軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ライオネルでの拠点

「ほら、着いたぞ。みんな起きろ」

「ん? もう着いたのか?」

初めに起きたのはオルターネン。

「ずっと寝ていたからそう思うだけだよ」

マーロックから船はどこに着けるんだ? と聞かれて地引網漁師達の桟橋に着けてもらった。

「俺はここに船を係留していいか聞いてくるわ」

もう冬なのに、どっせーい、どっせーいと網を引いているところに向かう。

「おっ、ようやく来やがったか。今年は遅ぇから、死んだのかと思ってたぞ」

相変わらず口の悪い 頭(かしら) だ。

「頭こそ、そろそろ頭の血管切れるんじゃねーか?」

「うるせえっ。で、あの船はなんだ?」

「あの船でタイベからここまで送ってもらったんだよ」

「ほぅ、あの船でタイベから来たのか。誰が操船した?」

「ハンナと一緒に働く元海賊の頭だよ」

「元海賊だと?」

元海賊と聞いて怪訝な顔をする頭。

「詳しい事は紹介してから話すよ。あそこにしばらく船を係留してていいか?」

「お前が責任を持つなら構わん」

ということなのでみんなを呼びに行く。

グラっ

「おっと危ない」

寝ていたとはいえ、船の揺れがまだ身体に残っているローズが桟橋でふらついたので、マーギンが海に落ちないように抱き寄せた。

「すっ、すまない」

赤くなって照れるローズ。それを見たカタリーナ。

「きゃあー」

わざとらしい声を上げてふらつく素振りを見せる。

「危ないっ」

それを支えるサリドン。

キッ

「大丈夫ですーっ」

サリドンが余計な事をしたと言わんばかりに睨み付けるカタリーナ。なぜ睨まれたか分からないサリドンは申し訳ありませんと謝っていた。理不尽極まりない。

「おっと」

そしてオルターネンもふらつく素振りを見せる。

「危ないっ」

今度はオルターネンを支えようとするマーギン。それを避けるオルターネン。

ドバッシャン

「ぶはっ。冷めてぇぇぇっ」

哀れ、オルターネンに肩透かしを食らってマーギンは冬の海に落っこちたのだった。

ブルブルブルブル

海から上がったマーギンは震えながら魔法で自分を洗浄して乾かしていく。

「ちい兄様、わざとやっただろ?」

「んー、なんのことかなぁ?」

コイツ…

いつものやり取りは置いておいて、頭にマーロックと船員を紹介する。

「お前が元海賊の頭か?」

「はい、 マーギン(親分) の深い情けでこうして牢から出してもらいやした。俺は死罪になってもおかしくなかったってのに…」

「タイベからあの船で冬の海をここまで来れる腕がありながらなぜ海賊なんてやってやがったんだ」

海の男達にとって海賊は敵。神聖な海を荒らす嫌われ者なのだ。

「頭、マーロック達のやったことは犯罪だけど、もう二度とやらないと反省している。それに……」

マーギンはマーロック達がなぜ海賊稼業をやっていたのか説明をした。

「ひでぇやつがいるもんだな。もう二度とやらねぇんだな?」

「はい」

「というわけだ。こいつらは襲っていた貨物船の船長と船員にも詫びを入れて許してもらってる。これからはハンナリー商会を支えてくれる存在になると思うぞ」

「そうか。ならしっかりと働け」

「はい」

頭にはまだ少しわだかまりが残っているようだが、素直に頭を下げて謝ったマーロック達を受け入れてくれたようだ。

「で、これからライオネルとタイベの流通はこいつらがやるのか?」

「タイべの中でね。ライオネルとタイベ間は貨物船に任せるつもりだよ」

「親分、俺達はライオネルまで運ぶつもりで船を作ってるぞ」

「えっ?」

「タイベからのもんは高くなっても王都で売れるかもしれんけどよ、王都のもんは船賃が上乗せされたら高くてタイベで売れねぇだろ。そもそもの物が高ぇんだからよ」

「それはそうかもしれんが、普通の船で行き来するの危ないだろ?」

「問題ねぇ。タイベからライオネルまで来るのは大型船と日数は変わらねぇだろうけどよ、ライオネルからタイベに行くにはこっちの方が早ぇぞ。嵐が来てねぇ限り、冬でも運べるしな」

