軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

元服の儀が終わると道乃の出産が始まる

天正十七年(1589年)六月二十五日

甲斐国 躑躅ヶ崎館

「皆!忙しい中、集まってくれた事、感謝する!皆も名前くらいは知っていると思うが、紹介しておこう!

五郎叔父上の隣に居られる方は、恵林寺の側にある入明寺の僧侶の竜芳殿じゃが、実はこのお方は、五郎叔父上と、我が父四郎勝頼の兄でもある

出家前の名で言うと、武田二郎伯父上。信玄公の二男である。典厩叔父上と歳の近い者達は知っておる様じゃな。嬉しいかぎりじゃ!

そして、その典厩叔父上の隣に居られるのが、武田家の菩提寺である恵林寺の快川紹喜和尚じゃ!

皆の中には、何故、紹喜和尚がこの場に居るのかと思っているのかもしれぬが、此度、事前に皆に伝えていた、

二郎伯父上の嫡男の竜二郎殿の元服の儀を執り行なう際、竜二郎殿に文字の読み書き等を教えていた言わば、

師匠の様な存在であるから、儂が頼み込んだ!その様な経緯で、この場に来てもらったのじゃが、異論ある者は居るか?」

皆さんこんにちは。今日、竜芳殿の嫡男の竜二郎くんの元服の儀に部外者ながら参加しております柴田六三郎です。

いやあ、竜二郎くんの元服の儀の前に、虎次郎くんが竜芳殿と紹喜殿を紹介している姿を見ていたら、本当に立派になって。と、謎の親心が出ております

ただ、あと2年半後には虎次郎くんも元服なのですが、虎次郎くんの父親の武田勝頼は既に亡くなっているから無理だけど、やっぱり大殿が烏帽子親をやるのか?

それとも、幼い頃に養育していた殿?もしくは、傅役筆頭の五郎さん?色々と候補は居るけど、それはその時に誰かしらが決めるでしょう

そんな事を考えていたら、本日の主役の登場しましたが、やっぱり顔が固いですね。そんな竜二郎くんに、虎次郎くんが

「竜二郎殿!父である二郎伯父上の隣へ」

竜芳さんの隣に竜二郎くんを座らせると、

「そこの柴田六三郎殿が陣頭指揮を取った、埋め立てに参加していた者は見た事があるじゃろう!この若武者こそ今日、元服の儀を執り行なう武田竜二郎殿じゃ!竜二郎殿、皆へ挨拶をしてくだされ!」

自己紹介を促す。促された竜二郎くんは、

「ははっ!此度、元服する武田竜二郎にございます!これまで、父上と共に快川紹喜和尚の元に居ましたが、父上の許しを得て、元服し、虎次郎様をお支えする為、粉骨砕身の働きを行なう所存です!」

そう言い切ると、平伏する。その見事な口上と姿に

「その覚悟!見事なり!」

「武田家の血族が増えるとは!」

「何と良き日か!」

等の、温かい言葉と万雷の拍手が参加した家臣の皆さんから届いております。その言葉を聞いている竜芳殿は

「実家を、武田家を出た、儂の息子が、竜二郎が、これ程の、温かい言葉を、かけられるとは」

泣いております。隣の五郎さんも

「兄上!これも、四郎兄上が命懸けで、武田家を守った結果なのです!」

勿論、泣いております。そんな温かい空気の中、虎次郎くんが

「それでは、元服の儀を執り行なう!」

と、宣言して、厳かな空気に変わります。そこから、1つずつの手順を進めながら、とうとう元服後の名前披露になりました。俺の名前から一字を使うと言ってたけど、

どの文字を使うのか、まったく聞いておりません。まあ、サプライズ発表を楽しみに待ちましょう

で、待っていたら、紹喜殿が名前を書いた紙を持っておりまして、

「皆様、竜二郎の新たな名を披露する前に、竜二郎の父の竜芳からの希望と、竜二郎本人の希望を聞いて、拙僧が代理で書かせていただきました。それでは、竜二郎。新たな名を皆様へ披露しなさい」

事前説明をしてくれました。竜二郎が受け取った紙を開くと、そこに

「 武田勝二郎信道(たけだかつじろうのぶみち) 」

と、書いてありました。皆が注目していると、紹喜殿から

「皆様、竜二郎改め勝二郎の名の意味ですが、まず仮名に関しましては、五年前の戦で仁科様との戦を回避し、恵林寺一帯を戦火から守ってくださった、

柴田様より諱から一字を使う許しを得たので、使わせてもらいました。そして、諱の意味ですが、武田家の通字である「信」の字と、己の信じる「道」を進んで欲しいという、父の竜芳の願いを諱にしました」

と、説明が入る。説明が終わると、虎次郎くんが勝二郎くんへ

「それでは勝二郎殿。皆へ改めて挨拶を」

挨拶を促すと、

「ははっ!元服しました武田勝二郎です。初陣も経験しておりませぬが、戦が起きた時は少しでも、武田家の為に役立てる様に働く所存です!これからよろしくお願いします!」

再び挨拶をした。その挨拶に

「これからよろしく頼むぞ勝二郎殿!」

「戦も大事じゃが、甲斐国の復興も頑張ろう!」

「ひとつひとつ覚えていけばよろしい!」

再び、温かい言葉と万雷の拍手が起きました。この光景を見ると、まだまだ先とはいえ、京六郎の元服の時は、ちゃんと側で見てやりたい。と思いましたよ

俺がしんみりと、そんな事を思っていると

「これにて、元服の儀を終了とする!それぞれ、持ち場や役目に戻ってよい!」

虎次郎くんが終わりの挨拶をして、元服の儀は終わりました。開始時刻が推定で午後1時、終了時刻が推定で午後4時と、各家で多少の差はあれども、元服の儀にかかる時間はこれくらいなのでしょう

それじゃあ、部屋に戻りますか。と立ち上がりましたら

バタバタバタバタ

と、廊下を走る足音が聞こえまして、その足音の主は源三郎の嫁の早苗さんでした。早苗さんは到着すると

「柴田様!奥方様が、産気づきました!!」

特大の朗報を伝えてくれました!これは神棚の部屋へ急がないと!