軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二度目のタイべ編完結

ライオネルからの鮮魚の仕入れの目処は付いた。ハンナリー商会の取り扱い商品がこれ以上増えても厳しいかもしれないから、これでお節介は終わりかな。後はシスコに叩かれながら成長していってくれ。

船長達に今後も宜しくねと、挨拶をしてから漁港街をぷらぷら見がてら地引網の村に戻る。出発は明日にしたのだ。

「あーっ、マーギン。これ買うてぇや」

ハンナリーが買ってくれと言ったのはバケツに山盛り入った牡蠣だ。

「おばちゃん、これいくら?」

「バケツ1つ1000Gだよ」

安いな。

「じゃあ、売れるだけ売ってくれる?」

「いいのかい?」

「人数がいるからね。食べ切れると思うよ」

ということで、バケツ10杯購入。おばちゃんは一気に売り切れた事で喜んでくれた。

「親分、こっちの牡蠣は随分と小さいな。それにこの時期に食うのか?」

「牡蠣は冬場の食べ物だからね」

「牡蠣は夏だろ?」

ん?

「タイベの牡蠣はどんなのだ?」

マーロックの説明ではタイベの牡蠣はこの3倍ぐらい大きく、夏場が旬らしい。

「夏にそのまま酢かレモンで食うんだよ」

「当たったりしないか?」

「たまーに腹を壊すやつがいるが、それでも食うぞ」

当たっても懲りない人がいるのはこの世界も同じか。俺は生牡蠣は好きではないので当たる事はないけど。

「多分種類が違うんだろうな。似たような味だとは思うけど、食べ比べてみれば?」

牡蠣を知らないカタリーナは食べ方を聞いてくる。

「うちも生で食べたいけど、お腹痛くなったらいらんから焼いて食べんねん」

特務隊とカタリーナは牡蠣を食べた事がないらしい。さっき売ってたのもおばちゃん達の小遣い稼ぎみたいなもので流通にのるほど数を取ってないのだろう。食いたい人は自分で取りにいくのかな?

「マーギン、これはどうやって食べるの?」

「生か焼くか蒸すのがいいかな。フライとか鍋にも出来るぞ」

「全部食べてみたーい」

「たくさん買ったから食べ比べするか」

と、地引網の村に戻って少し漁の手伝いをしてからお料理教室を兼ねて牡蠣を料理していく。マーロック達が器用に牡蠣の貝柱を切ってくれる。

「生で食べたい人は?」

「お腹痛くならへん?」

「洗浄魔法を掛けてやるから大丈夫だ」

「ほならうちは食べる」

「私もっ」

希望者はハンナリー、カタリーナ、マーロック達だ。村の人は大丈夫と言われても抵抗があるらしい。

食べたい人にはポン酢かレモン、どちらか好きな方をどうぞとお任せに。

「めっちゃ旨いわっ」

「おう、小ぶりな牡蠣なのに味が濃くて旨ぇな」

「うぇぇぇぇぇぇっ」

絶賛するハンナリーとマーロック達とは違って口から出すカタリーナ。どうやら生牡蠣はダメだったようだ。

「女の子が口からそんな出し方をするな」

「だって、気持ち悪かったんだもん」

ったくこいつは。

「次が蒸し牡蠣だな」

カンカンがないので、土鍋に牡蠣を殻付きのまま入れて、日本酒を掛けてから蒸し焼きに。炭焼きの網の上にもドサドサと載せていく。食べ頃はマーロック達に任せた。

マーギンは小鍋でごま油に醤油を加えてタレを作る。

「それは何に掛けるんだ?」

「お好みで焼き牡蠣に掛ければいいよ。ごま油が嫌いなら、こっちの甘醤油を酒で伸ばしたやつを焼きながら掛けておいて」

マーロック達は食べた事のないタレを両方とも試すらしい。まぁ、好きにしてくれ。

そっちは任せて、おばちゃん達と牡蠣フライを作っていく。

「牡蠣をこんなふうにするのかい?」

「俺はこれが1番好きかな」

蒸した牡蠣と焼けた牡蠣をみんなが食べ始めて、どっちのタレが旨い談義が始まる。それに結論はないぞ。フライも揚がったので、これはケチャップかタルタルソースで。おばちゃん達にピクルスの作り方とタルタルソースの作り方も伝授。酒は焼酎にしておいた。

