軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六十六話「魔法剣の完成」

トリア暦三〇一七年九月三十日。

年に一度の収穫祭を明日に控え、カウム王国の王都アルスは前夜祭の華やかな雰囲気に包まれている。

蒸留所の建設に目途が立ったことから、今日と明日は俺たちも祭を楽しむことにし、明後日の十月二日にラスモア村の蒸留責任者スコット・ウィッシュキーと、鍛冶師ギルドの蒸留所建設責任者ジャック・ハーパーを連れてスレイ川沿いを見に行く予定だ。

俺たちの新しい武具だが、鍛冶師たちが気合を入れて頑張ってくれたため、予定より早く完成しそうだ。但し、その所為で他の武具の納品が遅れ気味だとジャックが零していたが。

「……鍛冶師に直接苦情を言われる方はいらっしゃらないのですが、その分、職員や工房の事務員が……まあ、仕方がないのですけど……」

それでも超一流の鍛冶師たちが作る武器や防具の話になると、表情が一気に明るくなる。

「本当にこれだけの武具が一挙に出来るなんて、聞いたことがないです! それに今回はザカライアス様たちのお陰で間近で見ることもできましたし。普通、ギルドの職員でも見ることなんてできないんですよ……」

名工に武具の製作を依頼するのは、通常は高名な騎士や傭兵であり、彼らと懇意の武具商人たちが鍛冶師たちとの間に入ることがほとんどだ。今回のようにギルドから直接鍛冶師に依頼――建前上は一応ギルドからの依頼扱いらしい――するケースはほとんどなく、一般の職員が工房に付き添いで行くようなことはなかった。鍛冶師ギルドの総本部で働こうというくらいだから、武器や防具に興味をもっている職員も多く、俺たちと一緒に超一流の鍛冶師の工房に行く役目は非常に人気の高い仕事だそうだ。

「本当に目の保養になりました。匠合長の剣は恐らく今までの最高傑作ですし……」

俺とメルの剣は既にほぼ完成しており、剣を打ってくれているウルリッヒ・ドレクスラーから今日の午前中に最終調整を行い、夕方には引き渡すと聞かされている。

同じように防具職人のゲオルグ・シュトックからも今日中に鎧が出来ると聞かされており、ベアトリスとメルの鎖帷子以外は今日中に引き渡される予定になっている。

「明日の収穫祭でお披露目するために間に合わせたそうです。ゲールノート様は悔しがっておられましたが」

明日の収穫祭では、鍛冶師ギルドの総本部でも大宴会が行われる予定になっている。ジャックに聞くと、前夜祭の始まる夕方から宴会は始まるそうだから、正確には今日から大宴会は始まるらしい。

その宴会の出し物の一つに俺たちの武具の披露が入っている。ただ、伝説の防具職人ゲールノート・グレイヴァーが作るベアトリスとメルの鎖帷子がそれに間に合わないらしい。通常、鎖帷子を作るには数ヶ月は掛かるし、更に特殊な技法を入れているらしく、僅か七日間で二着も作れると思う方がおかしいのだが、ドワーフの鍛冶師にそんな常識は通用しない。そう判っていても、宴会の出し物に間に合わなかったことを悔しがるというのは、何となく釈然としないというか、間違っているような気がする。

いつもは別々に行っていたのだが、今日はメルと一緒にウルリッヒの工房に向かう。付き添いはいつも通りジャックなのだが、今日に限っては蒸留所の調査もないということで、スコットとウェルバーンの鍛冶師ギルド職員、ジョニー・ウォーターも同行している。誰でも名工の新作は気になるものらしい。

