軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十三話「大宴会:前篇」

トリア暦三〇一七年七月十四日

その日は朝から、目の回るような忙しさだった。

ドワーフの鍛冶師たちを招待する宴会を企画し、その準備に奔走していたからだ。

昼頃に総督府からウェルバーン城襲撃に関する正式発表がなされたが、それどころではなく、宴会の準備に走り回っていた。

鍛冶師ギルドにはダンをメッセンジャーとして派遣し、日程調整を行った。そして、宴会は明後日、七月十六日の正午から開始することが決まった。

開催場所はラズウェル辺境伯の腹心フェルディナンド・オールダム男爵が薦めてくれたウェルバーン市の城壁のすぐ外にある騎士団の演習場とした。演習場と言っても物々しい雰囲気はなく、馬場となっている美しい草原と木造の休憩所があるだけの場所だ。

そして、その馬場の横には小さな林があり、更に馬が水を飲むためのきれいな小川が流れている。そのおかげか、木陰に入れば夏の昼間でも十分に涼しく、屋外での宴会には最適の場所だった。

兄には騎士団に天幕などの貸出しの交渉を頼み、従士であるイーノス・ヴァッセルに料理の調達を指示していく。

夕方には鍛冶師ギルドからジョナサン・ウォーターという若い職員が応援としてやってきたため、慣れない土地での準備もスムーズに進む。

その日はあっという間に時間が流れたが、ある程度 目処(めど) を立てることができた。

翌日の七月十五日も前日と同様、朝からバタバタと走り回っていた。

従士や自警団員たちに騎士団から借り受けた物品の設営を指示し、イーノスとウォーター氏が手配した料理人たちと打合せを行った。

僅かに空いた時間にも俺、リディ、シャロンの魔術師三人は翌日に使う氷を作り出し、せっせと 収納魔法(インベントリ) に収納していった。氷をある程度確保したところで、現地で準備状況などを確認していった。

俺は若い頃にやった工場の起工式の準備を思い出していた。

その時は神事などの式典の後に、立食パーティを行ったのだが、初めてのイベントであり、更に見知らぬ土地での準備であったため、非常に苦労したことを覚えている。

しかし、来客をすべて無事に送り出した後の達成感は中々味わえないものだとも。ただ、爽快な達成感は深夜まで掛かった会場の後始末で、その日のうちに消えてしまったが。

俺がそんなことを考えていると、無意識に笑みを浮かべていたらしく、リディに笑いながら「ずいぶん楽しそうね」と笑われた。

「でも意外だわ。あなたって、こういうことも好きなのね」

「何だか祭の準備みたいで楽しいと思わないか?」

俺の言葉にリディは頷く。

「昔は考えたことも無かったけど、あなたと一緒だから楽しいわ」

横で聞いていたベアトリスが“やれやれ”という表情で俺たちを見た後、「確かにこういう生活もおもしろいもんだ」と満更でもない笑顔を見せている。

和気藹々という感じで準備を進めていくと、あっという間に時間が過ぎていった。

そして、宴会当日。

ロックハート家の男たちは総出で最後の仕上げを行っていた。小さな林の中に騎士団から借りた折り畳みのテーブルやいすが並べられ、料理を置く長テーブルなどのセッティングも終わっている。

女性陣はというと、華美ではないが、美しい色合いの衣装を身に纏い、客人であるドワーフたちを出迎える準備をしている。

これは 女主人(ホステス) 役の母ターニャの発案だった。

この件で朝にひと悶着あったのだ。

その日の朝、ベアトリスがいつもの冒険者スタイル――丈夫な革のボトムとブラウスの組み合わせ――に着替えて朝食をとっていた。そこに母がニコニコと笑顔を浮かべながらやってくる。