「マジで?」

「あぁ。貨物船はタイベに行くときに結構遠くまで沖に出てから下ってくるだろ? 俺達なら岸近くを通るから行きも帰りも日数は同じぐらいだぞ。真ん中あたりで風の向きが変わる事が多いしな。船員も数乗せるから問題ねぇ」

マーロックの考えでは、ナムの村の港から領都の港を運ぶ船と、タイベとライオネル間の船を別にして運ぶとのこと。討伐船もライオネルまで来ても問題ない大きさで考えているらしい。海流も岸近くを通ればそこまで影響を受けないとのこと。

そういう話なら、小型船用コンテナを作ろうか。マジックバッグ機能を持たせて、そのままコンテナごと運べば南国フルーツも豚肉も運搬が可能だ。これが可能だとすると運賃は不要。マーロック達の給料だけで済む。

「分かった。なら、ライオネルから王都までの荷馬車も頼めるか? 荷馬車は商会で用意するから」

「ここから王都までの距離はどれぐらいある?」

「直通馬車なら1日。途中に街と村があるから、そこに寄るなら2日だね」

「分かった。全部の船ができるまでは月1になるが、船が揃えば月2で運搬が可能だ。それでいいか?」

「十分だ」

「そうか、ならこの村を中継地点に使え。船も係留させてやる。その代わり、手の空いているやつらは地引網を手伝え。住むところも土地は提供してやるから、家は自分で作れ」

今の話を聞いていた頭がこの漁村を使えと言ってくれる。

「いっ、いいんでやんすか?」

「構わん。ライオネルの港を使おうと思えば使用料が必要になる。ここならタダだ」

ということで、この地引網の村がハンナリー商会流通業のハブ拠点となった。マーロックと相談して、ライオネルー王都間の流通もメンバーを交代してやってもらうことに。これで大型漁船の冷凍魚も運べるな。この村でやる予定の魚料理の店は米、みそ、日本酒とかタイベのものが現地価格で仕入れられるから、かなり割安な店として流行るかもしれない。村の収入が増えるといいな。

その後、地引網を手伝って、フグをもらっておく。

「マーギン、プクの毒は捨てるのか?」

「使い道ないだろ?」

「魔物討伐に使うからおいといてくれ」

「毒矢かなんかにするのか?」

「そうだ。全員が全員強いわけじゃねぇからな。倒し方も工夫してやらんとダメだ」

これまでもフグ毒を魔物討伐に使っていたらしい。即死はしないものの、そのうち弱って死ぬからそれでいいらしい。生活の知恵だな。

「タイベでも毒魚は食うのか?」

頭がマーロックにこれを食うのか?と聞く。

「コイツはタイベでは高級魚だ。毒を避けてさばく技術があるなら捨てるのは勿体ねぇな。親分みてぇに魔法でさばけるならまったく問題ねぇ。鍋にしたら絶品だぞ」

「本当に大丈夫か?」

「親分、今日こいつを食うのか?」

「みんなが食べたいならいいよ。たくさんもらったし」

「マーギンっ、私の釣ったブリも食べよっ」

ならそうするか。ついでにマグロも出そう。マーロック達のライオネル拠点ができた祝いだ。

フグはてっちりとてっさ。それと鍋に皮の湯引きと唐揚げに。マグロは刺身。ブリは刺身とブリシャブにブリ大根だ。豪勢な晩飯だな。

マーロックと船員も手伝ってくれる。元海賊とはいえ、漁師もやってただけのことはある。実に手際が良い。

「おいしーっ! ね、頭。このブリは私が釣ったの」

「おぅ、嬢ちゃんが釣ったのか。立派なブリだ」

「でしょっ、でしょっ。船からこうやって竿を出してね、疑似餌ってのを付けて……」

漁師に釣りのレクチャーをするカタリーナ。頭も孫のような歳のカタリーナが嬉しそうに話すのを嫌がらずに聞いてやっている。カタリーナには爺ちゃんとかいないのだろうか?

