作品タイトル不明
蜂嵐
『蜜密洞窟(2F)』
階段を上がると、そこは円柱のホールのように高く高く広がっていた。
まるで巨大な塔の中に居るかのようで、上を見上げれば螺旋階段が続いている。
「……何か多くね?」
それよりも危惧すべきはモンスターの量である。
遠目でも分かる程の蜂の数。
無数に等しい蜂が嵐の如く行き交っていた。
「激昂蜂、採掘蜂、風船蜂、指揮蜂、小蜂――――先程見た蜂ばかりですが、数が多いです。マトモに相手していると、こっちのリソースが削られますね……」
俺の予感は正しかった。
1階層は前座も前座、ここからが本番だ。
この長い螺旋階段を登ろうとすると、当然多くの蜂から攻撃されるに違いない。
「なら一気に駆け抜けちゃいましょ!」
であるならば、全てのモンスターを殲滅するより無視して突っ切った方がまだ勝機があるか。
「その案採用だ。皆、全力疾走の準備を」
「ったく……50メートル走10秒の実力、見せちゃいますか」
「50メートル走10秒は遅くないですか?」
「うるせぇ他の皆が速いだけじゃ」
俺達は一拍深呼吸を置く。
脚に力を入れ、合図をかける。
「――――走れっ!」
俺達は全力で螺旋階段を駆け登る。
その姿をした蜂達は一斉に攻撃を仕掛けて来る。
「【蛮勇ノ祝福】」
ババババババババン!
ババババババババン!
鬼巫女は味方に攻撃力バフをかけ、俺は『災極双転銃』を連射して敵の攻撃を妨害する。
黒豆と爆弾愛好家もそれぞれ弾を放ちながら、非常に長い螺旋階段を登り続ける。
ブーンブーンブーンブーン
ブーーーーーーン
ブンブン、ブンブン
それでも敵の猛攻は止まる事を知らず、次々から次々へと蜂が飛来していく。
俺達は無我夢中に、ただ走る事のみを考える。
反射的に引き金を引き、敵前を蹴散らしながら上へ上へと駆け上がる。
「ちょっ……長ぇ……長ぇって!」
「耐えて下さい。ここが正念場です!」
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「流石に多すぎるだろ!」
そんな文句の1つや2つ、出そうな程の蜂嵐の中を突っ切っていく。
長い、余りにも長い嵐。
実際の時間にして僅か数分であるのに、感覚では非常に時が遅く長く感じていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『蜜密洞窟(3F)』
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「あ、もう無理。動けん」
「疲れた〜」
「ゲームの世界でも疲れ感じるものなんだな……」
螺旋階段を抜けた先は狭い一本道の通路だった。
言ってしまえば、中間休憩。
嵐を切り抜けた者にのみ与えられる至福の時間だ。
「……あれ宝箱じゃね?」
目の前には宝箱が3つ並べられていた。
――――3つか。
4つなら有り難く貰えたんだが……。
「……1人1つだな」
「……でも、1人余るよ?」
「俺は……いいや、ボスの討伐報酬だけ貰えれば」
ダンジョン攻略では、実はボスの討伐報酬の方が良い物が貰えたりするものだ。
だから、宝箱報酬を貰ったとしても、単純に強くなかったり、自分のビルドに合わなかったりする可能性が高い。
――――決して、忖度してる訳ではない。
「……本当に、本当に大丈夫なんですね?」
「……あぁ、本当に大丈夫だ。持っていけ」
そりゃ欲しいか欲しくないかで言えば欲しい。
でも誰かが貰えない犠牲になるんだったら、俺がなった方がマシだ。
それに、この中で一番良い遺物付けてるの俺な可能性が高いからな。
「へぇ〜結構良い遺物じゃん」
「流石『ムシムシ密林』のダンジョンですね。これが一級品の遺物……!」
「凄ーい!」
「よし、お前ら! 適当に確認したら上行くぞ上!」
全っ然、羨ましくないぞ!
別に良いし、別に嫉妬してないし!
これが俺が望んだ結果だからな!
「うぉぉぉ、待ってろダンジョンボスゥゥゥゥゥゥ!」
「何か申し訳無く感じてきたな……」
俺にこんな思いさせやがって!
ちゃんと人数分用意しとけや、ダンジョンボスさんよぉ!