「ベアトリスさんも、今日くらいはおしゃれをしたら」

ベアトリスは小さく 頭(かぶり) を振り、

「奥方様はそうおっしゃるが、あたしはこの格好で十分だ」

母はにこやかな笑みを浮かべたまま、「たまにはいいんじゃないの? ザックもそう思うでしょ」と俺に話を振ってくる。

俺はどちらでも良かったのだが、母は意外と頑固だ。何か考えがあるようなので、容易には引かないだろう。そう考えた俺はすぐに肯定の意志を示した。

「俺もそう思います」

ベアトリスは俺に“裏切り者”という視線を送り、そして、肩をすくめながら、

「今日は夜会用のドレスでは駄目でしたね。合う服があれば良かったのですが、残念です」

服がないことを盾に母を諦めさせようとした。

確かに二m近い上背の彼女に合う服はそうそうないだろう。恐らく特注になるから、用意するのにどんなに早くとも数日は掛かる。

(さすがに無理だろう。今からじゃ)

俺の思いとは裏腹に、母はにこりと笑い、「少し待ってて」と言って、軽やかな足取りで自分の部屋に戻っていった。

何しにいったんだろうと不思議に思っていると、カラフルな色どりの服を持ってきたのだ。

「念のため、持って来たのよ。村の祭りで着るような服だけど、内輪の時にはちょうどいいと思って」

どうやら、ベアトリスに着せようとわざわざ村で作ったものを持ってきたようだ。

ベアトリスも予想外の展開に言葉が出ない。母は「さあ、着替えましょう?」と言って、三十cm以上の身長差をものともせず、ベアトリスを引き摺るように自室に連れて行ってしまった。

俺はリディたちに「どうする?」という視線を送るが、彼女たちもこの状況にどう対応していいのか困惑していた。とりあえず、出発の準備を整えようということになった。

出発の準備が終わった頃、ドアをノックする音が聞こえてきた。ドアを開けるとそこには得意満面の母と真っ赤な顔をしているベアトリスがいた。

彼女が顔を赤くしている原因、それは着ている服だった。彼女の着ている服は、ラスモア村の娘たちが祭で着るような衣装だった。ドイツの民族衣装を思わせる赤や黄色をふんだんに使った鮮やかな色彩のスカートと同系色のベスト、それに襟ぐりの大きく開いた白いブラウスだった。

母が「どうピッタリでしょ」と得意そうに胸を張る。

俺は心の中でこう考えていた。

(少なくともブラウスはあっていない気がするんだが……)

真っ白なブラウスの大きく開いた胸元から覗く深い谷間が物凄い色気を放っていたのだ。

ベアトリスは恥ずかしさからか伏し目がちになるため、余計にそれが強調されていた。

母はそんなことはお構いなしで、「後は任せたわよ」と言って父たちのところに戻っていった。

俺が状況についていけないでいると、リディが後ろから突いてくる。振り返ると「何か言ってあげなさい」と囁く。

「に、似合っていると思う。いや、似合っているぞ……」

普段、こういうことを言い慣れていないからか、言葉が出てこない。

リディに「政治家と話す時はあんなにしゃべれるのに、こういう時には役に立たないのね……」と小声で嫌味を言われてしまった。

(返す言葉が無い……どう言えばいいんだよ……)

俺がリディに小言を言われている間に、メルとシャロンがベアトリスを部屋に引っ張り込む。

メルが「本当に似合っていますよ」とベアトリスの周りを回りながら褒め、シャロンはベアトリスの大きな胸を見てため息をついた後、笑顔を向け、

「普段も着た方がいいですよ。ザック様がずっと見てくれますから」

ベアトリスも二人の言葉に少し自信を持ったのか、少し硬さが取れたようだ。

彼女と話している二人もいつもの冒険者スタイルではなかった。

メルは鮮やかなブルーのワンピースを身に纏っている。昔、土産で渡したものとは違うが、あの時からブルーの服を好んで着るようになった。

いつもは後ろでまとめている髪を降ろしており、僅かにウェーブの掛かったセミロングの赤毛が軽やかに肩に掛かっている。

普段でも大きな鳶色の瞳の元気な美少女だが、今日の姿を見ると、とてもベテラン傭兵と渡り合えるほどの凄腕の剣術士であるとは思えない。今更ながら、歳相応の少女なのだということを思い出させる。

