軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一か八かの上杉家と揺らぐ織田家

信長達が全速力で進軍している頃、戦場では、

ターン!タターン!ターン!タターン!と火縄銃の発砲音が響き渡る

「種子島を撃ち続けよ!!」

「無理に動くな!土地勘があるのは上杉じゃ!無理に動いては、上杉の思うつぼじゃ!」

「「「「ははっ!」」」」

上杉の奇襲を受けた勝家と利家の軍勢は、火縄銃で攻撃を続けるも、上杉も敵の総大将である勝家を討ち取れば、戦の流れが変わると分かっているので、

いつも以上に気合が入っている。そんな一か八かの作戦を決行したのは、上杉家当主の 上杉喜平次景勝(うえすぎきへいじかげかつ) 、軍神と呼ばれた上杉謙信の甥であり、この時二十九歳

勝家率いる北陸方面軍が越前国から出陣した頃に、北条家から謙信の養子になっていた 景虎(かげとら) との家督争い、いわゆる、「 御館(おたて) の乱」を制して、上杉家の家督を継いで、家中をまとめ上げていた

史実で豊臣政権の中心人物の1人だったが、この世界線でも史実と同じ様に上杉家の家督を継いだが、史実と違う点として、御館の乱で戦っている間に、

加賀国、能登国、越中国を織田家に奪われ、更には居城の春日山城に近い場所まで制圧される形になっていた

謙信から受け継いだ従五位下越後守の官位を持っている為、家臣は勿論、周辺国の大名からも侮られてはいないが、1つだけ、たった1つだけ欠点がある。それは

「殿!!我々上杉が少しではありますが、有利な状況です!この場でひとつ、皆の士気を上げる大声をお願いします!!」

「うむ。我々が押しておるぞ!前進じゃあ!」

「殿!!声が小さくて、近くの者しか聞き取れませぬ!ただでさえ雪深い場所ですので、大声で話さないと届かないのですから、腹に力を入れてくだされ!」

と、景勝の欠点である、「声が小さく聞こえにくい」にツッコミを入れているのは、景勝の右腕的存在で上杉家家宰の 直江平八兼続(なおえへいはちかねつぐ) 、

自らも前線に出て戦うだけでなく、主君の景勝も前線に出て戦う一か八かの奇襲を立案し、成功させた武将でもある。この時二十五歳

何故、この様な一か八かの作戦を決行したかと言う理由を

「殿!軒猿からの報告は間違いなかった様です!織田家は、我々の居城である春日山城に近い距離に本陣を構えていたからこそ、周囲を偵察に向かう時が好機だったのです!

しかもですぞ、織田家は大軍に胡座をかいていたのか、春日山駅を囲む事もしなかったのですから!これを流せば、上杉は窮地に陥っておりましたが、

殿が御決断したおかげで、織田家の被害が大きいものとなっております!」

兼続が景勝に話す。すると、景勝は、

「平八。雪も深いから、織田家が撤退したら、我々の勝ちとして、勝ち鬨の声を上げるぞ」

「ははっ!どうせならば、総大将である柴田越前の首も取りたいですな」

「油断してはならぬ。それに織田家は三万以上の軍勢じゃ。援軍が来たら春日山城に戻るぞ!」

「ははっ!それでは拙者は、前線にて兵達の士気を上げて来ます!」

少しだけとは言え、上杉家有利な状況に景勝も兼続も上機嫌であった

そんな上杉家と反対に、苦戦を強いられている勝家と利家は

「孫四郎は、まだ戻って来んのか!?」

「若君は、未だお戻りになりませぬ!」

利長が戻って来ない事に、利家が苛立っていた

「あ奴め!何処で道草を食っておる!親父殿、こうなったら儂が軍勢を率いて突撃して」

利家が突撃すると伝えようとすると、勝家が

「ならぬ!無理な突撃をするな!」

「何故ですか!?上杉が我々と同数だぅた場合を考えたら、このままでは負けてしまいますぞ!」

「先程も言ったが、此処で無理に動いたら上杉の思うつぼじゃ!内蔵助と十兵衛が援軍を連れて来るまで耐えよ!」

「それは分かりますが、このままでは!」

「又左!大殿が援軍にいらした場合を考えよ!儂達が上杉に囲まれていたら、大殿は間違いなく、儂達を救出する為、上杉の囲みに突撃するお方じゃ!

