作品タイトル不明
我が子の名付けと誕生報告を含めた文を送ると
天正十七年(1589年)六月二十六日
甲斐国 躑躅ヶ崎館
「よし!幼名が決まったぞ!」
皆さんおはようございます。前日に息子が産まれだけでなく、五郎さんにも息子が産まれて、色々バタバタした結果、寝不足の柴田六三郎です
寝不足で少し辛いですが、出産という命懸けの大仕事をやった道乃に比べたら大した事じゃないので、1日過ぎてから、改めてになりますが、
息子の幼名が決まったので、家臣の皆と側室の皆に発表したいと思います。ちなみに、事前に道乃には伝えてたのですが、
「その幼名で良いと思います。こう言ってはなんですが、昔、岐阜城で右府様が元服前の内府様にたいして「奇妙!」と独特な幼名で呼んでいた事を覚えていたので、
六三郎様も、その様な独特の幼名を付けるのかと心配しておりました。ですが、その幼名なら独特過ぎず、覚えやすい幼名だと思います」
との事で、了承してもらいました。やっぱり大殿の名付けのセンスは、当時子供だった道乃から見てもクセ強だった様です
それでは本題に戻りまして、
「息子の幼名じゃが、これじゃ」
「 甲六郎(こうろくろう) 」
幼名を見た面々の中から、源太郎が
「殿!六と郎は柴田家の男子に使われているので分かりますが、甲の字はどの様な意味で使われたのでしょうか?」
と、質問して来たので
「甲斐国で産まれたから、一字を使わせてもらった。幼名だから、元服の時に名は変わるが、幼名で産まれた国が分かれば、多少なりともその国に愛着も湧くと思ってな」
と、説明すると、甲斐国出身の面々が
「そこまで、甲斐国の事を思っていただいているとは」
「我々の故郷の為に働いてくださるだけでなく、そこまで考えてくださるとは」
等の一部、いや大分勘違いしてるよ?とツッコミたくなる所もありましたが、俺の息子の誕生を祝ってくれてるから、スルーしましょう
あ、ちなみに五郎さんの息子の幼名ですが、流石、五郎さんだと思う幼名で、「 剛太郎(ごうたろう) 」と名付けておりました
やっぱり、強い人間が多く居ないと大変な甲斐国だからこそ、勇ましい名前が付けられがちなのは、お国柄なのでしょうね
まあ、今まで色々な幼名を聞いてきましたけど、やっぱり大殿が殿達に名付けた幼名に比べたらクセは弱く感じます
そんな事を思いながら、次のやるべき事として、安土城へ誕生報告の文と、恐らく移動している親父達の元へ文を送ってもらおう
六三郎はそう決めると、文を書く。早く伝えたいからなのだろうか、筆が早くなる。そして、書き終えると
「よし!書き終えた!済まぬが、この文を安土城へ届けてくれ!」
「ははっ!」
家臣へ渡すと、農作業用の格好に着替えて
「それじゃあ、畑仕事に行くとしよう」
眠い目を擦りながら、埋め立てた甲府盆地へ出発した
その六三郎からの文が安土城へ届くと、事態は予想外の方向に進む。
天正十七年(1589年)八月三日
近江国 安土城
「殿!甲斐国の柴田様から、文が届けられました!」
信忠の元へ、文が届けられると
「もしや産まれた報告の文か?見せてみよ!」
信忠は受け取り、目を通す。そして、
「これは父上と母上と松にも知らせてやらねば!全員連れて来てくれ!」
「ははっ!」
信長達を連れてくる様、命令する。程なくして信長達が到着すると
「勘九郎!六三郎からの文とは、子が産まれた報告か!?」
「勘九郎殿!早く読んでください!」
「勘九郎様!どの様な内容ですか?」
3人が急かしてくるので、信忠は
「今から読みますから」
と、3人を宥めてから読む
「では。「殿ならびに大殿へ。甲斐国の復興で働いております柴田六三郎です。甲斐国の復興の進捗報告も含めて、お伝えしておきたい事がありますので、
文を送りました。それでは本題に入りますが、先ず、甲斐国の中央の埋め立てを終了しました。ですが、これから農作物を植えて、収穫して、銭に変えないといけないのですが、
一先ず、目標の半分が終わった事を報告させていただきます
次に武田家にて、めでたい事が連続で起きました。先ず最初に、水無月に松姫様と仁科五郎様の兄君の竜芳殿の嫡男が、元服し、武田勝二郎殿として虎次郎殿に仕え始めました。これからは武田家家臣として、
虎次郎殿を支えると決断した事を、父である竜芳殿が了承したので、元服に至りました
次の慶事ですが、先程、名前のあがった仁科五郎様に嫡男が、武田勝二郎殿が元服した日に産まれました。母子共に健やかに過ごしております
幼名に関しましては、仁科様本人から聞いていただきたく存じます
そして、個人的な事ですが、拙者も仁科五郎様の嫡男が産まれた同日に嫡男が産まれました。道乃も息子も健やかに過ごしております
それから、これはもしかしたら後々、殿や大殿にお頼みするかもしれない事ですので、今のうちにお伝えしておきます。先程、名前が出た勝二郎殿より、
妹である竜代殿の嫁ぎ先に良き殿方を紹介して欲しいと頼まれましたが、竜代殿も武田家の姫君ですので、そこら辺の男を紹介するわけにも行きませぬ
拙者が良き殿方を見つけられない場合は、殿と大殿が見つけてくださいます様、お願いします
最期になりますが、この文の他にもうひとつの文を書いております。もし、可能であれば父上と母上へ届けていただきたく。何卒、よろしくお願いします」と、
書いてありますが、六三郎は自身の事は少なめにしつつ、武田家の事を伝えておりますな!」
信忠が読み終え、そう話すと、帰蝶が
「遂に、待ち望んだ道乃と六三郎との子が」
そう言いながら泣いていた。その状況に信長は
「うむ!誠にめでたい!それに、五郎にも子が、それも嫡男が産まれた!なんとめでたき事よ!」
テンションが高くなり、松姫も
「二郎兄上の子が元服して、更に五郎兄上と雪の間に嫡男が。武田家の血族が増えていくなんて、これも四郎兄上が命懸けで武田家を守ってくれたからですね」
そう言いながら、泣いていた。そんな中で信忠は
「これ程の喜ばしい文は、早く権六と叔母上に届けないといかぬな」
そう呟くと、信長から
「勘九郎!その文を届ける役目、儂と帰蝶が引き受けよう!」
自分と帰蝶が文を届けると宣言される。信忠は
「よろしいのですか?」
と、質問するが、信長は
「この事を伝える事は勿論じゃが、そろそろ道乃の弟の新三郎にも嫁取りの事を伝えないといかぬからな!
その両方をやる為に、そして、たまには外に出ないと身体が衰えてしまうからな」
色々と理由を付けて、自分が行く事をアピールする。その後アピールに信忠は
「分かりました。それでは準備が整い次第、行ってくだされ」
「うむ!済まぬな!」
そのまま行かせた方が良いと判断して、信長の言う通りに動いてもらう事にした。