シャロンの方はというと、ベアトリスと同じように色鮮やかなスカートとベストの組み合わせだった。

普段は大人しい色の服が多いので、意外な気がしたが、背中まであるプラチナブロンドを太い三つ編みにして垂らしており、衣装にとてもよく似合っていた。

スカイブルーの瞳と白い肌が人形のような愛くるしさを感じさせる。

そして、もう一人、俺の後ろにいるリディだが、萌黄色のワンピースを着て、手には麦藁帽子を持っている。取り立てて珍しいものでも美しいものでもない極普通の平民が着る服なのだが、リディが着るとどこか違う気がする。普段は白磁のような肌にエメラルドグリーンの瞳の少し冷たい感じのする美貌だが、今日はふんわりとした温かみを感じる。

今回、リディたちが少し着飾っているのは、母の指示だった。後で母に真意を聞くと、ドワーフの鍛冶師たちは圧倒的に男性が多いので、少しでも華やかな雰囲気を出そうと考えたのだと教えてくれた。

そのため、妹たち、セラフィーヌとソフィアもシャロンと同じ村の祭りで着るような衣装を身に纏っていた。セラの場合、普段は双子の兄セオフィラスと同じ格好をしており、あまり女の子らしくはないのだが、今日は元気な女の子という感じだ。

発案者の母だが、この辺りの女性が着るような、あまり洗練されていない緑色のワンピース姿で貴婦人という雰囲気は微塵もない。もう少し着飾ってもいいと思ったのだが、これは仰々しくないようにという母の気遣いなのだろう。元々ウェルバーンの街娘だったので、昔を思い出したかっただけなのかもしれない。

そして、彼女たちは母の指揮のもと、演習場の入口で並んで客を出迎えることになっていた。

宴会の準備は着々と進み、酒が到着すれば準備は完了する。

今回のメインの酒はドワーフたちが持参するエールやビールだ。もちろん、こちらでも準備をしてある。土属性魔法で作っておいた石製の水槽に昨日作っておいた氷を入れ、ワインの入った陶器製のボトルを冷やしてある。他にもガラスのボトルが十本ほど冷やしてある。

こういう時に魔法というのは本当に便利だと実感する。

料理の方も準備はほぼ終わっている。今回は 所謂(いわゆる) ビュッフェスタイルで料理を提供する予定で、肉や魚を焼くための炉も土属性魔法で作ってある。手配した十数人の料理人たちの準備も終わり、結構本格的な料理が出せるはずだ。

今回の宴会は親方たちクラスだけでなく、弟子たちや家族も呼ぶように言ってある。そのため、ドワーフ以外の若い職人も合わせると総勢四、五百人になるはずだ。ギルドの職員から、ウェルバーン市と近郊の町や村の鍛冶工房はほとんどが臨時休業になったと苦笑交じりに教えてもらった。

会場である騎士団の演習場は東の城門からそれほど遠くない場所にあった。東の城門からは主要街道ではないが、整備された街道が伸びており、その街道からここがよく見える。街道を行きかう人々は、続々と演習場に向かうドワーフたちに奇異の目を向けていた。

正午までまだ一時間以上あるというのに、既に二百人近いドワーフたちが到着していた。

彼らは母たちが出迎える中、陽気に挨拶をし、ロックハート家の従士たちに差し入れらしき食べ物を次々と渡していく。丸焼きにするのか、太い杭のような串に刺さった豚や羊を渡す者もいた。

更に圧巻だったのは、荷車に載せられた大きな樽だった。その樽は二百リットル以上入る大きなもので、正午前には三十樽以上持ち込まれている。

(樽がホグズヘッド――エール用の大型の樽――だとすると、一樽二百五十リットルくらいだから三十樽で七千五百リットル……大人が三百人来るとして一人当たり二十五リットル……いくらなんでも多過ぎないか……全部開けなきゃいいだけだが、こういう宴会だと全部開けるんだよな。きっと……)