勘九郎様が新たな織田家当主となっても、まだまだ大殿の影響力は絶大じゃ!間違っても大殿を死なせてはならぬ!だからこそ、今の状況での突撃はならぬ!」

「分かりました!!ここは、種子島で牽制を続けます!」

利家を何とか抑えたが、人数的には織田家有利のはずなのに、勝家の長年の戦経験から来る直感で、

不利であると悟っていた。そんな状況の中でも、援軍の到着を待っていた勝家の目の前に

「柴田殿!前田殿!遅くなり、申し訳ない!!」

光秀が五千の援軍と共に到着した。それを見た利家は

「待ちくたびれましたぞ!明智殿!」

と、冗談を言える程、明るくなり、勝家も、

「必ず来ると待っておったぞ十兵衛!」

と、笑顔で光秀を迎えた。それを見た兼続は、

「今じゃ!援軍が来て浮かれている所に突撃じゃあ!」

「「「「おおお!」」」」

足軽達に突撃命令をくだす。勝家は上杉の突撃に、

「又左!遂に来たぞ!暴れて来い!」

「ははっ!皆、行くぞおお!突撃じゃああ!!」

「「「「「おおおお!」」」」」

利家と家臣達に突撃命令を出す。そして光秀にも

「十兵衛!来て早々すまぬが、又左達を補佐しながら、突撃してくれ!」

「承知!皆、休む暇なぞ要らぬな!突撃せよ!」

「「「「「おおおお!」」」」」

上杉の足軽がおよそ四千に対し、前田と明智の軍勢は合わせて七千。数の差は圧倒的で、

「仕方ない!撤退じゃあ!退き鐘を鳴らせ!」

兼続は撤退を知らせる鐘を鳴らした。鐘を聞いた上杉の足軽達は、牽制しながら撤退する

それを見ていた光秀と十兵衛は勝家に

「親父殿!追いましょう!」

「柴田殿!今ならば上杉の被害も大きくなりますぞ!」

と、追撃を訴えていたが、勝家は、

「ならぬ!」

と、却下した。利家と光秀は、

「「何故ですか?」」

と食い下がると、勝家は説明を始める

「又左と十兵衛。追撃しない理由として先ずひとつ、上杉が逃げる方向が同じ、つまり上杉の本拠地の城が近い可能性がある」

「ならば、その城を包囲しましょう」

「そうですぞ!」

「待て待て、ふたつ目の理由として」

「親父殿!ご無事ですか!?」

「権六!無事か?」

「内蔵助と大殿!」

「お二人も援軍として来たのですか!」

「そうじゃ。大殿と内蔵助の軍勢が見えたからな、これ以上の深追いは大殿に万が一の事がある可能性が高い。だから追撃しないのじゃ。分かってくれ」

「そう言う事ならば」

「此度は此処までと言う事で」

2人が納得した事で、勝家は

「二人共、分かってくれて忝い」

と頭を下げて、信長に向き直ると

「大殿!援軍に来ていただき、誠にありがたき!ですが、此度の上杉の奇襲、全て拙者の怠慢によるものにございます!」

と、雪深い中、平伏して謝罪した。それを聞いた信長は、

「権六!一応、上杉を撃退したから小言で済ますか、お主はこの北陸方面軍の総大将であろう!何故、偵察に動いておる!」

「申し訳ありませぬ!大殿が采を振るうと思っておりました」

「たわけ!それならば、儂が前日に言っておるわ!此度の北陸方面軍の総大将は、あくまで権六じゃ!

儂はいざとなれば戦うが、基本的にはお主達に一任しておる!だからこそ、儂から何も言われないかぎり、

お主達のやり方で戦え!お主達を信頼しておるからこそ、儂は口出ししておらぬのじゃ!」

信長がそう言うと、利家も成政も光秀も、

「「「申し訳ありませぬ」」」

と、平伏した。改めて信長は、

「まあ、あまりうるさく言いたくないから、これくらいにしよう。皆、頭を上げよ。そして本陣に戻るか権六と話し合って決めよ」

と、全員に頭を上げて、次の展開を決める様に促す。しかし、勝家が頭を下げたままなので、

「ほれ権六!もう良い!そろそろ立たぬか!」

と、勝家の肩を叩いた瞬間、

ドサッ!

勝家の大きな身体が、横に倒れた。その瞬間、

「「親父殿!」」

「柴田殿!!」

「権六!!」

4人が一斉に勝家に駆け寄る。1番近い信長が、

「周囲を警戒せよ!」

と命令して、勝家の身体を確認する

「矢弾にやられた形跡は無い。ならば!」

と、勝家の額を触り、

「やはり!酷い熱じゃ!又左!内蔵助!急いで権六を本陣へ連れて行け!」

「「ははっ!」」

「十兵衛!済まぬが、殿軍を頼む!今はお主の軍勢に権六の軍勢を合わせよ!」

「ははっ!」

「出立せよ!権六!六三郎が道乃と夫婦になったのじゃ!孫を見る前に死ぬなど、許さぬぞ!しっかりせんか!」

信長の声も勝家には聞こえてない。

上杉家の奇襲は撃退したが、これまでの無理が祟ったのか、勝家が倒れてしまった。与力の3人は勿論だが、信長も勝家には全幅の信頼を置いている為、

この状況は北陸方面軍の屋台骨で精神的支柱が揺らぐ緊急事態でもあった。