軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

気持ちと使命

よく食べよく飲んだ後、テントを出して寝る事に。テントがないマーロック達は頭の家に泊めてもらうことにした。

「さっぶぅぅぅ」

タイベの気温に慣れていた身体に寒さがしみる。マーロック達は震えてんじゃなかろうか? 頭の家に布団とか他の人の分までなさそうだからな。

テントから出てブルッと震えてから頭の家に様子を見にいってみる。

「がーはっはっは」

「うわーっはっはっは」

心配して損した。酒飲んでめっちゃ盛り上がってるじゃないか。

マーギンは開けた戸をそっと閉めてテントに戻る。

「おらんようになったら寒いやんか。どこに行ってたん?」

「頭の家。マーロック達が震えてんじゃないかと思って見に行ったんだよ。酒飲んでたから問題ないみたいだ」

「ほならはよ入り口閉めてぇな。寒いやんか」

マーギンはテントの入り口を閉めてハンナリーが包まっている毛布に足を突っ込む。

「ふぎゃーーーっ! 何すんねんっ。冷たいやんかっ」

「俺は暖かいぞ」

昔アイリスがバネッサをコタツ代わりにしたやつだ。ハンナリーがほどよい温かさでちょうどいい。こいつの体温は高いからな。

「はよ足のけてっ」

ハンナリーにゲシゲシされて足を出されてしまった。

「俺にこんな事をしたら後悔するぞ」

「せえへんわっ。もうっ、身体が冷たなってもうたやんかっ」

「ふーん」

マーギンはアイテムボックスからコタツを出して足を入れる。うむ、暖かくて宜しい。

「なんで机なんか出したん? 邪魔やんか」

「狭いからしょうがないだろ? ほらさっさと寝ろ」

「だから机が邪魔やねんて。それに机に毛布掛けてなにするん?」

「俺を追い出したお前には関係のないことだ」

マーギンはもぞもぞと動いてコタツ亀になった。

「なぁ、もしかしてそれぬくいんちゃうん?」

返事をしないマーギン。

ハンナリーはそーっと足先をコタツに突っ込んできたので、ゲシゲシして追い返す。

「なんやこれっ。中はめっちゃぬくいやんかっ。自分だけずるいわっ」

「お前が先に俺を追い出しんだろうがっ」

「こんなん持ってるんやったら先に出しぃなっ」

ハンナリーはマーギンの横にもぞもぞと潜り込んできて至福の顔をする。

「はぁ〜、めっちゃぬくいわぁ」

ハンナリーのとろけるような顔を見てマーギンはしょうがないやつだと言って追い出さなかった。

しかし、同じところに並んで寝るにはコタツは狭い。

「狭いぞ」

「ほならこうしてたるわ」

ハンナリーはマーギンに手足をのせて抱きつくような感じになる。結局そのまま腕枕をするような感じになってしまった。

「マーギンっ、マーギンっ」

外からカタリーナの声がする。

「どうした?」

「寒いのっ。毛布の予備持ってない?」

「ないぞーっ」

「うそっ、マジックバッグになんかあるんでしょっ」

そう言ってテントの入り口を開けやがった。

「なにそれ?」

「机」

しれっと嘘を吐くマーギン。しかし、ハンナリーがぬくぬくととろけた顔をしているのを見てカタリーナはコタツにかけた毛布をめくる。

「あーーっ、すっごい暖かいっ。私もここで寝るっ」

「これに3人は無理だ」

と言ってるのに横から足を突っ込んできた。

「はぁー、あったかーい」

いくら寒さがしのげても、この狭さで寝れるわけがない。

「温風の魔道具を貸してやるからそれで自分のテントで寝ろ。ローズが心配するだろうが」