工房に着くと、既にウルリッヒが待ちわびていたかのように入口で待っていた。

そして、開口一番、「遅いぞ」と言い、すぐに工房の奥に連れて行こうとする。ちなみにまだ、八時にもなっていない時間で早すぎると遠慮していたくらいだ。

俺たち全員が苦笑するが、ウルリッヒはそんなことには全く頓着せず、ドンドン奥に進んでいく。

奥には彼の弟子たちが神妙な面持ちで待ち構えていた。

テーブルの上には白い布で包まれた二振りの剣が置いてある。

「後は握り部分の調整と装飾じゃが、お前のことじゃ、どうせ装飾などいらんというのじゃろう?」

俺は「そうだな」と頷く。

元々、儀礼用でもないし、実用品として使い続けるつもりでいる。必要な機能があれば十分で、過剰な装飾は手入れが面倒になるだけで全く無駄だと思っている。

ウルリッヒは小さく頷くと、弟子に目で合図を送る。

二人の弟子がそれぞれ布に包まれた剣を持ち、俺たちの前にやってくる。

「まずはメルの物からじゃ」

ウルリッヒの言葉でメルに剣が渡される。

メルは受け取ったものの、布を取っていいのか分からず、やや戸惑っていた。

「まずは物を見てくれんか」

そう言われて、ゆっくりと布を取っていく。

剣の長さは百二十cmほど。今使っている剣とほぼ同じ形だ。

まだ 握り(グリップ) 部分は簡単な滑り止めしか巻かれていないが、 柄頭(ポンメル) には透明な大型の魔晶石――恐らく二級相当――が嵌めこまれている。

その大型の魔晶石よりも目を引くのは、 剣身(ブレード) だ。

濃い紫にも見える黒い剣身は日の光を受けると虹色に輝き、黒曜石のような硬質の透明感は目を見張るほどの美しさだ。先日見せてもらったミスリル製の魔法剣は鏡と見紛うような美しい銀色だったが、それとは全く違う、武具が持つ力強い機能美を強く感じる。

「す、凄いです……これが私の……」

メルはそう口にするだけで固まってしまう。

「どうじゃ。望みどおり光属性の魔法剣じゃ。素材はアダマンタイト。硬化の魔法も付与しておる……」

ウルリッヒの言葉だが、ほとんど誰も聞いていなかった。メルと同じように剣を魅入っていたからだ。その間にもウルリッヒの説明は続いていた。

「こいつには自己修復の魔法も付与してみた。儂が初めて反属性の魔法を付与した剣じゃ」

自己修復の魔法は“木属性”に当たり、硬化の魔法は“金属性”に当たる。反属性の魔法は効果を打ち消しあう特性があり、同時に付与することは非常に難しい。今までこれができる鍛冶師は防具職人のゲールノート・グレイヴァーのみと言われていた。

「硬化の方を強めにしておるから、修復は気休め程度じゃ」

そう言いながらもウルリッヒは満足げな表情を浮かべていた。

そして、もう一振りの剣を俺に差し出してきた。

「こいつはザックのじゃ。メルの物と形は同じじゃが、バランスを変えておる……」

メルは祖父ゴーヴァン・ロックハートと同じ一撃に賭ける剣術士だが、俺は手数で勝負する。そのため、微妙にバランスが違うのだ。

目の前に差し出された剣を受け取る。メルの物と同じように布で覆われているが、まずその重さに驚く。今使っている鋼製の剣と同じサイズなのだが、持った感じでは五割増くらいに感じる。

俺の表情を見てウルリッヒが「どうじゃ、かなり重いじゃろう」と笑う。

覆っている布を取り去るとメルの物と同じ、黒い刀身が現れる。

現れた刀身を間近で見て最初に感じた印象は、工作機械の工具、高硬度の切削工具だった。そして、不安が頭に 過(よ) ぎる。

(かなり硬そうなんだが、割れないんだろうか……)

すべてのものに言えることではないが、一般的に硬度が上がれば、材質の持つ粘り強さである 靭性(じんせい) は下がる。日本刀のように素材を組み合わせることによって硬度と靭性の両立を図っているものもあるが、単一の素材であれば両立は難しいと記憶している。

(まあ、材料関係は苦手だったから、何とも言えないんだが……それにしても見ているだけで吸い込まれそうな色だ。闇のような黒じゃない。透明感のある黒だ……黒真珠が一番近い感じかもしれないな。もっとも本物を見たことはないんだが……)