「マーギン、牡蠣美味しくない」

カタリーナはもう牡蠣はいらないというのでカニを焼いてやる。自分でほじって食いたまへ。

最後は牡蠣鍋だ。土鍋の縁にみそを塗って、出汁の中に牡蠣を投入。みそを溶かしながら食べるのだ。

一通りの料理を作り終えて、マーギンも焼酎のお湯割りを飲みつつ、焼き牡蠣と鍋を食べる。旨いなこの牡蠣。

おばちゃん達も牡蠣にこんな食べ方があるなら店で出せるわねぇと喜んでいた。この村の料理屋は流行るかもしれん。卓上魔道コンロを買ってもらわねば。

2日連続で宴会になったので、今日は早めに就寝。カタリーナとハンナリーがどっちがコタツで寝るかバトルが発生したが、カタリーナに君はダメとマーギンが言った事で拗ねてしまった。しょうがないのでコタツをカタリーナとローズのテントに貸し、こちらは温風の魔道具で寝ることにしたのであった。

翌朝に徒歩でトナーレの街に向かう。ソーセージの旨い店の親父にタイベの豚肉を提供すると共に本当に仕入れるか確認をしにいかねばならないのだ。

マーロックにも王都を見せるために同行させたが、船員の2人は村で漁の手伝いするために残ったのだった。

ートナーレの店ー

「おう、久しぶりだな。今回はメンツが違うんだな」

「まぁね。タイベから豚肉を仕入れてきたけどいる?」

「おう、助かるぜ」

「これから定期的に仕入れられるようになったら買う?」

「どれぐらいの値段になる?」

「今の豚肉と同じぐらいかな」

「それなら絶対に仕入れるぜ」

「部位はどこ?」

「豚肉はどこの部位でも使い道があるからな。どの部位でもなんとかなるぞ」

「なら、1頭買いする? それならもう少し値段下げられるよ」

「どれぐらいだ?」

「50kgぐらいで5万Gぐらいかな」

「それぐらいならまとめて仕入れるか」

ということで、月に一度1頭買いをしてくれる事になった。

「マーギン、ここのソーセージ美味しいっ」

「俺もここのソーセージ好きなんだよ」

「嬢ちゃん、タイベ産の豚肉を使えばもっと旨くなるぞ。明日の朝に特別なやつを食べに来るか?」

「うんっ♪」

店では出さないソーセージか。あれふわふわで旨かったよな。カタリーナが好みそうな味だから喜んで食うだろう。

宿でなくテントで泊まる事にしたマーギン達。コタツはそのままカタリーナに奪われてしまいそうだ。

寝るには少し早い時間なので、焚き火をしながら飲むことに。つまみは鮭の皮を香ばしく炙る。

「魚の皮って旨いな」

「旨い魚なのに売れないのは可哀想だよね。王都に戻ったらスモークサーモンと塩鮭にするよ」

「それは旨いか?」

「あぁ。鮭は他の魚とは違う旨さがあるからね。楽しみにしてて」

オルターネンは鮭の皮に嵌まったようで、飲むより食う方を優先しているようだった。

「マーギンが商会をやるのか?」

ホープが飲みながら聞いてくる。

「いや、ハンナリーとシスコがやるぞ。フェアリーにも売り子を手伝ってもらうけどな」

「そうは言うが、仕入も販売先との交渉も全部マーギンがやってるじゃないか」

「ハンナはこういう事を知らないだろ? 初めにどうやるか見せておく必要があるんだよ。まったく知らないでやるとまず失敗する。1人でやるならそれも勉強だとは思うが、雇うやつがたくさんいるからな」

