいるわけじゃないが……これがもし光属性だったら、光り輝いていたのかもしれないな……)

再び全員が揃い、先を急ぐ。

一時間ほど走った後、小休止を取る。

時刻は午後四時頃になり、日は大きく傾いており、深い森の中はかなり暗くなっていた。

ほとんど休憩を挟まず走り続けたため、全員が玉のような汗を流し息が荒い。一昨日に村を出発してから、森の中を八十km以上移動している。更に今日は獣道に近い道を走り続けている。学院時代に鍛えているが、さすがにこれだけハードな行動は滅多になかったし、学院を卒業してからは馬での移動が多く、堪えていた。

(さすがにしんどいな。俺でもこれだけ疲れているってことはシャロンたちはもっと酷い状況だろう……)

特に口には出さないが、シャロンの息は荒く辛そうに見える。水を口に含み、大木の幹に背を預けると、大きく息を吸い、空を仰ぎ見ていた。

「あと四、五kmってところか」

俺の問いにダンが「もう少しあるかもしれません」と答え、

「道がかなり曲がっていたと思います。多分ですけど、まだ七、八kmはあるんじゃないかと思います」

彼の言葉にリディとベアトリスが頷く。

「そうね。目印になる山とかが見えないから間違っているかもしれないけど、急いでもあと二時間近くは掛かると思うわ」

「あたしもリディアーヌとダンの意見に賛成だね。急いでも日暮れまでに町に辿り着けるか微妙だろう。それより……」

その時、オークたちの咆哮が響く。

「……それより、オークに追いつかれる方が心配だ。このままじゃ、一時間もしないうちに追いつかれるよ」

オークたちの咆哮は徐々に近づいており、その数はさっきのような小集団ではなく、百匹以上は確実にいる。

俺はパーティを分けることにした。

「足止めが必要だな。俺とリディ、ベアトリスで足止めする。ダン、ルナを連れて町に向かってくれ。メルとシャロンも一緒だ」

俺の決定にダンは渋々頷くが、メルとシャロンが不満を表す。

「足手纏いにはなりません! 私も戦わせてください!」

メルがそう言うと、シャロンも「人数が少ないと回り込まれてしまいます」と主張する。

「あたしもザックの考えに賛成だね」

ベアトリスがそう言うと、メルが眦を上げ、「どうしてですか!」と声を上げる。

「すぐに真っ暗になるんだよ。あたしたちは夜目が利くが、あんたたちは闇の中じゃ戦えない。そう言うことだろ? ザック」

俺は大きく頷き、「これが一番合理的なんだ。それに今は時間がない」と言ってから、三人の中で最も冷静なダンに強い口調で命じた。

「ダン! すぐに出発だ! 敵はオークだけじゃない。油断はするな!」

ダンは俺の命令に頷くと、すぐにルナを抱きかかえて走り出した。メルとシャロンの二人も周囲を見回し、闇の帳が降り始めていることを認めると、仕方なく走り出す。

何度か後ろを振り向くが、俺の決意が変わらないと見ると、周囲を警戒しながら進み始めた。

パーティを分けた理由はベアトリスの言う通りだが、夜目が利かないことに加え、疲労の問題があった。俺には特殊能力である“頑健”があるため、疲労にはかなり強い。獣人のベアトリスはもちろんだが、エルフであるリディも森の中の移動は疲労が少ないようで、疲れは見えるものの、まだ余裕はあった。一方のダンたちだが、ダンはともかくメルとシャロンは疲れていた。メルは新たに装備したチェインメイルの重量に慣れておらず、シャロンは元々体力的に最も低い。このまま夜戦に入った場合、二人が大きなミスを犯す可能性があると考えたのだ。

「さてと、休みながら、あんたの作戦を聞かせてもらおうか」

ベアトリスはそう言うと、大きく伸びをする。

「ああ、一応考えてはある。うまくいくかは賭けだが」

その言葉に二人がやや緊張した表情を浮かべる。

茜色の光が差す森にはオークの咆哮が響いていた。