「親分はプクの刺身をこんなに薄く切れるのか。いつもより旨いぞ。このタレにもよく合う」

「マーロックは辛いのは好きか?」

「おう、食うぞ」

というので紅葉おろしも作ってやる。

「ブリシャブをこれで食うと旨いぞ」

「本当だな。脂がのったブリとよく合いやがる」

「うちもそれ食べたろ」

あっ……

「辛っーーっ。こんなん毒やんかっ」

「おこちゃま舌には普通の大根おろしポン酢で食え」

何が毒だ。大人の味と言いたまへ。

「マーギン、このブリ大根は酒に合うな」

頭はこってりと煮付けたブリ大根が気に入ったようだ。醤油味も好きだからな。

「冬の醍醐味だね。ブリが旨いからよくできたわ」

頭は皮ぎしのところをしみじみと食べている。通は皮ぎしと骨周りの身とか好む。それに売り物になる魚を食べる事はほとんどないみたいだからな。

「親分の作る飯は旨ぇな。今まで食ってた魚と同じだが、味はまったく違う。こんな物が食えて幸せだ」

マーロックがそう言うと、船員達もうんうんと頷く。醤油のお陰もあるけど、海賊行為をせずに、誰の目を気にすることなく食える環境がそう思わせるのだろう。

「旨い飯、旨い酒、それに気の合う仲間がいるのが1番だな」

「違いねぇ。この醤油はこれからタイベにも入って来るんだよな?」

「そのつもり。2〜3年後にはタイベで作られるようになると思うから、手に入りやすくなると思うぞ」

「そうか。俺等も醤油を使った飯を練習しとかねぇとな」

「マーギンはマーロックと気が合うようだな」

楽しそうにマーロックと頭と話しているマーギンを見てローズがそう言う。

「そうですね。私達に対してはどこか気を使ってくれているんじゃないでしょうか」

サリドンはローズの言葉にそう答えた。

「気を使っている?」

「はい。ハンナリーや姫様に対しては保護者、私とホープに対しては教え子みたいな感じなのでしょうね。隊長にはもう少し心を許されているかもしれません」

「確かにちい兄様とは友人みたいな感じだな。私も教え子扱いなのだろうか」

「いえ、ローズさんには女性として接しておられます」

「そうか? 初めはそう思っていたが、結構酷い扱いをされているような気もするが」

ミミズピーマンを思い出すローズ。

「いえ、マーギンさんはローズさんが危なくないように常に気を使われてますよ。桟橋でふらついた時もすぐに抱きとめていたじゃないですか」

「あ、あれはたまたまマーギンが隣にいたからであって……」

「そうです。多分、ふらつくんじゃないかと思って横にいたんだと思いますよ。ローズさんが1番船酔いが酷かったですし」

「たっ、たまたまではないのか……」

「そういう事を恩着せがましく言わないし、態度にも出さないですからね。私達も本当に危ない時にはちゃんと手助けしてくれますから。本当にみんなの事をよく見てるんですよ。どんな修行を積んできたらああなれるんですかねぇ」

ローズはサリドンの言葉を聞いて、マーギンが常に自分を気遣ってくれていることを知る。

「そうか、私は常に守られていたのだな」

「守ってくれているのはローズさんだけじゃないですけど、ローズさんは特別な感じがします。姫様も自分が守られている安心があるのでしょうね。だから姫様もハンナリーもあんなに懐いているんじゃないでしょうか」

頭とマーロックと楽しく飲んでいるマーギンに子供のようにじゃれついているカタリーナとハンナリーを見てローズは少し羨ましいなと思ったのであった。