俺が魅入っていることに業を煮やしたのか、「そろそろ、試し斬りをするぞ」とウルリッヒが声を掛けてきた。

どうやら一分近く見つめていたらしい。

俺と同じようにメルも剣に魅入られているが、試し斬りと聞いてきらりと目が光る。

「 握り(グリップ) は良く確かめてくれ。僅かでも違和感があるなら、すぐに手直しをする……」

裏庭に向かいながら、握りを確かめる。

いつもとは違う重さに一瞬戸惑うものの、握りには粗い布がきっちりと巻きつけられており、皮製のグローブにしっかりと馴染む。メルも大丈夫なようで、大きく頷いていた。

裏庭に行くと、そこには既に試し斬り用の標的が二つ置かれていた。

先日と同じく中古の金属鎧だが、黒鉄色の重厚なものだった。

「黒鋼騎士団のものじゃ。まあ、平の兵士用じゃからの、 アルス(ここ) の若造どもが作った数打ちのものじゃな」

黒鋼騎士団はカウム王国の正規軍であり、魔族との戦いにおいては防御に優れ、不利な状況でも粘り強く耐え忍ぶことで有名だ。特に歩兵は重装歩兵と呼ばれる兵種であり、その鎧の防御力も折り紙つき。その素材は平兵士用でも、アルス鋼と呼ばれる高品質鋼を使用している。

つまり、前回試し斬りをした金属鎧より遥かに頑丈だということだ。

俺は靭性への不安と慣れない重さに戸惑いを覚えていた。

(いきなり、これはないだろう。ウルリッヒは剣の強度に自信があるんだろうが、やらされる方は折角の剣を傷つけないかと不安になる……)

そう思いながらも重さを確かめるように何度か素振りをする。

確かに今までの剣よりかなり重いが、数回素振りをするだけ手に馴染んでくる。隣ではメルが真剣な表情で一心不乱に剣を振っていた。俺のように迷っている素振りは一切なかった。

「メルは準備ができたようじゃな。ザックも納得できたか?」

俺は小さく 頭(かぶり) を振り、「いきなり、黒鋼騎士団の正式装備はないだろう」と苦情を言うと、

「この程度で壊れるようなものは作っておらんわ。もちろん、お前さんたちの腕も分かってやっておる」

そう言い切られると、返す言葉がない。

若干の不安を残しながらも、毎日行う素振りの“型”を数回試し、更に手に馴染ませていく。

俺が無言で剣を降ろし、小さく頷くと、ウルリッヒが剣の握りを確かめ、

「問題ないようじゃな。では、メル。お前からやってみるんじゃ。まずは魔法はなしでな」

メルは大きく頷き、「はい!」と応える。そして、鎧の前に自然体で立つ。

一瞬の間が空いた。

そう思った直後、裂帛の気合とともに剣が振り抜かれる。

ガンという音とザシュという音が重なり、鎧から金色の火花が飛び散る。

メルは振り抜いた後、一拍置いて剣を構え直す。だが、すぐに剣が心配になったのか、不安そうな表情を浮かべ、状態を確認し始めた。

標的となった鎧の方は左肩から鎧の中心、ちょうど胃の辺りまで斬られた跡が残っていた。さすがに高品質のアルス鋼を使っているだけあって、前回のように貫通するところまではいかなかったが、かなり深い傷を刻んでいた。

ウルリッヒは自ら打った剣を確認することなく、鎧を前に満足そうに頷いていた。

「さすがじゃな。アルス鋼をここまで斬るか……」

そして、心配そうにしているメルのところに行き、剣の状態を確認するが、軽く確認しただけで、「問題なしじゃ」とメルの背中をバシンと叩いた。

俺も剣の状態が気になり見に行ったが、以前の試し斬りと同じく、 刃先(エッジ) は鋭さを失わず、剣身には擦過痕すら残っていなかった。まるで何もなかったかのように黒真珠のような輝きを保ち続けている。

(硬化の魔法が効いているのか? それにしてもあの音といい、火花といい、かなり刃部分に負担が掛かっているはずなんだが……)