「ハンナリー、マーギンに感謝しろよ。こんなにちゃんと勉強させてくれるとこなんて普通はないんだからな」

「そんなん分かってるわ。ホープもちゃんと感謝しいや。魔物の事とか訓練の事とかこんなにちゃんと勉強させてくれる事は普通はないねんからな」

「そんなの分かってるわっ」

「うちも分かってるわ。感謝の気持ちを込めて、この身を捧げたってもええと思ってるぐらいやからなぁ」

と、マーギンに腕を組む。

「捧げていらん。それより俺が手伝ってやることもそろそろ終わりだからな。後はシスコに色々と教えてもらいながらやれ。マーロック、こいつは何も知らないから色々とやらかすと思う。それでも支えてやってくれるか?」

「俺も商売の事はからっきしだがよ、それ以外の事は何でもやってやるぜ。なんせハンナリーは俺達の雇い主だからな」

「あんた、悪いことをしてた割にええやっちゃなぁ」

「す、すまん……」

ハンナリーの冗談に目を伏せるマーロック。

「そっ、そないな顔しなやっ。うちが悪いみたいになるやんかっ」

「いや、俺達が海賊だったのは本当の事だ。それを隠すつもりはさらさらねぇが、こんなにも自分が恥ずかしくて後悔するとは思わなかったぜ……」

マーロックの目には涙が溜まっている。こうして本心で過去の事を悔いてくれるならもう間違いは起こさないだろう。

ハンナリーも気まずそうな顔で、どう返していいか分からないみたいだから話題を変えよう。

「ローズ、明日はじゃがいも農家の爺さんのところに寄って、翌日には王都に着く。その後はどうしたい?」

「どうしたいとは?」

「今回のタイベでローズには特務隊の一員として動いてもらった。それももう終わりだろ? 王都に戻ればみんなは組織として動かないとダメだから俺は何も口出しできなくなる。ローズはこのまま特務隊に入りたいのか、護衛騎士として頑張りたいのかどっちなのかなって?」

「そういう意味か。それなら答えは出ている」

「どんな答え?」

「私は姫様の護衛でありたい。タイベに行く前までは強くなりたい、強くなった自分の力を使いたいと思っていたのは事実だと思う」

「そうだな」

「しかし、タイベで私は自分の気持ちがよく分かった。強くなりたい、その力を試したいというのは変わらない。が、命のやり取りをしたいわけではないのだということが分かった」

「盗賊のこと?」

「魔物を含めてだ。必要とあればそれが人であっても斬る事に戸惑いはない。が、魔物相手であっても命を奪う事を生業とするのには向いていないと思う。やはり私は守るために強くなりたかったのだと気付いたのだ」

「だろうね」

「だろうね? マーギンは初めから分かっていたのか?」

「俺は魔物の命を奪う事になんとも思わないけど、そう思える人の方が少ないかもね。斬れば血もでるし、痛がる素振りも見せる。動物との違いもあまりないけど、俺も動物を狩るのには抵抗があるからね」

「マーギンにとって、動物と魔物の違いはなんだ?」

「魔物は敵だ。 決して人に懐く事はないし、本能的に人の命を奪いにくる。動物も人を襲ってくることがあるけど、それには理由がある。魔物にはその理由がない。単に人を殺すという本能だけなんだよ。だからこっちも容赦する必要がない。それだけだよ」

「そういうことか」

「そう。まぁ、肉も食べられるし、素材にもなったりもするけど、魔物は全滅しても問題がないからね」

「私には命の区別がつかん」

「ローズはそれでいいと思うよ。特務隊は俺と同じ考え方をしてもらわないとダメだけどね」

そう、ローズがいくら強くなったとしても、そういう人でいて欲しいと思うマーギンなのであった。

そして、翌日にじゃがいも農家のケンパ爺さんの所におじゃまして、タイベの豚肉と鮭の塩漬けを作り、お土産として渡し、王都に戻ったのであった。