軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第203話 ~オーガンの内臓4~

京介の切羽詰まった叫び声に反応して、どうにか自分の体が切り裂かれる前に魔物の爪との間に“夜刀神”を滑り込ませることができた。

とはいえ、体勢の整っていない状態で受け止めきれるわけもなく、久しぶりにまともな受け身も取れない状態で吹っ飛ばされる。

自分でも踏ん張っていたとは思えない、不意を突かれた体勢だったが、それでもここまで派手に吹っ飛ばされたのはまだ職業レベルが低かった頃のカンティネン迷宮以来だ。

長い滞空時間の末、京介とジールさんからかなり離れた木に背中から叩きつけられる。

「アキラ君!!」

「大丈夫だ!俺のことは気にするな!」

はるか向こうから響いてくるジールさんの声に叫び返し、起き上がる。

この世界に来て一番、自分の化け物並みの防御力や耐久力に感謝した。

かなりの勢いで叩きつけられたのにも関わらず、すぐに動けるくらいには軽傷だ。

遠くからジールさんの声は聞こえるものの、これではお互いに援軍は望めないだろう。

木々に邪魔をされてかろうじて向こうにいる巨体が見えるくらいだ。

二人の近くにいるよりも大きな、俺の体を覆いつくすほどの巨大な魔物が京介たちの元に行こうとした俺の前に立ちふさがった。

目の前にいるのにも関わらず俺の『気配察知』も『危機察知』も反応しない。

いつの間にか俺たちは三体だけとはいえ巨大な魔物の群れに囲まれていた。

姿は、これまで出会ってきたどこか動物のようなものの面影を残すような魔物ではなく、本の挿絵などで見たことがある悪魔の姿に似ているかもしれない。

蝙蝠のような翼に、細く長い手足、蜘蛛のように複数ある赤い目たちがこちらを睥睨している。

口に位置している場所からはイカのような触手が伸びており、まるで自律しているようにうねうねと蠢いていた。

その姿全体は真っ黒く、醜い姿に本能的に嫌悪感を覚える。

今までの魔物が可愛らしく感じてしまうくらい、ハッキリ言って気持ち悪い魔物だ。

魔物を観察している途中、ふと指輪を見ると、赤い光は目の前の魔物につながっていた。

「そうか、こいつがオーガンか」

俺の背丈を超える魔石がこいつから手に入るというのはどこか納得だ。

今まで大きめの魔石がとれていたのは人型に近い魔物たちからだったが、目を見ればわかる。

こいつは、こいつらは人に近い知能を持っている。

おそらく夜よりも頭は悪いだろうが、これまでのただ人間を襲う魔物よりも手ごわいことには違いないだろう。

もしかして、魔族領に近づくにつれてこんな感じの姿の魔物ばかり増えるんじゃないだろうな。

頼むからうちの可愛いモフモフな夜を見習ってくれ。

「っと!」

観察だけにとどめて全く動かないでいると、しびれを切らしたかのようにオーガンが再び爪を伸ばしてくる。

先ほどは全く予測していなかった方向からの攻撃だったために後手に回ってしまったが、しっかりと標的が分かっていれば避けることも受けることもできる攻撃だ。

だが、図体に反して腕は俺と同じくらいの太さしかないくせに、最小限の動きで繰り出される爪は振り上げるだけで近くの木々を数本、根元から吹き飛ばした。

受け止めると先ほどのように吹き飛ばされる可能性の方が高いので受け止めずに受け流す。

さっきの攻撃も、受けたのが俺じゃなかったら内臓が破裂していたかもしれない。

どうして三人も人間がいる中であえて俺を選んだのだろうか。

全員が不意を突かれた形で、誰だって良かったはずだ。

この森にいる野生の魔物は特に本能で相手の実力を測ることができるのかというほど、正確にパーティ内で最も力のない人を襲ってきていた。

拠点にたどり着く前はアマリリスがまず襲われていたと思う。

だというのに、一応はこの中で一番ステータス値が高い俺を最初に襲ってきたのはなぜなのだろうか。

俺は受け流した反動で魔物から距離をとりつつ、『世界眼』を使ってオーガンのステータスを確認した。

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オーガン・キング

種族/魔物

生命力:32000/32000 攻撃力:600000 防御力:45000 魔力:50000/50000

スキル:統制Lv7 風爪Lv5 回復魔法Lv6 知性Lv3

エクストラスキル:隠蔽 看破

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魔物であるにもかかわらずぶっ壊れたとしか言いようがないそのステータスに俺は絶句した。

防御力はともかく、攻撃力のその数値はなんなんだ。

名前からしておそらくはオーガンの中でも力がある個体だろうとはいえ、この間みた魔王の娘よりもステータス値が高いとはどういうことだろうか。

魔物に職業がないため正確な差というものは分からないが、職業があれば今の俺よりもレベルが高いかもしれない。

つまりは、俺が全力をだしてもまだ足りないかもしれないほどの強者というわけだ。

ステータスを視て一気に警戒心が上がった俺は“夜刀神”を握りなおした。

カンティネン迷宮では毎日あった命のやりとりを感じるのは魔族と戦ったとき以来かもしれない。

明らかに群れのリーダーと戦うことになってげっそりとした気持ちとは裏腹に、俺の口端は上がる。

どくりと高鳴る心臓が、自身の高揚した心を教えてくれた。

目を見開き、オーガンを見上げる。

自分の瞳孔が開くのが分かった。

ああ、俺は、強者との闘いが好きだ。

「ふふ、ははは!」

自分でも制御できない気持ちを発散するように、俺は“夜刀神”を振るう。