祖父ゴーヴァンの剣術は刺突と斬撃を織り交ぜたものだが、斬撃は切り裂くというより叩き斬るという印象が強い。祖父の教えを忠実に守るメルも同じような斬撃を繰り出すため、剣に負担が大きいのではないかと思っていた。

俺の場合は、直剣でありながらも日本刀のように引き斬ることをイメージした使い方が多い。もちろん、前の世界で武術を学んだことはないから完全に自己流なのだが、スピード重視の俺にとって、叩き斬るような大きな予備動作を伴う攻撃はスタイルに合わず、今の形に落ち着いている。

「次はザックの番じゃ。 女子(おなご) のメルがあれほど見事に傷を刻んだのじゃ。みっともないところは見せるなよ」

ウルリッヒはにやりと笑いながら、プレッシャーを掛けてくる。

俺はそれに応えることなく、俺用の標的に向き合った。

心を無にするように薄く眼を開け、呼吸を整える。これも自己流だが、この間に魔闘術を全身に施していく。

魔力が行き渡ったと感じた瞬間、一気に剣を振り上げ、袈裟掛けに振り降ろす。

メルの時と同じような金属同士が激しくぶつかる音が腹に響く。手応えの方はまず手首に強い衝撃を感じ、それがすぐに切り裂く感じに代わる。先日のようなダンボールを切るような感じではなく、確かに金属鎧を斬りつけたという感触が残る。

(この剣も凄いが、この鎧も凄い。これが一般の兵士用なんだから、確かにカウム王国軍の防御力は秀逸なんだろう……並の剣なら、じい様クラスの達人でもかなり梃子摺るはずだ。これに大型の盾を持たれたら、急所を突く攻撃すら難しいだろう……)

振り抜いたまま、手首を返して下段の構えをとる。目の前の鎧に目をやると、そこにはメルが付けた傷よりは短いものの、左肩部分は大きく裂け、完全に鎧を貫通していた。

すぐに斜め下にある剣に視線を送るが、やはり傷は全く見られない。

「うむ。さすがじゃな……次は魔法を纏わせてくれんか。まずはザック、お前が手本を見せてやれ」

ウルリッヒは俺に先に試し斬りさせるつもりのようだ。メルに手本を見せるというより、魔術に長けた俺が先に感覚を掴めるだろうとの意図があるのだろう。

俺は小さく頷くと、俺のオリジナル魔法、 光輝の細剣(シャイニングセイバー) をイメージしながら、魔法剣を起動する。

先日試し斬りをさせてもらった剣も簡単に起動したが、この剣は更に簡単だった。

何と言ったらいいのだろうか。

体内の魔力が柄頭の魔晶石を通じて魔法に変換されるのだが、ほとんど抵抗を感じなかったのだ。

ほぼ一瞬にして剣身に光を纏わせていた。

周囲から感嘆の声が漏れる。

俺自身、目の前の光量に驚きを禁じ得ないが、それでも気を抜くことなく、標的を斬り裂いた。前回の試し斬りと同じく、全く衝撃も抵抗も感じることなく、剣は鎧を通過していく。ほとんど素振りと言っていいほどだ。

一瞬の間を置き、ガシャンという金属音が裏庭に響く。斬り裂かれた鎧の上部が地面に落ちた音だ。

誰も声を上げることはなかった。ただ、周囲から聞こえる前夜祭の準備の明るい声だけが聞こえていた。

「……うむ。上出来じゃ……剣を見せてくれんか……」

ウルリッヒが絞り出すような声で手を差し出してくる。

俺は魔法剣の発動を止め、柄を彼に差しだしながら、剣の状態と魔力消費量を確認していた。

(全く熱は帯びていない。魔力の消費量も思ったより少ないな。六十ほどしか減っていない……発動に五十、一秒当たり一も使っていない感じだな……)

