作品タイトル不明
第202話 ~オーガンの内臓3~
打ち合わせを済ませた俺たちは点検を終えた各々の武器と少しの食料を携えて出立した。
「俺は今、オーガンの内臓が必要だ」
自分に言い聞かせるようにそう呟くと、指輪から赤い光が漏れだした。
光はそのまま俺たちが進むべき道を示す。
先頭にたってその方向へと足を進める俺に京介とジールさんが続いた。
「こっちの方向は拠点よりもさらに魔族領に近いな」
俺はそう呟いて顔をしかめる。
魔族領に近づくほどに強くなっていっていると感じる魔物たち。
魔族領近くを移動できるオーガンは、この森の中でもトップクラスの力を持っていると言っても過言ではないだろう。
迷宮最下層にいた魔物や夜よりも手ごわい相手だとしてもおかしくはない。
あれから俺もレベルが上がっているが、無傷で倒すことはできないかもしれない。
リアや津田を別のグループにしたのは間違ったかもな。
「ところで、ノアさんはどうやって空の飛行を可能にするんだ?俺たち全員を運ぶとなると小型航空機くらいは必要になるぞ」
俺とアメリア、夜、それに勇者たち七人。
それだけでも十人もいる上にクロウやノアが加われば十二人だ。
勇者のおかげで大まかな仕組みは説明されているし、よくわかっていない部分は魔法でどうにかできるだろうが、だとしても大人数をノアさんが運ぶことができるということを俺とアメリアが断言したことが理解できなかったらしい。
俺は顔を赤い光の先に向けたまま俺とアメリアが持っているエクストラスキル、『世界眼』の説明をした。
「ステータスを視ることができるスキルか……。そんなスキルがあるのか」
「ステータスを視ることができるスキルですって!?」
感心する京介とは違い、ジールさんは驚きで目を見開いた。
サラン団長から俺のステータスについて聞いてなかったのだろうか。
いや待てよ、確かあのときは俺もこの『世界眼』がどんなスキルかわからなかったため、サラン団長には言っていなかったか。
「俺のエクストラスキルです。俺もそのスキルの全体像を理解できているわけではないですが、とりあえず現時点で俺は相手のスキルを視ることができます。今のところこのスキルが防がれたことはありません」
俺の確認不足で視ていなかった相手や魔力不足で視れなかった相手もいるが、それでも真っ向から防がれたことはない。
そのことを伝えると、ジールさんはどこか納得したように頷いた。
「確かに、エクストラスキルなら有り得るかもしれませんね」
エクストラスキルは通常のスキルの上位互換だ。
おそらく俺の『世界眼』は隠蔽系のエクストラスキルを持っていれば防がれてしまうかもしれない。
まあ、魔族でもエクストラスキルを持っている者はそうそういないようだから、当分はその恐れはないだろうが。
「しかし、『世界眼』か……。本当にそのスキルは他人のステータスを視るだけのスキルなのか?」
顎の下に手を当てて、ぽつりと呟いた京介の声に俺は思わず顔を強張らせる。
カンティネン迷宮で初めて『世界眼』を使ってみたときに視えた意味深な光景。
死んでいるようにしか見えなかった勇者たちと、その中で唯一立っている俺の姿。
まるで、このままではこの光景が現実のものになるという漠然とした予感を感じて、俺はそれ以来『世界眼』を敵のステータス確認以外で使わなくなった。
そのおかげか、俺のステータスのレベルは上がっていないが、おそらく俺よりも頻繁に使っているアメリアはかなりレベルが上がっている。
今のアメリアはどこまで見えているのだろうか。
「……さあな。だけど、俺はこれ以上のものは見たくないと思ってる」
なぜ俺があの光景を見たのか、あれは未来視だったのか、興味が尽きないことではあるが、視るべきではないと感じた。
こういう直感には従った方がいいと、カンティネン迷宮で嫌というほど知っている。
「俺もその方がいいと思う。どうしてかわからないがそう思うんだ」
おそらく京介が無意識のうちに使っているスキル『勘』だろう。
まだ召喚されたばかりの頃から京介の『勘』のスキルレベルは高かった。
俺の直感は『危機察知』の影響だろうか。
「そうする。さ、たぶんもうそろそろ近いぞ」
赤い光は相変わらず一方向を示しているが、そのふり幅が大きくなっている。
俺の言葉に後ろ二人の空気が変わる。
俺もそうだが、京介もだいぶこの世界に順応しつつあるな。
「ここまで魔物に出会わなかったのも何かおかしい。注意してくれ」
それぞれの武器をすぐに抜ける状態ではいたが、それが使われることはなかった。
拠点にたどり着くまでにたくさんの魔物に襲われたことを考えると、獣人族領ギリギリの拠点よりもさらに魔族領に近いこの場所は本当に強い魔物しか立ち入ることができないのではないかと推測できる。
今のところ俺の『気配察知』と『危機察知』に異常を知らせるものは検知されてはいないが、むしろ検知されていないことが異常と言える。
「おい!いるぞ!!」
俺は自分のスキルに自信を持っているが、それを過信して油断したわけではない。
だが実際に目の前に現れるまで、俺はその魔物を検知できなかった。
「晶!!!」