軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1342話 精霊儀式<後編>

『これで悠のレベルが少し上がった。この棲み家に我々といれば、少しは安心だ』

闇のオンブルさまのその言葉を信じよう。

イザークが何か考え込んでいる。

「……疫病神はこの棲み家が苦手だとしても、一部の精霊を外で見たら捕まえたりしそうだな」

それは本当にありそうで。そして確かな解決法が見えない。

みんな押し黙る。

「それさ、本当に神に訴えるとかできねーの?」

いくぶん強い調子で訴えたブライに答えたのは、意外にもルシオだった。

「神々には地上の出来事が届いていないのかもしれません」

ルシオの眉は八の字だ。

「どういうことだ?」

ロサが尋ねる。

「昔は神の声が聞き取れるものがいました。そういったスキルと、そして信仰の力が及んでいたからです。

でも現在は神官でも信仰が疎かな者もおります。

何かあった時だけ頼ろうとしても、そこに道は繋がりません」

あーーーーー、ねぇーーーー。

確かに、そうだねー。

天界と地上の繋がりは信仰、か。

神は地上に干渉することを禁じられている。

そして地上に降りることも禁止されているわけだから……。

ルシオのいうこと当たっているかも。

信仰のパイプが細ーくなっている今、地上の細々としたことまではわかってないかもね。

……わたしも小さい頃、神さまにお祈りしてたけど。慌ただしさに遠のいて、困ったことがある時だけ思い出すっていうか。

……この世界の神さまは遠いのか近いのかわからん!! 創世記や神話をきく限りでは。ありがたいよ、ありがたいんだけど。素直に敬いにくいっていうか……。そして禁忌の神話を知ってからは余計に……祈るテンションが上がらないというか……。

そして、元創造神、疫病神、いろいろやらかしてるからね。どーもそれをなんとも思ってない神々も敬いにくく。

わたしはそんな感じだけど。

信仰が廃れてきているというのは、そうなんだろうなーという気がする。

人は何かが簡単に手を入れられるようになるとそれに慣れてしまう。

祈って目に見える何かが起こらないと、そこに思いを込めにくくなるんじゃないかな? 人族として発展して形あるものを手に入れていくうちに、目に見えない何かをわたしたちは手放してきたのかもしれない。

ブライは自分のおでこをパチンと叩く。

「確かになー、助けてほしいときだけ取ってつけたように頼ろうとするなんて、虫がよすぎるか」

「ですから地上に降りた精霊さまたちのことも、把握されていないかもしれません。元創造神のことも、疫病神のやることも地上にて起こったことは感知しにくいのかも。

逆に時の河でする何か、それから疫病にかかわること。これらは他の神々に伝わってしまうことなのではないでしょうか?」

元創造神のしたことも、わかってない?

…………………………微妙。どうなんだろう? 本当にわからないのかな?

「疫病神とは疫病を司るということです。今までリディア嬢に色々仕掛けていましたが、一番得意なはずな疫病を使ってはこなかった。

これは使わない理由があるのでしょう。それがその力を使えば、他の神々にわかるから、なのかもしれません」

疫病……それは死に直結する災。

「そうか、この棲み家に神が訪れることがあったら他の神々にわかってしまうのかもしれないな」

ロサがポツリと言った。

「……それは考えられるかもしれませんね。今まで手を出されなかったことだけが証拠ではありますけれど。

それから、すみません酷いことを言いますが、精霊と消滅させるような接触はそれも神々にはわかるのではないかと思います。

だから、エターナルさまを精神的に追い込んだのだと思うし、オードゥースさまが生きられるぎりぎりの力を奪っていた。それも人族に扮しての接触。

地上に降りられた半分同胞ですから、神々も何か最低限の対策はしたと考えられます」

細々した地上のことはわからない。でも精霊の棲み家だったり、精霊が消滅ぐらいの何かの危機があれば、たとえ地上とのパイプが細くてもわかる。それぐらいの対策はしているかもしれない。

でも、待てよ。

「そっか。神々に取り締まって欲しかったら、禁忌に触れるぐらいのことを疫病神にさせないとなのか……」

考えると途方もないな。

「リ、リディア嬢。私はそんなことひとっことも言ってないよね?」

ダニエルが焦ってる、面白い。

「リディア嬢、今考えたことは決してやってはいけないよ」

ロサに嗜められる。

「疫病というところがタチが悪いな。こちらに害が出ないのなら、力を使わせ神々に取り締まってほしいけど」

「イザークまで、そんなこと言わないでよ」

ルシオがイザークを止めに入った。

「リディー、一人でやってはだめだよ?」

あくまで優しく言ったのは兄さまだ。

兄さままで。状況確認をしただけで、本当に さ(・) せ(・) よ(・) う(・) とは思わないよ。

誰にも辛い目にはあって欲しくないからね。

答え合わせは一生できないのかもしれない。

わからなくはあるけれど、精霊たちにはこの棲み家がとりあえず一番安全だと思うので、特にエターナルさまにはここにいてくれるよう念を押し、皆さまにも誰にも捕まらないように、お伝えした。そう言われたって困るだろうけど、そう言うしかなくてさ。

あとは前に話したように、大ごとにするように振る舞うことをお願いした。人を巻き込んでね。大ごとにするのを疫病神は嫌うことみたいだから。

精霊さまたちはいつでも呼んでくれと、なんでも協力するからと言ってくれて、お開きにすることになった。

時のトンさまが、ノエルと別れ、こちらにきたすぐ後の時へと送ってくれるそうだ。

そうやって挨拶していると、手を引っ張られる。

『娘、名前は?』

エターナルさまに問われる。

人の子、うぬら、から名前を聞かれるまでになった。

少し嬉しくて、にやけているかもしれない。

わたしは答えた。

「リディア。リディア・シュタインです」