軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

曾祖母が来た理由とは

「ふふっ。六三郎殿と初めて会ったのは、六三郎殿が九歳の時でしたね。あれから十六年、随分と立派な若武者になりましたね。

孫の三郎から北陸での戦の話は聞きましたが、見事な、いえ、見事過ぎる軍略の才で、上杉を下したそうじゃないですか」

「いえ、三郎様も見事な武功を挙げてくださったので、拙者も家臣達も助かりました」

「ふふっ。そう言う事にしておきましょう。話は変わりますが、於義伊。六三郎殿からしっかりと学べておりますか?」

「はい。六三郎様のひとつひとつの行動から、色々と学んでおります」

「それなら安心です。今の徳川家にも松平家にも、於義伊に領主としての経験を積ませてやれる人が居ないのですから、今は六三郎殿から学びなさい」

「はい!」

於義伊くんの返事を聞いた於大様は、雰囲気が変わり

「良い返事です。さて、六三郎殿と於義伊、そして武田家の皆様も気づいていると思いますが。私の曾孫である北条新次郎の事です

解放して欲しいとは言いませんが、非道な扱いを受けてないとは思いますが、顔を見せていただきたいと思い、来た次第です。それから、小言のひとつかふたつは言わせてください」

新次郎くんの事を言って来た。まあ、そうだろうな、家康本人は勿論だけど、三郎様が動くわけにもいかない。そうなったら、新次郎くんの親類で動けるのは

祖母の築山様か、曾祖母の於大様になるわけだけど、築山様の実家の今川家にトドメを刺したのは武田家だから、来れないか

そうなったら於大様一択になるのも仕方ない。まあ、虎次郎くんの許可が出たら、源四郎の所から連れて来るか

そんな俺の考えを読んだのか、虎次郎くんは

「六三郎殿、新次郎殿を連れて来てもらえますかな?」

俺に新次郎くんを連れて来てくれと頼む。勿論、

「ははっ!」

俺は、ラッキーと思いつつ、源四郎の元へ向かった。

六三郎が新次郎を迎えに行った少し後、大広間では少し微笑ましい事が起きていた。それは

「祖父様!皆様の分と一緒にお茶を持って来ました!」

典厩の孫娘の沙奈が、母親の沙穂と共に大広間へお茶を運んで来たのだった。勿論、殆どのお茶は沙穂のお盆に乗っていた。沙奈は典厩の分のお茶だけを運んでいた

お茶を運ぶ沙奈の姿に、

「おお、祖父の為にお茶を持って来てくれたか!偉いのう沙奈は!」

デレデレになっていたが、於大と共の者以外の全員が事情を知っているので、そのままにしていた。しかし於大は

「あらあら、随分と可愛いらしい。典厩殿でしたか?あなたの孫娘なのですか?」

典厩に質問する。典厩も

「はい。今年で五歳になります。可愛い盛りです」

と、目尻を下げて話すと、於大は

「典厩殿は、私の息子の二郎三郎と、あまり歳の変わらない様に見えますが、元服や嫁入りした孫はまだ居ないのですね?」

そう質問すると

「ええ。孫娘の沙奈と、新次郎殿と共に学んでいる二人の男児が、拙者の息子が残してくれた孫達です」

典厩も隠さずに話す。典厩の言葉に於大は、

「そうですか。しかし、これ程可愛いらしい姫ならば、私の孫か曾孫か甥の嫁に推挙したいですねえ」

武田家へ来た本来の目的を忘れて、親類の婚姻を考えていた。そこに

「於大様、新次郎殿を連れて来ました」

六三郎が新次郎を連れて来た。すると、本来の目的を思い出した於大は

「新次郎殿。産まれて間もない頃に会っただけなので、あなたは覚えてないでしょう。なので、自己紹介をしておきます

あなたの祖父の、徳川従四位下権右近衛少将の母、つまり、あなたの曾祖母にあたる於大と申します」

