作品タイトル不明
慶事の後にまた慶事
早苗さんから道乃が産気づいた方向が入ると、虎次郎くんが
「六三郎殿!すぐに神棚のある部屋へ行ってくだされ!」
「忝い!」
俺の考えている事が分かったのか、神棚のある部屋へ行く様、促す。そこには雷花、花江さん、うめちゃんが神頼みしていた
「皆!既に安産祈願をしてくれていたのか!」
「はい!高代殿は、出産を手伝った経験があるとの事で、産婆達の手伝っております!」
「私達母子共に無事である事を願うくらいしか出来ないので!」
「微力ながら神頼みしております!」
「皆!済まない!それでは、儂も安産祈願を行なう!」
俺がそう言いながら、部屋に入ると
「六三郎殿!我々武田家も安産祈願を行ないますぞ!」
「拙僧も参加させてくだされ」
後ろから虎次郎くん、五郎さん、典厩様、竜芳殿、勝二郎くん、紹喜殿が来てくれた。それだけでなく更に
「殿!我々も中庭から安産祈願に参加させてくだされ!」
赤備えの皆が来てくれた。もう、この時点で少し泣いております。でも、しっかりしないといけませんから
「各々方、よろしくお願いします。赤備えの皆、しっかり安産祈願を頼むぞ!」
「「「ははっ!」」」
こうして、道乃への安産祈願が始まった。と、思ったのも束の間、
オンギャー!オンギャー!
時間にして、およそ1時間。外はまだ明るい中で、産声が聞こえました。俺が中々動けないでいると、
「殿!お子が生まれたのです!行ってくだされ!」
「道乃様へ労いの言葉をかけてあげてくだされ!」
赤備えの皆が叱咤してくれる。皆の声がしっかりと聞こえる様になると、身体が軽くなりましたので、
「行って来ます」
と、部屋の皆へ伝えてから、道乃の元へ行くと、産婆さんから
「柴田様!男児でございます!奥方様も無事です」
と、教えてもらった。すると、手伝っていた高代さんから
「六三郎様!若君の誕生おめでとうございます!ささっ、抱っこしてあげてください。この様に、背中を腕で支えて」
と、抱っこの仕方をレクチャーされながら、息子を抱っこする。あ、これが、俺の息子の重さ。ダメだ、涙が自然に出てくる。これが、親になるという事か
前世では、娘の花嫁姿を見る前に死んだけど、この世界では、この子も含めて、我が子達の結婚する姿を見ないといけないな
俺がそう思っていると道乃から
「六三郎様。私にも抱かせてください」
と、リクエストされたので、そっと渡すと
「ふふっ。遂に私も六三郎様も親になったのですね。十八年前に美濃国でお会いして、そこから色々とありましたけど、六三郎様の子を産む事が出来て、私は幸せです
でも、義母上も仰っておりましたが、一人産んだだけではまだまだですから、二人目、三人目と頑張りましょうね。勿論、側室の皆様との間にもお子をもうけてください」
笑顔になると同時に、あと数人は産みたい。でも、側室との間にも子をもうけてくれ。と言われました。うん、やっぱり女の人は、子を産むと親になると言うのは本当なんだな。と実感しました
「道乃、それはこれからじっくりと考えていこう。だから今は、ゆっくり休んでくれ。そして改めてじゃが、儂の子を産んでくれて、ありがとう」
「ふふっ。六三郎様がありがとうだなんて、きっと、これから慶事が続きそうですね。ですが今は、お言葉に甘えて休みます」
そう言いながら、道乃は眠りについた。俺は道乃を起こさない様に、そっと部屋を出ると
「殿!若君でしたか?姫君でしたか?」
「道乃様はご無事ですか?」
等、赤備えの皆の声が大きかったので、大声を出しても大丈夫な場所に移動して
「道乃は嫡男を産んでくれた」
と伝えると
「「「「「うおおおお!!」」」」」
「「「「万歳!!万歳!!」」」」
「「「「遂に!殿の嫡男が!」」」」
移動した意味が無いと思える程の大声で喜んでくれました。まあ、これだけ喜んでくれるんだから、
「静かにしろ」なんて言えません。でも、息子が産まれたんだ。これからしっかりしないといけません
今からやる事は、名付けは当然として、大殿と殿、親父とお袋に伝える事も当然か。それじゃあ息子の名前を考えますか
と、思いながら躑躅ヶ崎館へ戻ると、高代さんが
「新しいお湯を準備して!清潔な布も!」
と陣頭指揮を取りながら、産婆さん達に指示を出しています。何事かと聞こうと思ったら、
「六三郎様!仁科様の御正室様が産気づきました!申し訳ありませぬが、産婆達と私は御正室様の出産に向かいます!道乃様を見てあげてください!」
そう説明してくれて、一気に雪の元へ行った。とりあえず言われた通り、道乃の元へ行くと
「六三郎様、やっぱり慶事が続きましたね」
このバタバタで道乃は起きた様で、俺にそう言ってきたので
「そう言う時はもあるかもしれぬが、慶事は連続で続いても良いものじゃ」
俺はそう返しながら、道乃の手を握る。すると、道乃は安心したのか、再び眠りについた。道乃、本当にありがとうな
六三郎が道乃の側に居る頃、高代と産婆達は忙しなく動いていた。道乃の出産が終わったのが、推定で午後5時頃、そこから後片付けをしていたら、午後7時を回っていた所に、雪が産気づいたのである
予定より少し早い出産だが、現代ではそれ程問題ではない9ヶ月頃での出産とはいえ、ここは戦国時代だからこそ高代は五郎の元へ行き
「仁科様!奥方様は、予定より少しだけ早くお子が産まれます。その為、産まれた当初は、通常の赤子より小さい可能性が高いのですが、何の問題もありませぬ!そこを分かってください!」
と、早産で小さく産まれても、変な事ではない。と強く訴えた。そして、
「それでは、出産の手伝いに戻ります」
と、言い、再び雪の元へ戻る。辺りはすっかり暗い。推定で夜9時を回った頃、
オギャー!オギャー!
と産声が聞こえる。流石に娘が4人居る五郎は慣れた様な余裕の足取りで、雪の元へ向かうと
「仁科様!男児でございます!」
産婆からそう伝えられると、五郎は
「雪、儂の息子を産んでくれて、誠に、誠に」
抑えていた感情が爆発したのか、雪の手を握りながら号泣していた。そんな五郎に対して雪は
「五郎様。待望の嫡男ですが、甘やかさないでくださいね」
と、釘を刺す。五郎も
「勿論じゃ!強く逞しく息子になってもらわねばな!改めて、雪。誠にありがとう」
甘やかさない事を宣言し、雪の手を握りながら感謝の言葉を言う
こうして、まさかの1日に元服の儀と出産が2回も行なわれた躑躅ヶ崎は、この日1日中、灯が消える事無く、誰かが必ず動いている慌ただしいが、幸せに満ち溢れた1日になった。