開始時間の三十分以上前から、会場は賑やかな声に包まれていた。

鍛冶師ギルドの支部長デーゲンハルトが樽を載せた荷車ごと俺たちの前にやってきた。父の前で軽く会釈をした後、俺に「絶好の宴会日和だな」と言って、どっかと椅子に座る。

正午の鐘が街から聞こえてきた。

それを合図に父が立ち上がり、開会のあいさつを行った。

父はジョッキを構え、大声で、そして、短く宣言する。

「皆さん! 今日は大いに飲んでください! 乾杯!」

その声に数百人の鍛冶師たちが「乾杯!」と唱和し、大宴会は始まった。

今回は無礼講ということで自由にテーブルを使っているが、主賓であるロックハート家のテーブル近くには、デーゲンハルトとその家族たちが座っている。

デーゲンハルトとともにいるのは妻と三人の弟子だ。彼の妻、ヘーデは三十代半ばくらいに見える少しぽっちゃりとしたドワーフの女性で、三人の弟子のうち、一人は彼らの息子だそうだ。

「うちの自慢のエールだ。飲め、飲め」

デーゲンハルトは俺たちを自分が持ってきた樽のところに引っ張っていく。

陶器のジョッキにエールを満たすと、強いホップの苦味が舌に広がり、独特の甘い香りが鼻をくすぐる。

(IPA――インディア・ペール・エール:強めにホップを効かせたエール――に近い気がする。いや、ダブル IPA(アイピーエー) くらいの強さだな……しかし、ぬるい。さすがに木陰でも真夏の屋外じゃ温くなるな……)

俺はデーゲンハルトに「少し冷やしてもいいか?」と確認を取る。

彼は「冷やすだと?」と怪訝そうな顔をする。

「もう少し冷たい方がうまいと思うんだが? もちろん冷やし過ぎるようなことはしない」

ビールやエールは温度が命だと思っている。

キリキリに冷えたラガーやピルスナー――淡色系の下面発酵ビール。日本の大手メーカーが出しているものは大抵このタイプ――も好きだが、エールは少し冷たいかなという程度の冷やし加減の方がうまいと思っている。

スタウト――黒ビールなどの濃い色のビール――は温いと感じるくらいの方がいい。日本のパブにも世界一を認定する有名なメーカーのスタウトの生が入るようになったが、本場のように適温で飲めた試しがない。ピルスナーと同じ温度で出されても旨みも何も感じない。

もちろん、本場――アイルランドのダブリン――で飲んだことはない。

俺の言葉に怪訝そうにするデーゲンハルトを他所に、ジョッキのエールを擬似ペルチェ効果の魔法で冷やしていく。体感的には十度くらいに冷やしたところで、再びジョッキに口をつける。

「うまいな! さすがは秘蔵のエールだ。強めに効かせたホップがいい……普通の一・五倍くらいか? いや、二倍は使っているはずだ。長期熟成が効いているんだろうな、苦味と旨みのバランスが絶妙だ……これは? そうか! 上面発酵の甘みか!……濾過していない分、ちょっと酵母の癖があるが、この香りがまたいいな。こいつがいい個性を出している……」

知らぬ間に独り言を言っていたようで、デーゲンハルトだけでなく、父や兄、リディたちも俺を凝視していた。

俺はその視線に耐えられなくなり、「いや、うまいなと思って……」と誤魔化すことしか出来なかった。

その直後、デーゲンハルトの豪快な笑い声が響く。

「ガハハハ! さすがはロックハートの男だ!」

そう言って俺の背中をバシンと叩く。

「それにしても、その若さでよく分かるな。確かにうちのエールはそこらの二倍はホップを効かせている……」

デーゲンハルトは自分の好みに合わせた自慢のエールを褒められたのが嬉しいのか、楽しそうに説明してくれる。

俺もいろいろ質問しながら、ジョッキを空けていった。

「なあ、樽ごと冷やしてもいいか? 俺とシャロンなら魔法で冷やせるが」

「魔法で冷やす? 出来るんならやってもらいてぇが、魔術師が そんなこと(・・・・・) に魔法を使うなど、聞いたことがないぞ」

デーゲンハルトは呆れ顔でそう言って認めてくれた。

「 こんなこと(・・・・・) に魔法を使わないでどうするんだ?」

俺が真顔でそう言うと、周囲から爆笑が巻き起こる。

「ほんと、お前はドワーフ以上に酒に拘るな。いや、それでこそ、ザックコレクションの 持ち主(オーナー) だぜ」

俺とシャロンで樽を冷やしていく。擬似ペルチェ効果の魔法は、魔力効率が良いため、二百リットルくらいの液体を十度ほど冷やすだけなら、それほど 魔力(MP) は使わない。シャロンのほうは 持ち主(ドワーフ) の意見を聞きながら冷やすだけだが、俺の場合、一々味見し、持ち主とエール談義をしながらやっていくため、中々捗らない。