新次郎に自己紹介をした。すると、新次郎は

「は、は、母上から聞いた事があります。祖父様にも恐れられて、曾祖母様が出向いた時は、徳川家にとって良くない事が起きたときだと」

ビビりながら、於大のイメージを語る。変なイメージを持たれている事を知った於大は

「あらあら、督ったら。私の事を鬼婆か何かと勘違いしているのかしら?」

目の奥が笑ってない笑顔で、自身の孫娘で、新次郎の母親の督の事を話す。その様子に六三郎は

(あっ、あの優しい於大様がブチギレてる。新次郎くんも要らん事を言わなきゃ良いのに。他の人達も、俺と同じ様に、於大様の怖さに気づいている様だな

済まんが新次郎くんよ、これも人生経験として、於大様にしこたま怒られてくれ!無事である事くらいは祈っておくよ)

心中で、新次郎の無事を祈っていた。大広間に居た全員が、於大の迫力に静かになると、於大は

「さて、新次郎。あなたが窃盗なんて野盗紛いの事をした結果、あなたの実家の北条家は、ただ頭を下げるだけの状況ですよ?

そもそも、六三郎殿と武田家当主の虎次郎殿が、織田殿に文を送らなかったら、あなたは秘密裏に処刑されていたかもしれません!そして、それがきっかけで

織田家と北条家が戦になった場合、あなたの母の実家である徳川家と、あなたの叔父が当主の松平家は織田家の同盟相手として戦うか、それとも親類である北条家と共に戦うかの板挟みになります!

つまり、あなたが窃盗なんてしなければ、起きなかった戦が起きて、死なずとも良い人間が死んでしまうのです!その意味が分かりますか?」

新次郎に対して、これでもかと正論を突きつける。すると、新次郎は

「曾祖母様、申し訳ありませぬ」

平伏して詫びたが、於大は

「頭を下げるのは、私ではなく、武田家の皆様にしなさい!」

新次郎に「自分ではなく、武田家に対して頭を下げろ」と諭す。諭された新次郎は

「はい。武田家の皆様、改めて申し訳ありませぬ」

虎次郎、五郎、典厩に頭を下げる。頭を下げられた虎次郎は

「新次郎殿、過ぎた事じゃから、その気持ちは受け取るが、流石に新次郎殿をお咎め無しで帰したら、示しがつかぬ!だが、儂達では勝手に沙汰を下す事も出来ぬ

なので、新次郎殿がどうなるかは、織田家と徳川家の話し合いの結果次第じゃ。それまでは、躑躅ヶ崎館内で、誰かしらと一緒であれば自由に動いて良い」

勝手に帰す事は出来ないから、しばらくは今まで通りに過ごせ!と伝える。伝えられた新次郎も

「はい。寛大な沙汰、ありがとうございます」

そう言って、頭を下げた。新十郎の様子を見て、於大は虎次郎に

「虎次郎殿、少しよろしいですか?」

「はい、何でしょうか?」

「私の推測になりますが、新次郎の母、つまり、私の孫娘が、如月の間に来ると思うのですが、それまで、こちらに私達を置いていただけないでしょうか?」

自分達をしばらく、躑躅ヶ崎館で寝泊まりさせてくれと頼んで来た。頼まれた虎次郎は、

「徳川様の居城と比べたら狭いですが、よろしいのですか?」

と、確認を入れる。於大は

「ええ。寝泊まりさせていただくのですから、贅沢は言いません」

と、答えたので、虎次郎は

「そう言ってもらえるならば、寝泊まりする事を了承しましょう」

許可を出して、於大一行も

「「「「ありがとうございます」」」」

と、頭を下げていた。それを見ていた六三郎は

(於大様、まさかと思うけど、於義伊くんか、新次郎くんか、それとも、於義伊くんの弟に、武田家の姫の誰かしらを嫁入りさせる為に寝泊まりの話を出したんじゃないのか?)

と、疑っていたが、それを口にする程、空気の読めない六三郎ではなかった。