軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第209話 ~浮上~

出立の準備を俺たちに任せて二人でどこかへ行っていたジールさんとクロウが合流し、ようやく俺たちは出立の準備が整った。ジールさんが数日の陰鬱とした表情からどこか晴れ晴れとしていることから、どうやら折れた剣の問題をどうにかできたらしい。

俺たち以上の何かの荷物を大量に持っているジールさんに首を傾げながらも、船に乗り込んだ。

船内に入ってからノアから詳しい説明があったが、空挺船は俺たちの魔力で飛行しているらしい。原理などのその辺の説明もされたが専門用語が多すぎて何を言っているのかもわからなかった。空を飛ぶ初歩の原理を説明した勇者でさえ今のノアの説明は理解できなかったらしい。首を傾げるばかりの俺たちにノアはため息をついて簡潔に説明する。要は、俺たちから集めた魔力で飛行するためのエンジンや方向を制御するための部位などを動かしているそうだ。実質、魔力と舵さえどうにかできればすべて船がしてくれるそうだ。

ノアの職業は格闘家だったはずなのに、エクストラスキル『創造』があるせいか、むしろ科学者や万能者の方がいいのではないだろうかと思えてくる。自分で不老不死の薬を作りだしたというし、たまにアマリリスと薬草や薬の話をしている姿も見かけた。長く生きているため、興味が湧いたことを手当たり次第学んでいった結果、その分野では専門家並みの知識を持っているらしい。戦闘系のスキルは職業によって得られるスキルが偏ることがあるが知識はそうではない。スキルに反映されることはなくても知識はあればある程良いとはノアの言葉だった。今は空挺船を作るために学んでいた魔法具や俺たちの世界について興味があるらしい。

舵の隣に取り付けられた巨大なオーガン・キングの魔石に全員が魔力を補給すると、ある一定の魔力が注がれた瞬間、船が動き出したのを感じた。

ずっしりと体に負荷がかかった後に、ふわりと船全体が空へと浮かぶ。あっという間にセーフハウスが点のように小さくなり、遥か遠くにはエルフ族領の中心にある神聖樹の全貌がみえる。

勇者たちが歓声を上げて甲板から外に身を乗り出した。

「お! あれがエルフ族領か?」

「でっかい木やね! なんか光ってる?」

「それよりも見て見て!! 上からでもウルクって綺麗~」

遠くの街並みをみてはしゃぐ勇者たちに、ノアが腕を組んで冷静に告げる。

「悪いが、急ピッチで作ったため防御面ではあまり期待できんぞ。それと、一応風除けとか諸々の必要なことは施してあるが、もし万が一船から落ちたとしても受け止められんし迎えにも行かんからな」

真下を覗き込んでその高さに顔を真っ青にした勇者たちは恐る恐る船の中央に戻ってきた。

正確には時速どれくらいかは分からないが、かなりの速さと高さで移動している空挺船から落ちた後の末路は一つだけだろう。想像して俺もぞっとした。

顔色の悪い面々を見つつ、ノアは注意事項をさらに挙げていく。

「予定通り何事もなければ魔族領の中間あたりまではいくだろう。が、もし思わぬ事態があって遠回りしてしまい魔力を多く消費した場合、最悪海上に墜落してしまうかもしれん。そのためこの中で一番魔力量が多い人に度々魔力の補給を頼みたい」

全員がアメリアを見た。その視線を受けてアメリアも頷く。あの海のような広大な魔力量ならば多少船の動力として取られたとしても支障ないだろう。

「私が主に補給します。でも私がもし手が離せない状態になった時はどうするの?」

「手が離せない状態? 空の上で地上ほど危険なことが起こるんですか?」

そんな勇者の質問には、誰のものでもない雄叫びが答えた。俺の『気配察知』や『危機察知』の圏内ギリギリからの魔物の声だ。

「海にも陸にも生息しているが、もちろん空にも魔物はいる。そら、お腹を空かせたワイバーンのお出ましだぞ」

風除け魔法に覆われた向こう側、雲の隙間からおそらく久しぶりに見つけた獲物に涎を垂らしている竜種の魔物が、『気配察知』によると10体ほどこちらに向かってきている。

「最低限の結界はあるが、あの数のワイバーンの一斉攻撃が船に着弾すると流石に持たんぞ。少しくらいならどうにかなるだろうが」

ノアが冷静に判断する声を聞いて、俺は船首に駆け寄った。

俺の攻撃手段の中でも比較的遠距離に対応できる『影魔法』が届く範囲に来た時にはもう手遅れだろう。

「遠距離での攻撃が可能な者は前に来い! 船にたどり着く前にできる限り撃ち落とせ!!」

俺の号令に、風魔法師の七瀬とジールさんから弓矢を受け取ったアメリアが前に出た。その後ろから、ドラゴンに『変身』した夜が飛び立つ。さらにリアが全員に結界を張った。

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ワイバーン・ドラゴン(空腹による暴走状態)

種族:魔物

生命力:2000/35000 攻撃力:550000 防御力:50000 魔力46000/50000

スキル:飛行魔法Lv.9 魔力回復(常時発動)Lv.9 暴走Lv.6 知性Lv.5 炎魔法Lv.7

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前よりも俺の『世界眼』のレベルが上がっているからか、ステータス画面が詳細に見える。

同時に、七瀬の風魔法が先頭のワイバーンに着弾した。先陣を切ってこちらに向かっていた3匹が海に向かって落ちていく。が、ワイバーンたちは仲間の危機を一瞥もせずに口元に魔力を集めた。

「全員衝撃に備えろ!!!」

アメリアが放った矢が寸前でもう1匹のワイバーンを撃ち落としたが、残り6匹分のワイバーンの炎魔法が着弾した。