十五樽ほど味見したが、そのどれもが個性的だった。IPAのようなアンバータイプだけでなく、スタウトやポーターのような黒ビールから、フルーツやスパイスを加えたベルギーの 修道院(トラピスト) ものに近いものもあった。

俺はエールに夢中になって気付かなかったが、周りでは料理が供されていた。

(酒がメインだと、料理を忘れるんだよな、昔から。まあ、料理がメインでも酒を忘れることはないが……)

従士のイーノス・ヴァッセルと鍛冶師ギルドの職員ジョナサン・ウォーターが手配した料理人たちが作った料理が次々と取り分けられていく。更に俺の作った簡易のグリルで肉が焼かれ、それにも人だかりが出来ていた。

他にもローストされた鶏肉やジャーマンポテトのようなジャガイモ料理、ボイルした 腸詰(ソーセージ) などは、冷めないよう土属性魔法で作った石窯のような保温庫に入れてある。もちろん、熱源は俺とシャロンの魔法だ。保温性の高い石窯の内側を疑似ペルチェ効果の魔法で熱すると保温庫として十分に使えるのだ。残念ながら、煙突は作っていないので、薪を使ったオーブンにはできない。

樽を冷やす間に多くの鍛冶師たちと言葉を交わしていく。

ほとんどが酒談義だが、俺が護身用に身に着けているクナイ型の投げナイフの話になったり、金属の話になったりと他愛のない話で盛り上がっていた。

俺の横にはリディが常についてきており、一緒になってエールの感想を言っている。人見知りの激しい彼女にしては珍しく、ドワーフたちと楽しそうに話していた。

(エルフとドワーフの仲が悪いっていうのは、指輪の話だけなのかもしれないな。まあ、リディの場合、色目を使われなければ、問題ないのかもしれないが……)

父や兄の周りにもドワーフたちが集まっていく。最初は遠慮気味だったが、父が気にする様子を見せないため、旧友のような気安さで談笑していた。

(うちの父上は村の祭で慣れているから問題ないんだろうが、普通の領主なら、こうはならない。だから、ドワーフたちも気兼ねなく話せるんだろうな……)

父たちのテーブルから笑い声が上がるようになると、それまで遠慮気味だった鍛冶師たちの家族や若い職人たちの緊張も解れたようだ。親方クラスはともかく、 普通のドワーフ(・・・・・・・) はそれほど 普通の人間(・・・・・) と変わらないらしい。

ウォーター氏が用意したのか、楽師たちが音楽を奏でており、本格的な祭になっていた。

一時間ほどでそこかしこから陽気な声が上がるようになり、宴会は盛り上がりを見せていた。

楽師たちが突然、演奏をやめる。

不思議に思っていると、突然、鍛冶師たちが立ち上がり、ジョッキを構え始める。

「よっしゃ! いつもの奴を歌うぞ!」

デーゲンハルトがそう叫ぶと、楽師たちがアップテンポな感じの演奏を始めた。そして、立ち上がったドワーフたちが一斉に歌い出す。

『ジョッキを掲げろ! わが友よ!

歌を歌えよ! わが友よ!

一時(いっとき) 前は見知らぬも、

共に飲めば、友とならん!

我らが自慢の麦酒、葡萄酒!

酒が尽きるまで飲み明かそう!

さあ、友よ、共にジョッキを掲げよう!

さあ、友よ、共に足を踏みならそう!

さあ、友よ、共に一気に飲み干そう!

一、二、三、乾杯!』

ドワーフたちに釣られ、俺たちも立ち上がって歌い始めた。彼らは足を踏みならし、体を揺らしながら、歌に合わせてジョッキをあおっていく。

(ドイツの祭みたいで、ほんとに楽しいな……それにしても一小節ごとに飲むタイミングが入っている。誰が考えたのか知らないが、これに釣られて飲み続けるとぶっ倒れるな……)

歌によって更に盛り上がり、大きな笑い声が草原に響いていた。