「もうこれから出たくなーい」

一瞬にしてコタツに魅入られるカタリーナ。

「マーギンがその温風の魔導具でローズと寝ればいいじゃない」

「そんな事をしたらちい兄様に殺されるわっ」

「嫁にもらっちゃえば殺されないんじゃない?」

「勝手な事を言うな。そんな事が出来るわけがないだろうが」

「えーっ、多分ローズは嫌がらないと思うよ?」

「あのなぁ、お前らと違ってローズは嫁入り前の大人の女性なんだぞ。俺みたいな男が横で寝られると思ってんのか」

「だからお嫁さんにすればいいのに。身分を気にしているなら、お父様かお母様に言えばなんとかなると思うよ」

「そんな事でホイホイと身分を与えるかっ。それに俺はローズを娶れるような男じゃないんだ」

「でも好きなんでしょ?」

マーギンは言葉に詰まる。ローズを眺めているのを好きな事は自覚をしている。キリッとした美人でもあるし、それを維持できなくて子供のような表情を見せるところも可愛くてよい。性格は真面目で負けず嫌いで不器用で優しい。からかいたくもなるし、かまいたくもなる。これが好きということなのだろうか?

「そうかもしれないな」

「ならいいじゃない。トイシャングの屋敷をもらっちゃえば住むところもローズに相応しいし。お金もマーギンならいくらでも稼げるよね?」

「あのなぁ。俺にはそういうのは向いてないんだよ。それにローズは由緒正しい貴族のお嬢様なんだぞ。ちゃんと相応しい相手が出てくるに決まってる」

「そうかなぁ? 家柄だけ良くてもローズには物足りないと思うよ。オルターネン隊長を見て育って、マーギンと行動してるのに、普通の貴族の男性なんか男として見れないんじゃないのかな? せめて私より強い男じゃないととか思ってそう」

「姫様っ そろそろお戻り下さいっ」

今の話をローズは外から聞いていたようだ。近くにいると分かってはいたが、テントの中かと思ってた。こっちのテントの入り口付近にいたのか……

「マーギンが私の代わりに行く?」

「行きません」

マーギンはカタリーナに温風機を渡して追い出した。

「なぁ、マーギン」

「なんだ?」

ハンナリーが何かを聞きたそうにマーギンを呼ぶ。

「なんでそんなに頑なになるん? ローズのこと好きやねんやろ?」

「かもな」

「ほならええやん。王様や王妃様とも仲ええし、ローズもまんざらやないと思うで」

「あのな、俺は誰とも結婚とか考えた事がないし、これからもない。それにやらないとダメな事が残ってるんだよ」

「何をやらなあかんの?」

「俺の使命ってやつだ。これはお前には教えられん。マーギンというものはその使命を果たすのが存在意義なんだよ」

「なんや自分の事を他人事のように言うんやな。それに存在意義ってなんやの?」

「お前には難しいかもな。俺がここにいる意味だよ。俺はその使命を成すために存在する」

「なんか自分が作られたみたいな言い方やな」

「そうだな。俺はその使命を果たす為にこれだけの力を与えてもらってるんだよ」

「神様にか?」

「そんなところだ」

「ほなら、その使命を果たせたらローズをお嫁さんにできるんちゃうん?」

「使命を果たせたらか……」

「うん」

「俺が使命を果たせたらどうなるかなぁ」

「幸せになるんちゃう?」

マーギンは魔王を倒すまで不老という存在。もし魔王を倒せたとしたら、今までの生きてきた時間が一気に進んで朽ちてしまうんじゃなかろうかとも思う。浦島太郎が玉手箱を開けてしまった時のように……

