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作品タイトル不明

上杉家の奇襲

天正十二年(1584年)十二月二十八日

越後国 某所

前日に勝家達の本陣に到着した信長は、早めに寝ていたが朝の冷気で起こされた。寝所の中で信長は、側に居る蘭丸に

「ふう。やはり雪国は冷えるのう。お蘭!儂が寝ている間に、何か起きたか?」

「いえ。柴田様、明智様、前田様、佐々様、皆様や家臣の方々が交代しながら夜襲に備えておりましたが、何事も無かった様です」

「そうが、やはり討死した者が居ても尚、三万超えの軍勢には簡単に攻撃出来ぬ様じゃな。かつて軍神と呼ばれていた上杉謙信が率いた軍勢とは別物じゃな」

「大殿は、上杉謙信が率いた軍勢を知っているのですか?」

「話だけじゃがな。かつて、信濃国の川中島と言う場所で武田と上杉が戦った事が合計五回。一番激しい戦では、双方合わせて二万もの死者を出す程の激戦だったそうじゃ」

「双方合わせて二万もの死者。その様な激戦だったのならば、負けた方は勿論ですが、勝った方も被害が甚大ですな」

「それがな、お蘭。その川中島の戦、信濃国を武田が領有したから、名目上武田の勝ち戦になったが、武田は信玄坊主の弟の典厩信繁を始めとした、

多くの中心人物が討死しておる。だから実質的には上杉の勝ち戦と言われておる。その結果、信玄坊主の天下取りが潰えた。と言われておる程の被害だったのじゃ」

「それ程の被害が」

「まあ、儂としては助かったが、結果だけを見たならば、上杉謙信も武田信玄も、無駄な戦を複数回もやって国力を疲弊させた。上杉の領地である越後国は、

湊があるから大々的な交易が出来て銭を稼げるか、武田の領地の甲斐国は湊が無いから、大々的な交易が出来ぬ。それでは甲斐国の発展速度は遅くなる

だからこそ信玄坊主は、武田家の武力を高めて、海の有る国を奪っていったのじゃが、その奪った国が、

当時、今川の領地だった駿河国じゃ。しかも、駿河国に侵攻する事を嫡男の太郎義信が反対して、家中が割れて、その結果、太郎義信は廃嫡され、最終的に自害し、代わりの嫡男に四郎勝頼が選ばれたが、

母親の出自のせいで、嫡男と認めてもらえなかった結果、武田家が崩壊した。これを織田家に当てはめた場合だと、お蘭!どの様になる?」

「太郎義信が勘九郎様、殿になります。そして、四郎勝頼が三七様になります」

「そうじゃ。太郎義信の場合は、正室が今川治部の娘で、戦から遠い場所で育った娘だったからこそ、駿河国への侵攻に反対を唱えたのだろう

そして、太郎義信も、その娘に惚れていたから、父である信玄坊主に反対を唱えたのじゃろうな

幸いにも、勘九郎の正室の松は、戦が近い場所で育ったから、年始の甲斐国への侵攻にも反対を唱えなかった。それは三七の正室の菫も同じくじゃ

そう考えたら、お蘭よ。勘九郎の嫡男の三法師の嫁にする女子は、やはり武家の娘か良いじゃろうな」

「確かにそうですが、大殿。三法師様に何歳で嫁取りをさせるおつもりですか?確か、三法師様は今年で三歳ですので、少しばかり早い様な気がしますが」

「まあ、今すぐではないが、徳と婿殿の様に、十歳くらいを目安としたくてな」

「大殿がその様に御決断なされたのならば」

「うむ。与太話はこれくらいにして、戦を見に行くか!」

信長か甲冑に着替えて、寝所を出ると

「大殿!おはようございます!」

「「「おはようございます!」」」

寝所を護衛する足軽八百人だけになっていた。その事について信長は、

「権六達はどうなっておる?」

「はっ!ここより三里程の、南南東の方向に出陣しております!」

「ほう。南南東に。そこの上杉はどれくらいの軍勢か分かっておるのか?そして、権六達はどれだけの人数を向かわせたか分かるか?」

「はっ!柴田様が自身と前田様の軍勢から一万五千を選抜し、偵察に向かったところで上杉の軍勢と鉢合わせたとの事です!上杉の軍勢の数は、申し訳ありませぬが、把握しておりませぬ!」

足軽の報告を聞いた信長は、

「何で総大将の権六が偵察に動いておる!!」

その足軽に怒りをぶつけた。しかし、すぐに冷静になると、

「十兵衛と内蔵助はどこじゃ!今すぐに此処へ連れて来い!!」

信長は光秀と成政を連れて来る様、命令する。慌てて足軽達は、2人を探しに行く。数分後、何とか成政を連れて来て

「内蔵助!十兵衛は何処に居る!?」

「大殿。明智殿は、親父殿と又左を救出に向かいました!拙者も今から向かうところにございます!」

「上杉の人間は如何程か分かっておるのか?」

「報告に来た又左の倅の孫四郎によると、およそ一万との事です!人数を聞いて明智殿が五千を率いて向かっております!」

成政の報告を聞いた信長は

「儂も行く!!内蔵助、案内せい!」

出陣を即決した。信長が戦に関して妥協しない事を知っている成政は

「ははっ!それでは、拙者達が露払い致します!こちらです!」

「お蘭!内蔵助!久方ぶりに胸が高鳴る!お主も気合いを入れよ!土地勘は上杉の方があるぞ!数は儂達の方が多いからと言えど、油断するな!全軍出陣じゃあ!!」

「「「「「おおおお!!!」」」」」

あっという間にその場に居た全員をまとめ上げた信長は、勝家達の救出に向けて出陣した。