軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

出会いは突然に

翌朝全員少し寝不足気味だ。

「さむーいっ」

カタリーナの言う通り寒い。本当に寒いのか体感温度が寒いのかよく分からんが。マーロック達も寒そうなので、朝飯を食った後にライオネルの街に服を買いに行くことにした。

「いいのか親分? めちゃくちゃ高ぇぞ」

「王都ならもう少し高いからな。その防水のコートも買っておけ。帰りの船でも必要になるだろ」

ライオネルのハンター服を売っている店に来ている。品ぞろえは王都より少ないが、ゴツい獣人も買い来るのか、大きいサイズがたくさん揃っていた。マーロックはごついからサイズの合う服があって良かった。

まともに服を買った事がないマーロック達はドギマギしたような感じで服を選び、嬉しそうにしていた。デカいカザフ達みたいだな。

「マーギン、私はこれにする」

カタリーナが服をおねだり。まぁ、寒いからいいか。

「うちはどれにしようかなぁっ」

「お前は服をマジックバッグに入れてるだろうが?」

「ええやん。ケチ臭いこと言いなや」

結局、カタリーナとハンナリーのコートまで買わされてしまった。ローズにもいる? と聞いたら遠慮されてしまった。

服を買った後は大型漁船の所へ。ハンナリー商会が冷凍大型魚を王都に流通させることを伝えにいくのだ。

「おう、マーギン。クラーケンの時は助かったぜ」

たまたま船長がいたので話が早い。王都に魚を卸せるか聞いてみた。

「そっちでやってくれるのか?」

「前に獣人の漁師には言っておいたんだけどね。ライオネルだけで消費されちゃうなら無理かな?」

「いや、王都に売りにいくことも考えてはいたんだがな。冬場はまぁなんとかなるが、夏場とか鮮度を落とさずに持っていけねぇだろ? せっかく捕ってすぐに処理して冷凍したのが無駄になっちまう。かといって冷凍冷蔵設備を備えた荷馬車なんてねぇしよ。こっちで設備持ったら売値が跳ね上がるしな」

「それはこっちでなんとかする。船長はコイツに卸してくれるだけでいいよ」

「おぉー、それなら頼むわ。討伐費用も貯めなきゃならんから、売り先が増えるのはありがてぇ」

「了解。準備が整ったら正式に話をしようか」

「いつ頃だ?」

「この春になるかな」

「この話はうちだけか?」

「他にも卸したい人いる?」

「クジラは売れそうか?」

「クジラかぁ…… ちょいとクセがあるから王都で売れるかどうか分からないね。ちなみにライオネルではどうやって食べてんの?」

「牛肉と一緒だ。ステーキが一般的で、硬い肉だが安いから獣人は結構食うぞ」

「クジラは約束出来ないから、少し仕入れて王都で反応を見るよ。それからでいいかな?」

「分かった。他にはライオネルの漁師じゃねぇがそれでもいいか?」

「他の街の漁師? どっから来てんの?」

「北の街だ。漁場も北でやってるから魚の種類も違うし、カニとかになるな」

「違う魚? それにカニが捕れんの?」

「あぁ。あいつ気持ち悪ぃだろ? あんまり売れねぇみたいで困ってやがんだよ。頑張って荒れた海で捕ってきてるってのによ」

「そこに案内してもらえる?」

「あぁ、構わんぞ」

カニが気持ち悪いか。皆は食べた事がないのだろうか? そういや王都でもカニを見たことがなかったから、カニ漁をしてないのかと思ってたわ。

と、北の街の漁船のところに連れていってもらう。

大型漁船より二回りぐらい小さいけど、この船も大きいな。

「おぅ、船長いるか?」

「はいっ」

そうして呼ばれて来た北の街の船長。

「コイツはマーギンってんだが、春先からライオネルと王都の魚の流通をやってくれるってんだ。お前の所の魚も売り込め」

「うちのを買ってくれんのか?」

「今は何が捕れてんの?」

「今はカニだ。 少し前までサンマ、鮭だな。春になればニシンとかになる。夏はホッケやエビとかも捕れるぞ」

素晴らしい!

「それ、王都で全部売れると思う。ホタテとかはない?」

「食うなら捕るぞ。ウニとかはどうだ?」

「ウニは好き嫌いがあるからなぁ。俺は好きだけど」

「そうか。本当に買ってくれるなら、こっちにも量を持ってくるぞ」

「了解。 こっちで責任持って売るよ」

値段を聞くとめっちゃ安い。これなら運賃を上乗せしても王都で余裕で売れるだろう。ニシンはちょっとわからんが。まぁ、年間通じて取引した方が良い。

今は何があるか聞いたら、鮭とカニが冷凍であるしいので、売れるだけ売ってくれと言ったら全部売ってくれた。

「こんなに持てるのか?」

「マジックバッグに入れるから大丈夫だ。しかし、鮭もカニも旨いのに売れないって変だね?」

「ここの漁師が捕ってくる魚より割高だからな。カニは見た目が気持ち悪くてダメみたいだな」

「食べたら人気でると思うんだけどねぇ」

「マーギンは食ったことあるのか?」

「食った事があるというか、大好きだよ。カニもシャケも」

「シャケ?」

「あぁ、鮭ね。ちなみに北の街ではどうやって食べてんの?」

「カニは茹でる。鮭は焼くか、凍らせたやつ少し溶かして生で食うとかだな」

「この冷凍のは生で食える?」

「食えるぞ」

それは僥倖。ん?