その頃になると、全員が我に返っており、特にメルは飛び跳ねるようにして「凄いです! あの鎧をあんなに簡単に……」と俺に抱きつかんばかりに近寄ってくる。自分が傷しか付けられなかった鎧を、俺がいとも簡単に斬り裂いたことが嬉しいらしい。

スコットもジャックもジョニーも「素晴らしいですね」と手を叩かんばかりに笑顔で頷いている。

「確かに凄い剣だよ。前に試し斬りした物より格段に効率がいい。魔力の通りっていうのか、剣と一体になれるっていうのか、どう言っていいのか難しいが……」

まず思ったことは、体内の魔力を剣に流す時に全く抵抗を感じなかったことだ。腕の延長と言っていいほど、すんなりと剣に魔力が流れ込んだ。恐らくこれが魔力消費量を抑えた理由の一つなのだろう。

「想像以上に魔法の威力が上がっていたな。前回より魔力を込めなかったんだが……魔晶石の質がいいのは間違いない。もしかしたら組み込まれている魔法陣もこっちの方がいいんじゃないか?」

魔力の流れがスムーズなことに加え、俺のイメージ以上の効果が表れている。魔晶石の質がいいのは見た目で分かったが、それ以上に魔力の変換効率が以前の物より格段にいい。そんな思いが知らぬうちに口をついていた。

「うむ。魔法陣もかなり気合を入れておるが、普通なら判らぬ程度の差なのじゃが……さすがは魔道具の専門家じゃ」

ウルリッヒは一瞬驚きの表情を見せるが、俺がティリア魔術学院で、魔道具の権威であるリオネル・ラスペード教授に師事したことを知っているためか、すぐに納得する。

「しかしじゃ。初めてで、これほどまでの威力を……まあよい。では、メル。お前の番じゃ」

ウルリッヒは何か言いたげだったが、すぐにメルに試し斬りの指示を出す。メルは大きく頷くと、気合とともに剣に魔力を通していく。そして、見事に光属性魔法を剣に纏わせていた。

眩い光が剣から発した。

その直後、裂帛の気合とともに剣を横薙ぎに振る。

俺には巨大な光の扇が鎧の上を通過したように見えた。網膜に残像を残すほどの剣速だった。

剣を振り抜いたメルが低く構え、魔法剣を解除する。

強い光が消え、目が慣れると、そこには腹の部分が大きく切り裂かれた黒い鎧が残っていた。彼女は俺のように背面まで断ち切ることはせず、前面だけを斬り裂くことにしたようだ。

(確かにこれが正解だな。これだけ深く切り裂けば、相手は致命傷を負っている。無理に断ち切る必要はない。これだけの切れ味なら、こうやってコンパクトに振った方が効率はいい。さすがにこういうセンスはメルの方があるな……)

メルは見事に斬り裂いた鎧を一瞥すると、すぐに俺のもとに駆け寄ってきた。何か言って欲しいようだ。

俺は彼女の腕を軽く叩きながら、

「さすがはメルだな。相手に致命傷を与えているし、さっきよりコンパクトに振っている。それにきれいだったよ。光の帯が目に焼き付くくらいだった」

メルは嬉しそうに「ありがとうございます」とぺこりと頭を下げ、

「ザック様が前より良く切れるっておっしゃったので……だから、鎧が無いつもりで振ってみたんです」

ウルリッヒに剣を渡すと、夕方までに完成させてくれると確約してくれた。

ウルリッヒの工房を後にしようとしたとき、思い出したかのように、スコットが口を開いた。

「私は今日初めて魔法剣というものを見たのですが……なぜ色が違うのでしょうか?」

俺は答えに窮した。

俺の剣が放つ光は……言わずとも分かるだろうが、オレンジ掛かった赤だ。一方のメルの剣が放つ光は爽やかな感じの眩いブルーだった。

スコットの言葉にジャックもジョニーも頷いている。もちろんメルも。そして、俺に答えを求めるように全員の視線が俺に集中する。

「まあ、なんだ……癖みたいなもんじゃないのか。個性といってもいいかも……」

何となくしどろもどろで答え、そのまま次の工房、防具職人のゲオルグの工房に向かった。