「俺は今でも幸せだぞ」

「そうなん? 辛そうな顔をしてる時も多いで」

「だったら、お前が俺を幸せにしてくれ」

「えっ? うちがマーギンのお嫁さ……」

何か勘違いをしそうになったハンナリー。

「こうやってな」

マーギンはすっかり冷えてしまった手をハンナリーの背中にズボッと突っ込んだ。

「ぎゃーーーーっ、冷たーーっ。何すんねんなっ」

「俺を幸せにしてくれるんだろ? 手が暖かくて幸せだぞ」

「そんな意味ちゃうわーーーっ」

女の子の背中に手を突っ込むというセクハラをするマーギン。うちはバネッサとちゃうでっと怒るハンナリーであった。

「姫様、余計な話はしないで下さい。私はマーギンをそのような目で見ていませんっ」

テントに戻ったカタリーナとローズはさっきの話を蒸し返していた。

「本当かなぁ? お見合い代わりの社交会に出るのをマーギンが了承した時に悲しそうな顔をしてたじゃない」

姫様は馬鹿ではない。タイベでオルターネンがマーギンにわざわざ了承の確認を取ったのは、本当にローズが他の男と結婚してもいいのだな? と、確認をしたのだとちゃんと気付いていたのだ。

「あ、あれは……」

「マーギンはそんなのに気付いていないから了承したとは思うけど、このままだと本当に他の男と結婚させられちゃうよ?」

「わ、私はバアム家の娘として義務を果たさねばなりません。惚れた腫れたは関係ないのです」

「ふーん。私も王族だから勝手に結婚相手を決められちゃうだろうけど、本当はそれが嫌なの。でも決められた相手がマーギンなら嬉しいな」

「ひっ、姫様?」

「だって、厳しいけど優しいし、一緒にいて楽しいもん。甘やかせてくれる人はたくさんいるけど、マーギンみたいにちゃんと私を見てくれる人は他にいないもの」

「姫様……」

「マーギンが私をもらってくれるなら、一緒に王を目指してもいいかも。なんちゃって」

王位継承権が1番下のカタリーナはそう言ってテヘペロをした。

「姫様、そのような事を口に出されてはなりません。敵が増えます」

「お兄様達より、マーギンの方が上手く国を治めてくれると思うのよねぇ。私はお飾り王でいいから、マーギンが実質王ってやつ? それが1番良さそうと思うの。でもローズがマーギンのお嫁さんになりたいっていうなら、諦めるけど?」

そう言ってローズを見つめるカタリーナ。

「ひっ、姫様っ。冗談はいい加減にしてくださいっ」

「うーん、これでもダメかぁ。ローズも頑固よねぇ」

「うるさいですっ」

カタリーナがマーギンと結婚したいと言ったのが嘘だと分かって怒るローズなのであった。

「隊長、ローズさんに本当にお見合いをさせるつもりですか?」

3つに別れたテントは隣合わせ。カタリーナのテントの両脇にマーギンと特務隊のテントを張っているため、カタリーナとローズの会話はオルターネン達に筒抜けだったのだ。

「本気だぞ」

「マーギンさんとローズさんは両思いだと思うんですけどね」

「マーギンが頑なに結婚を拒否するのだ。仕方があるまい」

カタリーナ達と違って、隣のテントに聞こえないように小声で話すサリドン。

「以前にもマーギンさんの意思確認をしたことがあるんですか?」

「何度もした。俺もマーギンが娶ってくれるのが1番いいと思ったからな。マーギンと一緒になるならローズが貴族籍を抜けて庶民になってもいい。親は俺が説得するつもりだったんだ」

「でもマーギンさんは拒否されたんですね」

「あぁ。あいつもローズの事を心憎からず思ってくれている事は分かっている。あいつもそれを自覚はしている」

「ならなぜ拒否するのですか?」

「あいつには使命がある。それが最優先なんだとよ」

「使命? 魔物の駆逐ですか?」

「まぁ、そんなところだろう。俺も詳しくは知らん。あいつにしか倒せない魔物がいるのかもしれんな」

オルターネンは真実を織り混ぜて濁した。

「そうですか。私達ではまだマーギンさんの足元にも及びませんからね。少しでも力になれるなら恩返しができるのに」

「そう思うならもっと力を付けろ。俺達にはまだまだ力が足らん。自惚れられることすらできん自分を恥じろ」

「俺はやってやりますけどね。あと1年ぐらいでマーギンの横に並んで見せますよ」

横から口を挟んだホープ。

「お前のは真性の自惚れだ。せめてロッカより強くなってから言え」

ホープはそう言われてぐぬぬとしか声を出せないのであった。