渡された冷凍の鮭はすべて内臓が処理されている。

「鮭の卵は?」

「ほとんど捨ててるぞ。釣餌にしかならんだろ」

なんて勿体ない。

「次から取っといて。鮭の卵は旨いんだよ」

「食った事があるが生臭いじゃねーか」

「処理の仕方が悪いんだよ。取っといてくれたら全部買うから」

「お、おぅ……」

大型漁船の船長からカニと鮭の食べ方を聞かれる。

「なら、昼飯はこれにしようか。どっかに調理できる場所ある?」

と聞くと、前にカツオを食った場所で試食することになった。

「鮭も食った事があるが、脂ののりはいいけど、そんなに旨くはねぇだろ?」

「生鮭をそのまま焼いてもそうかもね。コイツを焼いて食うには塩をしてやるほうが旨いんだよ。今塩をしてもすぐに馴染むわけじゃないから、ムニエルにしようか」

鮭の調理をする間、他の人達には炭火の準備と釜茹での準備をしてもらう。

あっ、タルタルソースを作ろう。カニを茹でる前に卵を茹でて、ピクルスとオニオンスライスを刻んでマヨネーズと混ぜる。うん、ピクルスが入ると一気にタルタルソースらしくなるな。

茹でカニは北の船長に任せておいて、焼きガニは脚の殻を半分だけ切って炭火の上にのせておく。

「鮭のはなんて料理だ?」

「これはムニエルだね。フライでもいいんだけど、ムニエルにしてみるよ」

そして出来た鮭のムニエルにタルタルを添えてみんなに食べてもらう。

「旨ぇっ」

大型漁船の船長絶賛。

「だろ? 次は茹でカニだね」

嫌そうな顔をする船長。

「すっごく美味しいっ!」

何の躊躇もせず食べるカタリーナとハンナリー。マーロック達も平気で食べている。

「ねっ、美味しいから食べてみてっ」

船長にカニをグイグイ押し付けるカタリーナ。さすがだ。

姫様にあーんしてもらう船長。何度この光景を見ただろうか?

「うっ、旨いじゃねーかよ」

「でしょっ。マーギン、もう1つ剥いて」

マーギンは脚をポキっと割って殻をスポっと抜いてやる。

「ほじほじしなくていいのか?」

「ここを折ると殻が上手く抜けるからね。今日はこの後も仕事?」

「い、いや。マーギンが全部買ってくれたから大丈夫だ」

「俺も大丈夫だ」

と、船長2人が大丈夫そうなので、甲羅酒にしてやる。北の船長はかにみそも捨てていたようだ。

「親分、こいつは旨ぇな」

1番初めに飲んだのはマーロック達。

「これは美味しくなーい」

おこちゃま舌にはダメか。

北の船長も恐る恐る飲んでびっくり。

「こんなに旨いのか」

「好き嫌いが分かれるけどね、この酒はタイベにしかなかったから、知らないのは無理もないけど」

「これはタイベの酒なのか?」

「そう。米で作られた酒なんだよ。海鮮料理に1番合う酒なんじゃないかな?」

「そうか、南のタイベの酒と北のカニが出会うとこんな味になるのか」

今まで交わる事のなかった出会いか。面白いもんだな。

「船長は鮭の卵を食べる時にワインを飲んだ?」

「あぁ、北は酒と言ったらワインだからな」

「ムニエルにするとワインでもいいけど、生魚と魚卵はワインと合わないよね。特に鮭の卵、それはイクラっていうんだけどね、ワインと合わせると生臭くなるんだよ。処理の仕方が悪かったのと、ワインに合わせたのが原因だろうね。醤油をベースにした調味液に漬け込んでおくと旨いんだよ」

「鮭の卵も売れるか?」

「嫌いな人もいるだろうけど、好きな人も多いと思うよ。馴染みがなければ食べるのを躊躇するかもしれないけど。それとニシンの卵も捨ててる?」

「おう、捨ててるな」

「それも全部取っといて。旨いから」

「もしかしてタラの卵も売れるか?」

「タラの種類が分からないけど、それも売れる」

「マーギン、魚の卵で他に旨いやつはあるか?」

「鯛、トビウオ、シイラとかかな。ボラの卵も旨いらしいんだけど、加工の仕方を知らないんだよね」

「どうやって食う?」

「鯛とシイラは甘辛く炊く…… あ、これは醤油が販売されてからの方がいいね。トビウオは生で食うよ。ちょっと残ってるから食べてみる?」

前のタイベ旅行で作ったやつがまだあるのだ。

「おっ、プチプチしてて旨いな」

「調味液で味が変わるけどね。これにも醤油が使われているから、醤油の流通が始まれば色々出来るよ」

マーギンは魚卵を食べる文化のない世界に魚卵の旨さを教えるのであった。これは別に幅広く浸透しなくても良い。自分が食べられればよいのだ。人気が出すぎて魚卵の乱獲とかなっても嫌だけど、捨てている分が流通に回ればいいのだ。

そう思ったマーギンは1人でウンウンと頷くのであった。